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ネイビージャイアント  作者: 水里勝雪
37/71

第三十七話 失うものなき強さ

♪淡い光が照らす木々

 襲う奇怪な白い霧

 悲嘆の河が怒るとき

 敗れた夢が怒るとき

 自由を求める戦いに

 愛する誰かを守るため

 青い光を輝かせ

 ネイビー、ネイビー、ネイビー

 戦えネイビージャイアント

「この赤い巨人が……立花健太だというのか?」

 作戦室に吉野隊長の驚きの声が響いた。


 どこか湿度を含んだ重い空気が、部屋の隅々に漂っていた。壁一面のモニターには、昨日の戦闘映像が再生されている。炎の中に現れた赤い巨人、その全身から発される異様な圧力が映像越しでも息苦しさを伴う。

 隊長の前にはいつもの面々がそろっていた。鈴鹿アキ、田所、三浦、そして蒼真。モニターの青白い光が彼らの表情に陰影を与える。三上だけはR計画関連任務のため不在だった。

 田所が腕を組みながら、モニターに映る巨人を凝視する。


「まるでネイビーの赤いバージョンだな」

 映像に流れる赤い巨人のシルエットは、ネイビーと見紛うほど酷似している。だが、その目の奥には明らかな“怒り”が宿っていた。

「実は、さっき正式に決まったんですが、コードネームはカーミンジャイアント」

 蒼真の声は冷静だったが、どこか不穏な響きを含んでいた。

 三浦が首をかしげる。


「カーミンってなんのことだ?」

 蒼真が少し照れたように答える。

「カイガラムシのことです。英語ではカーマイン、ドイツ語ではカーミン。色の名前でもあって、えんじ色に近いですね」

「カーミンレッド、化粧品なんかで聞いたことあるわ」

 鈴鹿アキが頷きながらつぶやく。

「そうです。昔、カイガラムシから赤い染料を取っていたんですよ。虫の名前がそのまま色になったんです。熱帯や亜熱帯が主な分布地域ですが、今では世界中に広がっていて、種類はおよそ七千種も……」

 蒼真の口調がいつも以上に滑らかになり、自然と講義じみてきたところで、田所が咳払いで遮る。


「ゴホっ、ううん、先生の講義はいいから、本題に戻ろう」

 一瞬場の空気が緩んだが、すぐに緊張が戻る。

「失礼しました」

 蒼真が頭を軽くかく。

「話を戻して巨人についてですが、ネイビーとほぼ同じ身長・体格です。右手から赤い光線を放ちます。その威力は、ネイビーが腕をクロスして撃つ赤い光線技とほぼ同等の破壊力です」

「それって、ネイビーの主力技のひとつよね?」

 アキが眉を寄せ、画面の中の光線の軌道を注視する。

 三浦が息を飲むように言った。


「赤い光線はネイビーの光線技の中でも特別に威力が高いはず。それと同じ力を持ってるってことか」

「はい。かなりの威力だと思われます」

 蒼真の言葉に室内の空気がさらに張りつめる。

「となると、ネイビーでも、苦戦するかもしれないわね」

 アキが腕を組み直しながらそうつぶやき、沈黙が落ちる。

 田所がふと首をかしげた。

「でもさ、相手が立花健太だって分かってるなら、カーミンになる前に見つけて倒せばいいんじゃないか?」

「それ、いい考えね」

 アキも同調し、椅子から立ち上がるような気配を見せる。

 そのタイミングで、吉野隊長が即座に指示を飛ばした。


「立花健太の捜索を急ごう。三浦は警察庁に連絡を取り、協力を要請してくれ。鈴鹿、田所はカーミンが消えた現場に向かって、足取りを調べろ」

「了解!」

 三人の返答が同時に響く。戦場に出る直前の緊張が作戦室全体を引き締めていた。

 そのとき、蒼真が一歩前へ進む。

「隊長、ひとつご提案があります」

「なんだね?」

 吉野が即座に返す。


「立花健太が現れる可能性のある場所に心当たりがあります。鈴鹿隊員とともに僕が張り込むことはできないでしょうか?」

 部屋の空気が一瞬沈黙で満たされる。

「どこなの、立花健太が現れる場所って?」

 アキが問いかける。蒼真は答えるまでに一拍置いた。

 視線がモニターの中の赤い巨人に重なる。そして言葉が静かに落ちる。

「実は明日なんですけど……」


 ×   ×   × 


 冬晴れの空はあまりに青く澄んでいた。空の静けさが、地上の沈黙をより際立たせる。火葬場近くの寺の境内には読経の声がゆるやかに響いていた。だれの声とも知れぬその音は、空気の粒を振るわせるように耳に届く。

 黒い喪服を纏った蒼真、美波、鈴鹿アキ、その三人が静かに立ち尽くしている。周囲の木々は冬の寒さにすっかり葉を落とし、陽光に照らされた幹だけが規則的に立ち並んでいる。


