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ネイビージャイアント  作者: 水里勝雪
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第二十一話 クジラの涙

♪小さな生命いのちの声を聞く

 せまる不思議の黒い影

 涙の海が怒るとき

 枯れた大地が怒るとき

 終わる果てなき戦いに

 誰かの平和を守るため

 青い光を輝かせ 

 ネイビー、ネイビー、ネイビー

 戦えネイビージャイアント

 空は漆黒の闇から濃紺へと移り変わり、やがて明るい青へと染まっていく。穏やかな未明の海が広がり、西には水平線が、東には明るくなっていく空を背景に、山の稜線が黒いシルエットとして浮かび上がっている。その光景は、まるで自然が描く一幅の絵画のように美しい。


 深夜の漁を終えた漁師が甲板に立ち、静かに周囲を見回していた。ここは若狭沖、日本海の穏やかな海が広がる。季節は夏、夏至を過ぎたとはいえ、まだ朝は早い。ゆっくりと明けていく空を眺めながら漁港へと戻るこの時間が、彼にとって一番好きな時間だった。


「今日も暑っつなりそうやのぉ」

「あゝ、ほやのぉ」

 言葉少なく男は答える。甲板に立つ漁師が足元に目を落とす。昨夜からの漁で獲れた魚たちが、冷たい氷の中に静かに埋もれている。


「ここ最近不漁で困ったもんやのぉ」

 同僚がしゃがみ込み、氷をかき混ぜる。その手の中で、氷の冷たさが魚たちを包み込んでいる。見渡せば、氷の量が魚を圧倒しているのが明らかだった。


「異常気象やからな、しゃあないのぉ」

「いやいや、このままいったらこっちはおまんまの食い上げやさけ、なんとかならんかのぉ」

「まぁ、そう言うても、しゃあないもんはしゃあないのぉ」

 漁師はそう言いながら再び海に目を向けた。短い会話の間に、東の空はすでに明るくなり始めていた。山の影から顔をのぞかせた太陽が、まばゆい光を放っている。


 確かに同僚の言う通りだ。八月に入ってから、急に魚が獲れなくなった。原因は日本海の海温上昇だと言われているが、何か腑に落ちない。長年の漁師としての勘が、この夏の異常さを告げている。魚がいないのではなく、まるで消えてしまったかのようだ。なぜ消えるのか? それは、長い漁師生活でも経験したことのない異常事態だった。

 思いにふける漁師の足元がふらついた。船が大きく傾いたのだ。静かな朝の海に、突然大波が立ち上がったのである。


「あ、あれはなんや!」

 同僚が指差す。漁師もつられてその方向に目をやる。そこには地平線から伸びる大きな尾鰭がそびえたっている。

「クジラか?」

 漁師の言葉に同僚が、

「あんな、あんな大きなクジラ、見たことない」


 確かに、その巨大な尾鰭はこれまでに見たことがないものだった。もしここが北極海なら巨大なクジラがいるかもしれない。しかしここは日本海であり、せいぜい小型のミンククジラがいる程度だ。仮に北極海の巨大クジラだとしても、あの尾鰭はあまりにも大きすぎる。この辺りは田舎だが、それでもこの界隈で一番高い建物よりも大きく見えるのだ。


 巨大な尾鰭が海中へと消えていく。その瞬間、水面が大きく隆起する。

「わぁ、なんやこの大波は!」

 同僚が悲鳴に近い声をあげた。その瞬間、巨大な波がこの小さな漁船に迫り来るのが見える。

「手すりに摑まれ、振り落とされるな!」

 二人は必死に漁船の手すりにしがみついた。その直後、巨大な波が船を激しく揺さぶった。


「わぁぁぁ」

 漁船は巨大な波の猛威にさらされ、そのエネルギーに耐えきれず、真っ二つに引き裂かれた。

「海へ、海へ飛び込め。船が沈むのに巻き込まれるぞ」

 甲板にいた二人が海へと飛び込んだ。そのとき大きな黒い影が彼らを包み込む。

「あっ、あれは……」

 二人が見上げると、そこにはタンカーをも凌ぐ巨大な黒い影が、その形はどう見てもクジラ、その影が静かに二人の上を通り過ぎていった。


「いかん、逃げろ!」

 影が轟音とともに海面に達すると、巨大な波が二人に襲いかかってきた。

「うぁぁぁ!」

 波の勢いは沈みかけていた船を粉々に砕いた。船は完全に海中へと沈み、その様子を見届けたかのように黒い影は消え去った。波が静まり、朝日に輝く静かな海が広がっていた。まるで何事もなかったかのように静かに風が流れていった。    


