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ネイビージャイアント  作者: 水里勝雪
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第六話 キドラ・愛する者へ

♪小さな生命いのちの声を聞く

 せまる不思議の黒い影

 涙の海が怒るとき

 枯れた大地が怒るとき

 終わる果てなき戦いに

 誰かの平和を守るため

 青い光を輝かせ 

 ネイビー、ネイビー、ネイビー

 戦えネイビージャイアント

「ここなんですね、芦名さんの大事な人が亡くなった場所って」


 五月は新緑の季節。見上げれば近くの山々は淡い緑と深い緑が交じり合い、春の日差しを浴びて美しいグラデーションを描いている。暖かい風が木々の葉を揺らし、そのグラデーションの濃淡が変わっていく様はまるで自然が織りなす絵画のようだ。ここは長野と山梨の県境。芦名と蒼真は峡谷の横に走る国道の脇に立っていた。眼下には十メートルはあろうかという深さの川が流れ、空の青とは異なる深い青をたたえている。雪解け水が川となりその水量を増しながらとうとうと流れていた。


「事故があったときは、水はあまり流れておらず、河原にまともに落ちたらしい。衝撃が大きく、助かった人はだれもいなかった」

 田舎の国道は車の往来がまばらだ。国道といっても車がやっとすれ違うほどの狭さで、たまに通る軽トラックには春に収穫された農産物が積まれている。二人はその場所だけ真新しいガードレールのそばから川を見下ろしていた。蒼真自身こんな長閑な場所であの悲惨な事故が起きたことをほとんど覚えていない。


「どうしてバスが落下したんですか?」

「バスの対向から無理な追い越しをした車があって、それを避けようとして川に転落したらしい」

「そうなんですね」

 蒼真はこれ以上事故のことを尋ねるのをためらった。芦名にとってここに来ること自体が辛かったのかもしれないと感じたからだ。


「もし、もしあのとき、自分より先のバスに乗って目的地に向かってくれ、と言わなければ、彼女は死なずにすんだのかもしれない」

「それは考え過ぎでは……」

 蒼真の言葉に答えず芦名は静かに川の流れを見つめていた。彼女を思い出しているのだろうか、それとも別の思いにふけっているのか。


 さっき見せてもらった亡くなった彼女の写真。芦名の隣に写る女性は驚くほど彩に似ていた。芦名が彩を見て幽霊かと思ったのも無理はない。生き写しとはこのことだろう。芦名の心が揺さぶられるのも当然だ。写真の中の彼女は柔らかな笑顔で芦名に寄り添っている。今の彩が芦名に向ける態度とは正反対だった。芦名からすれば死んだ彼女が彩として目の前に現れ、彼に恨みを伝えているように感じても不思議ではない。


「芦名さん、もしかしてこの前言っていたこと、人間は大切な人が亡くなったとき、その理由を求める。それが他人から見て理不尽なものであっても、自分を納得させる理由を探すって。だから芦名さんは恋人が死んだ理由を自分のせいだと思っているんじゃないですか」

 芦名は何も言わず背後の山に目を向けた。そして下から見上げるように空を仰ぐ。白い雲が一つだけ浮かんでいる。


「あの山、あの辺りで、大きな鳥を見た、と言う証言が多数出ている」

 蒼真も山に目を向けた。春の風が山々の木々を揺らし自然の息吹を感じさせる。

 そもそも、MECの二人がここにいるのは芦名の郷愁のためではない。巨大な鳥が目撃されたという地域の調査に向かうためだった。その途中、蒼真が芦名に頼んでこの場所に連れてきてもらったのだ。芦名のこだわりが知りたかった。なぜそこまで彩を避けるのか、その理由を。


「調査に行く前に嫌な思いをさせちゃいましたか?」

「いや、過去は過去だから」

 ここに来て蒼真は一つの真実に気づいた。芦名はまだ亡くなった恋人を愛している。そしてその恋人が死んだ理由を自分のせいだと納得させている。その思いが強ければ強いほど彼女への愛情は消えることがない。そのことが彩との関係を微妙にしているのだ。