 行き場のなかった留美の遺体を蒼真たちは自ら引き取った。そして今日が彼女の葬儀の日。棺の中に横たわる留美の顔は、戦いの記憶が嘘のように穏やかだった。まるでこの世を許すかのような表情だった。

 研究室の仲間も数人、深々と頭を下げ、白い花を手向けて黙祷を捧げている。空気は冷たいが、光だけは穏やかに降っていた。


「来るかしら、立花健太」

 アキが視線を巡らせながらつぶやく。蒼真は無言で頷いた。確信とも祈りともつかぬ思いを胸に抱きながら。彼は来る、きっと。間違いなく、なぜなら留美がここにいるのだから。

 読経が終わり、係員が棺を静かに運び出す。棺は黒い車に乗せられる。蒼真たちも霊柩車を追い、そのまま火葬場へ向かった。

 やがて棺は降ろされ、いくつもの炉が並ぶホールへ。宮本留美様、そう書かれた炉の前で棺は止まった。


「最後のお別れになります」

 その言葉に蒼真たちは周りを見渡す。しかしそこには健太の姿はなかった。蒼真の胸に寒さとは違う冷たい予感が忍び込んでくる。自分の信じたものは、また裏切られたのか? なぜだ、なぜ来ない。健太、お前の大事な人がまもなく逝くというのに。

 棺は静かに炉へと入り、その扉が重たく閉ざされた。

 蒼真、美波、アキ、三人は火葬場の建物を出た。煙突から昇る煙は、細く、しかし確かに空へと伸びていた。太陽の逆光で、灰と光が入り混じっている。


「来なかったわね」

 アキがぽつりと漏らす。

「そうですね…… すみません、僕の想定が外れて」

「いいのよ。私も、同じこと考えていたから」

 彼女は黙って煙突を見上げる。白い煙が、ゆっくりと風に攫われていく。美波も同じように空を見つめた。

「明日はきっとだれかが死ぬかもしれない」

 蒼真は美波の言葉に胸が締め付けられる。そう、今までもたくさんの人が亡くなってきた。それは怪獣に殺された人、怪獣になって死んだ人。そして自分にとっても大事な人。それは彩や芦名、そして母。


「でもね」

 アキが美波に向かって話しかける。

「私のことを死なないで、って願う人がいる限り、私は戦える。そう、私には守るものがあるから」

 蒼真はアキの言葉に頷く。そして守るべき人を失った、その男の胸の内を思うと、彼の胸も締め付けられるような痛みを覚える。蒼真の目に空に昇る煙だけが映っていた。

「じゃあ、私は任務に戻るわね」

 その言葉を残し、アキはゆっくりと門へ向かった。ヒールの足音だけが石畳に残されていく。


「留美さん、可哀想。好きな人に会えなかった」

 美波が静かにつぶやいた。

「そうだね。きっと来ると、思ってたのに」

 そのとき、蒼真の視界の端に一瞬、何かが揺れた。彼の視線がその方向に向く。

 そこは寺の裏手に広がる墓地。石塔が無数に並び、斜めに傾く夕光がそのひとつひとつに影を落としている。蒼真が歩き出す。その何か、いや、彼の存在を確かめるために。

「蒼真君、どこへ行くの?」

 美波の声を背に、蒼真は墓地の方へ足を向ける。霊園の空気はひんやりとして、足元の砂利が小さく音を立てる。規則的に並ぶ墓は、どれも似通っていて迷路のようだ。

 けれど蒼真には確信があった。火葬場の煙突、立ち昇る煙、きっとあそこが見える場所に、彼はいるはず。

 墓石と墓石との間にある細い道。その角をひとつ曲がったそのとき――


「いた!」

 石塔の陰に、ひとり立つ男の影、それは紛れもなく健太だった。彼と蒼真と目が合う。互いに言葉なく歩み寄った。

「やっぱり、火葬場の煙突、留美さんの煙が見える場所に君がいると思ったんだ」

 健太はゆっくり空を仰ぐ。

「留美は天に帰っていく。この地球に生まれ、そしてまた、地球へ還っていく」

 蒼真も煙突を見上げる。

 さっきより濃くなった煙が、まるで黒い絹のように空を焦がしている。


「健太、もう争いはやめよう。留美さんだって、きっと悲しむ」

「そうかな……留美も、人間の犠牲者だった」

「でも君になんかあったら」

「俺が死んでも、悲しむ奴なんかいない。失うものはもうない」

 彼の声は静かだが、底に怒りが渦巻いていた。


「なぁ、蒼真、お前はなんで戦ってる?」

「えっ」

 蒼真の目が煙から健太の方へ向く。

「人間なんて、自分のためなら他人も地球も平気で殺す。そんな奴らのために戦う意味があるのか?」

 蒼真はうつむき、言葉を探す。

「なんでだろう、よく分からない」

「ん?」

 健太が蒼真を見る。


「美波や仲間を守りたい。頭ではそう思ってる。でも、なんか違う気もする。戦うことの理由づけに意味はないんじゃないかって。なんか体が勝手に反応している、そんな気さえする」

