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母の歌

作者: えんどう あきら

母が呼んでいる

夕飯だからと

母は ぼくが遊んでいる公園まで迎えに来た

砂場から出て ぼくは母の後をついて歩いた

母の姿になぜか懐かしさを感じていた

そして ぼくは母と手をつないだ


母が呼んでいる

今日は雨だから 母もぼくも家の中にいる

きっとそうだ 膝枕で耳の掃除だ 痛くしないでと 母に頼んだ

場所はいつもの縁側のガラス障子のそばだ

母の膝の上で外の庭をみている

大きいあじさい カエルが雨にうたれて じっとこっちを見ている


ふと 母の手がとまった

下から母の顔をみたら 涙を流していた 涙がこぼれていた

そして 急にぼくに言った

お前は大きくなって大人になっても 戦争に行ってはいけないと

ぼくは 行くもんか と答えた


母の弟 ぼくのおじさんが

特攻隊で死んだんだ その知らせが来ていたんだ

母は そのとき泣いていた


その母も死んだ もう少しで百歳だったのに

母が死んで なんにも言わなくなったとき

ぼくは 母の顔をなでながら 思い切りに泣いた

母は ぼくのそばからいなくなった

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