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5. 妖精姫は銀髪仮面と探り合う

誤字脱字の修正と、一部微修正をしました。本筋には影響ありません。


妖精姫と言われるリリですが、見た目と違って中身はたおやかな淑女ではありません。

銀髪仮面相手に被っているネコが脱げそうです。まだ被ってて欲しいですが・・・


 もう夜も深くなっているはずです。舞踏会はもう終わったでしょうか。馬車は幾分速度を落として進んでいるようですが、城下からかなり離れていると思います。どの位時間が経ったのでしょうか。





「気分は如何ですか?」


 ずっと黙ったままだった銀髪仮面の彼が声を掛けてきました。


「だいぶ良くなりましたけど、まだムカムカは残っています」


 できれば、コルセットを脱いで横になりたい位ですがそこは黙っていましょう。


「そうでしょうね。あの薬をまともに吸い込んでいれば、まだぐっすり眠っているはずですから」


「そうでしたの。酷いですわね」


 どんな薬だったのでしょう?まったく冗談ではありません。何だか全く悪いことをしたように感じられない口調にイラッとしてきました。




「そろそろ、どこに行くか教えて下さいな」


「もうすぐ着きます」


「ですから、どこに行くのですか?」


「行けばわかります」


「貴方は誰ですの?」


「答えられません。これ、さっきも言ったはずです」



 ムッキー!!何なのこの方!全くまともに答える気がありません。

 涼しい顔して(顔半分は見えませんが)イラつかせますね。では聞くことを変えましょう。




「私は、貴方にご同行するなど一言も言っていませんが、貴方にご招待頂いたのかしら?」


「貴方の同意は必要ありませんし、私が招待した訳でもありません」


「そうですか。私をご招待してくださったのは前の馬車に乗っていらっしゃる方なのね?」


「・・・」



デビュタントのある日に城内にいらしたのですから、王宮からご招待を頂いた方ですわね?

それも、あの時間にホールにいなくても不審に思われないということは、デビュタントに参加する娘の縁者ではない可能性が高いです。

私が化粧室に向かってホールから出たとき、まだどなたも出ておりませんでしたもの。




それにこの馬車。

ソファーにクッションも最高級品です。内装もよく見れば手が込んでいますわ。壁は臙脂色に銀色の糸で百合の模様が織られたとても高価そうな織物です。

  

 ゲッ!よく見たら蛇です!百合に蛇が纏わりついています。こんな図柄オーダーでなければありませんわ。だって微妙に悪趣味ですもの。

 でも、当家の馬車よりも上のランクと思います。こんな高級な馬車を作れる家は伯爵家以上でないと無理ですわね。




「貴方は、私のことをご存じなのね?」


「はい。リリ・アンナ・グランデルク様。グランデルク伯爵家のお嬢様でしょう」


「そうですが、何故に拉致されて誘拐されているのでしょう?目的は何ですの?」


「・・・貴方、ご本人です」


「は?」


「貴方自身が目的なのです」


「陛下がおっしゃったでしょう? ≪妖精姫≫ が欲しかったのです」


「あら、貴方あのホールにいらしたのね?」


 私が ≪妖精姫≫ と言われたのは、あのご挨拶が初めてでした。それを知っているということはあの場にいたのでしょうか?




「さあ?どうでしょうか。もうおしゃべりは止めましょう。貴方は色々と面倒そうだ」


 ちょっと皮肉を込め、はぐらかす様な言い方に私は馬車の中で立ち上がった。


「勝手に拉致したのは貴方達でっ!!」


 言い終わる前に、ガックン!!と馬車が傾いだ。


「きゃあ!!」「危ない!!」




 前のめりになった私は、斜め向かいに座っていた銀髪仮面の方に倒れ込みそうになった。



「大人しく座っていてください。怪我でもしたら顔向けできません」


(誰に顔向けするつもりでしょう?本当にイラつきます)


 私は彼にしっかりと抱き留められています。銀色の髪が私の顔に掛かり、仮面の奥の瞳が良く見えます。薄いブルーの冷たいアクアマリンのような瞳。




「大丈夫ですか?立てますか?」



 私を抱きしめていた腕を緩め、肘を支えて立たせると、ゆっくりと向かいの席に座らせたてくれました。仕方なしにソファにきちんと座り直し、体勢を整えるとドレスの裾を綺麗に直します。


 が、その手をギュッと握られていきなり引っ張られました。


「やっ!」


 顎にもう片方の手を固定されて目が合う位置に無理やり顔を向けられました。




「靴はどうしました?左足の靴は?」




 私は答えず正面からにじっと彼の瞳を睨みました。答えてやる義理はありません。

 銀髪仮面は私の顎に添えていた手を離し、銀髪をくしゃっと掻き上げると仮面の奥の目を細めて言いました。



「やっぱり。思った以上に面倒なお嬢様ですね」


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