第十六話 理不尽な理由
♪小さな生命の声を聞く
せまる不思議の黒い影
涙の海が怒るとき
枯れた大地が怒るとき
終わる果てなき戦いに
誰かの平和を守るため
青い光を輝かせ
ネイビー、ネイビー、ネイビー
戦えネイビージャイアント
「友也はどう思う」
白一色の部屋には清潔感とシンプルさが漂っている。白いベッドの足元には雪を思わせる絨毯が敷かれ、その上には白いテーブルが置かれている。テーブルの上にはルビー色の石が輝いており、白いレースのカーテンから差し込む朝日を受けて煌めいている。その美しい光景を目にした彩の心は揺れ動いていた。
「あなたを死に追いやった男を私が許せると思う?」
彩の大きな瞳に石が放つ赤い光が映り込んでいる。その光はいつまで見ていても飽きることがなく、ずっと見ていたいという気持ちにさせられる。
彩はふっと息を吐き、呼吸を整えることで我に返った気がした。そして石の隣に置かれていた携帯を手に取り、既読のついたメールを開く。それは阿久津蒼真からのメールだった。
『怪獣攻撃をするのに有効な方策を発見しました。また芦名さんを連れてササキ製薬に伺います』
芦名雄介、彼に以前会ったのは片岡に捕らわれたとき以来だ。あのとき、そう、怪獣に襲われたとき、私は芦名の腕に抱かれていた。本当なら恐怖で思い出したくない記憶、なのに。
「友也は芦名さんにあこがれているって言ってたわよね。どこがいいの? 教えてほしい、どこが魅力的なの?」
彩は胸に手を当てる。そこには、芦名から渡されたペンダントが輝いていた。
「芦名隊員は死んだ恋人をまだ愛している。芦名さんにとって私は単なるビジネスパートナー、それだけ」
彩が下唇をかむ。そして目を閉じた。
「彼は彼、私は私。それだけ。いや、それ以上に私にとって芦名雄介はたった一人の弟を死に追いやった憎い相手」
彼女の手がペンダントを包み込み力いっぱい握りしめた。
「そう、私が芦名さんの亡くなった彼女に瓜二つ、それだけ。それだけで彼が私を見つめた。彼は明らかに私のことを気に止めていない。本人もそう言っていた」
彩の体に怪獣サンガーラに襲われたときの芦名に抱かれた腕のぬくもりがよみがえる。胸の鼓動が速くなる。それは怪獣に襲われた恐怖?それとも……
彩が目を開くとそこにはあのルビー色の石があり、その赤い光が彼女の目に飛び込んできた。するとどうだろう、あんなにもやもやしていた気持ちが少しずつ安らいでいく。心の中にある何かが消えていく。まるで怒りをこの石が吸い取ってくれているような、そんな錯覚に陥る。
「友也はどう思う」
彩が問いかける。それは弟への問いかけなのか、それとも自らへの問いかけなのか。彼女の問いには誰も答えてくれない。ただルビー色の石のみが赤い光を放っているだけだった。
× × ×
強烈な夏の陽光がアスファルトを照りつけ、反射する熱がビルの谷間を灼熱地獄に変えている。そんな中、プラカードを掲げた人々が汗だくになりながら行進していた。一団が掲げるプラカードには『恥を知れ! 薬害を起こしたササキ製薬に鉄槌を』『苦しむ人々に謝罪を 社長は即退陣を!』と書かれている。彼らの抗議の声がビルの谷間の空気をさらに熱くしているように感じられた。
芦名はササキ製薬の七階の会議室からその様子をじっと見つめていた。
「肝炎の炎症を抑える薬で脳に副作用が出たって何年か前の新聞で読んだ気がします。今裁判中なんですよね」
蒼真は芦名の隣に立ち、窓越しにシュプレヒコールを上げる人々を見下ろしていた。
「ササキ製薬は予測不可能だった、って釈明していますが、それに納得がいかない人たちがいるんですね」
芦名は蒼真を見ずに階下に目を落としながら、
「良かれと思ってやったことが悪い方向に出たとき、人はそれを非難する。当事者以外の人が非難するのは如何かと思うが、当事者になれば話は別だ。それがどんな理不尽な理由であっても、彼らに黙れとは言えない」
「以前芦名さんが言っていた“人は自分の大事な人が亡くなったとき、何故、自分の前からいなくなったのかの理由を探す。それが他人からは理不尽なものであっても、自分を納得させる理由を探す”って。あの人たちもそうなのかもしれませんね」
芦名は答えなかった。蒼真はこれ以上芦名に辛いことを思い出させても、と考えてそれ以上何も言わなかった。静まり返った会議室にはシュプレヒコールだけが響いていた。しばらくその状況が続く中、別の音が入り込んできた。それはドアをノックする音だった。芦名と蒼真が振り返る。
「お待たせしました」