「ふーん」

 健太はもう一度、煙突を見上げた。

「健太はなんで宇宙人に味方する? さっき留美さんは地球に帰るって言ってたじゃないか。地球を壊すミサイルを撃ち込む奴らになんで味方するんだ」

「それは違うな」

「えっ」

 驚く蒼真を見ることもなく、健太は空を見上げている。


「違う。あれは、ミサイルなんかじゃないらしいぞ。俺が聞いた話では地球を破壊するものじゃないらしい」

「でも、破壊通達は出てるって……」

「だれかが企んでる。意図的に誤報を流したんだ」

「だれだよ、それ!」

 健太は大きく空を仰ぎ、そして言った。

「阿久津蒼真、お前はいい奴だよ。でもな、人間は信じちゃいけない。お前が守りたいと思ってる人ですら、な」

「……?」

 蒼真が眉をひそめる。


「神山さとみには気をつけろ。あの女、恐ろしい」

「さとみさんはそんな人じゃ……」

 言いかけて、言葉が詰まる。

「アメリカでの実験の話か?」

 健太の声は冷たい。

「彼女は人を殺した。生命を弄んだ。金属と人の融合。その研究を彼女は成功させた」

「金属と融合?」

 蒼真の胸に嫌な感じが充満していく。


「そう、そこで一人の男が死んだ」

「咲奈さんのお兄さんのことか?」

 信じがたい。でも、疑念が芽を出す。

「煙…… 変わったな」

 健太が目を向けた煙突、蒼真も同じように目を向ける。黒い煙は細くなり、白い帯のように天へと流れていた。

「神山さとみには気をつけろ」

 蒼真が振り返る。しかしそこには、もう健太の姿はなかった。

 風だけが、彼のいた方向に冷たく吹き抜けていた。


 ×   ×   × 


「人と金属の融合……」

 さとみの声は、金属のように硬く、しかしかすかに震えていた。

 R計画の研究室、白い蛍光灯が均一に照らす室内には無機質な器具の音がカチカチと響き、何人かのスタッフが沈黙の中で端末や実験装置に向かっていた。解析用モニターのかすかな電子音と、廊下から漏れる遠い足音が空気の緊張を支える。

 蒼真とさとみは広げられた過去の論文を挟んで向かい合っていた。机上にはクリップで綴じられた英語混じりの書類、老朽化した資料の中には手書きで記された構造図も含まれていた。

 蒼真はページをめくりながら声を潜めて言った。


「ここには書かれていない真実が知りたいんです」

 さとみは顔を伏せ、指先で資料の端をそっとなぞる。

「それは……」

 重い沈黙が落ちる。室内の空調の低音だけが時間を刻む中、さとみはゆっくり目を閉じる。そして、まるで過去を召喚するように、静かに瞳を開いた。

「蒼真君には嘘はつけそうにないわね」

 呼吸を整えるように間を置き、彼女は語り始めた。

「アメリカで私が行っていた研究は、生命を人工的に創造するという、倫理的に禁じられたもの。きっかけは柏崎博士の論文」

 さとみの目は手元の論文とは別の場所、遠い過去を見つめているようだった。


「柏崎博士……」

 その名を聞いた瞬間、蒼真の脳裏に暗い影がよぎる。父であり、ネイビージャイアントの創造主と疑われる存在。彼の気配が書類の隙間から立ち上がってくるような錯覚に包まれた。

「私は炭素以外の元素で生命が成立する可能性を模索していたの。ある日、マウスの皮膚とプルトニウムを融合させる実験に成功した」

 蒼真は驚きと困惑を押し殺すようにそっと頷いた。


「教授から聞きました。皮膚が金属との融合性を示したって」

 さとみはそれを肯定しながら声を低くする。

「プルトニウムの崩壊と、細胞の分裂。その似た振る舞いに、私は可能性を見たの」

「生命は物質の変化だと」

「そう、さすが蒼真君ね」

 蒼真は少し照れ笑いを浮かべた。

「でも、どうして、発表されなかったんです?」

 蒼真の問いにさとみは一点を見据える。


「もっと先を見ていたからよ。金属と融合した生命が動き出す未来。それは、サイボーグ。私はそれを試したかった……」

「サイボーグ?」

「そう、人が金属と融合すれば、最高の兵士になる」

「そんな……」

 蒼真は恐ろしさに武者震いする。明らかな神への冒涜、人間がそんなことをすることは許されない。それをさとみが考えていた。今まで優しく自分を導いてくれたさとみが、そんなことを……

