イタい!私の二次元召喚!!
練習で異世界転移ものを書いてみました。
「主! この魔獣達、剣が効かねぇ! キャロを呼んでくれ!」
金髪碧眼のイケメン戦士が、小柄な女に向かって叫んだ。
目の前には、スライムのような魔獣がうじゃうじゃいる。
もう1人のゴツい男も、その魔獣に苦戦しているようで、持っている大剣で振り払うくらいしかできていない。
「分かった! 召喚!キャロライン!」
すると、綺麗系美人の魔女が現れた。
「はぁ~い! エリカちゃん、何か御用~」
色気のある声が緊迫とした戦場に響く。
小柄な女は『鑑定』の力を使い、スライムのような魔獣の弱点を探った。
「キャロ! お願い!! 氷魔法でこの魔獣達を倒して!」
「まかせてぇ!」
杖を魔獣達に向かって横に広がるように振ると、魔獣達は一瞬で氷漬けになった。
そして、氷漬けになった魔獣達はパァンと音をたてて粉々になる。
「はい!終わり」
キャロといわれる女性がそう言うと、皆、気の抜けたように地面に座り込んだ。
「終わったー!」
金髪碧眼の男が「疲れたー」と叫ぶようにいう。
「簡単な依頼だと思ったが、まさかこれだけ苦戦するとは…」
ゴツい男も、苦笑いで答えた。
「2人ともぼろぼろだね。シンシアも呼ぶ?」
主やエリカと呼ばれた小柄な女性が、心配そうな顔をする。
「大丈夫。 主が持ってるキャロの特製ポーションもらえるか?」
「はい!」
2人にポーションを差し出すと、美味しそうに飲んだ。
「ぷっはー!生き返るぅ!!」
金髪碧眼のイケメンが親父臭い声を出していう。
「これ、こんなにうまかったか?」
ゴツい男は驚きながらもうれしそうだ。
「エリカちゃんに言われて、ポーションも美味しく頂けるようにしたのよ?
エリカちゃんに感謝しなさい!」
「サンキュー主!」
「助かったよ。 前のキャロのポーションは激マズだったから」
主やエリカと呼ばれた、黒髪でポニーテールをしている、実年齢の17才より幼い印象の、やや小柄な女が微笑む。
エリカこと、二次 絵里香は、今現在、地球ではなく異世界で生活している。
私と一緒にいてくれる人たちとここで、冒険者として旅をしているのだ。
ゴツい男こと、クリフォード。
大剣を持つ、防御力抜群の重戦士。
緑の瞳にオレンジの髪のツンツンヘアー。
185cmで全体的にゴツい印象の男で、大人の色気もある兄貴的存在だ。
キャロこと、キャロラインは魔女。
強力な魔法やポーションなどの薬をつくることができる、ボンキュボンの蠱惑的なお姉さん。
切れ長で紫色の目にプラチナの髪。
髪はロングヘアーで片側に三つ編みを流している、三角帽子が似合う、顎のほくろがポイントの美人さんだ。
最後に金髪碧眼のイケメンこと、アレックス。
綺麗な顔だけど、たまに永遠の小学生と思うくらいやんちゃな残念系イケメン。
剣で相手を圧倒する戦士だ。
今でこそ、やんちゃな印象だが、最初に出会った時はしっかり者のお兄さんだった。
この三人は皆、正確には人ではない。
私が召喚した、この世界で言うところの召喚獣だ。
どういうことかは、まず、私が地球から異世界に来た時の話を聞いてもらいたい。
あれは、高校へ向かう、朝の通学路で起こった出来事。
その日は久々にマンガ部の集まりなため、特にうきうきしていた日だった。
普通に歩いていたところ、後ろからドンと何かがぶつかった。
「ごめんなさい!」
そういって他校の女子高生が走り去って行った。
ちょっとついてないと思いつつ、足を進めると、いきなり私の周りが光り出した。
一瞬マンガで観た事あるような魔法陣が見えたと思ったら、白い光に包まれてしまった。
気がつくと、目の前にとっても綺麗な女性が立っていた。
「ごめんなさいね。 間違えて、あなたを呼んでしまったみたい」
話を聞くと、私にぶつかって来た女子高生を呼ぶはずが、走って行っていっちゃったせいで、私が異世界に転移してしまったらしい。
戻る事は出来ないのかと問うと、実は、地球の人と異世界の人を1人交換しましょという、地球の神とこの異世界の女神の密約で、もう、地球に戻る事ができないと聞き、私はショックを受けた。
泣きたい…と思ったが、これから私は異世界で生活しなければならない。
女神は私が手違いがあった代わりに、出来る限り願いを聞いてくれる事になった。
まず、女神の見立てで、私自身に戦う力は無いが、ある特殊な力がついている事を聞いた。
そして、ラノベの異世界転移にありがちな言葉問題、無尽蔵に入るアイテムボックス、あらゆるものを鑑定出来る鑑定能力。
それを全部つけてくれとお願いしたら、軽くOKと言われてしまった。
転移者の初心者パックに全部ついていたらしい。
女神とは教会で祈れば連絡出来る事と、着いたら「ステータスオープン」と唱えれば自分の力についてわかることを聞いてから、異世界に送り出された。
すると、目の前にはだだっ広い草原が広がっていた。
早速「ステータスオー…」と唱えようとすると、ドスンドスンと音とともに、自分が謎の影にすっぽり入ってしまった。
そぉーと後ろを向くと、頭に角がついた、赤い大きなクマが立っていた。
クマが私をパンチしようとするので、慌てて逃げた。
全力疾走するが、クマが追いかけて来る。
やばい!やばい!やばい!