扉が開き、彩と見覚えのある中年男が会議室に入ってきた。蒼真は一瞬、誰だろうと頭の中を探ったがすぐに思い出した。そう、以前中原課長格と同席していた彩の上司、金田室長だ。
その二人は扉に近い席に立った。
「どうぞ、お座りください」
金田室長に促され芦名と蒼真は窓側の席に着いた。金田室長が芦名の前に、彩が蒼真の前に着席する。芦名は彩から視線を外すためにまっすぐ金田室長の方を向いていた。その彩も芦名を見ようとしていない。蒼真は軽くため息を吐いた。
芦名はまっすぐ金田を見据え開口一番要件の話を始めた。
「今回お伺いしたのは、神経興奮抑制剤を怪獣攻撃の兵器として使いたいのです」
「ほう、抑制剤と」
金田室長が答える。彩は変わらず下を向いていた。
「まずは実験レベルなのですが、いかんせん怪獣に対応するためにある程度大量に生産していただきたいのですが如何でしょうか」
「もちろん、協力させていただきますよ」
金田室長がニコニコしながら答える。蒼真はその笑顔にどこか胡散臭さを感じながら、金田室長の反応をじっと伺っていた。
「弊社としてもMECさんに協力して地球平和に貢献する、これはわが社の方針である、科学が人を救う、というモットーと合致しておりますので」
金田室長の胡散臭い笑顔のせいか彼の言葉がどこか嘘っぽく聞こえる。蒼真は彩がどう思っているのか気になった。その彩が蒼真に目を向けそして口を開いた。
「ご用意させていただく期限はいつ頃になりますか?」
蒼真は芦名をチラッと見た、が、どう見ても彩の質問に答えるつもりはなさそうだった。
「できるだけ早くと言いたいところですが、ササキ製薬さんのご都合もあるでしょうし」
蒼真が申し訳なさそうに頭を掻くと、
「承知しました。今の在庫でいつまでに、どれぐらい準備できるか、明日の回答にさせてください」
「ありがとうございます。お願いします」
蒼真が頭を下げると、金田室長が再び胡散臭い笑顔を浮かべ揉み手をしながら芦名に話しかけた。
「当社としても全力でご協力させていただきます。ただ、申し上げにくいのですが、やはり緊急対応となりますと、それはそれなりに費用が掛かりますもので」
「分かりました。調達の目途がつき次第、経理部門から連絡させます」
「よろしくお願いいたします」
金田室長の口角がさらに上がり、彼の笑顔はますます胡散臭さを帯びていく。
「今後の調整はうちの鳥居君と阿久津隊員の方で進めるでよかったでしょうか?」
「それは……」
蒼真がそう言いかけたとき芦名が割って入ってきた。
「はい、それでお願いします」
蒼真は芦名を鋭く睨んだが、芦名は蒼真を見ることなくさらに彩も見ずに金田室長の方へ視線を向け続けていた。
「ではその方向で。すみません、私は別件があってこれで失礼させていただきます」
金田室長が立ち上がると芦名もそれに続いて立ち上がった。蒼真と彩もその動きに合わせるように立ち上がる。金田が一礼して部屋を退出すると芦名もすぐに続こうとした。
「じゃぁ、私もこれで。あと、蒼真君よろしく」
「え、ちょっと、芦名さんも話に参加してくださいよ」
そう、何のために芦名をここに連れてきたのか。それは彩と話をしてもらい、お互いの仲を深めるため。
「いや、ここは科学班である蒼真君が主導で計画を進めてくれ。それが君の仕事だから。自分は戦闘班なので帰るよ」
「えぇ、そんな」
芦名が彩に向かって一礼すると、彩も深々とお辞儀を返した。
「では」
その言葉を残して芦名は会議室を退出していった。彼が出て行ったあと扉が閉まるまで彩は頭を上げなかった。ふたりの気持ちがすれ違っていることはいくら鈍感な蒼真でも察することができる。だからこそ芦名にはもっと話をして欲しかったのに。
「ったく、人の気持ちも知らないで」
蒼真が再び席に着く前、彩がやっと頭を上げた。
「彩さん、いい加減に芦名さんのこと、許してあげたら」
「なんのこと?」
彩が無表情で答える。
「蒼真君、勘違いしないでね。ここにいるのはササキ製薬の営業担当である私。この仕事を受注することが私のタスク」
「ビジネスってやつですか」
彩が静かに頷く。
「僕は彩さんがお金儲けだけで動く人とは思っていません、ですけど」
「企業ってね、そんなに甘くないの」
彩は静かに窓の近くに歩み寄り、外の様子を見下ろした。
「あれを見て」
蒼真は立ち上がり窓の方へ歩み寄った。
「あれはね、会社が利益を出すために入れるべき薬品を入れなかった結果」
「え、でも新聞には……」