「大きな鳥はこの辺りでは伝説として語り継がれているみたいですね」

 蒼真は自分が確認したかったことを確かめれた気がした。だからこそ彼はMECの仕事に戻ることにした。

「伝説?」

 芦名が首を傾げた。

「キドラって言う、神話に出て来る神の遣いらしいですよ」

「昔からいる怪獣ってわけか」

 芦名の目が鋭さを増していく。仕事モードに切り替わった、いや、切り替えたいと願っているのだろう。


 その瞬間、二人が見つめる山の陰から何か黒いものが飛び立った。

「あれは!」

 蒼真が指を差す。その先、青い空に黒い点が動いている。

「スカイタイガー、上空に未確認飛行物体を発見、追跡を願う」

 芦名がすかさずMECシーバーで連絡を取る。

「了解」

 田所の声がMECシーバーを通して聞こえた。

「あれが怪鳥?」

 蒼真が空の点を追う。その点はどんどん小さくなっていく。スカイタイガーが蒼真の視界に入ってきた。しかし黒い点は遠く飛び去り、その存在すら確認できなくなっていた。


 ×   ×   ×


「村の言い伝えでは、あの鳥は天神山の神様に仕えるキドラと言う名のみさきじゃて」

「みさき?」

 蒼真は手に持ったタブレットで調べ始めた。画面には「みさき、神に仕える鳥や獣のこと」と表示されている。


 田んぼには水がたっぷりと引かれ、水面は柔らかな春の日差しを受けてきらきらと輝いている。その中には短い緑の苗が整然と並び、暖かな風が苗を揺らし波紋がゆっくりと広がっていく。

 のどかな風景にそぐわないMECの隊員服を着た男たちが村人と話をしている。田んぼの畦道では腰の曲がった老女に蒼真と芦名が耳を傾けている。


「昔からその鳥はいたんですか?」

 芦名は少し中腰になり、老婆に聞こえるように大きな声で語りかけた。

「そう、昔からじゃ。百年に一度、私らの村に姿を現す」

「百年に一回?」

「なんでも私が生まれる前に現れたらしい」

 蒼真がタブレッドにメモする。

「百年前なら明治時代か」

 話を続けている三人に遠くから駆け寄る隊員がいた。田所である。その手には大きな何かを抱えている。


「おーい、こんなもの見つけたぞ」

 田所が蒼真たちに抱えていたものを差し出した。その瞬間、蒼真の背筋に冷たいものが走る。それは巨大な羽で一メートルはあろうかという大きさだ。蒼真はこんな羽を見た記憶がない。

「大きいなぁ」

 芦名はただただ驚愕し、その羽を見つめていた。

「山の麓付近に落ちてたんだ。これだけじゃなくって幾枚かが散乱していたよ。まぎれもなく怪鳥がいた印だな」


 田所が差し出した羽を蒼真が手に取る。それはその巨大さに反して驚くほど軽かった。飛翔に必要な条件を満たしているのだ。蒼真はその羽をじっくりと眺めながら、頭の中で計算を始めた。

「この大きさから考えると、鳥の大きさは推定約十メートル」

「十メートルか」

 芦名も羽を触ってみる。


「十メートルとすると、確かに鳥にしては大きいが、今までの怪獣から考えるとかなり小さめだな」

 芦名の言うことはもっともだった。蒼真もこの怪獣がこれまでの怪獣とは何か異なる感覚を抱いていた。そう思いながら大きな羽を田所に返す。そして腰にぶら下げたポーチからフレロビウム検知装置を取り出した。

「これで反応を確かめれば分かるはず」

 蒼真はそう言いながら検知器を羽にかざしてみた。しかし検知器の針は微動だにしなかった。

「反応がありません」

「うむ」

 芦名が腕を組む。


「とすると、これは今までの怪獣とは違い、伝説の怪鳥と言うことか」

「そうなります」

 蒼真は検知器をポーチに仕舞い、再びその羽に触れてみた。

「これは野生生物の羽です。なので、我々MECの対応する生物外では?」

 蒼真の問いに芦名も田所も答えを持ち合わせていなかった。そもそもMECが対応する生物の定義は明確にされていない。それが現実である。


「問題は人に危害を加える生物かどうかだ。危害を加えるなら、対象と考えていいと思う」

 答えに窮する田所とは対照的に芦名がこの場で定義を下した。芦名の言葉は確かに正しいと蒼真は思った。そして振り返るとそこには先ほどまで話を聞いていた老婆が立っていた。

「おばあちゃん、教えてください。キドラは人に危害を加えますか?」

「キドラは人を襲わん。ただし」

 老婆の目が厳しくなった。


「だだし、キドラを怒らせると、口から火を吐き、村を焼き払う」

「怒らせる……」

 蒼真は“怒り”という言葉が気になった。芦名は少し前かがみになり老婆に優しく話しかけた。

「おばあちゃん、キドラはなにをすれば怒るの?」

「それは……」

「それは?」

「愛する者を失ったときじゃ」

「愛する者?」

 芦名は沈黙した。彼もまた愛する者を失ったのだ。キドラが同じ悲しみを抱いたとき、怒りに駆られて村を焼き尽くしたのだ。 蒼真は心配そうに芦名の顔を覗き込んだが、芦名は微笑みながら老婆に話しかけた。


