心霊現象は過去からのメッセージ?
流星観察に出かけた3人は果たして綺麗な流れ星を観測することができるのか?
今回でてくる心霊現象が3人とどんな関係を示して行くのか?
生川公園について3人は待ち合わせ場所となっている
希望の塔がる広場に向かった。
この希望の塔は地元の世界的に有名な芸術家の作品を彼の没後に、
記念碑として建てられた高さ5mとるほどの塔なのだが、
この塔のてっぺんまで螺旋階段で上がれる様になっていてちょっとした展望台になっていた。
この展望台には屋根が無いので星空観測にはうってつけの場所となっていた。
『今だったら星見えるんだけど、まだ流れ星には早いかなぁ?
あと1時間ぐらいこの天気がもってくれればいんだけど、、、。』
翔が流れ星観測の必需品であるキャンプの時によく使われるロールされたマットを抱えながら、
希望の塔へ向かう小道を星空を見上げながら言った。
雨上がりの濡れたコンクリートの上に周囲の土が少し流れ出してぬかるんだ道が
街灯に燈を反射してキラキラと光っていた。
翔子はあちこちに出来た水たまりを、跳ねる様に避けながら歩いていた。
『先輩たちもう来てるかなぁ?私たちが止めた駐車場には他には停まってなかったから私たちが最初かな?』
と相変わらず飛び跳ねながら言うと翔がつづける。
『駐車場はあそこ以外にも3カ所あるからどうかなぁ、あっ、塔のてっぺんで光が動いている。』
小道に大きかぶさる樹木の枝の隙間から見えた塔のてっぺんを指差しながら言うと、
『あっ本当だ。二人いるかな?多分今村さんと木田さんじゃないかなぁ?
あの二人出来てるんじゃないかってぐらいいつも一緒にいるからなぁ。』と大地が言うと
『ほんと、翔と大地くんみたいだよね?』と翔子がちょっといたずらっぽい笑顔で大地の顔を後ろから覗き込む様にしていった。
『えぇ?おれたちはあそこまでじゃないだろう?』と大地が否定しようとするが翔子はすかさず
『全然、変わらない。』とキッパリと言い切ると翔が
『翔子、俺たちにヤキモチ焼いてるんだろ?』と翔が翔子以上にいたずらっぽい笑顔で切り返す。
『何言ってるのよ、そんなこと無いってば。私は本当のことを言っただけじゃん。』と慌てて言い返した。
そんな話をしているうちに塔の入り口まで到着すると、塔の上の二人が上から下を覗き込んで叫ぶ。
『お〜、待ってたぞ。 早く上がってこいよ!』と今村先輩の声がした。
やはり、先に塔にきていたのは3人とは1年先輩で3年の今村と木田だった。
3人は螺旋階段を足早に登ると6畳ほどの展望台スペースに、既に2枚のマットが並べられていた。
『いらっしゃい!』とまるでお客を迎え入れる飲み屋の店主の様に木田が3人を迎え入れると続けて。
『10分ぐらい前に1回流れ星が流れた様に見えたんだけど、それ以来さっぱりなんだよなぁ。やっぱりあと1時間ぐらい待たないとダメかなぁ?』と言う。木田は敷かれたマットの上にあぐらをかきながらペットボトルのコーラをまるでビールでも飲んでいるかのように飲み干した。
『木田さん、なんかここ木田さん家のリビングみたいですねぇ。』大地は持ってきたマットを広げながら言うと翔が
『それより、雨雲情報ヤバイっすよ。このあと土砂降りが続きそうな雰囲気なんで、降り出してきたら退散した方が良さそうですよ。』と雨雲レーダーを写したスマホの画面をこっちに向けながら言った。そんなことを言っているそばからポツポツと降り出したかと思うと、途端に土砂降りにかわり5人は慌てて塔から降りて雨をしのげそうな木の下に逃げ込む。
『翔達は第3駐車場のほうだろ?ここからだったら第2駐車場の俺たちの車が近いからひとまずそっちに行こうぜ。』と今村が言うので、5人は雨脚が弱まる隙を狙って今雨宿りしている場所からおよそ200m先の駐車場へと走った。
5人とも少し濡れたものの、今村の軽自動車の中へ何とか逃げ込み。所狭しと雨宿りをしながら話し始めた。
『この様子じゃ、もう止みそうにないかなぁ。他のメンバーは雨を見込んでこっちには向かって無いみたいだぞ。』と今村が車のエンジンをかけ、エアコン調整をしながら言った。
『そしたらさぁ、この近くの湖にかかっている橋に行ってみないか?』と脈絡もなく木田が言い出した。
『それってもしかして、あれですか?』と大地がちょっと恐れを感じさせる表情で木田に言った。