「それで、人体実験を?」

「えゝ。政府からもかなりの支援があったわ。そのことが成功すれば軍事均衡が優位になると」

「それで手塚咲奈さんのお兄さんが選ばれた」

 室内の光が一層白く、冷たく感じられた。さとみの表情が一瞬だけこわばる。


「えゝ。彼を実験台にしたの」

 蒼真の背筋が冷え切る。彼女の優しさの奥にそんな凄惨な過去があったとは信じ難い。

「失敗したんですか?」

「ううん、成功よ。彼は金属と融合し、しかも人間としての意識を保っていた」

「意識を!? ありえない……」

「動かせたの。金属の手足を彼の意思で」

 蒼真の頭の中が混乱する。人が金属と融合する、それだけでも信じられないことなのに、融合した人が意識を持っていた。そんなことが……


「でも怒りに満ちた彼は、私たちを攻撃したの、何人かの研究員が大けがをしたわ」

「で、どうしたんですか?」

「彼をなんとか捕えて抹消した」

「抹消?」

 さとみがさらに遠い目をする。

「金属のゴミとして、溶鉱炉で」

「溶鉱炉で?」

 蒼真の背に再び冷たいものが走る。確かに彼はもう人間ではなくなっている。しかし人としての意識は持っていたはず。それを金属のゴミとして捨てる。とても人のやることではない。それを目の前のさとみが手を下した。そんな……信じられない。いや、信じたくない。


「そう。この研究は、倫理のラインを完全に逸脱していた。だから公表は見送られ、私も研究所を追われた」

「それで、神山研究室に?」

「ええ。神山はその話をほとんど知らないと思う。気を遣ってか、聞いてこなかったし、私も話していない」

 蒼真は神山教授の心持ちを想像してみる。彼はさとみを愛しているのだろう。だから彼女の過去を聞くこともない、必要もない。仮に彼女の罪を知っても咎めることはしない気がする。そう考えたとき、今の自分はさとみの犯した罪を許せるのだろうか。蒼真は遠くを見つめるさとみの美しい横顔を見つめる。心のざわつきは収まらなかった。そのときふと気づく。


「さとみさん。もしかしてR計画でやってることって」

 さとみがゆっくり頷いた。

「そうよ。昔のその研究。ディストラクションCと人間の融合」

「ディストラクションCに? それって……」

「特攻よ。高性能なAIじゃ間に合わない。火星圏の無補給飛行にも耐えなきゃいけない。そう考えると、人間がミサイルに融合してコントロールするのが一番確実。それが参謀本部の出した答え」

 蒼真の中にどこか怒りに似た思いが湧いてくる。

「だれが融合するんです?」

「それは……まだ聞かされていない」

 蒼真は嫌悪に似た予感に襲われる。きっとそれは防衛隊のだれか、そう容易に想像できる。

 そのとき研究員の一人が叫んだ。


「おい、テレビでなんかやってるぞ!」

 人々の流れができる。さとみと蒼真も立ち上がりその流れに乗る。研究室の隅、テレビの置かれた休憩スペース、そこに職員全員が集まったかのような人だかりができていた。

 蒼真たちが人々の隙間からテレビ画面を見る。そこには堀田雪がスタジオで何かを語っていた。遠くてよく聞こえない。蒼真は前に進もうとするが人だかりが邪魔で進めない。そのとき、テレビにテロップが出た。

『防衛隊、秘密計画の情報入手』

 一斉に声が飛び交う。

「どういうことだ!」

「なんで漏れたんだ!」

 そして雪の声が聞こえ始めた。


「我々取材班の情報によりますと、あと二ヶ月で宇宙から放たれたミサイルが地球に到達する予定だとのことです。その地球攻撃のミサイルを迎撃するため、防衛隊は秘密裏に新兵器を開発していることが判明しました」

 隣に座るコメンテーターが、視聴者の不安を代弁するように問う。

「迎撃できなければ地球は壊滅、ということですか?」

 雪は一度だけ瞬きをしたあと、冷静に告げる。

「現時点では地球が破壊されると見る専門家が多数派であることは間違いありません」

 休憩室が一気に騒然となる。


「まずい!」

「街がパニックになるぞ!」

「暴動や戦争すら……」

 蒼真とさとみは顔を見合わせた。

「吉野隊長、大丈夫かしら……」

「僕、確認に戻ります!」

 蒼真は休憩室を飛び出し、廊下を駆け出していった。


 ×   ×   × 


 科学班の実験室はいつも通り稼働していた。壁際には分析用モニターが並び、蛍光灯の光が金属製の機材に反射して不安定な影を落としている。資料整理に没頭する蒼真の横では薬品の匂いと低い作動音が混じって漂っていた。

