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始まりの日-1-
午後の授業は、全く身に入らなかった。
何故なら、教室の後ろに座る天使コスプレの女のことが、気になって仕方なかったからだ。
(放課後に詳しい話を聞かないとな)
奴から貰った手帳に書いてある名前は、聞き覚えがある奴もいれば、全く知らない奴もいた。
(このクラスの奴もいるな……倉島 ゆうな、深田 貴音……)
(……そして、田代美奈子……か)
さっき罵声を浴びせられたばかりだ。
この子を彼女に出来るなんて、到底思えない。
(って、何を信じてるんだ……俺は。馬鹿か)
だが、さっき確かに目の前で時が止まって、
クラスメイトが消えて、
ふざけた格好の女がそいつになり替わった。
これが、現実とするならば、この手帳と、天使コスプレの言ったことも現実なのかもしれない。
――貴方はこれから一か月の間に、そこに書かれた10人の女生徒を口説き落として彼女にしなければなりません――
――出来なければ貴方には死んでもらいます――
本物の橘 美月 は何処に行ってしまったんだ。
俺はここでじっとしてていいのか?
橘のことを警察に言わないでいいのか?
――いや、言っても無駄か。
多分、俺の言うことは誰も信じないんだろう。
少なくとも、クラスメイトは全員、俺の言うことなんか信じちゃくれなかった。
キーン コーン カーン コーン
6限目の授業を終える鐘が鳴った。




