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3/9

ようやく本題に入り始めました!(汗)

翌日、目を覚ました薫は、いつも通りに朝の身支度を始めた。

いそいそと布団をたたみ、台所へ向かう。

まず顔を洗って歯を磨く。


そして弁当を詰める。


次に居間へ行き、暖かいコタツに足を突っ込む。


しばらく朝のニュースを眺め、朝食に菓子パンを食べた。


食べ終えたら、鞄やらの準備をしたのち、制服に着替える。


再び歯磨きをしながら、可愛いお天気アナウンサーの天気予報をチェック。



そして起床から約30分後、すべての準備が整った。




コートを着て、マフラーを首に巻いた。


外へ出る。



「いってきまーす」



薫は、駅を目指す。







とても平凡な風景であるのは、すでにお分かりであろう。


この物語の主人公、春日薫かすがかおるは、平凡な極普通の女子高生である。



そして彼女は、少しばかり不幸だった。



ま、そのへんはまた後に話すことにして…




重要なことは他にある。



実は彼女、とある理由で死神に憑かれているのだ。






「おっはー、薫チャン。今日も良か朝じゃのう」

「…はぁ、また口調がおかしくなってますよ。死神さん」




薫は、ちょっと笑いながら言った。

背後には、その死神がいる。



死神は、ボロボロにちぎれている黒のコートをなびかせ、宙をフヨフヨと飛んでいる。

顔つきはなかなかの美青年(?)で、長髪の収まりの悪い黒髪は、後ろでひとつ結びにしてある。ぱっと見れば、野武士のような頭だ。

そしてその頭には、可愛くデフォルトされたどくろの面が飾られていた。


「死神さん。学校が終わってから、説明するんじゃなかったですか?」


薫はそんなコスプレ野郎とは違い、極普通の黒髪に、ちょっと外はね。そして普通の制服。



「少し時間があるようなので、ちょっと話せるものは話しておこうと思いまちこ」

「(思いまちこ?)は…はあ」


死神は、地に降りた。

黒いブーツが、小さな音をたてる。



「あ、ワタシの姿は他の人様には見えないので。薫さんはあまり喋らない方がいいと思いまちこ。おかしな人になりますからネ」

「(…思いまちこって何?)おっけいおっけ〜」


薫は、マフラーの中でもごもごと返事をした。


「まず、ワタシのことを真面目にお話したいと思いまちこ」

「…あの、死神さん。その変な語尾のせいで真面目じゃなくなってます!」



「あ…そうですか?ちょっといいかんじにキャラが掴めてたんですが…」


‘わかりました。この語尾はやめましょう’

死神は、そう言った後、長々と話しだした。



「昨日も申しましたとおり、ワタシは死神です。そしてワタシの仕事は、寿命が来た魂を天国へ誘導することであります。…まあ、理解しやすく例え話をしましょうか。Aさんという方が寿命が来たとしましょう。すると、Aさんに目を付けていた死神が‘天国へ行きますよ’と案内するわけです。で、Aさんの魂は、死神にゆだねられて天国へ逝きます。そしてここからが大事なところですよ」


死神は長い人差し指を天に向けた。



「魂には重さがあります」


「重さ?…っていうとキログラムとかの?」

口を挟む薫。


「そうです。そして魂の重さは、未練の量です。…だから、Aさんがものすごく未練を残して魂になったのならば、ものすごく重くなります」


「…へ、へぇ〜。え?てか重さ関係あるんですか?」


薫が死神の方を見て尋ねた。



すると死神は、無感情だった顔を少しだけ困ったように眉を下げて、

「…薫さん、あなたは自分の鞄が重かったら憂鬱ではありませんか?面倒くさいと思いませんか?」


と逆に尋ねてきた。


「う〜ん?そりゃあいやですねぇ…」

「ねぇ?もう重労働なんてホンットめんどくさいですよね?…だからワタシたち死神は、未練を解消して魂を少しでも軽くするんですよ。別にねぇ、未練なんてきかなくてもいいんです。そんな知らねえよってしても良いんです。…ただ…だるいじゃないですか、重いままの魂を持ち歩くのは」


「気のせいじゃないですよね?なんか死神さんってダメな人に感じるんですが…」


薫は苦々しく笑ってみせた。しかし死神は、またもや無表情である。



「それでですね、薫さん。未練が多けりゃ多いほど、魂はヘビー級なわけですよ。もう持ち上げらんないわけですよ、死神が」

「…死神の仕事って、意外に体力要るんですね…」


‘イヤになりますよ、まじで’

死神は、低くつぶやく。



「薫さんの魂も重すぎて重すぎて、どうしても持ち上げられないんですよね」

「はあ…。……………………………ってえええぇ!?」

「うぉッ…、なんですかいきなり…」

薫のリアクションにびっくりして、死神はひゃっと体を縮ました。


「あ、あたしはまだ死なないんじゃなかったんですか!?死神さん昨日そう言ってましたよね!?」


死神は、眉をひそめる。


「そうですけど。残念ながら薫さんの寿命は、まだまだイキイキしてます」

死神は続ける。

「しかしワタシ(死神)があなたのもとに来たということは、あなたの魂はワタシが持っていくってことなんです。…つかなんでワタシはあなたのところ…寿命が来てない人間のところへ来たのか、そもそもの目的がまったくわからなくてですね」


死神はキッパリと言った。


「昨日からそんなことを言ってましたよね…?なんか軽いノリみたいですが、大丈夫なんですか?」

「まあ大丈夫です。ワタシたちにはガミガミ怒る上司は存在しませんから。適当でいいんです。適当で」



ちょいちょい、と手のひらを泳がす死神。


どうやらこの死神、とてもぐーたらな性格らしい。



あきれる薫。



「とにかく、昨日から考えてましたが」



死神は、ふわりと宙へ飛んだ。




「このままあなたの寿命を待ち続けていても、なんだかヒマ…いや手持ち無沙汰なので…」

「ヒマのところを手持ち無沙汰と変えても意味は一緒ですよ!?あなたにはやる気というものはないんですか!?」



死神は、薫のツッコミなどスルーしている。


相変わらずの無表情。



「ワタシはあなたの未練を解消していきますから」


死神を見上げる薫。


「?どういうことですか?」

「つまりです。どうせワタシが連れて行く魂ならば、生きているうちに未練を解消して、魂を軽くしておこうという魂胆なわけですよ」




―というわけになった。




『じゃあまた、帰宅後にお話しましょう。アディオ〜ス』



死神は、微妙な捨て台詞を残し、朝空に消えてった。





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