「公式的には予測不可能だったってことになっているけど、本当は利益優先で作った薬で出た被害者たち」
無表情の彩の言葉は乾いた響きを持っていた。
「彩さんはそれが良いと思ってないんでしょ」
蒼真の問いかけに答えず彩はただ階下を見つめ続けていた。
「僕は彩さんならそんな会社を正してくれると信じてます」
「それは…… でもね、会社って独りで問題を改善するのはとても難しいの。みんな仕事が忙しくって、声を挙げても誰も相手にしてくれない。それよりも上の言うことに従っていれば自分は安泰、そう思う人はたくさんいる」
そう答える彩の目は少し寂しそうだった。蒼真は彩の心情を思うと心が痛んだ。きっとあの金田室長は上の言うことに従順なタイプなのだろう。その部下として働いている彩はきっと本意ではないことをやらされているのではないか。
「厳しいんですね」
「そうね」
彩は変わらず階下に目を落とし続けていた。道路では抗議のプラカードを掲げた集団が変わらずシュプレヒコールを挙げている。
「彩さん、疲れてます?」
彩が蒼真の方へ少し笑みを浮かべながら振り返った。
「まぁね。仕事だから」
「そんな彩さんには、心の支えになる人が必要じゃないですか? 例えば」
「それ以上は」
彩の目が鋭く蒼真を睨んだ。
「意固地だなぁ」
蒼真は呆れ顔でその先を言わなかった。会議室にはただシュプレヒコールの響きだけが残っていた。
× × ×
「どうしたらいいと思う」
蒼真が眉をハの字にし、唇を尖らせながら美波に問いかける。
「困ったものね」
夕食後のリビングにはいつも通り蒼真と美波、そして八尾が残っていた。蒼真はソファーに座り頬杖をつきながら考え込んでいた。隣で両手を頭の後ろで組みそっくり返っている八尾が答えた。
「ほっときゃ、いいんじゃん」
「なんとなく気になるんだよね」
蒼真の唇がさらに尖る。
「二人とも意識してるのは確実なのにね、なにが引っかかっているのかしら?」
蒼真の真正面に陣取る美波が小首を傾げた。
「彩さんは弟さんが死んだのは芦名さんがむちゃな攻撃を怪獣に仕掛けたからだと思っている」
「その話聞いたことあるけど、事実なの?」
「防衛隊で聞いた話だと、撤収命令が出ていたのに芦名さんが攻撃を止めなかったんだって。それに参戦したのが彩さんの弟さんで、その直後、怪獣の攻撃を受けて墜落したんだって」
「それって、芦名さんが悪いんじゃなくて、参戦した弟さんが悪いんじゃないの」
「でも、彩さんは、芦名さんが命令を無視しなければ弟さんが参戦することはなかったって思ってる」
「ふむ、かなり強引な理由ね」
今度は美波の唇が尖る。
「で、芦名さんは?」
「芦名さんは芦名さんで、彩さんが死んだ彼女に似ていることが引っかかってる」
「なんで、似ていてなにが問題なの?」
美波がさらに首を傾ける。
「死んだ彼女、確か小夜さんって名前だったと思うけど、二人で旅行に行く約束だったんだ、芦名さんが仕事で遅れて、小夜さんだけバスに乗って事故に合ったんだ。芦名さん、先にバスに乗って目的地に向かってほしい、って言ったこと悔やんでいて、バスに乗れ、って言わなければよかったって思ってる。彩さんを見ると、そのことがよみがえるんだと思う」
「なんか、分からないではないけど、それもさっきと一緒でかなり強引な理由ね」
八尾がつまらなそうな顔をしながら、
「強引と言うより、理不尽って言うんじゃないの」
「そうね」
美波が頷いた。
「めんどくさいな、やっぱり放っておくのがいい」
八尾の声が冷たい。
「でも、なんとかしたいんだよ。そばにいて、じれったくって」
「そうよね」
美波が同調する。
「八尾君も真剣に考えてよ」
「え、俺が?」
八尾が美波の依頼にため息を吐いた。
「しょうがないなぁ」
そっくり返っていた八尾が腿の上に手を置きながら美波と蒼真を交互に見た。
「ゴホン、俺が昔読んだ本によると、恋愛に向かう心理状態には四つある」
美波がニンマリした顔で
「へぇ、八尾君、そんな本読むんだ」
八尾が手のひらを向けゆっくりと頷きながら美波の言葉を制した。
「まずは、よく知られている吊り橋効果」
「吊り橋?」
蒼真が、何それ、と言わんばかりの表情をする。
「まぁ、恋愛に疎い蒼真さんのことは無視して」
蒼真の口が尖った。
「怖い思いをしたとき、その近くにいる男の人を好きになってしまう。恐怖による心臓のドキドキと、恋愛のドキドキを脳が混同してしまう。これを吊り橋効果と言います」
「ほぅ」
蒼真の唇がホゥの発音の形になりながら軽く頷く。
