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52. 辺境伯は打ち明ける(2)

続きです。

「リリ嬢を欲しがった訳は判った。でも、どうしてデビュタントに合わせて誘拐したのだ?」


 もう一度、アレッド王太子様が言いました。


「うーん。やっぱり気になるよね?グランデルク伯爵家に申し入れには行ったけど、結局は断られたからまた交渉をし直さなくてはならなくなった。でも、それから伯爵家は警戒したんだろうね?リリ嬢のガードが厳しくなって全く情報が出なくなった」


「あの後、父はかなり警戒はしたようです」


「だよね。で、考えたわけ。あと半年もすればデビュタントが行われ、社交界に出入りするようになる。そうなると、見たことは無かったけど、相当な美少女であるリリちゃんに()が群がるのは目に見えているよね。国中の貴族に注目されて、行動がすべて噂で広まるようになったら、ルイとの結婚を進められない。厄介ごとが増えるだけだ」


「それで、デビュタントから誘拐してしまえば、醜聞(スキャンダル)となってリリは社交界に出入りできなくなる。連れ戻されても噂が広まってしまっていれば()()()()として、婚姻を望む貴族はいなくなる。それを狙った訳ですか?」


 ずっと黙って聞いていたシリウス様が、冷たい声でオーキッド様に向かって言いました。シリウス様は私の手を握り締めてくれています。すごく安心できます。


「そう怖い顔しないでよ。まあ、9割はその通り。デビュタントの舞踏会からいなくなれば大騒ぎになる。主だった貴族たちが参加している王室主催の舞踏会で、すぐに気づかれて騒ぎになると思ったら、流石だったね?秘密裡に処理したらしいじゃない。それにまさか、ハルナ湖の屋敷に行く途中でシリウス君ともすれ違うなんて、まったく予想外だった」


「それは、こちらのセリフです。あの日は本来帰国できる日では無かった。予定では1日遅くなるはずでした。もし、予定通りだったらどうなっていたか。考えただけで胸が苦しくなります」


 シリウス様が、苦しそうな表情で私の方を見ました。ご心配を掛けていたのですね。私はシリウス様の手をキュッと握り返しました。すると、表情は一転して安堵したように微笑まれました。大丈夫ですわ。今の私はここに、貴方の隣におりますもの。


「大まかに言うと、ずっと眠らせていたリリちゃんを()()()から助けた風にして、グランデルク伯爵家にお届けするっていうシナリオだったの。でもさ、リリちゃんは途中で目を覚ましちゃうし、靴を置いて所在を明かしちゃうしで、思うように進まなかった」


「挙句に、君達来るのが早かったから屋敷に踏み込まれて、私達が誘拐した実行犯ってバレちゃった。計画では、誘拐犯から助け出したヒーローになるはずだったのに」




「・・・あの薬は、ルシェール様が作ったのですか?」


 薬学にも詳しいと伺いましたからきっとそうなのでしょう。ルシェール様が、申し訳なさそうに頷きました。


「ええ。怪我や病気の痛み止めに使えるように開発していたのですが、だめですね。本来の使い方で無いことをした罰です。貴方には不快な思いをさせてしまいました」


「あの嗅ぎ薬は確かに気分は最悪でしたけど、飲み薬はすぐ眠れて起きた時も気分爽快でしたわ。使われるのなら、飲み薬の方が良いですわ。もう少し甘い方が飲み易い感じがしましたけど」


 薬の感想を言った私に、皆の顔がきょとんとしました。シリウス様が(ここで、感想を言いますか?)と耳元に小声で囁きました。えっ?変ですか?


「あはは。ルイ、このお嬢さんは面白いね?君の作った薬を使われたのに、ここで感想を言うなんてね!?」


 オーキッド様が笑いながら言いました。ルシェール様もちょっと笑っているような感じですが、そんなに変なことをいったでしょうか?


「まあ、とにかくことごとく計画を潰されて、私達は屋敷から退散したんだけどね。アレッド殿も救助隊に加わっていたから、王室絡みで誘拐事件を隠蔽(いんぺい)するだろうし、ここは変な噂を立てなくても、グランデルク伯爵家はリリ嬢をあまり社交界に出さなくなると踏んだんだ。それなら、事件の進展を遅らせるため、当事者であり唯一の目撃者であるリリ嬢の記憶を、上書きして事件を無かったことにしたんだ」


「リリちゃん。悪かったね。そういうことだったの」


 オーキッド様は言い終わると立ち上がって身体をグーっと伸ばしました。何だか、晴れ晴れとした表情です。今まで言えなかったことを言い切った清々しいお顔です。


「でも、なぜ、今回は王都にいらしたのですか?本当にルシェール殿の紹介だけですか?」


 シリウス様が窓辺に立つオーキッド様に確かめるように聞きました。


「そうだよ。正確には、ルイの父親の復権が確定して、ルイの生存も明らかにできる目途が立った。だから、正式にリリ嬢に求婚できると思ってはるばる来たのにさ・・・」


「来る途中で、シリウス君、君とリリ嬢の結婚を聞いたんだ。まったく、本当に上手くいかない。この件については、私の思惑が外れっぱなしになったよ」


 呆れたように大きく手を広げ、芝居がかった身振りでオーキッド様が答えました。


「リリちゃんとルイなら、お似合いの夫婦になると思ってたんだけど。綺麗な私のお人形達!!最高の組み合わせと感動したのに!!全く、残念だよ。シリウス君、今からでも遅くないから離婚してくれない?」


 何を言い出すかと思ったら、オーキッド様はシリウス様の後ろに来ると、座っている彼の背後から顔を寄せて言いました。


「しません!!」


 シリウス様が、ぴしゃりと断言しました。



 とにかく、オーキッド様からお話を聞いて一区切りしたところで、宮廷近衛騎士団の騎士様からシリウス様に伝令が来ました。ルシェール様に切りつけたあの()()について取り調べの途中経過が報告されました。


 シリウス様によると、やはりあの騎士は隣国の第二王子派の残党だったようです。囚われてからも現王を批判し、裏切り者の子とルシェール様を糾弾していたようです。どうしてルシェール様の事を知ったかはまだ調査中とのことでしたが、どうも潜んでいたこの国で、偶然にも銀髪の青年の存在に気づき、人知れず探っていたらしい。ということでした。真相はこれからシリウス様が明かして下さるでしょう。



 皆の顔に、やっと安堵の表情が戻ってきました。さすがにルシェール様は、まだ顔色が良くないですが。


「オーキッド殿、理由はどうあれ、リリ嬢を誘拐した実行犯であることは確かだ。これは紛れもない犯罪であるぞ。聞いた以上、このまま何も無しということはできない」


 アレッド王太子様が、厳しい声でおっしゃいました。そうですわよね。今までの話は自供したことになりますわよね?でも、何だか憎めないというか、お気の毒になってしまうというか・・・・



「ルーシェル・サウザランドとカルバーン・ハイド、そして私の従者達は、私の命じた通りに動いただけです。それも私が()()()()()()()()()からです」





「ですから、罪は私、オーキッド・フォン・パルマン一人にあるのです。私に免じて他の者に、お慈悲を頂けますようお願い申し上げます」



 オーキッド様が、アレッド王太子様に跪いて頭を垂れました。


誤字脱字は気づき次第修正します。

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