 ×   ×   ×


「漁師たちの話ではかなり巨大なクジラだったと」

 作戦室にはMECのメンバーが大型モニタの前に集まっていた。三上が手元の資料を見ながら話を続ける。

「同時に海上保安庁が捕えたソナーにも海底数十メートルの場所で体長約百メートルの巨大な影を捕えています」

 壁のモニタには青色が広がり、その下方にはひときわ大きな赤い影が映し出されていた。田所は首を傾げ、不思議そうにその影を見つめる。


「この画像だけでは百メートル級かどうか分からないなぁ」

 三上が手元のマウスを動かすと、青い画面がゆっくりとスクロールされていく。赤い影は次第に消え、画面の上方には船の形をした赤い影が浮かび上がってくる。「これがフェリー。大きさは百メートル:

 三上がマウスの右ボタンを二度押すと、画面に変化が現れた。下に映っていた赤い影がフェリーと重なる。


「大きさはこのフェリーと同じということだ」

「なるほど」

 田所が一端は納得する。

「でも、影がボヤッとしていてクジラかどうかは分からないなぁ」

 吉野隊長も田所の隣で腕組みをしたまま首をひねる。


「確かにそうだな。三上、今までにこのような巨大クジラを目撃した歴史はあるのか?」

「いえ、世界最大のクジラであるシロナガスクジラでも体長は約三十メートル。これだけ大きなクジラは過去観測された報告はありません」

「うむ」

 吉野隊長が天を仰ぐ。

「通常ではありえない大きさと言うことか」

 三上は再び資料に目をやる。


「そうなります。海洋学研究所に問い合わせしてみました、シロナガスクジラ級の古生物の化石は見つかっているのですが、それ以上の、まして百メートルの生物は報告されていないとのことです」

「ふむ」

 吉野隊長が黙り込む。

「隊長、やっぱりこれは怪獣ですよ。今までにない巨大な海洋怪獣!」

 田所が声を裏返しながら勢いよく画面を指差した。その瞬間、作戦室にけたたましい呼び出し音が響き渡り、大型モニタが切り替わる。


「こちら蒼真です。作戦室応答願います」

 蒼真の姿が漁港を背景に画面いっぱいに映し出される。

「こちら作戦室吉野だ、どうした蒼真君」

「現場の調査が完了したので報告になります」

「うむ、で、結果は?」

 蒼真が背後に放置された船の残骸を指し示した。


「巨大クジラと遭遇して沈没した漁船を調べました。想定通り、船の破片からフレロビウムの反応がありました。おそらくクジラと接触したときに皮膚が付着したんだと思われます」

「そうか、やはり犯人は怪獣か」

「はい。間違いないと思います」

 吉野隊長の視線が画面から隊員たちへと移っていく。


「芦名、田所はマリンタイガーで若狭湾一帯を調査。クジラ型怪獣を発見次第攻撃、三上は、県警と海上保安庁に連絡。漁の中止を依頼、今海上にいる船の航行を見合わせるよう連絡」

「了解!」

 隊員たちがいっせいに散っていく。そして吉野隊長が再び画面に向きなおす。


「蒼真君はそのまま現場に留まって怪獣につながる情報収集をお願いしたい」

「了解しました。また何かあれば連絡します」

「よろしく頼む」

 その言葉を聞いて蒼真が画面から消えていった。


 ×   ×   ×


 夏の日本海は、演歌の荒々しい波が岩を洗うような激しさとは無縁だ。穏やかな海は、眩しい太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。漁港を後にした蒼真は、ひとり静かに海岸沿いを歩いていた。海岸と並行する道を二十分ほど歩いた頃には、もう人影は見当たらなかった。

 ふと海に目を向けると、先ほどの怪獣騒ぎがうそのように、海は静寂を取り戻している。この静けさがずっと続けばいいのに。蒼真が息を吐いた。


「まあ、そうはいかないよな」

 蒼真はあてもなく歩き続けた。とりあえず情報を集めるにしても人がいない。海は広く、どこから手を付けるかもあてがない。さぁどうしようか。

 しばらく歩き続けると、松の木々が植わった岬が見えてきた。蒼真は言いようのない胸騒ぎに襲われる。何かがある、そう感じずにはいられなかった。


 足早に岬へと向かう蒼真。岬には両脇を木の柵で囲まれた遊歩道が続いている。道の脇にはごろごろとした石が無造作に転がっていた。しばらく進むと、松の木々が幾本も並ぶ場所にたどり着く。その木々が夏の太陽を遮り、辺りは薄暗くなっていた。

 岬の突端へと足を向ける蒼真の目に、何か白いものが動くのが見えた。木々の間から目を凝らしてみると、それは白いセーラー服を着た少女だった。下校途中なのだろうか。蒼真は少女に近づいていった。少女は座り込み、何かに手を合わせているのが見える。年の頃は中学生くらいだろうか。彼女は目を閉じ、静かに祈りを捧げていた。