 その沈黙を破るようにアキが声をかける。

「隊長、疑われてるみたいね」

 資料の束を抱えたまま蒼真が顔を上げる。

「まぁ元奥さんですからね。報道したの」

 アキは肩をすくめる。


「本人は否定しているって聞いたけど」

「隊長に限って、機密漏洩なんて、ありえません」

 蒼真の口調は確信に満ちていた。手元の資料をそっと机に置き直すと、アキが首をかしげる。

「じゃあだれが?」

 その問いに蒼真は少し唇を引き結びながら答える。

「さっき、堀田雪さんに連絡してみたんです。そしたら、情報源を教えてくれました」

「へぇ、どうしてそんなあっさり教えてくれたの?」

「相手が立花健太ですから」

「あぁ」

 アキが納得するように頷き、少し目を伏せる。


「参謀本部へは三上さんを通じて報告してあります。隊長の容疑も、すぐに晴れると思います」

「それは良かったわ」

 蒼真は椅子に深く座り、資料を見つめる視線が沈んでいく。その姿を気にしながらアキがため息を吐く。

「なんか元気ないわね」

「そりゃそうですよ。街は大混乱みたいです」

「まぁね、地球最後の日が近いかもしれないんだから」

「健太はなにが目的なんだろう。不安と恐怖をばらまいて、なにがうれしいんだ?」

 アキがゆっくりと息を吐く。


「復讐よ。人類全体への」

 室内が急に冷えたように感じられた。蒼真は留美の火葬をした場所にいた健太の姿を思い出す。彼の瞳には確かに、静かな怒りが潜んでいた。

「カーミンが消えたあと、なにか痕跡は?」

「なにも見つかってないです」

 アキはややあきらめ顔でつぶやく。

「立花健太。今の私たちじゃ捕まえられない。神出鬼没。きっと宇宙人からなにか能力を授かったのよ」

 彼女が深いため息を吐いた。

 その瞬間、警報音が基地全体を揺らした。警告灯が天井で回転し、赤い光が実験室の隅にまで届く。


『緊急事態、緊急事態。防衛隊基地に怪獣が出現。直ちに迎撃態勢へ。MECはスカイタイガーで準備!』

 空気が跳ねるように張り詰めた。アキがすでに立ち上がっていた。

「蒼真君はR計画の実験室へ! きっと健太はそこに現れるわ!」

「了解です!」

 二人はそれぞれの方向に走り出す。実験室の扉が開き、金属の足音だけが廊下に響いた。

 研究棟を抜け、蒼真がR計画研究室の前に到達した、その瞬間、空が唸った。背後から地響きのような音とともに怪獣オドングリフが姿を現す。灰色の甲殻に覆われた巨体。その表面を伝う脈動は、まるで生きた武器そのものだった。


 空から三機のスカイタイガーが接近。機体の影が地面に走り、ミサイルが背中を直撃する。だが怪獣は一歩も退かず、基地へと進撃を続ける。

「なにをやってる!」

 安田参謀が怒声とともに現れた。背中には重いロケットランチャーを担ぎ、肩を振るわせながら一気に構えた。そして放った弾は怪獣の胴へ命中する。怪獣の咆哮、そのとき二本の角が光り、鋭い光線を安田へ向けて放つ。

「危ない!」

 蒼真はとっさに安田を押し倒し、光線は背後の舗装道路を爆発させる。飛び散るアスファルトが凶器のように降り注ぐ。


「大丈夫ですか!」

「阿久津君、君に助けられるとはな」

 蒼真は負傷した安田参謀を建物の陰へ引きずり、覆いかぶさるようにして身を守る。

「ここにいてください!」

「君は?」

「僕もMECの一員です!」

 その声と同時に蒼真の腕時計が青く輝き始める。蒼真は安田を置いて怪獣の方へ駆け出す。空間が低くうねり始めた。空気が震え、重力さえ変調するような異変、その中心に青い光の柱が、空を突くように出現する。


 次の瞬間、雷鳴のような爆音とともに青の巨人、ネイビージャイアントが姿を現す。地面の振動がすぐに迫る。目の前にそびえるのはオドングリフ。肉厚の装甲に走る脈動が、まるで怪獣自身の怒りを鼓動のように伝えている。

 ネイビーが一気に踏み込み、オドングリフと激突。衝突の衝撃が空気を引き裂いた。土煙が濁流のように巻き上がり、基地の外壁が呻くように軋む。周囲の建物が軋み、モニターの画面が一部揺れて歪むほどの圧力。

 双方は力では互角。しかしオドングリフの膂力は圧倒的。ネイビーの脚が地面を抉りながら徐々に押し込まれていく。


「ネイビー、がんばって!」

 アキの無線がかすかに震える。その直後、上空を駆ける鈴鹿機がミサイルを連射。尾を引く光の軌道が怪獣の背に炸裂し、爆炎が纏う赤皮を焦がす。

 オドングリフが一瞬怯んだ。その瞬間を逃さず、ネイビーが怪獣の胴体を下から抱え上げる。

 腕に青光が迸る。ネイビーがオドングリフを高々と持ち上げたその光景は、まるで重力すら超越したようだった。そのまま、地面へと勢いをつけて叩き落とす! 地が裂け、振動が数十メートル先の建物まで伝播する。


