53. リリは決断する
今日はここまでです。
誘拐事件については次話で終わるかな?
跪いて王太子の判断を仰ぐ・・・その後ろ姿は、噂に聞いていたフザケタ様子も、人を食った狡猾さも感じられなかった。
「オーキッド!何を言っているのですか!?貴方だけの罪では無い!私達も一緒に行ったのだ!実際、リリ嬢を攫ったのは私だ!」
「そうだよ!アンタに脅されてなんかいるもんか!俺は自分から一緒にやっていた!」
ルイとカーンが駆け寄って、共にアレッドの前に跪いた。オーキッドは静かに二人の方を向くと、ニッコリと微笑んだ。
「君達二人が私の所に来てくれて感謝しているよ。それまで、私の人生は退屈で、寂しくて味気ない物だった。君達が来てくれて私は人間らしさと、他人を思いやる気持ちも少しは理解できたと思う。ありがとう」
「なに、最期の別れみたいなことを言ってるんだ!?冗談じゃねーぞ!!」
口調が明らかに変わったカーンがオーキッドに詰め寄っている。
腕を組んで様子を見ていたアレッドが、正面に座るリリに眼を留めた。リリは何か考え込んでいるようで
ずっと目を瞑っている。この状況でまさか寝ている訳ではあるまいに。と思ったところ、瞼を開けたリリと目が合った。何かを決心したような眼差しがアレッドを捉えた。
「アレッド王太子様」
リリは立ち上がると、良く通る可愛らしい声で呼びかけた。
「殿下、もし、オーキッド様が私を誘拐したことで罪に問われることになれば、それは辺境伯の罪として公にしなければいけないですわね?高位貴族の犯罪として」
「そういうことになるな」
「そうなると、トウレンブルク国王の覚えも良く、王弟の第八王子様の汚名を晴らすために尽力された、謂わば現国王の恩人になる方を、処罰するということになりますのね?そして、そんな方に長きに渡り助けられていたご子息であるルシェール様も、せっかくの復権のチャンスもどうなってしまうのでしょうか?トウレンブルク国王も失望なさるでしょうね?。学術都市計画も大詰めで、国交も密になる予定なのに・・・」
「ああ、それに仮にも王宮内で、他国の王室関係者であるルシェール様が、警備のスキを突いた不審者に襲われて大怪我してしまうなんて。これも公になってしまうのでしょうか?」
「うっ・・・そうは言っても・・・」
「それに、王妃様のお茶会で、王妃様は私が誘拐された事などをおっしゃいませんでした。もしかして、私の事で王妃様にも嘘を・・・」
「判った!ちょっと待て。リリ嬢の言いたいことは判ったから!」
リリは、オーキッド達を許そうとしていた。
アレッドに話しかけるリリの姿に、シリウスは初めて見る彼女の一面を見た。ただ許すのでは理由にならない。自分の気持ちだけでも説得力は無い。17歳の少女が、他国の情勢と王室を相手取って王太子に交渉している。
(以外に図太いな)そう思った。が、確か記憶を思い出したリリが、ルイにもそう言われたと言っていなかったか?シリウスは何だか可笑しくなった。そう思ったら止められなくなった。
「クッ!!クッ。・・あははは・・・アレッド殿下!リリの言う通りです」
失礼なのは重々承知だが、ツボに入ってしまい笑うのを止められなくなった。
「まあ!?シリウス様!殿下の前で失礼ですわよ!」
リリは、アレッドに背中を向けてシリウスの正面に向き直し、座っている彼の顔の高さに少し屈んだ。その顔は、協力しろと暗に言っていて、瞳の矢車菊がくっきりと青くキラキラと輝いていた。
(イタズラを持ちかけた子供の様だな)
やっぱり、この娘は好ましい。とシリウスは思った。
「確かに、判断によっては、現在のトウレンブルクとの友好関係にヒビを入れ兼ねませんね。それに、事が公になれば、私の妻は不躾な噂に悩まされ、私達の結婚自体も疑惑の目で見られることになるかもしれません。そんな不幸な事を私も妻も望んでいません」
シリウスがリリの援護射撃をした。
「判っている!!少し、黙ってくれ!」
アレッドが深く溜息を吐いて、オーキッドを見つめた。
「パルマン辺境伯。2年前のリリ嬢の誘拐事件については不問にする。但し、やったことは事実であるし、実際にグランデルク伯爵家も王室も騎士団も多大な迷惑を被った。それは判っているな?」
「はい。それは十分承知しております。殿下、寛大なるご配慮に感謝申し上げます」
オーキッド、ルイ、そしてカーンがアレッドに向かって頭を垂れて跪いた。
「お礼はリリ嬢に言ってくれ。それから、貴方達3人には償いをして貰う。幸い、貴方がたは色んな事に秀でた才能を持っているからな。そこは断れないと思ってくれ。そして、リリ嬢、彼らの償いは君が決めていいぞ。もちろん、私達も相談に乗るが。良いか?」
「はい!!」
リリが満面の笑みを浮かべて頷いた。
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