 さらに歩みを進める蒼真。その瞬間、少女はハッとしたように顔を上げ、蒼真の方を見つめた。

「ごめん、脅かすつもりはなかったんだけど」

 不信そうに見つめる少女に、蒼真は優しい笑顔を浮かべながら近づいていった。

「僕はMECの科学班で、阿久津蒼真って言います。だから怪しいもんじゃないよ」

「MEC?」

 少女は相変わらず怪訝な顔をしながらゆっくりと立ち上がる。


「MECって、怪獣攻撃隊のことでしょ」

「そうだけど」

「じゃぁ、クジラを殺しに来たの?」

「えっ」

 蒼真は少女の言葉に驚きを隠せずにいた。


「どうして君がクジラ型怪獣のことを知っているの?」

 少女は何も言わず地面に置いてあった鞄を手に取った。

「もしも、あなたに優しい心があるんなら彼女を殺さないで」

「彼女?」

 蒼真の驚きは次第に大きくなっていく。怪獣はメスなのか? でもどうしてこの少女がそのことを知っている?


「彼女はこの子を亡くして悲しんでいるだけ」

 少女の視線が横に逸れる。その先には、小さな石の墓標があった。蒼真は、彼女が先ほどまで手を合わせていたのはこれだったのかと気付いた。

「これは?」

「彼女の子供のお墓。二ヶ月前、この海岸線で打ち上げられた子クジラの髭をもらい受けてここに埋葬したの」


「子クジラ……」

 蒼真がしゃがんでその墓標をじっと見つめた。薄っすらではあるが石に文字が刻まれている。そこには確かに子クジラの墓と書かれている。蒼真はそっと手を合わせた。

「子クジラはどうして死んだの?」

 蒼真は立ち上がり彼女に質問する。


「漁船と衝突した」

「どうしてここに葬ったの?」

「ここは一番深い海が近いところ。お母さんに一番近い場所だから」

「なるほど」

 少女が海を見る。海は青く澄みわたり美しくきらめいている。


「この近辺で漁船が襲われる事件が頻発してるんだ。もしかして、それって母クジラのせい?」

 少女も海に目を向ける。

「聞こえるの、お母さんの声が。坊や、どこにいるの、なんで死んだの、って」

「声?」

 少女の目が真っすぐ海を見る。


「憎い、人間が憎い、坊やを殺した人間が。そう聞こえる」

「ふむ」

 この少女の言葉は本当なのだろうか。うそをついているようには見えないが、多感な思春期の少女の幻想とも考えられる。しかし、クジラが怪獣化して漁船を襲っているという事実は、まだ一般には知られていない。それなのに、この少女はそのことを知っていた。だとすると……


「あっ」

 少女が叫んだ。その目は遠くの海原を見つめている。

「お母さんがまた怒ってる」

 少女が指を差す。蒼真がその方向に目を向けると、幾つものコンテナを積んだ貨物船が航行しているのが見えた。


「まさか!」

 蒼真は身構えた。すると、コンテナ船の近くで白波が立ち始め、それが徐々に大きくなっていく。慌ててMECシーバーで連絡を取ろうとする蒼真の目に、巨大な尾鰭が映った。それは、明らかに見たこともない巨大なクジラの尾鰭だった。


「あっ、危ない!」

 蒼真が叫び声をあげた。巨大な尾鰭が振り下ろされ、コンテナ船を真っ二つに切り裂いた。

「お母さん、怒ってる。人間が憎い、殺しても殺しきれない、って」

 少女の言葉通り、貨物船はゆっくりと海の中へ消えていく。唖然とする蒼真が我に返った。


「マリンタイガー、こちら蒼真。応答願います」

『こちら芦名、どうした蒼真君』

「怪獣が出現しました。やはり巨大なクジラです。場所は某岬沖およそ三キロメートル。貨物船がやられました」


『了解、至急そちらに向かう』

 蒼真が通信を終える。

「危ないから君は家に戻ったほうが……」

 蒼真が振り返ったとき、そこに少女の姿はすでになかった。


 ×   ×   ×


「巨大生物発見! 前方三十度、下方二十メートル」

 田所の声が艦内に響き渡る。彼の前にあるソナー、その画面に巨大な影が映し出されていた。マリンタイガーは日本海の深海を静かに進んでいる。暗闇の海底には、ほとんど太陽の光が届かず、ライトがわずかに数十メートル先を照らすのみである。


 田所が指し示す方向へと芦名が舵を切ると、彼の目に白く巨大な物体が映り込んだ。ライトが当たる部分しか見えないが、それは明らかに巨大な生物の一部、それはおそらく巨大な尾鰭。