「おばあちゃん、ありがとう。また、なにかあったら話聞かせて」

 芦名は曲げていた足をゆっくりと伸ばし田所に向かって言った。

「とにかく、この羽を防衛隊に運んで解析してもらおう」

「了解しました」

 田所は羽を手に取りスカイタイガーの方へ歩き出した。

「蒼真君、すまないが、神山教授に連絡を取って、この状況を分析してもらえるようお願いしてくれ」

「分かりました」

 蒼真は神山研究室に連絡をとるためその場を離れた。振り返ると、そこに何も言わず立っている芦名がいる。蒼真は彼の心境を量りかねていた。芦名には愛する者を失った怒りがどこまであるのだろうか、それをどこまで押さえ切れているのだろうかと。


 ×   ×   ×


「先生、どうですか。鳥類でこんな大きなものが存在するって信じられますか」

 山と村の境目あたり、田んぼでも畑でもない場所に、MECが設置した大型テントが建っていた。白い大きな屋根の下、春の淡い光がテントの中を優しく照らしている。たくさんの機材やMECの隊員たちにまぎれて神山教授が立っていた。彼の前には大きな羽が鎮座している。


 神山教授の横にはこの殺伐とした現場に似つかわしくないピンクのシャツに白いパンツ姿の美波が立っていた。蒼真はそんな美波を無視し神山教授に羽に関しての助言を求めた。

「確かにダチョウで二メートル前後、そこから考えるとダチョウの約五倍。過去には翼竜が十メートルほどの体長だったことはあるが、彼らは爬虫類だ。羽は持たない。この羽から考えて鳥類だとするとこんな巨大な個体は聞いたことがない」

「まだ私たちの知らない生き物がいると言うことね」

 美波は嬉しそうな笑顔を浮かべながら羽を優しく撫でていた。そんな美波をよそに蒼真は腕を組み、静かに見守っていた。


「今まで知られていない生物だとすると、村の人たちが語り継いでいる話も、あながち間違っていないかもしれませんね」

「うむ、生物学的には非常に興味がある事例だな」

「人に危害を加えないのであれば、そっと刺激しないようにすれば観察できるかもしれませんね」

「そうだな。我々としては是非そうしたいところだが」

 神山教授は周囲を見渡した。吉野隊長をはじめ、田所、三上、そして芦名、MECの隊員たちが次々と装置の設置を進めている。その場の緊張感は生物学者の言葉に耳を傾ける余裕を与えなかった。


「刺激しないって、どう言う意味?」

 美波は自分を無視し続ける蒼真の顔を覗き込んだ。

「村人たちの話では、キドラは愛する者を失ったとき、村を焼き払うらしい」

「愛する者を失ったとき? なんかロマンチックな鳥ね」

「ロマンチックって」

  蒼真の眉間に皺が寄る。

「愛する者って、もしかして恋人?」

 美波が嬉しそうに笑みを浮かべる。

「とにかく刺激しないこと、これを心がければ……」


 蒼真は振り返り吉野隊長にむやみに攻撃しないようお願いするつもりだった。装置の設置は一通り終わったらしい。隊員たちが一か所に集まっている。その中心に吉野隊長がいる。蒼真が彼らに歩み寄ろうとしたとき芦名が振り返った。そして蒼真が吉野隊長に歩み寄るより早く神山教授のそばまでやってきた。


「神山教授、少し見ていただきたいものが」

「なんでしょう」

「あちらのモニタになります」

 神山教授は頷き芦名についていく。蒼真もその後を追った。蒼真の後から美波もついて来る。


 吉野隊長以下、隊員たちが集まる前に大きなモニタが設置されていた。神山教授、蒼真、美波が一斉にそのモニタを覗き込む。そこには茶色い山肌に少し平らに開けた場所が映し出されていた。その平らな場所には、小枝のように見える大木が集められている。

「キドラの巣です」

 芦名がモニタを指さす。その巣から白い鳥が顔を覗かせている。モニタ越しでは分からないが、周りの木々の大きさからしてその鳥はやはり十メートルを超える大きさだと蒼真は感じた。