「そう言う意味では、怪獣サンガーラに彩さんが襲われたとき、隣に芦名さんがいたので、きっとドキドキしてたはず。ならきっと吊り橋効果があったと思います。如何ですか先生」
「蒼真君の意見に同意しますな。おそらく一つ目の課題はクリアーだね」
八尾が頷く。
「さて二つ目は障害効果」
「障害ですか先生」
蒼真がちゃかす。
「そうだ、人は障害があればそれを乗り越えようとする。恋愛も邪魔者や反対があった方が燃えるんだよ」
「二人は障害だらけですね、先生」
「ならば必然的に二人は惹かれあう運命なんだよ」
「なるほど」
再び蒼真が頷く。
「三つめはギャップ効果。第一印象から印象がアップすると、最初から分かっているよりより印象が良くなる」
美波の目が右上を向く。
「そう言えば、蒼真君も最初の印象は最悪だった」
「?」
蒼真の眉間に皴が寄った。
「蒼真君の話では、芦名さんは無骨な防衛隊員に見えて、優しい面がある。彩さんも仕事がバリバリできるけどどこか弱いところがある。二人がそのギャップに気付いていればこの項目もクリアーだな」
「なるほど、先生の意見から考えれば、二人は惹かれあって当然ですね」
「ゴホン、まさにそうなるな」
八尾が難しい顔のまま頷いた。
「さて、最後の一つだが」
その言葉に蒼真と美波が前のめりになる。
「最後の一つは親和性」
「親和性!」
蒼真と美波が声をそろえた。
「親和性とは、二人は似ていると認識すること。そのために必要なのは、同じ時間、同じ場所を共有することで、心が通じ合ってるような気分になって、恋愛感情が芽生える」
「それだ!」
蒼真と美波が同時に立ち上がった。その姿に驚く八尾をよそに二人は顔を見合わせて大きく頷いた。
× × ×
「MECがササキ製薬とつるんでる?」
薬害訴訟を行っている被害者の一人が事務所に入ってくるなり声を挙げた。幾人かの人がその声の方向に顔を向けた。
古びたビルの三階。西日が差し込み電灯を点けていない会議室をオレンジ色に染めている。薬害被害者家族会の十数名いるメンバーの顔も赤みを帯びて、その中には赤鬼のような形相になる者もいた。
飛び込んできたのは三ツ矢浩二だった。一昨年、ササキ製薬の新薬を投与されたことがきっかけで娘を失った彼が、携帯電話を片手に話を続けている。
「分かった、ありがとう」
三ツ矢が携帯の通話を切る。
「今仲間から電話があった。MECがまたササキ製薬とつるんでなにかを発注しようとしているらしい」
「また奴らか。この前からなにかと言えばササキ製薬に薬品を頼んでいやがる」
窓の反対側に座る男の顔がさらに赤くなっていく。
「そうだ、そうだ。あいつらを儲けさせるだけだ」
「癒着じゃないのか」
他の赤鬼たちが口々に声を挙げその場が一気に喧噪に包まれた。しかしその中で低い声が会議室に響き渡る。
「みんな待て」
会議机の一番前、中央に座る老人が語り掛けた。その老人は会長の小池新次郎であった。
「我々はササキ製薬を叩きのめすために訴訟をしているわけではない。何故あんな事件が起きたのか、真実が知りたいだけではないのか」
三ツ矢が小池のそばまで来てその鬼のような形相で睨みつけた。
「俺は娘をササキ製薬に奪われたんだ。あいつらを許せるわけがないだろう。あんただってお孫さんを失ったんだろう」
「それとこれとは別問題だ。怪獣被害を減らすためにMECにササキ製薬が貢献しているのであればそれを我々が非難する道理はない」
老人は鋭い眼光で三ツ矢を睨みつけた。三ツ矢はその視線から逃れるかのように周囲のメンバーを見回す。
「みんなはどう思う。MECの行動を非難すべきだと思うか」
と問いかけた。しかししばらくの間、メンバーは沈黙を保ったままだった。
「小池さんの言う通りだ。俺は真実を知りたいだけだ。家族を奪った理由を」
会議机の隅にいた男が静かにそう言った。その言葉にメンバー全員の雰囲気が変わり一斉に沈黙が訪れた。
「いや違う!」
小池の対角に座っていた赤鬼が立ち上がる。
「俺はササキ製薬が許せない。だから三ツ矢さんの意見に賛成だ」
何人かの男が息を呑み、全員の視線が三ツ矢に注がれた。三ツ矢はそのオレンジの顔に薄笑いを浮かべながら、
「俺は賛同者を集める。そしてMECに抗議に行く。この場にいる人間で俺に賛同してくれる人は付いてきてくれ」
三ツ矢は勢いよく部屋を出ていった。先ほど声を上げた赤鬼が立ち上がる。数人の赤鬼たちも小池を気にしながら立ち上がり会議室をあとにした。残った男たちはため息を吐き、夕日が沈んでいくように会議室のオレンジ色の光が徐々に深い闇へと包まれていった。