すると、いくつか岩があるところに出たので、あわてて岩陰に隠れた。
「ステータスオープン」と唱えると、私のステータスが目の前に表示された。
エリカ・ニツギ 二次元召喚士
レベル1
HP 100
MP 50
能力 二次元召喚 異言語理解 アイテムボックス 鑑定
二次元召喚って何!?
地球でも見た事無いよ!
二次元召喚にタッチしてみると、詳細が表示された。
異次元召喚士
紙に描いたものを召喚する事が出来る。
(人・人外・もの・食べ物・獣など。)
食べ物は食べる事も可能。
ものは召喚する時に×(かける)数も言えば、その数通り召喚することができる。
また、召喚をしたままにする事も可能。
戻す場合、次回召喚時にMPが必要になる。
えーーーーー!?
この状況で紙に絵を描いて呼び出せって!?
無理無理!
まず、この状況で絵を描く何てありえないでしょ!!
よく見ると、下の方に色んな名前が載っている。
アレックス・サタン・クリフォード・キャロライン・シンシア…ってこれ、私が小学生の時に考えた、チートすぎる勇者達が魔王を倒す旅に出るってマンガのキャラクターではないですか!?
しかも敵キャラであるはずのサタン(魔王)も呼び出せるよぉ!
イタすぎる自分に悶えながら、こんな状況で心のHPが0になった。
しかし、何で紙に描いてないのにキャラクターが表示されているのか不思議に思っていたら、鞄の中に落書き帳が入っていることを思い出した。
これか!
今、これを紛失したらまずい。
アイテムボックスを使い、とりあえず、そこに鞄を突っ込んだ。
とにかく誰でも良いから召喚しようと、勇者キャラであった、アレックスを呼び出す事にした。
アレックスにタッチすると、『MPを50消費しますけどよろしいですか?』と表示が出た。
え!?
私が持ってるMP全部使うの!?
戸惑っていると、ドスンドスンという、クマが近づく音が聞こえる。
時間がないので、私は勢いでアレックスにタッチして、表示された通りに唱えた。
「召喚!アレックス!」
いつの間にか、金髪碧眼の綺麗な顔したイケメンが、剣を携えた戦士姿で立っていた。
確か180cmと設定したはず。
実際に見ると思った以上に大きい。
「呼んだか?主」
「は…はい。」
「何して欲しんだ?」
「あのクマを…倒してくれません?」
「分かった。ここ、動くんじゃねぇぞ」
どぉおおん!
音がするので岩陰から覗くと、アレックスの横に横たわるクマが見えた。
上品な言葉が出て来るかと思いきや、ぶっきらぼうに話した残念なイケメンのアレックスは、クマを瞬殺してくれた。
そうして、この世界にきて早々ピンチに巻き込まれた私は、アレックスのおかげで、なんとか今まで生き残って来れたのだ。
その時は今みたいに、ポンポン皆を呼ぶことが出来なかったから、アレックスも「気を引き締めないと」と思ったらしく、当時はかなりしっかりしたお兄さんに見えた。
また、後で知ったことだが、この世界にも召喚士というジョブはある。
ただ、呼び出せるのは獣だけだった。
なので複雑ではあるが、アレックスはこの世界では召喚獣扱いらしい。
ただし、宿に止まる時は人としてカウントすると言う。
なんだが、ややこしい。
この後、改めて教会で女神に会った私は、彼女が地球の人と異世界の人を1人交換した理由を知る。
それは、地球の文化をこちらでも教えて欲しいとのことだった。
なので行く先々で、料理を作って広めたり、あまり使っていなかった食材の使い方を教えたり、娯楽も無かったので、スポーツで競うことなどを教えたりしていた。
そんなことをしているうちに、なぜか、各国の領主や王から狙われてしまった。
ある王は自分の国を発展させる為に、自分の国に私を縛り付けようとしていたし、
またある領主は、私の存在を恐れ、私に暗殺者を放ったり、旅の妨害を受けたりした。
その度にコソコソ動かなければならなくなり、現地の人とは顔見知り程度しか仲良くなれない。
私はもう、元の世界に戻れないっぽいのに、友達もなかなか出来ないし、元の世界でもいなかった彼氏もつくれないでいる。
自業自得なのだが、そばにいる皆が、美形と言うことも理由の1つだと思う。
端からみると、美男美女がなぜか平凡な容姿の私にべったりなのは異質だし、そういう容姿の人が好きなんだと誤解され、敬遠されている。
この先どうなるんだろ?
私…結婚出来るのかなぁ…?
将来への不安も胸に抱えて、今日も冒険の旅に出る。
拙い文章をお読みいただきありがとうございました。