「さきほど、村の猟師から連絡があって、防衛隊の隊員がカメラを設置しました」

「なるほど。これは観察するには良い環境ですな」

 神山教授がさらにモニタに近づく。

「カメラを設置した隊員からの報告で、巣には卵などはなさそうです」

「なるほど」

 神山教授の言葉には感情がこもっていなかったがそれは目の前の研究対象への深い思いの表れであった。蒼真もまた学者としてこの生物に強い興味を抱いていた。


「あっ」

 美波が声をあげた。巣の上からもう一羽、美しい緑の羽を持つひとまわり大きな鳥が降りてきたのだ。

「もう一羽いたのか」

 芦名の落胆した声が聞こえた。吉野隊長以下近くの隊員たちもざわめき始める。神山教授はさらにモニタに近づき画面を凝視した。

「どうも白いのがメスで、緑の美しい羽を持つ方がオスのようですな」

「なぜです?」

 吉野隊長が首を傾げた。

「オスの方が体格的に大きいことと、鳥はオスが美しい姿をしている方が多い。メスにアピールするためです」

「メスがオスを選ぶんですよね」

 美波がチラッと蒼真を見た。


「あれは、口になにか咥えているぞ」

 芦名の言葉に全員がモニタに注目する。

「鹿?」

 美波はハッと息を呑み顔を手で覆った。オスがくわえていたシカを二羽の鳥が嘴で引き裂いたのだ。そしてそれぞれ引き裂かれた肉をメスとオスがそのまま嘴に運んだ。

「こいつは肉食か」

 芦名の言葉に、

「この大きさだとすると、体を維持するためには植物では全然足りないから、必然的に肉食なんだと思います」

 蒼真は芦名に向かって珍しく学者らしい口調で語りかけた。


「とにかく、今は監視を続けることにしよう。田所は上空から偵察、芦名と三上は麓の村で待機。蒼真君はこのモニタで彼らの様子を監視してくれ」

 吉野隊長の言葉に全員が「了解」と答え持ち場に散っていった。

「神山先生は如何されますか」

 吉野隊長の言葉に神山教授が軽く首を振り、

「いや、興味深い生物なのですが、明日別の要件で東京に行かないといけないので、私はここまでとさせていただきます。この先は蒼真君、よろしく頼む」

「分かりました」

 蒼真が頷くと、隣にいた美波が、


「先生、私は蒼真君と共にここにいていいですか?」

 蒼真は驚きの表情を浮かべ美波の方へと向き直った。

「なんで、帰らないんだよ。美波は先生の秘書として……」

「分かった、美波君は蒼真君の補助として残りたまえ」

「先生……」

 蒼真の言葉を無視した美波が、

「ありがとうございます」

 と答えた。神山教授はにこやかに頷きその場を立ち去った。


「なんで美波が残るんだよ。ここは危険な場所なんだぞ」

「日本が誇るMECがいるのよ。全然怖くないわ」

 美波がモニタに目をやる。

「ったく……」

 蒼真は美波の隣でモニタを覗き込んだ。美波の肩が蒼真の肩にそっと触れる。二人は何も言わずじっとモニタを見つめていた。

「この二羽は恋人同士なのかしら」

 美波がぽつりとつぶやいた。


「ツガイじゃないの」

「ツガイって!」

 美波の口が尖る。

「なんか、冷たい言いかたね」

「しょうがないじゃん。生物学的にはツガイなんだから」

「それにしても……」

「はい、はい、仕事に集中」


 蒼真は隣にいる不機嫌そうな美波に目を向けることなくモニタから視線を外さなかった。モニタの中では二羽のキドラが仲睦まじく寄り添っている。オスがメスの首元に体を摺り寄せ甲高い声で鳴き始めた。

「求愛行動だ」

 蒼真は手元にあったノートにメモを取り始めた。

「ほら、やっぱり恋人同士じゃない」


 そのとき、二羽のキドラが空を見上げた。ジェット音が響き渡る。カメラが上方に向けられると、田所が乗ったスカイタイガーが上空を旋回しているのが見えた。 オスのキドラは空に向かって低い声で唸り始めた。

「威嚇している」

 キドラのメスはオスの羽の下にそっと潜り込んだ。オスは羽を広げ、体を大きく見せようとしている。オスの鳴き声は次第に大きくなっていった。

「田所隊員」

 蒼真はMECシーバーで田所を呼び出した。

「どうした、蒼真君」

「キドラを刺激しないでください。その場を離れてください。これ以上刺激すると彼らが攻撃してくる可能性があります。危険です」

「了解、いったん離れることにする」

 田所の声と共にジェット音が遠ざかっていく。オスのキドラはそれを見届けると、そっと羽の下にいるメスを見つめた。メスも安心したのか首を伸ばしてオスの嘴と自分の嘴を優しく打ち合わせた。


「まるでキスしているみたいね」

 美波の話を半ば聞き流しながら蒼真は村人たちの言葉を思い出していた。

『キドラが怒るときは愛する者を失った時』

 オスはメスを守っている。もしやメスへの攻撃でオスは怒り出すのではないか。それが正しければ攻撃すれば甚大な被害が出る可能性がある。やはり刺激せずこのまま静かに見守る方が良いだろう。

 蒼真の想いをよそに、モニタの中の二羽は静かになった巣の中で寄り添い合っていた。そして再びオスが甲高い声で鳴いた。その鳴き声は、離れた蒼真たちのテントにも聞こえるほどだった。


 ×   ×   ×


「隊長、早々に攻撃しましょう」

「いや、村人の言う通り刺激しない方が良い、隊長、攻撃はやめましょう」

 翌朝は昨日以上に晴れ渡った空が広がっていた。青い空が平和な村を包み込み、MECが設営したテントの上にも美しい青が広がっている。そのテントの下、影になった場所で三上と芦名が向かい合っていた。