× × ×
「なに? この古典的な方法は」
芦名は鋭い眼差しで蒼真を睨みつけた。
「いや、その、これは美波の発案で……」
蒼真は焦りながら言葉を選んだ。 そして横にいる美波にチラリと目を向ける。
「まぁ、二人に親しくなってもらうため。いわゆる親和性ってやつで」
「親和性?」
芦名は今度は彩にチラッと目を向けた。彩は呆れた表情を浮かべ、ため息混じりに言った。
「なんか変な感じがしたのよね。こんな場所で、生命科学の実験があるって話。信じてはなかったけど、それにしても……」
四人が見上げた先、青い空を背景に観覧車のゴンドラが揺れていた。彼らの耳にはジェットコースターに乗った人々の楽しげな悲鳴が響いていた。そう、ここは遊園地であり、美波の提案とはここで仲良く遊ぶことだった。
「美波、もうちょっと良い口実考えろよ」
芦名が周りの風景を見回しながら、
「そう言う蒼真君も自分に、フレロビウム反応が遊園地であったから来いって連絡があったまでは良いけど、遊びに来ている人が怖がらないように私服で来てくれって聞いたときに、なにか妙に怪しいと思ったんだよな」
「ほら、蒼真君のもたいした口実じゃないじゃない。私のと五十歩百歩だと思うよ」
美波は明るく笑い、彩はそれに対して大きなため息を吐いた。
「まぁ、そう言うことなら私、帰るわね」
彩が振り返って仕事に戻ろうとしたその瞬間、美波が彼女の腕を掴んだ。
「ダメですよ。今日は四人で親和性、いえ、親しみを感じる会、いわゆる懇親会をするの。だってここ最近、みんな怪獣退治で疲れているでしょ。だから、今日一日羽を伸ばして楽しむの、そして心を通わせるのよ」
「でも、私、仕事が」
「それなら、MECの蒼真隊員からの依頼にしておけば、出張みたいなものよ」
「?」
蒼真の首が傾く。
「まぁ、いいじゃないですか、固いことは考えず。さぁ、彩さん、芦名さん、まずはあのジャイアントコースターから。あれ、結構人気なんですよ。」
美波が彩の手を引き寄せ反対側の手で芦名の腕を取った。彩も芦名も呆れ顔で美波に引っ張られていく。
「ほら、蒼真君も急いで」
「あ、ちょっと待ってよ」
ジェットコースターの悲鳴が蒼真の声をかき消している。遊園地の人ごみの中に芦名、彩、美波が次々と紛れ込んでいく。慌てて三人を追いかける蒼真も、遊園地の家族連れの中に消え去っていった。
× × ×
三ツ矢がササキ製薬本社ビルの前に一人たたずんでいた。もう東の空には闇が広がり夕日は先ほどよりかなり低くなっている。ビルの窓から明かりが漏れてくることに気付くと、三ツ矢は建物を下から上へと見上げその視線が止まる。あの日、入院していた娘の命が消えかけたとき、彼が病院に駆け付けたのは今と同じ月のこの時刻だった。薄暗い中、明かりが漏れる病棟に入っていった記憶が呼び起こされる。
「先生、助かる方法はないんですか!」
「ないことはないのですが、ただ……」
「先生、なんとかお願いします」
やや俯き加減の医者が重たい言葉を口にするのが難しいのか、静かにそして重々しく言葉を続けた。
「まだ臨床が終わっていない新薬があります。ただ、百パーセント安全とは言い切れません。それでも良ければ……」
「構いません、娘が助かるのであれば、その可能性があるのであれば」
三ツ矢は医者の前に土下座し涙ながらに懇願した。
「もし、あのとき俺が投薬を望まなければ……」
この“もし”を何度繰り返し考えたのだろう。でも、投薬しなければやはり娘は死んでいた。自分の判断が悪かったのではない、悪いのはその薬を作った奴らだ
「あの薬が、あの薬さえ正しく作られていれば……」
三ツ矢の拳に力が入る。
誰がミスをしたのか、何があったのか、そんなことはどうでもいい。娘を殺したのはササキ製薬、そう、彼らのせいで、そう、彼らすべてが悪い。どうしても許すことができない。そう、許してはいけない。
三ツ矢の横に彼と同じようにくたびれた男が寄ってきた。彼もまた被害者家族の一人であった。
「三ツ矢さん。MECへの抗議デモの日程が決まりました」
「いつ?」
「明後日。防衛隊基地の入り口前」
「分かった」
三ツ矢は目を閉じた。
「ササキ製薬は許せない。それに加担する防衛隊もMECも許せない。俺は娘を殺したやつ、それにかかわる奴らを全員許さない」
三ツ矢の拳がさらに強く握られた。
× × ×
「芦名さんはどうして防衛隊へ」
