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19. 妖精姫は偽りの記憶

誤字脱字、一部微修正しました。

本筋には影響ありません、


ようやく過去の話が終わります。

 お茶会は明るい雰囲気のまま和やかに過ぎてようやっと御開きになった。


 招待客は、名残惜しそうに挨拶をして東屋を後にした。ステーシア王妃はレチルを伴ってアレッド王太子の執務室に向かっている。今日の状況報告を直々にするために。




「母上、お疲れさまでした」

 執務室には、アレッド王太子、クラウス、セーヴル、そしてシリウスがいた。レチルは王太子に騎士の礼を取った後、シリウスにお茶会が無事終了したことを報告しそのまま彼の横に控えた。


「それで、リリ嬢の様子は如何でしたか?」


「そうね。クラウスが言っていたように、体調不良で屋敷で休んでいたと言っていたわ。攫われたことなんてまるで無かったように」


「レチルは何か感じたかい?」


 セーヴルは、シリウスの隣にいるレチルを手招きしながら聞いた。


「・・・。特に不審なこともありませんでした。デビュタントの早退をとても残念がっていたように見えました。嘘や思い違いなどしているようには全く見えませんでした」


 レチルは答えたが、セーヴルの傍に行くことなく澄ましている。レチルは公私混同するな!と目で訴えている。


「とにかく、アルテシアとミラノ侯爵夫人とカレン嬢にリリちゃんを紹介したから、デビュタントを体調不良で早退、そして復活の情報はすぐに伝わるでしょう」


 クラウスが感謝して頭を下げた。


「ところで、アレッド。貴方もホールを退出したことでリリちゃんと何かあると勘繰った者がいるらしくてよ。因みにミラノ侯爵夫人の情報ですけど」


王妃は美しい顔に黒い微笑みを浮かべて、息子と少女の兄を見た。


「えっ?そんなことになっているのですか? よし、クラウス、責任をとろう!」


「・・・馬鹿ですか?殿下」


 3人の悪ふざけをじっと見ていたシリウスが、また始まったと言わんばかりに溜息をついた。




「それでは、リリ嬢の方はそれで少し状況を見ましょう。殿下、まず、リリ嬢が留められていたパルマン辺境伯の屋敷ですが、ここ数年は表立って使われてはおりませんでした。常勤の管理人も、使用人の一人も置いていません。確かにあの後屋敷を調査した第二騎士団から、リリ嬢が使用していた部屋と数部屋しか使用された形跡が無かったということです」


「そうか・・・。パルマン辺境伯は、あの日は確かに王宮に来ると聞いていたが、結局来たかどうかは判らない。私は会っていないからな。来たら絶対会いに来るはずだ。クラウス、辺境伯への調査は進めているな?」


「はい。パルマン辺境伯が領地から出ているかの確認をしています。少なくとの数日間か掛かりますから、街道の宿屋や宿泊できそうな屋敷を調査しています。それから、第三騎士団の諜報部隊にパルマン辺境伯の領地とご本人についても情報収集させています。しかし・・・」


「「「しかし?」」」


「彼を調査するのは骨が折れるわよ?それに普通のやり方では舐められてよ?」


 さっきよりも、黒い笑顔で王妃は息子達を見廻した。



 グランデルク伯爵邸に忍び込んだ賊についても、確かな情報は無かった。ただ一人姿を現していたメイドすら、メイドキャップを目深に被っていたこともあって誰も正確に顔を見た者はいなかった。当然、ベランダからの侵入者についても姿を見た者はいなかった。不審メイドは若い女であったこと、侵入者は催眠術?や暗示?を掛けることが出来る者。ということしか判っていない。


 王宮で、王室主催の舞踏会の最中に誘拐事件を起こすなど、大胆にも程がある。それも有名貴族の屋敷を使用しての犯行と、余りの手際の良さにその道のプロの存在が見える。


「それから、関係があるかまだ不明ですが、侵入者が現れた深夜に場違いな馬車が走っていたとの目撃情報がありました」


「場違いな馬車?」


「はい。飾りのついた派手な馬車だったと。念のためこちらは近衛の方で当たっております」


 パルマン辺境伯が見えてこないため、なかなか進みが悪い。しかし、高位貴族でもある辺境伯を安易に疑うことは出来ない。情報を収集し、新たなことが出てくるまで待つことにした。そして、リリについても当分は社交界に出ることをセーブすることにした。またこんなことが発生したら堪らない。暫くは体調不良のぶり返しで凌ぐことにした。



「とにかく、貴方達は王宮の面子と ≪妖精姫≫ をお守りなさい」


王妃は、この日一番黒い笑顔で言い切った。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 リリの誘拐事件から、早半年が過ぎようとしていた。


 結局、パルマン辺境伯は城には登城していなかった。デビュタントの招待状に行くと返事はしたものの、領内の事故処理で出発が遅れたので諦めたとのことだった。王宮への伝令も非常事態で出し忘れたと。

 そして、使われていたハルナ湖近くの屋敷は無断で使用されたとの被害届が出された。




 結局、その後も手掛かりとなる情報は出て来ないまま、時間だけが過ぎていった。


 リリは、最初こそ舞踏会やパーティーに出たがったが、事件後に参加したハープ公爵夫人主催の舞踏会で、男性貴族たちの秋波にうんざりしてしまった。エスコートしていたクラウスさえもキレかかっていた程だった。身の危険すら感じたリリは、それ以降王妃や限られた女性貴族のお茶会くらいしか出掛けなくなった。





 遂にグランデルク伯爵家の ≪妖精姫≫ は引き籠り生活に突入し、誘拐事件から1年を超えた頃には幻の妖精姫と噂され、その存在すらが謎に包まれてしまった。


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