「肉食怪獣を放置するのか?」

 三上が芦名に噛みつくように言葉を投げかけた。田所は三上の背後に立ち明らかに彼の意見に賛同していることを示している。それを見た蒼真が芦名の後ろに立ち攻撃派と見守り派の対立が鮮明になった。二人の言葉は次第に熱を帯びていった。

「人を襲うと言う証拠もないでしょう」

「襲われてからじゃ遅い!」

 三上は言葉を荒げた。


「村人の話では、刺激さえしなければ大丈夫だと」

「そんな伝説、信じていいのか」

「あの怪獣は村人にとっては大事な鳥なんだ。それを攻撃することは許されない」

「我々は未然に被害を防がないといけない。MECは怪獣退治が任務だ!」

「怪獣を退治するだけが任務ではないと思います」

「お前、自分の役割を考えろ!」

「だからこそ、退治することだけではないはず!」


「もういい!」

 吉野隊長が一括する。

「落ち着け」

 吉野隊長の一言でその場の熱気が徐々に冷めていった。二人は反目したまま黙り込んだ。しばらくの沈黙の後、蒼真が恐る恐る口を開いた。

「隊長、あの怪鳥について調べたことがあるんですが」

「蒼真君、説明を頼む」

「はい」

 蒼真が手元のタブレットに目を落とす。


「村人の話だと、あの怪鳥は百年に一度現れるそうです。恐らく卵で冬眠のような休眠状態で生き続けるのではないかと考えられます。鳥類では稀ですが、魚類や両生類、一部の爬虫類ではある話です」

 吉野隊長が頷く、三上は遠くの山を眺め蒼真には目もくれなかった。そんな三上をよそに蒼真はタブレットを指で操作し次の画面に切り替えた。


「明治後期、およそ百年前にキドラが現れたと古い村人たちが言っています。いろいろ文献を調べてみると、それらしい新聞記事がありました。明治○○年、この付近の村が火災で全滅しています」

「全滅?」

 三上が山から蒼真へ目を移した。

「記録では山火事が発生し、逃げ遅れた村人七十名が死亡したと書かれています」

「それはキドラの起こした火災か?」

 吉野隊長が前のめりになる。

「記事には詳しくは書かれていません」

「もしそれがキドラのせいだとすると……」

 吉野隊長が腕を組む。

「ほれ見ろ、やっぱり退治すべきなんだよ」

 三上がぼやく。

 蒼真がさらにタブレットのページを送る。


「正式な記録にはなっていませんが、興味深い意見が村人から聞けました」

「なんだ、その興味深い話って?」

 いぶかしげに三上が問う。

「村人の中に、当時のことを語り聞いたと言う老人がいました。彼は彼の父親から話を聞いたそうです」

 蒼真はタブレットを操作し、次のページへと画面を切り替えた。

「老人の話では、当時、ある男が一攫千金を狙ってキドラを捕獲しようと企てたようです。当然生きたままでは手に負えないので殺してはく製にして、金持ちに売り払う計画だったようです。その男が山でキドラを見つけ猟銃を発砲、キドラには命中したものの死ぬことはなく、怒ったキドラによって焼き殺されたようです」

 蒼真が資料のページをさらに切り替える。

「男を焼き殺した後、キドラが山の木々を焼き払った、キドラはそれだけでは飽き足らず村までやってきて家々を焼き尽くしたようです。多くの村人が焼け死んだ、彼の父親はたまたま隣村に用事で出向いていたために助かったそうです」

 芦名が頷く。


「つまり、キドラを刺激さえしなければ、火を噴くことはない。村に危害が及ぶことはない」

「僕はそう考えてます」

「そんな信憑性のない話を信じるのか?」

 三上が毒づく。

「確かに事例としては一つしかないので確実とは言えませんが……」

 蒼真は学者らしく慎重な言葉を選びながらもその言葉には力強さが感じられた。

「この辺りの神社に保管されている縁起や古文書を見ると、キドラの存在は書かれていますが、人に危害を加えたと言うことは書かれていませんでした。神聖な鳥なので近づくなと書かれています。明治以前はこの言いつけを守って刺激しなかったのではと考えられます」


「今度は言い伝えか。科学的じゃないな」

 三上の言葉に蒼真がムッとする。

「過去を含めた情報を分析し、そこから答えを出すことはもっとも科学的で大事なことです」

「しかし、あの鳥は明らかに肉食だ。腹が減れば人を襲うことは科学でなくても分かる話だ」

「うむ」

 吉野隊長が腕を組む。


「今ここでは判断はつかない。本部に連絡して参謀会議で結論を出してもらおう。蒼真君、今までの調査結果を防衛隊資料課に送ってくれたまえ」

「了解しました」

 蒼真がその場を去る。

「怪獣なんか早く退治すれば良いのに」

 三上はぼやきながらその場を後にした。


 ×   ×   ×


「どうしてですか、なぜ攻撃なんです!」

 芦名が吉野隊長に食らいつく。

「本部の命令だ。やはり人を襲う可能性は否定できない、それが上の判断だ」

 設営されたテントの下で三上と田所が大型火器の準備を進めていた。蒼真は少し離れた場所から二人の様子を見守っていた。火器は陽の光を受けてきらきらと輝き、それはまるでこれからの戦いに向かうことが光栄であるかのように見えた。


