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11. 妖精姫は宮廷近衛騎士に助けられる

誤字脱字、一部微修正致しました。


リリとシリウスが初めて顔を合わせます。

「一人にされましたね・・・」


 私は紅茶のカップを置いて、忍び足で部屋の扉までそっと歩きます。恐る恐る把手に手を掛けてゆっくりと引きました。


 カチャッ。


「えっ?開いてる?」


 そう思った瞬間に、私は部屋を飛び出ると一気に廊下を走りました。私がいた部屋は正面玄関付近の2階ですから、絶対近くに中央階段があるはずです。

 慣れない靴は走りづらく、ええい!もう脱いでしまいましょう。




 中央階段を見つけて駆け降りようとした時です。


「リリ様」「リリ嬢」


「あっ!!」


侍女リーダーさんとルイ様です。お二人は中央階段の踊り場で、私を見上げておりました。

思わず、手摺に捕まり急停止しました。



「時間切れです」


 そう言うと侍女リーダーさんは、結った髪を解いて、軽く額に掛かった髪を払いました。かっちりした侍女さんからいきなり妖艶な雰囲気に変わりました。そして蕩ける様な微笑みを私に向けるとこう続けました。


「リリ。私のことを忘れないで。絶対忘れないでください」


「そろそろ行きましょう。それではリリ様」


 あっけにとられている私を残し、侍女リーダーさんとルイ様は、踊り場からいきなり階下に勢いよく飛び降りました。


「きゃああああ!」


 驚いた私は大きな悲鳴を上げました。


 ドオオォオオン!と階下から大きな音がしました。

 余りの音の大きさに思わず耳を塞ぎ、私は座り込んでしまいました。


(何が起こったの?二人はどこに行ったの?)


「「「リリ嬢!!!」」」


 階下から数人の足音ともに私を呼ぶ声が響きました。


「リリ!! どこにいる!?」


 クラウスお兄様の声です!!


「クラウスお兄様!!ここです!」


 お兄様の声が聞こえて、思わず大きな声で呼びかけました。足の力が抜けて座り込んだ場所から立ち上がることができません。手摺に捕まったまま、今更ながら恐怖心が湧いてきました。


「リリ嬢。大丈夫ですか?立てますか?」


「!?」


 いきなり後ろから声を掛けられビックとして体が固まりました。


「だ、誰、ですの?」ギシギシと首を回します。


「貴方を探しに来きました。安心してください」


「リリ嬢~、僕もいるよ~」


 あ。セーヴル様と近衛騎士様でしょうか?探しに来て下さったのね。


「リリ様、レチルと申します。ご安心なさって下さい。さあ立てますか?」


 もう一人ドレスを着ていますが、騎士の礼を取った女性はレチル様というのね。差し出された手を掴もうとしましたが、私は安心したせいか力が抜けて振らついてしまいました。

 すると、


「失礼します」


 すかさず、近衛騎士様が抱き上げて下さいました。


「とにかく、ご無事で良かったです。さあ、安全な所までお連れします」


 先程まで私がいた部屋まで戻ってくると、窓が開かれていてベランダには2人の騎士がいました。


「もしかして、ベランダから入られたのですか?」


「はい。貴方の姿をこの部屋から確認していましたので」


「そうですか・・・はっ! クラウスお兄様!が」


「リリ!」「リリ嬢!」


 ドヤドヤと十数名の騎士とともに、クラウスお兄様となんとアレッド王太子様が入って参りました。


「クラウスお兄様!」


 近衛騎士様に降ろしてもらうとお兄様に駆け寄りました。お兄様はぎゅっと強く私を抱きしめると髪に

顔を埋めて呟きました。


「良かった。生きていてくれた。良かった・・・」


 と何度も何度も言いました。ちょっと涙声に聞こえます。

 私もお兄様のコロンの香りに少し落ち着いてきました。ようやくお兄様の胸から顔を上げて周りを見回すことができました。

 そうそうたる顔ぶれに思わず目が真ん丸になりましたわ。


「アレッド王太子様。恐れ多いことです。助けて頂きましてありがとうございます」


 一応、カーテーシーをして、殿下の前に頭を垂れます。


「いいよ。私が来たくてここまで来たのだから。堅苦しいことも不要だよ。体は大丈夫?怪我してない?」


「ありがとうございます。体は何ともありません。怪我もしていませんわ」


「それは良かった。クラウス、グランデルク伯爵と夫人も呼んできてやれ。あの二人のほうが倒れそうだ」



 アレッド王太子のご指示によって両親が呼ばれました。父も母も廊下を走って来たようで、二人の顔は真っ赤になっていました。そして私の無事な姿を見ると泣きながら抱き付いてきました。苦しい位の力ですが、心配してくれた両親の気持ちの表れと思い、私も思いっきり抱きしめ返しました。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 リリ嬢とグランデルク伯爵と夫人は部屋の片隅のソファで無事を確認しあっている。そばにはレチルが着いているから心配はない。


「首謀者はどうした。屋敷に人の気配がしないぞ」


 アレッド王太子が首を傾げる。


「サイロン、屋敷内はどうなっている?」


「はっ。屋敷内を探索していますが、召使いどころか人っ子一人見当たりません。厨房にも人のいた気配はありますが、誰一人いませんでした。」


「裏口を見張っていた警備団はどうした?」


「・・・・・・」


「警備団は?」


「殿下。首謀者達は裏から逃げたようです」


「シリウス?どういうことだ。警備団が見張っていただろう?」


「皆倒れています。正確には、気絶でもさせられたようですが」


「何だって?」


「警備団の兵士たちが折り重なるように倒れているのが見えました。多分、薬か何かが使われたのかもしれません。剣で倒すには音がしませんでした。静かすぎましたから」


「屋敷の中には誰もいないか・・・。お前たちが見たという青年もいないのか?」


「はい。あとはリリ嬢が何か知っていればいいのですが」


「とにかく、いつまでもここにいるわけにはいかない。王宮に戻るぞ」


「サイラス副団長は第二騎士団を率いて逃走した奴らを追え。但し深入りはするな。シリウス達近衛は王宮に帰る私と、グランデルク伯爵を送るように。いいな」


「「「御意」」」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「リリ嬢」


 両親とお兄様の4人で私の無事を喜んでいると、先程の近衛騎士様がお声を掛けてきました。


「あっ。先程は支えて下さりありがとうございました」


「シリウス。ありがとう。すまなかったな」


 クラウスお兄様が近衛騎士様に近づくと、彼はにっこり笑ってお兄様の肩を抱きました。


「お兄様、お知り合いですの?」


「ああ。シリウス・スタンフォード。スタンフォード公爵家の嫡男で、今は宮廷近衛騎士団の副団長をしている。大学時代の同期でアレッド殿下とセーヴルと4人で親しくしていた」


 シリウス様とおっしゃるのね。珍しくお兄様が打ち解けた感じでシリウス様の紹介をして下さいました。


 しかし、この二人が並ぶと、何というかとっても絵になります。眼福です。金髪で凛々しい近衛騎士のシリウス様と、明るい栗色の髪でちょっと腹黒頭脳派系のクラウスお兄様。イイですわ。




 はっ!? 誘拐されて、漸く助けられたというのに、私ったら何を考えているのでしょう!!


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