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10. 妖精姫はお茶を飲む

誤字脱字、一部微修正もしました。

本筋には影響ありません。

「なんて白くて滑らかなお肌でしょう」


「本当に。それにこのプラチナブロンドの髪も素晴らしいです!艶々ですわ」


「妖精の姫様というのはリリ様のような方の事ですね」


 侍女さんsは、お風呂上がりの私に群がると柔らかな極上タオルで丁寧に拭き上げ、うっとりするような良い香りの香油を塗ってくれました。

 自分で言うのも何ですが鏡の前には、生まれたばかりの妖精のような私がいます。明るい日の光に髪がキラキラしています。



「こちらをお召しになって下さい。リリ様にきっとよくお似合いですわ」


 繊細なチュールレースを贅沢に使った薄桃色のふわふわドレスです。一目で高価な物と分かりますが、よく見ると手の込んだ刺繍がされています。

 何と、このドレスの裾レースにはあの馬車の壁布の ≪百合に蛇≫ の図柄が刺繍されています。


(ゲッ)


 趣味が良いんだか、悪いんだか。いや悪いと思いますけど。


「どうぞ、リリ様」


 下着姿でいるわけにもいかず黙って着付けてもらいます。


「あっ。靴が無いのでしたわ・・・」


 ドレスを着ながら思い出しました。そうでした。初めて下したお気に入りの靴は、王宮のどこかとあの馬車を降りた森の中に置いてきてしまいました。



「大丈夫です。ドレスに合わせてご用意しております。こちらをお履きくださいませ」


 ドレスと共布で作られた靴は、真ん中に彫金された ≪百合に蛇≫ の飾りがついています。 


 やっぱりキモッ!


 若干躊躇しながら靴に足を入れます。ぴったりです。誂えたようにドレスも靴もぴったりです。 


 やっぱりキモッ!


 その後、ドレスを着た私はうっすらと紅を差され髪をハーフアップに結われるとようやく侍女さんsから解放されました。



「「「「リリ様!大変お綺麗ですわ。それでは失礼いたします」」」」





 先程の部屋に戻ると、侍女リーダーさんがお茶と小さなお菓子を用意してくれていました。紅茶の良い香りが漂っています。



「リリ様、お疲れでございました。お茶をどうぞ」


「・・・・・」


「クスッ。薬や毒など入っておりませんわ。()()


「貴方は、今までのことご存じなのね?」


 リーダーさんは、ウフフと微笑むと、私の顔を目を細めて見ました。

 綺麗に結い上げた黒髪に、きりっとした目元。落ち着いた声に大人の色っぽさを感じます。


「本当に、ご安心なさってください。お疑いになるのはもっともですが」


 素敵な白磁のカップに綺麗な水色の紅茶が揺れています。

 お腹がクーと鳴りました。


「!?」


(は、恥ずかしい!)


「昨夜からほとんど召し上がっていらっしゃらないのですから、お腹が空いて当たり前ですわ」


「大丈夫です。ご安心なさってくださいな」


「・・・・いただきます・・・」


 意を決して、私は紅茶を口に含みました。

 リーダーさんはニコニコしながら(これもどうぞ)とお菓子のお皿を差し出してくれます。


「・・・ありがとう・・・」







「失礼します」


 返事も聞かずにドアを開けて、ルイ様と呼ばれていた銀髪の青年が入ってきました。


「あら~、さすが可愛いねえ。リリ嬢、初めましてになるかな~」


 ルイ様の後ろから仮面をした背の高い方が入ってきて、私の傍までズカズカと歩み寄ってきました。思わず椅子から立ち上がり、とっさにリーダーさんの後ろに隠れました。


「ありゃ。警戒されちゃった」


「カーン。少しは遠慮しろ。リリ嬢が怯えている。離れろ」


「あらあら、お二人ともレディのお部屋に入るのになんて不躾なんでしょう。礼儀がなっておりませんわね」


 リーダーさんからうっすらと冷気が出ているように感じます。


「リリ様、ご安心くださいね。後でこの二人はキッチリ絞めときますから」


「ちょっと、お二人とも顔をお貸しなさい」



「「えっ?」」


 二人がカチンと固まりました。




「それでは、リリ様。騒がしくしてしまい申し訳ありませんでした。どうぞごゆっくりなさって下さい」


 リーダーさんは、そう言うとルイ様とカーン様?の首根っこを掴んで、引きずるように部屋から出ていきました。





 何だか疲れました。




「・・・お茶、飲もう・・・」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 森の中。





「シリウス。遅れてすまん。様子はどうだ?」


「クラウス。リリ嬢は確かにここにいる。姿も現認した」


「本当か!? どこにいるんだ?」


「あの部屋だ」


 そっと指を差したその先を見止め、クラウスはほっとしたように片膝を着いた。


「良かった・・・生きていた」


 シリウスはクラウスの肩に手を置くと、ぐっと力を込めた。


「これからだ。お前は殿下の傍にいてくれ。私達は突入する」


「私も行くぞ」


「「「殿下!」」」


「ここまで来たのだ。私も行く。行ったほうが都合がいいかもしれないぞ。止めても無駄だ」


「仕方ありません。分かりました。それでは殿下は一番最後にお願いします。クラウス、マルカム、トーレスは殿下をお守りしろ」


「任せてくれ」


「「承知しました」」


「よし、私とセーヴル、レチルはリリ嬢の部屋へ。サイロンと第二騎士団は住人を捕らえろ。裏の警備団は一人も逃すな」






「よし。突入する!!」


面白かった。続きが気になると思って頂けましたら、

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