「これがクジラなのか?」

 芦名が身構えた瞬間、尾鰭が大きく左右に振れる。マリンタイガーの艦内が激しく上下に揺れた。


「本部、怪獣発見。攻撃を開始します」

『了解!』

 吉野隊長の言葉が終わるや否や、芦名はミサイルの発射ボタンを押した。マリンタイガーから放たれた二発の魚雷が、怪獣に向かって一直線に進んでいく。

「ミサイル命中!」

 ソナーで怪獣の動きを確認していた田所が、


「うーん、効果がない。泳ぐ速度が変わらない」

「今度こそ!」

 芦名が再びボタンに指を置く。

「待て、怪獣が深海に降下していく。すごい速さだ」

 芦名が舵を下げると、それに呼応するようにマリンタイガーは深海の闇へと吸い込まれていく。


「ダメだ、速度が速すぎて追いつけない」

 田所が見ているソナーから影が消えた。

「本部、応答してください」

『どうした』

 吉野隊長の声が無線を通して艦内に響く。


「巨大なクジラ型生物は深海に逃げ込みました。速度が速くマリンタイガーでは追いつけません。一旦岸に上がって体制を整えます」

『分かった。上陸したら蒼真君と合流してくれ』

「了解」

 芦名は再び艦の外を見やった。そこには光がほとんど届かない深海の暗闇が広がっている。きっとその先には白い巨大なクジラが潜んでいるはずだが、闇がその姿を隠し匿っている。


「海上まで五百メートル」

 田所の声が艦内に響く。少しずつ海の色が紺色に変わり始めた。芦名は舵を握りながらクジラ怪獣とどう対峙すべきか思案している、そうこうしているうちに日の光がマリンタイガーに届いて来くる。マリンタイガーが海面近くまで来たときには海の色はすっかり青に変わっていた。


 ×   ×   ×


「その女子中学生は何か知っているんだろうか」

 田舎の漁師町。さっきまでの晴天がうそのように今の空は重い灰色の雲に覆われ、雨の予感が漂っている。グレーの空と調和するかのように、灰色の屋根が連なる町並みを、蒼真と芦名は肩を並べて歩いていた。


「分かりません。確かに怪獣の話をしていましたが、それは怪獣と言うよりクジラの母親のことを知っていた、って感じでした」

「それはどういうことだ?」

「怪獣と言うより、クジラの母親の心、気持ちを代弁しているような」

「ふむ」

 芦名が腕を組む。


「それが蒼真君の言う巫女的な力ってことか?」

「そうです」

 蒼真が頷く。

 少女が岬で姿を消した後、蒼真は急ぎ近くの中学校へと向かった。制服姿やこの地域に詳しい様子から、彼女が地元の中学生であることは容易に類推できた。その推測が正しかったことはすぐに明らかになった。


 岬に最も近い中学校で、彼女の特徴を伝えると、校長先生はすぐに「それは伊吹頼子ですな」と答えた。

 校長先生の話によれば、彼女は動物の声が聞こえる、と言っているとのこと。そのため同級生たちは彼女を気味悪がり、近づこうとしない。彼女はいつも一人でいる。放課後はひとりで町の裏山にいることが多いとのこと。


 蒼真は防衛隊の調査のため、彼女の住所を尋ねた。校長先生は少し不信感を抱きながらも、個人情報保護の重要性を強調しつつ、彼女の家を教えてくれた。

 蒼真は芦名を誘い、彼女の家へと向かった。


「生物学者の蒼真君が巫女、つまりシャマーニズムの存在を信じるとは思わなかった」

 歩きながら芦名がほほ笑んだ。

「正直、僕も最初は信じてませんでしたよ。きっと思春期の少女の幻想だと思ってました。でも彼女がクジラの声を聞いた直後、確かに怪獣が現れた。偶然にしては出来過ぎています。彼女がうそをついているとは思えませんでした」


「なるほど」

 蒼真は手元のメモを見ながら一軒一軒住所を確認していく。

「でも、よく考えてみると、生き物が五感以外のものを感じる力を持っていても不思議じゃない。例えば、地震が近づくと地面からの超音波や電磁波を感じる生き物もいるし、人間の脳で起こる電気信号が発する電磁波を受け取る装置もあるんですから、動物が何を考えているのか、その微弱な信号を受け取れる存在がいてもおかしくないと思うんです」


「確かに。まだ人間の知らない世界は多い、ってことか」

「いや、人間が知っている世界なんて、自然全体から見ればほんの一部に過ぎないと思うんです。だからこそ、僕たちが研究して、その一部でも理解できれば、それが僕たち科学者の存在する理由だと思うんです」

 蒼真の目が留まる。


「ここか」

 古びて黒ずんだ表札には「伊吹」と書かれている。庭もなく、ただ古びた木造の家が佇んでいる。表札の横には引き戸があり、これが玄関なのだろう。蒼真が顔を上げると、灰色の屋根の上でカラスが彼らを見下ろしていた。

