表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネイビージャイアント  作者: 水里勝雪
49/71

45-2 怒りを呼ぶ男

 その夜のことだった。ひとり科学班に残った日野は、赤いガラス玉の資料をじっと眺めていた。

「阿久津蒼真が言っていた“気になること”ってなんだ」

 彼がざっくり分析した結果を蒼真に持っていったとき、確かに何かに目を止めていた様子だった。


「何がデータ整理だ。適当な雑用に使いやがって」

 日野は資料を読み進めながら怒りを滲ませる。


「俺はもっと優秀なんだ。それがなんで、あんな東野みたいな奴に怒られなきゃいけないんだ」

 震える手を見つめながら呟く。


「阿久津リーダーもリーダーだ。俺を軽く見やがって」

 日野はパソコン画面を食い入るように見つめ続ける。


「何か怪獣につながるものさえ見つければ、俺は阿久津蒼真を超えられる」

 そう思いながらほくそ笑む。そのとき、目の前の赤い球が色濃く変化し始めた。


「?」

 石の変化に気づきながらも、日野は強く首を振る。


「気のせいだ、気のせい」

 再び資料へと視線を戻した。グラフを確認すると、ケイ素の値がひときわ高い棒で示されている。隣には気づくかどうか程度の小さな棒もあった。


「これは?」

 別のツールを使い、その棒の正体を調べる。画面には「FL」と表示されていた。


「FL、フレロビウム。これか、阿久津蒼真が気にしていたものは」

 日野は急いでノートにメモを取り始める。その間にも赤い球は光を強めていく。


「フレロビウム、怪獣と関係がある物質。でも、これがどうしたっていうんだ?」

 日野は首を傾げる。蒼真からフレロビウムのことを教えられていないからだ。


「クソッ、よくわからない」

 その苛立ちと共鳴するかのように、球が赤い光を脈動させる。明らかに異常な現象を目の当たりにし、日野も気のせいとは思えなくなった。


「これは、そうか。この状況を阿久津蒼真に伝えれば、東野を出し抜けるかもしれない」

 立ち上がり扉へ向かう日野。しかしその前に黒い影が立ちはだかった。


「何だ!」

 たじろぐ日野の前に現れたのは、黒衣に身を包んだ中年の男だった。


「何なんだよ、おっさん。どうやってここに入ってきた?」

「まあ、私のことなど気にしなくていい」


「気にするに決まってるだろ!」

 日野は男を避けて外へ出ようとするが、男はそれを阻むように立ちふさがった。


「邪魔するな、どけよ!」

「行かせるわけにはいきません。阿久津蒼真のところへは」


「なんでだよ」

 日野は男を押しのけようとするが、黒衣の男は揺らぐことなく言葉を続ける。


「あなたは、見返したくはないのですか?」

「?」


「阿久津蒼真は、今日も鈴鹿隊員とあなたの無能ぶりを語っていましたよ。いずれチームから外したいとも」

「なに!」

 日野の握る拳に力が入る。


「この件も、あなたの手柄ではなく、阿久津蒼真の功績として扱われるでしょう」

「そんな・・・・・・」


「だから、この件は内密にして、あなた自身が真相を突き止め、防衛隊長官に進言するのです。そうすれば、阿久津蒼真などあなたの足元にも及びません」


 日野は立ち止まり、考え込んだ。そして、再びパソコンの前に戻り、防衛隊の機密文書を検索し始めた。その顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