夕焼けが観覧車を赤く染めている。子連れの家族たちは帰途に着こうとしているが夜の遊園地を楽しもうとする恋人たちが代わりに賑わいを増している。その中に彩と芦名も混じってテラスのテーブルに向かい合って座っていた。
「最初は単なるかっこよさからです」
芦名が答える。その言葉に耳を傾ける彩の姿があった。そしてそんな二人を少し離れた場所からちらちらと見ているのは蒼真と美波であった。
「そうなんですね。友也と同じですね」
彩が笑みを浮かべる。
「友也は子供のころ怪獣番組が好きで、よく友達とごっこ遊びをしていました」
「そうなんですね」
「大人になってもなんか変わらなくって、私が危険だからって、防衛隊に入ることを反対したのに、勝手に自分で入隊してしまったんです」
彩の顔から笑顔が消えた。
「自分も似たようなものです」
芦名が笑いかける。彩の顔に笑顔が戻った。
「男の人って、似たようなところがあるんですね」
「そうですね。でもあそこにいる蒼真君はちょっと違いますけどね」
二人が蒼真をチラッと見る、と向こうも蒼真と美波が交互にこちらをチラチラ見ている。彩はその様子にクスッと笑った。
「彩さんが笑ったの、初めて見るような気がする」
「そうですか、いつも笑ってますよ」
芦名の表情も次第に柔らかく変わっていった。
「彩さんはどうして薬品会社に?」
「父も母も病気で早くに亡くしたもので。だから少しでもそういう人を助けたい、そう思って」
「そうなんですね」
彩の表情がまた曇った。
「でも現実は違っていました」
「?」
彩が少し固い笑みを浮かべた。
「まぁ大人になると色々あるってことですよ。子供のころ、怪獣ごっこしていた芦名さんも、きっと色々あるんでしょ」
芦名は変わらない固い笑顔に何かを察した。
「なにか困ったことがあるんだったら……」
と言いかけたが、言葉を飲み込んで再び蒼真たちの方を見た。
「困ったことがあったら、自分では力不足かもしれないんで、あそこにいる二人に相談してみては?」
「大丈夫ですかね、大人の事情を分かる二人には見えないですけど」
彩がまたクスッと笑った。
× × ×
「君たちが彩さんにかかわり過ぎるからこんなことになるんじゃないのか」
三上は作戦室のモニタを眺めながらぼやくように呟いた。防衛隊玄関前にはプラカードを持った十名ほどの男女が行進している姿が映し出されていた。
「逆恨みもいいところですよ。僕らとササキ製薬とはやましいところはなにもないのに」
蒼真が芦名をチラッと見たが芦名は硬い表情のままモニタを見続けていた。モニタにはプラカードを持った人々が行進する姿が映し出されており、『ササキ製薬と防衛隊に癒着がある!』『税金の無駄使いを止めろ!』『公正な取引を』などの誹謗中傷するコメントが書かれている。
「まぁ、やましいことがないことは分かるが、問題があるかもしれない企業にこれ以上かかわらない方が良いんじゃないか?」
「えぇ、そんな……」
蒼真が反論しようと一歩前に足を踏み出した瞬間、芦名が彼の腕を取った。
「そうですね、三上隊員の言う通り、これ以上ササキ製薬に係らない方が良いかもしれませんね」
「そうだな、それがいい」
三上は首を軽く振りながらその場を離れていった。
「いいんですか、あんなこと言って」
蒼真はむくれた顔を芦名に向けた。
「防衛隊としては資材発注メーカの透明性は大事だからね、仮になにもしていないとしても、疑われていること自体、付き合うことはよくない」
「えぇ、でも彩さんはなにも悪いことはしていませんよ」
「彩さんじゃなくって、ササキ製薬の問題だよ。そこは混同しちゃだめだね」
「……」
蒼真は芦名の言葉を聞いて、彩の無表情な顔を思い出した。
『会社が利益を出すため、本当は利益優先で作った薬で出た被害者』
という言葉が頭をよぎる。そして金田のニンマリした顔が脳裏に浮かんだ。
「彼らが我々を逆恨みしたとしても仕方がないと思う」
「それは前に芦名さんが言っていた、自分に起こった不幸なことに対してなにか理由を求める、ってやつですか?」
「恨み続けることで自分を維持している。それを失えば彼らは生きていることができない」
「怒りが生きることのエネルギー?」
蒼真はふと父のノートに記されていた「Y」の文字を思い出した。
「なんか悲しいですね。怒りが生きる力だなんて」
蒼真が項垂れた。その瞬間基地内にけたたましい警告音が鳴り響いた。
「緊急指令、緊急指令。防衛隊基地上空、未確認飛行物体あり、職員は警戒せよ、繰り返す、警戒せよ」
作戦室に吉野隊長以下MECの隊員たちが集まる。
「画面を切り替えろ」
