6. 妖精姫のはじめては奪われる
誤字脱字修正致しました。ついでに微修正していますが、本筋には影響ありません。
銀髪仮面の素顔はいかに?
馬車の中は重い空気が張り詰めています。
私と銀髪仮面は、お互いを見つめたまま微動だにしません。
「貴方は見た目と違って、結構図太いお嬢様のようですね」
何だか、若干呆れたような口調に聞こえますが、それはそうでしょう。助かるチャンスは逃しません。
「図太いってどういうことでしょう。馬車に乗るときふらついて脱げてしまったのですわ」
「今日下したばかりの新しい靴ですから、慣れてなくて・・・」
「そうですか? まあ、もう良いです。戻るわけにもいきませんから」
私のことをどこまで知っているのか判りませんが、ここは大人しくいていた方が得策ですね。
そう、見た目通りのか弱い ≪妖精姫≫ の風情でいきましょう。その方が油断してもらえそうです。
「どうか、私を帰して下さいませ。お父様もお母様も、お兄様もとっても心配しています・・・」
ウルウルの瞳で声を詰まらせながら見上げます。角度良し!距離良し!
「お止めなさい。そんな目で見てもだめです。貴方は私と一緒に、あの方の所に行くのです」
(チッツ!)
「あの方とは誰ですの? 男性でしたわね? 貴方とあの場所にいらしたわ」
「違います。一緒にいたのは私の仲間です。あの方は、貴方のおっしゃるように前の馬車にいらっしゃいます」
「着いたらお会いできるのね?」
「勿論です。貴方にお会いできるのを楽しみにしていますから」
「誘拐されたなんて、もう私はお嫁に行くことも出来ないでしょうね。貴方のご主人が責任を取ってお嫁にして下さるのかしら?」
「そうですね。貴方がそう望めば」
誘拐の主犯は男性で、結婚できる年齢なのね。伯爵家以上?で、犯罪に手を下せる従者が二人?いるわけですね。残念ですが、それしか判らないのが歯痒いです。
「お喋りはもう終わりにしましょう。これを飲んでください」
そう言うと、小さな瓶から赤い液体を注いだグラスを差し出してきました。
「・・・今は欲しくありません」
思いっきり怪しいですわ。何ですの? その赤葡萄酒っぽいけど香りが強い飲み物は。
「大人しく飲んでください」「嫌です」
少し噛み気味に答えると銀髪仮面はフッと息を漏らすように微笑んだのです!
そしてアクアマリンの眼を細めて、楽しくて仕方がないというように私を見ています。
「ご自分で飲んだほうが宜しいですよ。無理やり飲ませるなんて簡単なことですから」
「でも、今はいりません」
私は少しムキになって、銀髪仮面に言い放つとツンと横を向きました。
「仕方ないですね」
彼は、クイっとグラスを仰ぐと私の腕を引っ張り、自分の膝に私を載せました!!
「何をすっ!!」
言い終わらないうちに、口を開いていた私の顎をとらえると唇に冷たい感触がして、甘苦い液体が流し込まれました。
ごくっ。
流し込まれた液体は喉を滑べり、私は自分がされたことに気が付きました。
そうです。口づけされました!こんな形で!誰とも知らない人に! 初めてなのに!
「無礼者!!」 バシッ!
私は反射的に膝の上という至近距離から彼の頬を打ちました。と、指輪が仮面に引っかかってバラっと外れたのです。
「ああ、乱暴な ≪妖精姫≫ですね。でも、誰もが羨むご褒美を頂きましたから役得ですね。」
仮面が外れた銀髪の彼は、アクアマリンの瞳が涼しい、まるで物語に出てくる王子様の様な高貴な顔立ちです。私より少し年上でしょうか。
「さあ、もう眠って頂きましょう。あと少しで着きますから。起きている貴方は油断できませんから」
抗議しようと口を開きますが、声が出ませんし、それに目の奥がクルクル回ってきました。
(だめです・・・目が開けていられません・・・)
体の力が抜けて、銀髪の彼に凭れ掛かると意識が遠くなってきました。
「貴方は面倒で面白い方ですね。ねえ、リリ・・・」
「クー・・・」本日2回目の気絶です。
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