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17. 妖精姫は王妃様のお茶会に招かれる

誤字脱字、一部微修正を致しました。

本筋には影響ありません。

 王妃様のお茶会にお呼ばれしました。デビュタントを体調不良で途中退席したのを不憫に思って下さった、ステーシア王妃様からのお心遣いです。なんてお優しいのでしょう。感激ですわ。王宮に登城しているお兄様からの使いがきて教えて下さいました。正式なご招待状は後ほどお持ち下さるとのことですが、初めての王妃様のお茶会です。どうしましょう。今から緊張してきました。



「さあ、明日のお茶会のドレスやお飾りを選ばなければ。社交界デビューして直ぐに王妃様からのご招待なんて!なんて光栄な事でしょう」


 お母様は、ウキウキと張り切ったご様子で衣裳部屋へ手を引きます。ああ!もう少し時間があればドレスを新調することが出来ましたのに!なんて考えながらお母様や侍女のマーサ、当家のビューティーエキスパートのメイド達と賑やかに過ごしておりました。


「リリ、やっぱり明日はこの薄桃色のドレスが良いわ。一番似合う色ですもの。胸にお花のレースをたくさん縫い付けましょう。きっと花の妖精のようになるわ」


「「「素敵ですわ奥様」」」


 メイド達も大賛成ですね。私も薄桃色のドレスが、一番似合うと思いますからそれに決定しましょう。盛り上がっている彼女らは、イヤリングは?ネックレスは?と箪笥から出してはドレスに当ててコーデを確認しています。こういう時は、彼女らプロにお任せしたほうが絶対良いのよね。


「それではマーサ、私達にお茶をお願いね。リリ、これから茶のマナーの復習よ。王妃様の前で粗相は禁物ですものね?」

 

 かしこまりました。とマーサがお茶の支度に部屋を出て行きました。これから、暫くはお母様のスペシャルマナーレッスンが始まります・・・・。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


お茶会当日。


 てっきり、クラウスお兄様とご一緒かと思ったら、招待状には、お兄様でなくお母様がご一緒するようにと書かれていました。昨日、鬼のようなマナーレッスン中に王宮から招待状が届き、全くそのつもりが無かったお母様が慌ててドレスやらお飾りやらを選ぶことになってしまい、中断されたレッスンは夕食にまでズレ込んだのです。お陰で今朝は若干寝不足のような感じがし・・・いえいえ!お母様に感謝しなければですわ。淑女(レディ)は一日にしてならず。です。


 朝早くから、マーサとビューティーエキスパート達に入浴やマッサージ、お肌や髪のお手入れを施されてピッカピカになりました。


「リリお嬢様!なんてお綺麗なんでしょう!肌は白く透き通るようですし、髪はキラッキラでサラサラです!こんなお美しいお嬢様は、国中探したっていませんわ!!」


「そっ、そう?あ、ありがとう」


 やり切った感で、マーサ達は額の汗を拭いました。それはそうですよね。私だけでなくお母様と二人分ですもの。

 この後は軽食を摘んで、少し体を休めてからドレスと髪のセット、そしてメイクをします。やれやれとソファで寛いでいた私は何気に衣裳部屋を眺めていました。


 ふっと見た先に、見慣れない衣装箱がありました。こんなところに箱を置いていたかしら?何だか気になった私は、その箱を開けてみました。




「薄桃色のチュールドレス・・・・・」


 箱の中には、薄桃色のドレスが入っていました。チュールでボリュームを出したふんわりドレスです。こんなドレス持っていたかしら?今日着ていくのはこのドレスの事だったかしら?見覚えの無いドレスを箱から出すと思わず身体に当ててみました。姿見に写った姿から、やはりこれは私の物のようです。サイズがぴったりですし、何より色もデザインもとっても似合って見えました。



「凝った刺繍だわ」


 裾には何か花のような刺繍が施されています。もっとよく見ようと裾を摘み上げた時でした。


「リリ!何をしているのです!?」


 後ろからお母様の大きな声がして振り向くと、なぜか険しい顔のお母様が立っていました。

 そして、私が持っていたドレスをいきなり取り上げました。


「!?」


 いつもと違うお母様の表情に思わず手を引っ込めました。


「ああ、リリ、ごめんなさい。そのドレスは預かり物なのよ。サイズが判らないから貴方のサイズで作ってみた試作品なの」


「そうでしたか。余りにも私のサイズ通りだったので、どなたからの贈り物だったかと思いました」


 そして、ごめんなさい。と謝ると名残惜しそうにそのドレスを見ました。


「何だか、そのドレスをどこかで()()()()()()()()()()()()。気のせいですわね、きっと」


「ほほほ、気に入ったのならリリにも似たようなドレスを作りましょうね。マーサ、これは箱に入れて仕舞って頂戴な」


 お母様は、近くにいたマーサにドレスを渡しました。そして、これでこの話はお終い、とばかりに私に向かってにこやかに微笑んでテーブルを差しました。


「さあ、サンドイッチを頂きましょう。食べ終わったら、ドレスに着替えなくては。遅れるわけには行きませんものね」


 お母様の微妙に不自然なご様子が気になりましたが、それ以上にあのドレス自体が気になっていました。どこかで見たような気がします。それに身体があのドレスの重さを知っているような気がしました。


(やっぱり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・?気のせいでしょうか?)


 私は不思議な感覚に頭を捻りながらも、これから始まるコルセットとの戦いに遠い目をしたのです。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 王宮に着くと、クラウスお兄様と宮廷近衛騎士様がお出迎えをして下さいました。

 珍しい女性騎士様です。赤い髪を高い位置で一つに纏めた、背の高い凛々しい騎士様です。濃紺に金色の縫い取りが美しい制服が、大変良くお似合いです。眼福ですわ。


「クラウスお兄様。お迎えありがとうございます」


「よく来たね。王妃様の所には彼女が案内してくれるからね。母上、リリをお願いします」


「伯爵夫人、リリ嬢、私は宮廷近衛騎士で王妃様付のレチル・バーンライトと申します。以後お見知りおきを」


「レチル様、()()()()()。リリ・アンナ・グランデルクです。よろしくお願いします」


「・・・」


「レチル様?」


「ああ、ごめんなさい。 ≪妖精姫≫ と伺っていたので思わず見とれてしまいました。なんて可愛らしいのでしょう。よく見ると、とても似たご兄妹ですね。こんな妹君がいるなんてクラウス様が羨ましいです」


 レチル様は、そう言うとお兄様の方を意味深に見ました。


「そうだろう?リリは自慢の妹だからな。妹はやれんが、これからもリリと親しくしてくれるとありがたい。さあ、もう行った方がいい。レチル、母上とリリをよろしく頼む」



「承知しました」




 レチル様に連れられて王宮の回廊を進みます。


 さあ、王妃様のお茶会会場に向かいましょう。ドッキドキですわ!!


面白かった。続きが気になると思って頂けたら

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