吉野隊長が一般隊員に指示を出す。その画面がプラカードを持つ人たちから白い雲が浮かぶ青空へと切り替わった。青い空の中には明らかに異質な銀色の物体が浮かんでいる。それを見た田所が指をさした。
「あ、宇宙船だ!」
「いかん、宇宙船がデモ隊を狙っている」
芦名が備え付けられたマイクに向かって叫ぶ。
「エントランスの警備員へ、デモ隊に直ちに防衛隊の建物に避難するよう呼びかけるんだ」
「了解」
その返答が来るのとほぼ同時に宇宙船がデモ隊の真上に到着した。
「しまった、遅かったか」
芦名の落胆の声が響くと同時に宇宙船から白い霧がデモ隊に降り注がれる。霧は彼ら全員を包み込み天に向かってぐんぐんと大きくなっていった。その霧が晴れたとき、今までに見たこともないほど巨大な怪獣が防衛隊基地を見下ろしていた。
「攻撃準備!」
吉野隊長の号令で各隊員が基地に備え付けられた砲台を発射できる制御装置の前に配置された。モニタには二本の角が牙のように前に突き出した異様な表情の怪獣レミックスが、一歩また一歩と近づいて来る様子が映し出されている。
「全砲台、攻撃開始!」
砲台が一斉に火を吐きレミックスは炎に包まれる。しかしその巨体は怯むことなく、逆に怒りをたぎらせて防衛隊基地に向かって近づいてきた。
「隊長、今こそ神経抑制剤を試すときだと思います。抑制剤が機能すれば、デモ隊の人たちを救えるかもしれません。もうすでに薬剤はスカイカイトに搭載してあります。今すぐご決断を」
吉野隊長が蒼真の進言に答える前に芦名は自らのヘルメットをかぶった。
「自分に行かせてください!」
そう言うと、吉野隊長の指示を仰ぐ前に作戦室を出ていく。
「仕方のないやつだ。田所と三上はスカイタイガーで芦名のスカイカイトを援護」
「了解」
二人が頷き、作戦室を出ていく。蒼真はその姿を見送り再びモニタに目をやった。そこには砲撃を受けながらも変わらず進撃するレミックスの姿が映し出されていた。
「お願いだから抑制剤の効果が表れてくれ。彼らにはなんの罪もない」
やがてレミックスの後方にスカイカイトが近づいてきた。レミックスは砲撃に気を取られスカイカイトの存在に気付いていない。
「しめた。今なら薬を全身に散布できる」
スカイカイトから黄色い霧状の薬剤が投下され、レミックスはその霧に包まれていった。
「砲撃やめ」
吉野隊長の命令で砲撃がやむと今までの喧騒が一気に静寂に包まれた。作戦室の全員が息を飲み黄色い霧の行方を見守っている。やがて霧が晴れ始めるとその先には巨大なレミックスが先ほどと変わらない姿で立っていた。
無線から芦名の悲痛な叫び声が響き渡る。
「蒼真君、どういうことだ。なぜ、なぜこの怪獣に抑制剤が効かない?」
「怒りが大きいんですよ。この程度の濃度の抑制剤では怒りを抑えきれない」
「そんな、わぁ!」
レミックスが吐いた火炎がスカイカイトに命中し機体は炎に包まれて墜落していく。
「芦名さん!」
その言葉と同時に作戦室を出ていく蒼真が急いで建物の外へ向かう。やがて彼の体が青い光に包まれていく。その光が高度を落としていくスカイカイトを捕える。そしてそのままゆっくり地面に着地した。青い光はやがて人型に形を変えていく。そしてはっきりとネイビージャイアントの姿が露わになっていった。
ネイビーが振り返るとそこには自分より三倍はあろうかと思うほどの巨大怪獣レミックスが仁王立ちしていた。ネイビーはそのレミックスに突進していくがレミックスは軽くその突進を受け止めた。それはまるで小さな子供が大人相手に相撲を仕掛けているかのように全く相手になっていない様子だった。
レミックスの両手がネイビーの両肩を掴みそのまま持ち上げていく。ネイビーがどれだけ足をジタバタと動かしても決して地面には届かない。軽々と持ち上げられたネイビーをレミックスは力いっぱい地面めがけて投げ飛ばした。なすすべもなく地面に叩きつけられたネイビー、激痛のため動けなくなってしまう。
動けなくなったネイビーに対してレミックスはその大きな足で彼を踏みつけた。ネイビーの体が反り返りそして再び地面にうずくまる。レミックスは何度も繰り返し踏みつけそのたびにネイビーの体力が消耗していった。
さらにレミックスがネイビーに覆いかぶさろうとしたとき上空のスカイタイガー三上機がミサイルをレミックスの頭部に命中させる。一瞬怯むレミックス。その瞬間、地上で炎上していたスカイカイトから赤い光がネイビーに向けて飛んでくる。赤い光がネイビーに入っていったとき、彼の体が紫紺に変化し始めた。