「芦名の意見は分かっている、しかし命令は絶対だ。分かってくれ」

 吉野隊長の言葉に芦名は肩を落とし、静かに項垂れた。

「分かりました」

 蒼真はゆっくりと歩み寄り芦名のそばまで近づいた。


「芦名さん、僕は芦名さんの意見の方が正しいと思ってます」

「ありがとう、あの鳥たちには静かに、幸せに暮らして欲しかった」

 芦名は深いため息を吐いた。恋人と静かに暮らしたかった、それが芦名の本当の願いではないのかと、蒼真はここに来る前の事故現場で見た芦名の姿を思い返していた。芦名は自らの火器を手に取り隊長の前に他の隊員たちと同様に並んだ。


「これから怪鳥キドラ掃討作戦を開始する。三上は上空からスカイタイガーでオスを誘い出す。その間に田所と芦名は地上からメスを攻撃する。今回は山崩れを避けるため、ミサイルは使わずレーザー砲のみで攻撃する」

 吉野隊長の強い口調に、

「了解」

 と答える隊員たち。

「お先」

 三上は芦名の肩に手を掛けニヤッと笑った。芦名は何も言わず三上が出ていくのを見送っていた。

「さぁ、我々も行こう」

 芦名が蒼真に声を掛けた。その声に彼の心がないことは蒼真でも理解できた。彼はキドラを攻撃したくないのだと。 テントを出発し、蒼真たちが目的地である巣の近くまでたどり着いたとき、二羽のキドラは仲睦まじく肩を寄せ合っていた。二羽を目にし、芦名が目を閉じた。田所がMECシーバーに呼びかける。


「三上、作戦開始だ」

「了解!」

 その声と同時に上空から金色の光が降り注ぎスカイタイガーが急降下してきた。昨日と同様にオスはメスを羽の下に隠し低い威嚇の声が山々に響き渡る。スカイタイガーはオスを怒らせるために巣の上空を旋回し続ける。オスはさらに大きな威嚇の鳴き声をあげた。それでもスカイタイガーは上空をうるさく旋回し続ける。

 キドラのオスが飛び立ちスカイタイガーを追い払おうとする。三上はオスを巣から遠ざけるために高度を上げていき、キドラのオスはどんどん小さくなっていった。最後にはスカイタイガーと共に肉眼では捕えきれなくなっていた。


「今だ!」

 田所が脇に抱えた大型レーザー銃でキドラのメスを砲撃、レーザーはメスに命中。羽根がみるみる赤くなりやがてそれは炎に変わる。メスはのた打ち回り、やがて甲高い声で鳴いた。それはまるでオスに助けを求めているかのようだった。

 芦名は何も言わずその光景を静かに見つめていた。火炎に包まれたメスはやがて動きをとめ、静かに横たわった。炎も次第に収まっていった。


「わー」

 無線から悲鳴が聞こえた。

「どうした三上!」

 田所がMECシーバーで問いかける。

「キドラからの火炎で、尾翼が大破。不時着する」

 その声が終わるやいなやキドラのオスが急降下してきた。そしてゆっくりと巣に降り立つ、そこには黒焦げになったメスの姿があった。オスはその嘴でメスを突く、がメスは動かない。オスは甲高い鳴き声を空に向かって放った。


「あいつも守れなかったんだ。愛する者を」

 芦名のつぶやきが蒼真の耳に届いた。

「よし、次はオスだ」

 田所がレーザー銃を構えた。

「待て」

 芦名が彼を制した。

「オスは悲しんでいる」

 蒼真が巣に目をやるとそこには変わり果てたメスを嘴で突いて何とか生き返らせようとしているオスがいた。オスの鳴き声は力弱く、まるで泣いているかのようだった。

「怪獣に情けは無用だ」

 田所が再び銃を向けた。そのとき上空から金属の巨大な物体が現れた。


「あれはなんだ」

「宇宙船?」

 蒼真たちが見上げている間に金属の物体がキドラの直上で静止する。そして霧のようなものが宇宙船から降り注ぎ、キドラのオスを静かに包み込んでいく。 蒼真はリュックから放射線検知器を取り出す。距離があるため微少ではあるが明らかに反応がある。