 突然、玄関が開き、中年の女性が現れた。彼女は蒼真と芦名を見て驚き、立ち止まった。


「すみません」

 蒼真が中年女性に声を掛ける。彼女は怪訝そうに二人を見比べた。

「なんでしょう」

「ここは伊吹頼子さんのご自宅でしょうか?」

「そうですが」

「私はMECの阿久津蒼真と言います。こちらは同僚の芦名隊員です」

 芦名が軽く会釈する。女性の警戒感は変わらない。無表情のまま彼女が会釈した。


「またあの子、何かしましたか?」

「いえ、何もないですよ。お話聞きたくって。お母さまですか?」

「いえ、叔母です。あの子の母親は、あの子が乳飲み子のときに亡くなったんでうちで育てています」

 あの子にはお母さんはいないのか。蒼真は頼子と自分が重なって感じる。

「頼子さんはご在宅ですか?」

「いませんよ。あの子はいつも家にいないんで」

 叔母さんが吐き捨てるように言う。


「変な娘でね、私どもも困ってるんですよ」

「それは動物の声が聞こえる、とかですか?」

 叔母さんがジロっと蒼真を見返す。

「そうなんです。気持ち悪いったらありゃしない。この前も森で蝙蝠の唄が聞こえるって。なんでも気温が温かくなって餌になる虫が増えてきたから喜んでるって。ほんと、私たち意味が分からなくって」

「そうなんですね」

 たぶん頼子は感じた本当のことを言っているのだろう。でも周りはだれも分かってくれない。


「姉さんが死んだとき、あの子はまだ一歳になってなくって。赤ちゃんなりにショックだったんでしょうね。そんな変なことを言うのもそれが原因じゃないかって」

 叔母さんがため息を吐いた。

「今、頼子さんの行きそうな場所を教えてもらえませんか?」

 叔母さんは少し首を傾げて、


「そうね、裏山によく行っているのでそこじゃないかしら。ちょうど中腹に昔使っていた炭焼き小屋があって、今じゃだれも使ってないんだけど、そこが落ち着くって。そこで動物の声を聞くんだって」

「ありがとうございます。行ってみます」

 蒼真が一礼してその場を立ち去ろうとしたとき

「あの、もしかして、あの子、ここ最近起こってる漁船の沈没事件に関係あるとかじゃないでしょうね」

 心配そうに叔母さんが聞く。

「それは……」


「関係ないですよ」

 蒼真が答える前に芦名が答えた。

「漁船が沈没したとき、彼女が岬の先から見ていた可能性があるんで、その状況を聞きたかっただけです」

 蒼真は芦名に感謝した。自分なら余計なことを言いそうな気がしたから。


「そうですか」

 叔母さんは安堵の表情を浮かべる。

「これ以上気味の悪いことを言いだしたらこの家を追い出そうかと」

 蒼真は耳を疑い言葉も失った。それでも何かを言おうとした瞬間、芦名が彼を制した。

「では、これで失礼します」

 芦名は一礼して蒼真の腕を取りその場を離れた。


「芦名さん、どうして」

「蒼真君の気持ちは分かる。でも我々の仕事は怪獣を退治することだ」

 その言葉に蒼真は何も言えず、ただ芦名の後を追った。二人の行く先には、裏山の炭焼き小屋が待っている。二人は足早に歩みを進めた。


 ×   ×   ×


「君は、本当に動物の声が聞こえるのかい?」

 蒼真の問いに頼子は小さく頷いた。

「でも信じないでしょ」

 蒼真は軽く首を横に振った。

「うそ」


「うそじゃないよ」

「でも、信じないのが普通だと思う。だって動物の声が聞こえるなんて変だもん」

 頼子は小屋の窓から外を見つめた。周囲を取り囲む木々が夏の日差しを遮り、薄暗い部屋の中に静寂が漂う。その薄暗さが頼子の心の不安を一層際立たせているように、蒼真には感じられた。


 ここは裏山の山腹にひっそりと佇む、今は使われていない炭焼き小屋。屋根も壁も風雨にさらされてぼろぼろで、窓ガラスはほとんど割れて消えていた。蒼真は頼子の叔母から教えられた彼女の居場所を目指し、町から近いとはいえ荒れ果てた道をひたすら登ってきた。石がゴロゴロと転がるその道を進みながら、こんな場所に本当に女子中学生がいるのだろうかと疑問を抱きつつ。


 だが頼子はいた。炭焼き小屋の前で小鹿と静かに語り合っていたのだ。蒼真が声を掛けると、小鹿は驚いて森の奥へと逃げていった。頼子は鋭い目で蒼真を睨む、その視線はまるで蒼真の心を貫くかのように感じられた。

