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量子論

流星観測の日からしばらく経った平日の午後、今日の授業を全て終えた大地(だいち)は一人で大学の図書館で調べ物をしていた。そこへ大地をさがしにきた(かける)が、閲覧室で3冊ほどの本を積み重ねて座っている大地を見つけてその隣に座った。

『大地が図書館にいるなんて珍しいな?『わかりやすい量子論』? なんで急に今本を読んでいるんだ?』

『あっ、翔か。いや、この前の流星観測の時に量子論の話がでただろ?なんとなくは聞いたことはあるけど、詳しくは知らなかったからちょっと調べてみようと思って、、、。でも全然要領得なくて、全然わからないんだよな。』

『量子論てあれだろ、見ている時と動いている時で状態が違うとかなんとか、、、。』と大地の横に積み重ねてあった本を一冊とってパラパラとめくりながら話をすすめる。

『そうそう、あとシュレーディンガーの猫だとか、、、。なんかもう、それこそ異次元の世界の話になってくるよな。考えるだけで気分が悪くなってきそうだよ。』と両手で頭を掻き毟りながらぼやく様に言った。

『シュレーディンガーの猫ってあれだろ、猫とラジウムとガイガーカウンターと連携させた毒を発生する装置を一緒に入れてってやつだろ?『重なり合った状態』なんて訳わからないよな?』相変わらず、パラパラとめくる本に視線を落としながら話を続ける。

『アインシュタインの相対性理論もそうだけど、あの空間が歪んでいるとかって言われても全然ピンとこないんだよな?大地わかる?』翔はめくっていた本をパタンと大きな音をたてて閉じ、同意を得ようとして大地に視線を送る。

『相対性理論だったら、まだなんとなくわかる様な気がするけど、、、。光の速度はいつでもどこでも同じ速度ってことだろ?音の場合、音源が動いたり観測者が動いたりすると音の速度がが違って聞こえるけどそれって音を伝える媒体である空気がその動きに伴わないからだろ?光の場合はその空気に当たるものが常に纏わりついてくるってことなんじゃないかなぁ?』大地は視線を少し上に移し、どこか言葉を選びながら話しているように見えた。

すると突然、急に思い出したかの様に大地が続ける。

『そういえば、相対性理論では相対速度が光速に近づくと質量がどんどん大きくなるって聞いたことあるけど、それって時間も大きく関わっているってことなのかな?でも、もし質量が0の物質があるとしてそれが光速に近いた場合はどうなんだろう、ゼロだったら、10かけようが、100かけようが、10億かけようが0にしかならないからな、、、。でも逆に、質量が0だったら限りなく0に近い加速度でも一瞬にして光速になるってことだよな?つまり、質量が0になるってことは、時間の概念がなくなるってことなんじゃないか?』大地は何かすごいことを思いついたような高揚した得意げな気分で話を続けた。翔はそんな大地の話にやっと着いて行っているようで、眉間にしわを寄せながら話を聞き入っていたが大地のこの発言にようやく反論を始めた。

『いや、質量が0となった場合、速度についての概念が意味がなくなるような気はするけど、時間の概念がなくなるっていうのはどうなんだろう?』翔は相変わらず眉間にしわを寄せたまま、自分の言っていることもよく分からないといっているような表情で続ける。

『存在自体はそこにあるんだろう?だったら時間の経過に対しての変位は1対1で結びつけるのじゃないか?』

いつもおちゃらけている翔がいつになくまともな回答をしたのでちょっと意外といった表情を見せる大地だったがこの翔の発言にたいしてもさらなる異論を展開する。

『質量が0なんだろ?だったらほんのわずかな力でも一瞬で光速に到達できるってことなんだよな、いやもしかしたら計算上で言えば加速度が無限大になるから光速を超えた速度で存在しているのかもしれない、、、。』といい終えようとした時に、大地は何かに気づいた様な表情となり話の展開を変えた。

『ちょっと待てよ、、、。重力や電気力、磁気力といった力を及ぼすその『気』の様なもの? なんて言ったらよく分からないけど、それ自体は速度を持っているのかな?』大地は自分が言おうとしていることがうまく言えずに右手で後頭部を掻き毟りながら続ける。『つまり、例えばある空間に突然、ある質量を持っている物体が、若しくは電気や磁気を持った物体がポンと発生した場合、その周りの重力や電気力や磁気力っていうのはどの様に伝わるんだろう?』

翔は大地が突然何を言い出すんだろうといったポカンとした表情のまま固まっている。

『そういえばこんなこと、高校の時に読んだブルーバックスの本に書いてあった様な気がするけど、、、。あの時はそこまで興味持っていなかったらよく覚えたいないなぁ。あの本って、なんだったかなぁ?相対性理論の本だった様な気がしいたけど、、、。』そんな終わりの見えない会話に翔が耐えられなくなったのか突然

『そういえば、今日夜ご飯って何食べる? 今日さぁ実は焼肉屋の割引券配ってたんだけど行かない?今日限定で2割引だって、、、。すごくない?行くっきゃないでしょ?』といつもの様にお茶らけた翔に戻ったのに合わせて大地も

『翔子ちゃんも行くんだったら俺も行くよ。』とちょっとニヤけた表情をして冗談ぽく言った。

『あれ? 大地って実は翔子のこと好きなんじゃないの?』といわれ、何も考えずに行ってしまった自分の発言を悔やんだのか、大地は目を伏し目がちにして言葉を濁して翔をやり過ごした。これをきっかけにして二人は図書館を後にした。

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