 だがその瞬間、空が赤く染まった。上空から赤い光柱が出現。その中心から、カーミンジャイアントが地面に叩きつけられた衝撃で生じた亀裂を踏み越えるように姿を現す。

「カーミンジャイアントだわ!」

 アキの警告が無線を貫く。

 ネイビーが振り返る間もなく、カーミンが飛び込んできた。拳が交錯する。骨ごと砕きにかかる連打。ネイビーが交互に躱し、反撃の拳をカーミンの腹部へ叩き込む。衝突音が腹部を襲う。

 だが背後に振動が響く。ネイビーが振り返るより早く、オドングリフが立ち上がり、進撃を再開していた。スカイタイガー三機が援護射撃を続けるものの、怪獣の脚は止まらない。


「ネイビーが挟まれる!」

 アキの叫びと同時に、ネイビーがカーミンを両腕でつかみ上げ、半回転させながら遠方へ投げる。赤の巨体はコンクリートの塔を破壊しながら墜落する。しかし、オドングリフが角に赤光を纏う。放たれた光線、ネイビーは跳躍し、瞬時に身を翻した。

 だがその直後、背後から飛来したカーミンに羽交い締めにされる。

 動きを封じられたネイビー。その腹部へ、オドングリフの鋭い角が突き立てられる。ネイビーの体が悲鳴を上げ、破砕音が爆ぜた。

 オドングリフが続けざまにネイビーの胸を貫く。ネイビーの巨体が崩れ落ちる。砂塵が覆い、静寂が戦場を飲み込んだ。


「ネイビー、しっかりして!」

 アキの声が震える。だがネイビーは動かない。

「ネイビーが負けた?」

 田所の沈んだ声が無線から漏れた。

「そんな、ネイビーが負けるわけない!」

 三浦の叫びも重なる。

 オドングリフが勝ちどきの咆哮を上げ、R計画研究室の方向へとゆっくり歩き出した。

 その脇には、静かにカーミンジャイアントが並んで歩いていた。基地に残る者たちの焦り、希望の最後の炎が、今潰えようとしている。


「悲しんでる場合じゃないわ、攻撃よ!」

 アキが叫ぶ。

「了解!」

「了解!」

 三機のスカイタイガーが急旋回、ミサイルをオドングリフに撃ち込む。だが怪獣は歩をやめない。それは、もしかすると何かを終わらせるための歩みなのかもしれない。オドングリフの後ろで腕組みをするカーミンジャイアントが、倒れているネイビーを眺めながらそっと頷いた。


 ×   ×   × 


 蒼真は夢を見ていた。

 空間は現実から切り離されたように曖昧だった。さっきまで怪獣と戦っていた気がする。砕け散る瓦礫の音、体に響いた衝撃、赤く燃え上がる空、そのすべてが記憶の残像のように背後で揺れていた。

 だが今、彼が立っているのはまったく異なる場所だった。辺り一面が霧、白煙のような柔らかなもやが空間を満たし、地面さえ曖昧で、自分が空に浮いているのか立っているのかさえ分からなかった。湿気はなく、冷気もない。ただ、言葉にできない静けさがすべてを支配していた。