「あれはフレロビウム」

「え、」

 芦名が叫び声をあげた。やがて白い霧が大きな塊となりその霧が消えたとき、その場所には体長四十メートルを超えるキドラの姿が現れた。田所が指をさし、そして叫ぶ。


「巨大化したぞ!」

 巨大なキドラが火炎を吐き、周りの木々が燃え上がった。燃える火を見た芦名がつぶやく。

「百年前と同じだ。愛する者を失った怒りが人々に災いをもたらす」

 蒼真が周りを見回す、熱風が彼らに吹き付け、火は彼らのそばまで迫っていた。田所がレーザーを構えるのをやめる

「ここにいては全員焼け死ぬ。退却しよう」

 芦名はその言葉にしばらく反応しなかったが、蒼真が芦名の腕を取った。

「行きましょう、ここにいては死んでしまいます」

  芦名が頷き、怒りに狂うオスのキドラを背にその場を離れていった。


 ×   ×   ×


「逃げろ!」

「助けて!」

 村人たちは命からがら逃げていった。着の身、着のままの、カバンを抱えて逃げる老婆、子供を抱きかかえて逃げる母親、鍬を持ったまま逃げる男。皆、田んぼの畦道を必死に駆け抜けていった。

「早く、早く逃げてください。急いで!」

 吉野隊長と三上は村人たちを誘導していた。三上は先ほどの不時着で体を痛めたらしく足を引きずりながら歩いている。そんな彼らの上空をキドラが飛び、嘴から火炎を放った。その火が村の家々を襲い、あっという間に村全体が火に包まれていく。


「隊長!」

 村はずれの畦道から、田所、芦名、そして蒼真が駆け寄ってきた。

「おう、三人とも無事だったか」

 近寄った芦名の肩を吉野隊長ががっしりとつかみ笑顔を見せた。芦名の後ろからやっと追いついた蒼真が、肩で息をしながら吉野隊長に向かって進言する。


「隊長、キドラは昨日までのキドラではありません」

「なに! どういうことだ」

「怪獣はフレロビウムと同化しました。通常の火器ではかないません」

 蒼真の言葉に吉野隊長の笑顔が消える。

「よし、待機していたもう一機のスカイタイガーで攻撃だ。田所、負傷した三上に変わって操縦するんだ」

「了解」

 田所がテント付近に着陸させているスカイタイガーに向かう。


「私と芦名はキドラをスカイタイガーから離れさせるために山に向かって誘い出す。蒼真君は安全なところへ避難してくれたまえ」

 吉野隊長と芦名はMECガンを構えキドラを狙った。そしてスカイタイガーが着陸した場所とは反対方向へと走り出した。

 二人を見送る蒼真の左腕が青く光る。腕時計を見るとその光がまばゆく彼をいざなう。蒼真はゆっくりと左手を挙げた。


 燃え盛る村の中央に青い光の柱が立ちその光が消えたとき、そこには青い巨人が立っていた。上空でネイビーに気づいたキドラが急降下し、彼が構える間もなく頭上から覆いかぶさってきた。

 ネイビーは両手でキドラの爪を避けようとしたが、空中にいるキドラの方が圧倒的に有利だった。とうとう避けきれず、鋭い爪が背中を突き刺した。


 もんどりうつネイビーは片膝をつき、さらにキドラが彼の両肩をつかんで上空に持ち上げた。ネイビーは足をばたつかせたが、そのまま空へと運ばれていった。 かなり高い位置まで持ち上げられた末、キドラはネイビーを放し、彼は自由落下して地面に叩きつけられる。土煙が上がり、辺りが一瞬見えなくなった。


 土煙が消えた後、ネイビーは地面にうつ伏せで倒れていた。上空を旋回していたキドラが急降下し、ネイビーの背中に嘴を突き刺す。

「ぐわぁぁ」

 ネイビーの悲鳴とも叫び声とも言えない音が響き、片手を天に突き上げた状態で体が硬直した。キドラが嘴をネイビーの背中から抜くと空に挙げた手が力なく地面に落ち、そのままネイビーは動かなくなった。 キドラは雄叫びのような甲高い鳴き声を辺りに響かせ、ゆっくりと羽ばたきながら空へ戻っていった。


 ×   ×   ×


「ネイビーが負けた?」

 芦名は山裾の崖から両者の戦いを見守っていた。ネイビーが敗北したその瞬間、芦名は呆然と立ち尽くすしかなかった。

「あのネイビージャイアントを倒すほど、お前の怒りは大きいのか」

 上空を旋回するキドラを見て芦名がつぶやく。

「愛する者を守れなかった。お前の怒りは俺には痛いほど分かる。しかし罪もない人を苦しめることは許されない」

 村の家々は炎に包まれ、山々の木々も燃え上がっていた。小さな動物たちは恐怖に駆られ逃げ惑っている。キドラの怒りは村を、山を、そしてこの地上を地獄へと変えていた。


「やめろ! お前の怒りは俺がとめる」

 その言葉を発した後、芦名の体はみるみる赤い光に包まれていった。そしてその光が宙を飛びネイビーのもとへと向かう。ネイビーの体が赤く光りその光が消えたとき、紫紺に変わったネイビージャイアントが立ち上がっていた。ネイビーは飛び上がり、空中でキドラと交差する。キドラは再び現れた敵に対し、甲高い鳴き声で威嚇し、火炎を放つ。火炎がネイビーに命中するが、怯むことなく飛び続けるネイビー。今度は腕を十字に組み、赤い光線をキドラに発射する。


