倉島ゆうな編 -そのに-
「いいよ、全然」
俺はポカンと口を開けたままになった。
目の前で、机に肘を突いて座る彼女は、ニコニコと楽しそうに笑った。
そこに恥ずかしさや暗さは見えない。
俺は、横にいる”ふらんそわ”......橘 美月 へ振り向く。
”ぞわっ”と一瞬で寒気が背中を下った。
彼女はおおよそ人間がしてはいけないような恐ろしい顔つきで、倉島ゆうなを睨みつけていた。
そもそも、どうしてこうなったのかを説明しようと思う。
*****
学校に行くために、あの忌まわしきトンネルを通ろうとしていた。
(どっかに隠れてたりしねーだろうな)
多少慎重になりながら、トンネルを渡る。
どうやら気配はない。
朝っぱらから、あのクソ天使の顔を拝まずに済むのはいいことだ。
「へー、”クソ天使”ってのは誰のことかしら?」
いらっしゃりやがりましたか。
さっきまで確かに誰の気配も感じなかったはずだが……
むちゃくちゃな奴だ。
振り返ると、不機嫌な顔をした”ふらんそわ”が腰に手を当てて俺を睨みつけていた。
―お前は俺のストーカーなのか?
「な……ふ、ふざけたことを言わないで!あんたがちゃんと学校に来るか心配して来てあげたんでしょうが!」
意外にも世話焼きな面があるらしい。
ま、違うか。こいつはこれが仕事だし、当然か。
「そうよ。仕事じゃなかったら、どうしてあんたの傍になんか寄るもんですか!」
―いちいち心読むの辞めてくんねえかな?気持ち悪いったらないんだが
「な……!うーん……分かったわ。その代わり、変なことを考えたりしないことね!」
―しねーよ。ほら、さっさと学校行こうぜ
俺が歩き出すと、少し距離を置いて”ふらんそわ”が俺の後ろを付いてきた。
はぁ、めんどくせえことになったもんだ。