 事情を説明し、頼子が蒼真と口を開くまでには、かなりの時間がかかった。彼女は人を信じていないのだと、蒼真には痛感させられる。


「信じるよ。だって君はクジラのお母さんの声が聞こえたんだろ」

 頼子はまた小さくなずいた。

「教えてほしい、どうして子クジラは死んじゃったの?」

「漁船に近づきすぎてスクリューに巻き込まれたの。子クジラはなんでも興味津々で近づいていくから、で、船は気付かず、それでスクリューに巻き込まれたみたい」


「なら故意じゃなく事故なんだね」

「そう、でもお母さんからしたら故意とか事故とか関係ない。死んだ子供を返せって、子供を奪った人間が憎いって」

 頼子が下を向く。


「今日も聞こえたの。あの貨物船が襲われたときに」

「でも、そうだとしたら逆恨みじゃないか。そのために人が犠牲になるのはどうなのかなぁ」

「でも、お母さんって、そんなもんなんでしょ。子供のためならなんだってする。だから子供を失ったときの思いは強いって、どっかでだれかが言ってた」

 頼子は割れた窓ガラスの向こうを眺める。


「私には分からないことだけど」

 頼子の目がさらに遠くを見つめる。

「そうか、頼子ちゃんは小さいときにお母さんが亡くなったんだよね」

 頼子は答えない。

「僕もね、小さいときにお母さんが死んじゃったんだ」

「えっ」

 頼子が蒼真の方を向きなおす。


「でも、小さかったけど、お母さんが自分のことを愛してくれていた。そんな記憶はどっかにあるんだ」

「私もね、一歳になってなかったけどお母さんに優しく包まれた記憶がどこかにあるの」

 頼子は、そっと一歩を踏み出し、蒼真との距離をわずかに縮めた。

「そのときのことを思いだそうとするとき、動物たちの声が聞こえるの」

「じゃぁ、僕にも動物の声が聞こえるかな」

 蒼真が笑って見せた。


「きっと、きっと聞こえるよ」

 頼子の愛らしい笑顔が、蒼真の胸に深く響いた。さっきまで一度も笑顔を見せなかった頼子が、今は微笑んでいる。蒼真が自分を理解してくれる存在だと、頼子が認めてくれたのだと。

「頼子ちゃんにお願いがあるんだ」

「なに?」

「君がクジラの声を聞くことができるのであれば、もしかすると君の声があのお母さんクジラに伝わるかもしれない。だから呼びかけてほしいんだ、海の底で静かに暮らしてって」


「私が?」

「君だって、あのお母さんクジラが死ぬの、いやでしょ。僕だって殺したくない」

 頼子が項垂れる。

「お母さんの思いを分かってあげれるのは頼子ちゃんだけなんだ。だから、だからお願い。お母さんに生きててほしいから」

 頼子は前を向いた。

「分かった。できるかどうか分からないけどやってみる」


 ×   ×   ×


 どこまでも広がる青い夏空に、スカイタイガーが大きく旋回している。日の光を浴びて、その機体はまばゆいばかりに輝いていた。スカイタイガーの下には大きな帆をなびかせた漁船が静かに航行している。スカイタイガーとは対照的に、船は古びており、日の光を反射することもなく、廃船寸前であることは一目で分かった。


『こちらスカイタイガー、眼下の漁船に今のところ異常なしです』

 田所が無線で本部と通信している。

『こちら作戦室、引き続き警戒を怠るな』

 吉野隊長の力強い声が無線を通じて響き渡る。その後、マリンタイガーに乗船している芦名の声が無線に乗って流れ込んできた。


『海中にまだ怪獣の影はありません。引き続き警戒します』

 蒼真は岬の突端で彼らのやり取りを見守っていた。隣には頼子が佇んでいる。

 今回の作戦はこうだ。おとりの漁船を無線でスカイタイガーがコントロールし、その漁船からは大きなスクリュー音が海中に流される。きっと怒りを持って怪獣が現れるはず、これは蒼真の進言であった。


 怪獣が誘い出され姿を現した瞬間、スカイタイガーが上空から攻撃を仕掛ける。怪獣が攻撃を避けて潜水すると、マリンタイガーが攻撃、できるだけ海上へ追いやる。そして再びスカイタイガーが上空から攻撃を加えるという作戦だ。


 蒼真は海上を見つめていた。彼にはこの作戦以外にもやるべきことがあった。怪獣が現れたときに話しかけること。「海の底で静かに暮らせ」と。蒼真は隣にいる頼子を見た。彼女も真剣な眼差しで海上を見つめている。


 蒼真はこの作戦をMECのだれにも話していない。信じてもらえないと思ったからだ。しかし、この作戦には勝算があると蒼真は信じていた。子供を失った母親をこれ以上傷つけたくない。そのためには、母を失った悲しみを知る頼子だけが怪獣を説得できる、彼女の思いはきっと伝わるはずだ。