 その中に、一筋の光が現れた。はじめはかすかな金色の粒だった。それがだんだんと輝きを増していく。そしてその中心から、ゆっくりと一人の女性が姿を現した。

 彼女の体は光に包まれ、まるで霧そのものが彼女を生み出したようだった。淡く波打つ髪、穏やかな微笑み。その姿に、蒼真の目が見開かれた。

「母さん……」

 身体が自然と前へ傾く。だが母はそっと右手を上げて制した。立ち止まった蒼真は息を詰めるように立ち尽くす。


「蒼真、私の愛しい蒼真。まだ、死んではいけない」

 その声は耳ではなく心に届いた。透明な鈴の音のような声だった。

「母さん…… 僕、僕、死ぬの?」

 母は静かに首を振る。光が揺れ、彼女の輪郭が柔らかく滲む。

「あなたには、まだ果たすべき使命があるわ。だから、死んではいけない。生きなさい」

 その言葉に蒼真の膝が崩れ落ちた。彼は霧の中に座り込み、冷たくも暖かくもない地面に手をついた。

「それって、もっと戦えってこと?」

 母の背後に遠い風景が見え隠れする。形にならない記憶。幼い頃に並んで歩いた並木道の影、そのすべてが一瞬現れてはまた霧の中へ消えていく。


「母さんは、僕のことより父さんの残した罪を償うことが優先なの?」

 彼の声には哀しみが混じっていた。まるで最後の問いかけであるかのような、揺れる語尾だった。

 母はそっと蒼真に近づいた。目を伏せる蒼真の前で、静かに屈みこむようにして母は言葉を続けた。

「私はあなたをだれよりも、なによりも愛している」

 彼女の声は霧の揺らぎとともに心の奥まで沁みていく。

「だからこそ、戦ってほしいの」

 蒼真は目を開け顔を母の方に向けた。

「どういう意味?」

「あなたが幸せになるために。この地球を、あなたのまわりの人々を、そしてあなたが愛する人を守らなければならない」

 言葉のひとつひとつが、霧の粒に染み込んでいくようだった。


「自分の幸せのために、守る?」

「そう。すべては、あなた自身の幸せのために」

 そのとき、彼女は両手をゆっくりと伸ばし、小さなバッジのようなものを彼の手のひらに握らせた。

 暖かい。それは単なる機械ではなく、母の思念が宿った結晶のようだった。

「これは、どんな攻撃からでも身を守れるバリアを張ることができるわ。怪獣の攻撃にも耐えられる。それだけじゃない。このバリアで自分の身を包めば、酸素を含んだカプセルにもなる。だから海の底でも、宇宙空間でも戦うことができる。この力を、あなたに授けます」

 母の顔は温和な笑みをたたえている。どことなく蒼真の心が温かい。

 すると彼女の指先が霧の光と同化する。次の瞬間、母の姿は光とともに霧の中に消えていく。


「母さん、どう言うことなの? 自分の幸せのために、みんなを守れって?」

 蒼真は重い体を引きずり、母が消えた場所に歩みを進める。

「母さん…… 母さん!」

 彼の叫びは空間にこだましたが、音のない霧がそれを優しく包み込み、遠くへ運んでしまった。

 霧はまた、静かに彼の周囲を満たす。蒼真は立ち尽くしたまま、深く息を吸った脱力の中に不思議なほど強い力が湧いてくる。それは確かに、彼自身の奥底に眠っていた何かを目覚めさせた。右手に握ったバッジとともに。


 ×   ×   × 


「くそ…… ここまでか」

 爆風と衝撃で満ちた空の下、安田参謀が呻く。彼の前には怒気を帯びた怪獣オドングリフが、その巨体で睨みを据え、次の一歩で基地をなぎ払おうとしていた。

 安田参謀が死を覚悟したその瞬間、空を裂いて青い光が走った。

 爆裂する青光が怪獣の胸を貫いた。その閃光はオドングリフの背骨をなぞるように抜け、体内のエネルギー核まで到達する。


 衝撃が地面を割り、砂煙が戦場を覆う。次の瞬間、崩れ落ちる巨体。オドングリフの脚が折れ、腹部がひしゃげたように地面に沈み込む。

 視界は灰色に染まり、砕け散った瓦礫と炎が飛び交う。だが、その濁った空間を、静かに、しかし確かな威厳とともに、青い巨人が歩んでくる。

「ネイビー、生きてたのね!」

 アキの声が無線を震わせる。通信網を通じて響いたその歓声は、沈黙していた戦線に電撃のように希望を注ぎ込んだ。

 ネイビーはオドングリフの胸へと膝を突き、馬乗りになる。


 拳が閃く。連打。金属音が轟き、怪獣の装甲が断続的に爆ぜて火花を散らす。拳に纏う青光が衝突のたびに増幅し、まるでネイビー自身が雷となって怪獣を撃っているようだった。

 そのとき、赤い巨影が風を切って突入してくる。カーミンジャイアント。振りかぶった腕が空間を裂き、ネイビーの腕をつかんだ。その瞬間、空気が硬化するかのような衝突音が鳴り、ネイビーは強引に引き離される。

 地に伏していたオドングリフが再び立ち上がる。怪獣の角に紅光が帯びる。空気が脈打ち、警告を告げるように唸る。光線が放たれた。


 ネイビーは胸元に手を添え、瞬間的にバリアを展開。まばゆい青光が周囲を包み、衝撃波は拡散されたまま砂塵となって消えた。爆風の中でも、ネイビーは一歩も退かなかった。

 右手が掲げられ、金光を帯びたサーベルが腕の内から浮かび上がる。刀身が発光し、粒子が空気を震わせる。ネイビーがそのまま突進。疾風のごとく駆けるネイビーの刃が閃き、鋭い一閃。青光が空気を引き裂き、オドングリフの首が鮮やかに切断される。

 巨体が呻くように倒れ込む。胸部から赤く輝く石が、鈍い音を立てて地面に転がり出た。ネイビーの両眼が輝き、左手を突き出す。その手から放たれた青の光線が一点に集中し、赤い石を焼き尽くす。砕けた赤い石の破片は霧のように散り、怪獣の姿は風に溶けて消えていく。