『そう、それだよ。それ。俺一度行ってみたかったんだけど、ちょっと二人ぐらいだと怖くて言えなかったんだけど、、、。』と木田が話しているのを遮る様に翔子が
『ちょっと、それそれって、それだけじゃ分からないじゃないですがか? でも、それってもしかして心霊スポットか何かですか?』と相変わらず後部座席の真ん中に座りながら身を乗り出して言った。
『ピンポ〜ン。翔子ちゃん正解!』と得意気に木田が言いさらに続ける。
『そうそう、もう10数年前くらいだったのかなぁ。その橋の真ん中から湖に飛び込む自殺が続いたんだって。それが決まって20代前後の女の子で名前が同じだったっていう話なんだよね、あれ?名前なんだったけなぁ、し、、、しおこ?、、、しょ、、そうだ。』と木田が思い出そうとしたときに大地も木田の声に合わせて
『しょうこ!』と大きな声で叫んだ。
『やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!絶対に行かない!』と手足をバタつかせて翔子がダダをこねる子供の様に言った。
『そんなのただの偶然だろ?こんな科学の発達した現代に幽霊なんて絶対にありえない。』と翔が言った。
『そんなこと言ったって、未だに今の科学だけでは説明できない出来事だってあるでしょう?』と翔子が若干取り乱した感じで続けると。
『例えば?』と翔と少し冷静を通り越して冷たく感じる口調で言うと。
『例えばって、、、、。急に言われても具体例は言えないけど、、、。でもそういうことも絶対あるから。』と翔子はガンと自分の意思は曲げるつもりは毛頭無いというような口調で言った。車内はエンジンが暖まってきたのか、少し暑くなる。今村が運転席からエアコンの調整をしながら言う。
『でも、量子論の様に今の科学でもまだ確立しきれてない科学もあるじゃないか?それを考えたら、心霊現象もそんな確立しきれていないか科学が分かってくると説明できる現象なのかもしれないぞ。俺は完全に否定できない部分もあるとおもうなぁ。』
『今村先輩、そんな量子論と心霊現象を一緒にしないでくださいよ。』と翔がいうと今村も間髪入れずに応える。
『いや、それがちょっと意味合いが違うけど、量子論を専門で研究する技術者の中で人間の心や思想が実は量子論の世界と結びついているのではって言っている人もいるんだよ。』と少し得意気になって言う。
『それって本当ですか?そう言われるとなんかちょっと信憑性が出てきますよね。』と大地が言う。
『ちょっと、待って。量子論だか何だか知らないけど、私は絶対に行かないからね!』と翔子が脱線しかかった話題の方向修正をすると5人はひとまず帰る方向で意見がまとまり、今村は車を走らせ大地の車が停まっている第3駐車場へ走らせる。そんな車の中で先ほどの話の続きが蒸し返す。
『俺、実はテレパシーとかってちょっと信じてたんですよね。だって人間の体って結局は微弱な電気信号で支配されているんですよね?だったらその電気信号と何かしらの方法で同調できたら可能なんじゃないかって思っていたんだけど、それってもしかしたら量子論が関わってるのかなぁってさっきの話をしててちょっと思ったんですよね。』と3人座った後部座席の右側のドアに体を押しつ得る様に座っている翔が言った。車は街灯もない暗い山道の様な曲がりくねった道を走っていく。
『だとしたら、心霊現象って過去のその人間の思いや感情が、何かしらの形でその場所の空間に漂っているのかもしれないよね?もしかしたら、その量子論の現象の一種なのかもしれない?』と翔が真面目に話を進めていると翔子が
『あ〜もう。そんな話はやめてもっと楽しい話しをしてよ。何だか車にも酔いそう。』とすると助手席で息を潜めていた木田が。
『りょうしろん、りょうしろんて、なんで魚を取る技術と心霊現象が関係あるんだ?』と言うので大地は
『木田さん、それって漁師さんの話だと思ってました?』と冗談ぽく確認すると。
『え?、、、、、漁師論じゃ無いの?』
狭い車内の中、木田を除く4人は腹がよじれるぐらいに笑い転げたのは言うまでもない。
理系選考の翔と大地にとって心霊現象は科学現象の一種という考えなのだが、
思いもよらない先輩からの一言がその議論を深めていくことに。
一つのキーワードが量子論。決して漁師論ではありません。