「聞こえる……」

 頼子が耳を澄ませる。蒼真には波の音しか聞こえない。しかし、頼子が何かを聞き取ったのなら、蒼真もさらに海上に目を凝らした。

「聞こえる、あれはお母さんの声、憎い、坊やを殺した人間が憎い」

 頼子の眉間に皴が寄る。


『ソナーに怪獣の影発見、真っすぐ漁船に向かっています』

 無線に芦名の声が、

『攻撃準備』

 吉野隊長が指示を出す。

『了解!』

 スカイタイガーが漁船に対して急降下していく。


「頼子ちゃん、お母さんに語り掛けて! あれは事故だったんだ。漁船を襲っても坊やは帰ってこない。それにお母さんが傷付けば坊やが悲しむ」

 頼子は目を閉じ、無言の言葉を唱えている。その眉間の皴がより深くなっていく。

「だめ、お母さんの怒りは収まらない。殺す、人間を殺すって」

「え!」

 蒼真の目の前で、海が盛り上がり始めた。その瞬間、小さな漁船が空高く弾き飛ばされ、粉々に砕け散る。海上には巨大な尾鰭がそびえ立っていた。


『攻撃開始します』

 スカイタイガーが怪獣を狙ってミサイルを発射した。海上に大きな水しぶきが上がり、ミサイルは海中の怪獣の胴体に命中する。白い巨体が海上に現れた瞬間、スカイタイガーは間髪入れずに二発目のミサイルを放った。

「ギャオー」

 怪獣は咆哮をあげながら海中へ沈む。


『魚雷発射!』

 芦名の号令で魚雷が発射、目標通り怪獣の腹に命中。怪獣は再び海上に向かう。

『怪獣は海面に向かっています』

 目の前で繰り広げられる激しい攻撃を見つつ、蒼真は頼子に切実に訴えかけた。

「頼子ちゃん、もっと話しかけて!」

「ダメ、これ以上暴れてはダメ。あなたが、お母さんが死んじゃう」

 頼子の頬を涙がつたう。蒼真も心の底から祈る。「お願いだから、逃げてくれ」と。海上に姿を現した怪獣が一瞬動きを止めたかのように見えた。しかし、その巨体にスカイタイガーのミサイルが命中した。


「キャー」

 頼子がその場に崩れ落ちた。蒼真が駆け寄ろうとした瞬間、大きな爆発音が響く。再び海上を見ると、怪獣の背中から勢いよく潮が吹き出していた。その勢いは凄まじく、上空のスカイタイガーが大破する。

『尾翼が破損、海上に不時着します』

 無線から田所の声が響く。海上に辛うじて不時着したスカイタイガーに向かって、怪獣が迫っていく。


「田所さん、逃げてください」

 蒼真が無線に叫ぶ。

『こちらマリンタイガー、怪獣をおびき寄せます』

 怪獣の背後にマリンタイガーが浮上し、数発の魚雷を発射した。魚雷は怪獣の胴体に命中し、幾本もの水柱が立ち上がった。


「キャッー」

 頼子が弾かれるように後方に倒れる。

「頼子ちゃん!」

 駆け寄る蒼真、頼子を抱きかかえたとき彼女は放心状態だった。

「頼子ちゃん、しっかりして」

 頼子は意識が薄れゆく中、絞り出すように言葉を発した。


「お母さんは許さないって、殺されても構わない。いえ、殺してほしいと。坊やがいないこの世に生きていたくないと」

「頼子ちゃん!」

 蒼真の声が届く前に彼女は気絶した。

『怪獣が近づいてきます。あっ、怪獣にマリンタイガーが咥えられました』

 芦名の慌てる声が聞こえて来る。


『なに!』

 不意に吉野隊長の慌てる声が耳に入る。

『怪獣に咥えられたまま深海に向かっています』

『なんとか脱出できないのか!』

 しばらく無言が続く。芦名がきっと怪獣から逃れるための操作をしているのだろう。しかし、


『ダメです、このままだと水圧で船体が持ちません。自爆して怪獣にダメージを加えます』

『ダメだ、芦名、あきらめるな』

 無線から緊迫した会話が流れ続ける中、蒼真は頼子をそっと近くの木陰に寝かせた。そして、ゆっくりと左手を挙げる。


 ネイビージャイアントが海中に飛び込む。その速度は怪獣ホワイトホエールをはるかに凌駕している。周囲の光が徐々に薄れ、深海への入り口に差し掛かった。すると、前方に白い影が浮かび上がる。口元にはマリンタイガーの姿が見える。間違いない、あれはホワイトホエールだ。

 ネイビーがホワイトホエールの尾鰭に飛び掛かる。ホワイトホエールは激しく尾鰭を振り、ネイビーを振り落とそうとする。それでもネイビーはしっかりと食らいつき、ホワイトホエールは威嚇するように大きな口を開けてネイビーを睨み返す。その瞬間、マリンタイガーはホワイトホエールの呪縛から解放され、全速力でその場を離れていった。