再び踏みつぶそうとするレミックスが足を振り下ろす直前、ネイビーは素早く転がりその場を離れる。踏み損ねたレミックスが体勢を崩し大きな音を立てて転倒した。
その隙を縫って立ち上がったネイビーは空へ飛び上がった。起き上がり空を見上げるレミックスを上空から見下ろすとその巨体ももはや恐ろしくは感じなかった。怒り立つレミックスが空に向かい火炎を吐くがネイビーはその攻撃を空中で巧みに避けた。再び火炎を吐くレミックスの攻撃も、今のネイビーには通用しない。
ネイビーの腕がクロスし赤い光線がレミックスの頭上に向かって放たれた。その光線がレミックスに命中、巨体が背中から倒れていく。倒れたレミックスを確認したネイビーが右手を天に向かって上げると、その手が光り赤いサーベルが現れた。
起き上がろうとするレミックスに対し大上段からサーベルを振り下ろすネイビー。彼の体がレミックスを貫くように降下しそのまま地面に到達する。レミックスの動きが止まり、その巨体が真っ二つになって左右に分かれていった。分かれた胴体の内側には赤い光が輝いている。地上で構えるネイビーが自らの左手から放つ光線で片方ずつ撃ち抜いていく。
左右に分かれた胴体が地面に倒れる寸前で音もなく静かに消えていく光景をじっとネイビーが見つめていた。
× × ×
「どうしました?」
防衛隊基地のエントランス。軽く会釈する彩のもとに芦名がゆっくりと近づいてくる。辺りには誰もいない。顔を上げた彩はいつもとは違う温かな笑顔を浮かべてたたずんでいた。
「お呼びたてして申し訳ありません」
彩が鞄の中に手を入れると、芦名の見覚えのあるブローチが光を放っていた。
「実は、これをお返ししようと」
彼女はブローチを差し出した。そう、これは以前彩が片岡孝之に襲われたとき、護身用にと渡した通信機である。
「どうしてこれを」
「私、会社を辞めたんです」
「え?」
芦名は少し狼狽したが、すぐに冷静を装った。
「なにかあったんですか?」
彩は少し俯き加減に答えた。
「今回の事件は製薬会社で働く意義を見失う結果になりました。以前お話した通り、本当は病気で苦しんでいる人を救うはずが逆に大勢の人の命を奪うことになってしまいました」
「それは彩さんのせいではないですよ」
彩が軽く首を左右に振る。
「所詮企業です。どうしても営利に走るのはある意味仕方のないこと。その矛盾の中にいることが耐えられなくなったんです」
彩は再びブローチを芦名の前に差し出した。
「なので、もう防衛隊にはかかわらないので、宇宙人に狙われることもないかと」
「しかし……」
芦名は受け取ることを躊躇した。いくら会社を辞めたとしても、いくら防衛隊とは無関係になったとしても、一度宇宙人に狙われた彼女が再び襲われないという保証はない。しかし彩はブローチを差し出した手を引こうとはしなかった。
「もう、ここには来ませんし、芦名さんに会うこともないです」
その言葉を聞いたとき、芦名は彩の本心が見えたような気がした。いや、正しくは会社を辞めた本当の理由。
「そうですか。分かりました」
芦名がブローチを受け取った。彩の本当の想いと共に。
「あとこれも」
彩が慎重にペンダントを外した。それは、芦名が見覚えのある、あのペンダントだった。
「でもこれは弟さんからの……」
「いいえ、このペンダントは芦名さんが持っていた方が良いと思うんです。だってこれは芦名さんが小夜さんに贈るために買ったペンダントです。だから、私が持っていてはいけない、そう思ったんです」
彩の表情から笑顔が消える。その表情の本意を芦名には読み取ることはできなかった。ただ一つだけ確かなことはブローチを返す理由と同じように彼女はもう二度と自分には会わないと考えているのだということだ。
「分かりました」
そう言うと、芦名の手がペンダントを持つ彩の手の下に自分の手を差し出す。彩はゆっくりと手を傾けた。ペンダントがそのまま芦名の手に落ちる。
口を真一文字に結んだまま彩は穏やかな笑顔を浮かべていた。
「さようなら」
芦名も笑顔で「さようなら」と答える。
彩が軽く会釈をし、くるりと芦名に背を向けてエントランスの出口へ進んでいく。芦名は彼女の背中を見つめていたが何かを振り払うかのように自分もまたくるりと彼女に背を向け歩いて行った。
《予告》
足摺岬に現れた怪獣、それは宇宙人の手によってよみがえった健太による仕業だった。その健太が訪れた花屋、そこで働いていたのは芦名に別れを告げた彩だった。次回ネイビージャイアント「復活した男」お楽しみに