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ネイビージャイアント  作者: 水里勝雪
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48-1 柏崎博士

 蒼真は、遠山教授が差し出した写真を見て呆然とする。

「この顔は・・・・・・ 博士、この人が・・・・・・」


「この男が柏崎博士だよ」

 蒼真は、自分の目を疑った。そこに写っていたのは紛れもなく彼の叔父、その人だった。


「そんな・・・・・・」

 力が抜けていく感覚が、体を支配する。自分を幼い頃から男手ひとつで育ててくれた叔父、それが生命を生み出す研究をしていた柏崎博士。


 もしかすると自分の父かもしれないと思っていた男が実は叔父なのか? 蒼真は胸ポケットから防衛隊の隊員証が入ったケースを取り出し、その中の写真を一枚抜き取る。そこに写っているのは子供の頃の蒼真と叔父、つまり柏崎博士だった。


「これを見てください」

「おお、これは・・・・・・」

 遠山教授が目を見開く。


「ここに写っているのは、僕の叔父です」

「君は柏崎の親戚なのか?」


「いえ、育ての親です」

「なに、彼は生きていたのか」

 遠山教授の表情も困惑に染まる。


 そのとき。レシーバーがけたたましい音を発して蒼真を呼び出した。


「はい、蒼真です」

『蒼真君? 今どこにいるの?』

 その声はアキだった。


「今、遠山教授の別荘にいます」

『千葉沖に怪獣が出現したの。蒼真君の実家のすぐそば。至急現場に向かって』

「了解です」

 蒼真はレシーバーをポケットにしまい込み、遠山教授へと向き直る。


「先生、また詳しいことを聞かせてください」

 遠山教授が静かに頷く。それを確認し、蒼真は研究所を飛び出した。


 遠く海上に、怪獣の姿が見える。ゆっくりと陸へ向かって進んでいた。その後方ではスカイタイガーが怪獣に近づく。ミサイルが発射され、命中する。しかし怪獣は動じることなく、そのまま進み続ける。


 蒼真は駆け出し海岸線へ。切り立った岩場に到着する。目の前の怪獣、今までの怪獣とは皮膚の色が違う。それは暗闇を思わせる漆黒の肌。


「鈴鹿さん、あの怪獣の皮膚を分析してください」

『了解』

 そのとき、蒼真の視界の端に何かが映った。切り立った岩場の影、そこに見覚えのある人影が。


「叔父さん!」

 蒼真はその影へと駆け寄ろうとする。しかしレシーバーが鳴る。


『怪獣の皮膚の分析終了。未知の物質で構成されているわ。密度は、えっ、ネイビエクスニュームの数十倍?』

「数十倍?」


 蒼真は息を呑む。ありえない。そんな比重の重いものなら、とっくに自重で潰れているはず。考えられない。蒼真の頭が混乱する。ハッとして、岩場へ目を向ける。だがそこにいたはずの男の姿は消えていた。


「しまった!」

 蒼真は男がいた辺りへと走る。しかし男の痕跡はどこにもなかった。


『キャッ!!』

 無線から悲鳴が響いた。蒼真が海へと目をやる。そこには炎に包まれ、海へ向かって落下していく鈴鹿機の姿。蒼真の左手が天へと向かう。青い光が走る。海上を駆け抜け落下するスカイタイガーを包み込む。


 怪獣が青い光に怒りを燃やす。青い光はそのまま陸へ向かい、ゆっくりとスカイタイガーを地面へと降ろした。ネイビーが海上の怪獣、プラドダスへと向かう。


 そして海上で、二者は激しく組み合った。プラドダスの太い腕がネイビーの体を何度も叩きつける。ネイビーの肩を掴みその怪力で遠くへと投げ飛ばす。海上に投げ出されるネイビー。ネイビーは頭を振り立ち上がり、空中へ跳ぶ。そしてそのまま蹴りをプラドダスの顔面へ叩き込んだ。


 怪獣は海中へと沈み込む。しかしプラドダスを見失ったネイビーの背後。いきなり、海水が盛り上がる。現れる怪獣、振り返る間もなく怪光線が放たれ直撃する。ネイビーは再び海上に叩きつけられ、海中へ沈む。


「だめだ…… このままだとやられる」

 ネイビーは渾身の力を込める。彼の体が赤く光る。やがて炎に包まれたネイビーが怪獣へと突進。プラドダスは体を半身にし、回避を試みる。それが幸いし、ネイビーの攻撃を直撃することは避けられたが背中の鰭が焼けただれる。


「ギャオーッ!!」

 プラドダスはそのまま海底へ沈んでいく。ネイビーは、薄れゆく意識の中で沈んでいく怪獣を見つめていた。そして彼もまた、深い海の底へと落ちていった。


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