 マリンタイガーを追おうとするホワイトホエールの前に、ネイビーが立ちはだかった。全身で阻まれたホワイトホエールは、全力でネイビーにぶつかってくる。その衝撃は凄まじく、ネイビーは弾き飛ばされ、近くの崖に体を打ち付けられた。

 一瞬動きが止まるネイビー。その隙にホワイトホエールがネイビーの足を噛み、深海へと引きずり込もうとする。もがくネイビーだが、ホワイトホエールの強力な呪縛から逃れることはできない。猛スピードで潜水していくホワイトホエールに、ネイビーはなすすべもなく引きずられていった。


「苦しい、水圧が……

 ネイビーの体が軋み始めた。水圧で徐々に体も動かなくなっていく。

「ダメだ、このままではやられる」

 ネイビーの意識が次第に遠のいていく。頭が朦朧とする中、脳裏に浮かんだのは優しい母の顔だった。

「蒼真、私の大事な蒼真」

 蒼真は母の胸に飛び込みたくなる。


「ダメ、行ってはいけない」

 頼子の声だった。蒼真はなんとか踏み留まった。だが意識はどんどん薄れていく。そのとき、

「やめて! お母さん、もうやめて」

 再び頼子の声が蒼真の耳に飛び込んで来る。

「その人は悪くない。だからやめて。これ以上暴れないで!」

 ホワイトホエールの動きが止まった。蒼真は耳を澄ませる。もしかしたら、自分にも母クジラの声が聞こえるかもしれない。


「私は最愛の子供を失ったのよ」

 声が聞こえる、蒼真の耳にも、母クジラの悲痛な叫びが。

「あれは事故なの、だからだれも悪くない。お願い、怒りを抑えて」

「ダメ、私はもう怒ることでしか生きていけない。だから、だから早く楽にして。あの子のもとに、あの子のところに私を送り届けて!」

 蒼真は気付いた。この母クジラがなぜ暴れているのか。その瞬間、ホワイトホエールがネイビーに背を向けた。潮を吹くための呼吸穴が見え、一瞬それが開いた。その中には、あの赤い光が輝いている。


「頼子ちゃん、ごめん、お母さんクジラ、助けてあげれなかった」

 ネイビーが左手をホワイトホエールに向けた。呼吸穴が再び開き、ネイビーの青い光線が赤い光を捕らえる。ホワイトホエールがネイビーの足を咥えていた力が緩み、ネイビーは全速力でホワイトホエールから離れた。

 白いクジラはゆっくりと深海へと沈んでいく。母クジラは静かに消える。それは深海の暗闇の中へなのか、それとも。蒼真はそれ以上考えず、海上へと急ぐのであった。


 ×   ×   ×


「ごめん」

 岬に佇む墓石の前で、頼子が静かにかがみ込み手を合わせている。

「お母さんクジラ、助けれなかった」

 蒼真の言葉に頼子は応えず手を合わせ続けている。きっと頼子は落ち込んでいるはず、何と謝れば良いのか蒼真は困惑していた。だが目を閉じたその横顔は思いのほか穏やかだと蒼真には感じられた。


「ごめん、謝って済むことじゃないんだけど」

 蒼真が再び謝罪の言葉を口にすると、頼子はゆっくりと目を開けた。そして、おもむろに立ち上がり、蒼真を見つめる。その目は数日前の鋭く突き刺すような目ではなく、穏やかで優しい光を湛えていた。

「聞こえたの」

「?」


「聞こえたの、お母さんの声が」

「えっ」

 頼子の表情がさらに柔らかくなった。

「なって聞こえたの」

「ありがとう、て」

「ありがとう……」

 蒼真は予想していなかった言葉に戸惑いを隠せない。


「たぶん、子クジラのところに行ける、そう言う意味だと思ってる。海に沈んでいくお母さんクジラは、ネイビーにありがと、って伝えたかったんだと思う」

 頼子には聞こえていたのだ、自分には届かなかった母クジラの声が。自分の行動は正しかったのだろうか。母クジラを助けられなかった自分の行動は、果たして彼女の助けになったのだろうか。

「でも頼子ちゃんは生きていかないとね。頼子ちゃんのお母さんはきっとそれを願ってるよ」

 頼子は深く頷いた。


「じゃあ、これで帰ります」

 頼子が頭を下げる。そしてくるりと背を向けた。

「ありがとう、頼子ちゃん」

 頼子が振り向いた。その顔は初めて会ったときの憂鬱さはない。笑顔が蒼真の心をさらに救う。頼子はそのまま町の方に歩いていく。

 蒼真はその姿をしばらく見送っていた。彼女の言葉に、彼女の笑顔に救われたことに感謝して。

 

《予告》思いを寄せる池田先生が結婚する、ショックを受けるアキラの学校に巨大なセミが来襲する。崩れた校舎で取り残されたアキラと池田先生、彼らの身に危機が迫る。次回ネイビージャイアント「夏の終わり」お楽しみに

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