 光線を受けたキドラの羽の一部が焼け、体勢を崩して落下していく。紫紺のネイビーがそれを追尾、キドラは地面に叩きつけられる。土煙が上がる。その様子を空中から見つめるネイビー。土煙は一向に収まらない。キドラが翼を羽ばたかせているのだ。ネイビーは空中から再び赤い光線を土煙の中に撃ち込む。キドラの甲高い鳴き声が茶色い煙の中から聞こえその中からいきなり現れたキドラがネイビーに体当たりする。不意を突かれたネイビーはとっさに翼を抱きかかた。両者はともに地面に落下する。


 戦いの場は空中から地面へと移る。キドラの羽ばたきがネイビーの目に土埃を浴びせる。怯むネイビーにキドラの嘴が襲いかかる。何とか避けたネイビーはいったんキドラから距離を置く。キドラは怒り立ち、再び甲高い鳴き声をあげる。そのとき嘴の奥に赤い光が見えた。それを確認したネイビーは再び腕を十字に組み、赤い光線をキドラの羽に命中させた。怒るキドラは再び甲高い声をあげるため口を開く。その瞬間をネイビーは見逃さなかった。


 突き出した左手から青い光線が放たれ、それはキドラの赤い光を捉える。キドラが後方に倒れた。ネイビーが見守る中、それでも立ち上がりキドラはその場を飛び去る。彼の向かう先は山頂付近、彼らの巣があったところだ。キドラのオスは静かに巣に降り立ち、メスの遺体の上に覆いかぶさる。まるでこの期に及んでもメスを守ろうとするかのように。彼はメスの嘴を二、三度突き、そして嘴をメスの嘴に添わせる。やがてゆっくりと目を閉じた。その後、キドラのオスが再び目を開くことはなかった。


 ×   ×   ×


 車通りの少ない国道から芦名は眼下の谷に流れる川を見つめていた。川は雪解け水を含み、変わらずとうとうと流れている。

「やっぱりここだったんですね」

 芦名の後ろから声を掛けたのは蒼真であった。


「みんな先に帰っちゃいましたよ」

 蒼真も芦名と並んで谷の底を見下ろした。川は何事もなかったかのように静かに流れ続けている。まるで芦名の恋人の死やキドラに起きた悲劇が存在しなかったかのように。

「よくここが分かったな」

「なんとなく、ここに来ているような気がして」

 蒼真は思った。きっと芦名はキドラのオスに自分を重ねているのだろう。愛する者を守れなかったという、両者に共通する悲劇が彼らを結びつけているのだ。


「あの鳥は、きっと天国で、だれにも邪魔されず仲睦まじく暮らしていますよ」

 蒼真のその言葉に芦名が少し笑った。

「いつもの蒼真君らしくない、非科学的な意見だな」

「そうですね、確かに」

 蒼真が右手で頭を掻いた。

「でも、そう思わないと、やり切れないじゃないですか」


 芦名は答えずただ川を見つめ続けていた。蒼真は感じた。科学だけでは人の心を救うことはできない。どれだけ理路整然と事実に基づいた論理を展開しても、自分の身に起こった不幸な出来事に対応することはできない。しかし人はその理由を求め、自分の知る限りの情報から論理を作り上げようとする。その結果、他人から見れば理不尽と感じるロジックであっても、本人にはそれが正しいと思えてしまう。いや、たとえその人がそのロジックが間違っていると分かっていても、それを突き通してしまうのだ。芦名は今回の出来事も、自らが止めることができなかった不幸な出来事と捉えているように思えた。


「僕が言うことじゃないかもしれませんけど、今回の事件は終わったこととして、次に向かいませんか?」

「そうだな、いつまでも過去を引きずっていてもやり切れないだけかもしれないからな」

 芦名が空を見上げる。蒼真もそれに倣い視線をあげた。青い空には白い鳥が二羽並んで飛んでいる。二羽は寄り添いながら静かに山を越えていく。蒼真と芦名はそれ以上何も語らず、その風景をただ見つめていた。


《予告》

彩を見つめる一人の男、片岡孝之。彼の秘めた思いは芦名の登場で暴走を始める。そうとは知らない彩は芦名の訪問に戸惑いを感じる。そんな彼女に間の手が。次回ネイビージャイアント「執着の末」お楽しみに

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