 立ち尽くすネイビーの背後、赤い光柱の中にカーミンが佇み、そしてその中心には健太がいた。

 ネイビーが、いや、蒼真がつぶやく。

「健太、もうやめよう。僕は君とは戦いたくない」

 その声には敵ではなく、友を呼ぶ者としての震えがあった。

「蒼真よ、それは許されない。自分にはもうなにも残っていないんだ。お前のように守るものはなにもないんだ。俺にあるのは人類への憎しみだけ。この憎しみを晴らすことが俺の生きがい」

 風が瓦礫を吹き飛ばし、血と灰の戦場に蒼真の叫びが届く。


「やめろ、これ以上罪を犯すな。お前だって、お前だってだれかを守ることができる。留美さんだってお前に守ってほしいと思ってたんだろう。同じように君に守ってほしいと思う人、きっと現れるよ」

 健太の瞳が揺れる。声は静かに、壊れたように漏れる。

「そうかもしれない、そうでないかもしれない。しかし今言えることは俺には守るものはなんにもないこと。だから俺は、俺のやりたいようにやる。人類への憎しみを、留美を不幸にした人たちへの恨みを晴らす。俺は死んでもかまわない」

 カーミンが構え、蒼真に向かって殴りかかる。その動きに反応したネイビーが迅速に回避する。


「よせ! 自分を大切にしろ!」

 だが、健太の心はすでに臨界を越えていた。

「蒼真、お前には分からない! だれからも大切にされた記憶のない俺に、どうやって自分を愛せって言うんだ!」

 カーミンが右手を出す。とっさにネイビーも左手を。カーミンから放たれた赤い光、ネイビーから放たれた青い光。二つは戦場の中央で衝突し、稲妻のように交錯したエネルギーが爆裂。波動が大地を切り裂き、天空を震わせる。


 吹き飛ばされるカーミン、その場に倒れて動かなくなる。その反対側、ネイビーはまばゆい光のバリアに守られている。その光が消えていく。

 カーミンの巨体が消えていく。ネイビーも青い光の中、蒼真の姿に戻っていく。

 蒼真は、戦場の残響がまだ空気に残る中、カーミンの消えた場所へと駆けていった。地面はひび割れ、焦げた土と鉄の匂いが混じっていた。砕けた瓦礫の間を縫うように走る蒼真の足音が、静まり返った空間に響く。

 そしてそこに、血まみれの健太が倒れていた。彼の体は無数の裂傷に覆われ、赤黒く染まった服が風に揺れている。呼吸は浅く、胸の上下がかすかに震えているだけだった。


 蒼真は息を呑み、膝をついて駆け寄る。両腕で健太の体を抱きかかえた瞬間、彼の体温が急速に失われていることに気づく。

「どうして、どうしてあんな無茶を!」

 叫びながら、蒼真は健太の頭を支え、顔を覗き込む。健太の瞳は半分開いていたが、焦点は定まっていなかった。

 それでも彼は、喉を震わせて言葉を紡いだ。

「蒼真、お前はほんと、恵まれてるな。みんなから愛され、守られ、そしてみんなを守っている。幸せだよ、お前は。守るものがない、失うものがない捨て身の強さより、守るものがある強さの方が勝ったってことかな」

 その声は、風に消えそうなほど弱々しかった。言葉の合間に、健太は激しく咳き込む。血が唇の端から滲み、蒼真の手に落ちる。


「健太! しっかりしろ!」

 蒼真の声は震えていた。彼の手は健太の背を支えながら、無意識に力を込めていた。健太は、痛みに耐えるように目を細めながら続ける。

「蒼真、まだお前の知らないことは、山ほどある。真実を見極めろ。なにを守るべきか、よく考えろ。さもないと、お前もやられちまう」

 その言葉に蒼真は息を止めた。健太の声はもはや命の残響のようだった。

 そして健太はかすかに笑みを浮かべる。その笑顔は、どこか少年のように無垢で、痛みを超えた場所から届いてくるようだった。


「俺はお前が好きなようだ。死ぬなよ。生きて、守るものを守り抜け。それがお前の使命だ」

「使命……」

 蒼真はその言葉を胸の奥で噛みしめる。まるでそれが自分の心臓の鼓動と一体化するように。

「……じゃあな」

 健太の体がゆっくりと沈んでいく。腕の力が抜け、蒼真の腕の中で垂れ下がる。瞳は閉じられたまま、二度と開くことはなかった。

 風が、静かに吹いた。戦場の空はどこまでも青く、どこまでも遠かった。


《予告》

三浦が安田参謀に呼び出しを受けた。彼の様子がおかしいことに気付いたアキ、だか蒼真はそれ以上に気になることが。そしていよいよおぞましいR計画が開始される。次回ネイビージャイアント「壊滅、ディストラクションC」お楽しみに。


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