不正解=正解
短編『異世界トリップ意見案』が、いづなさん協力のもと、遂に連載化しました!!
※1話交代で行うリレー小説になります。従って全く文体の異なる話が交互に繋がっていきます。また未計画小説のため、最終回がどのようになるのか、作者である私たちですら予測できておりません。
以上のことを苦手に思われた方には、閲覧を推奨できません。
はちみつ色の髪(染髪剤使用)、亜麻色の瞳(カラコン使用)、整った形をした唇。痩せた身体に程よく筋肉を纏い、その肌もまた程よく日焼けしていた。花は男の美しさを敬愛し、讃えるように小さく咲き乱れている。しかし男は植物さえも魅了するその罪な美しさを奢ることなく、ただ無垢にそして懸命に、人々の気持ちに応えることに総てを捧げ続けた。
男の名は池面(いけづら)太郎。通称“イケメン”。
「というわけで常雄(つねお)よ、貴様は僕の友人であることを誇りに思えばいいと思う」
「お前は死ねばいいと思う。ナレーション使って何やってんだ。んななげー件(くだり)誰も読まねーよ」
「はぁ……(彼が僕に怒りを覚えるのは紛れもない、この僕のせいだ。俺がそばにいることで、彼の光――オーラはかき消されてしまう。だがそれは仕方がないことなんだ。僕の毛穴という毛穴から滲み出る太陽光のごとく強く輝かしいオーラは抑制することなどできるはずがないのだから)」
しかし彼の溜め息の理由がしょうもないことなど、長年時を共にする常雄には容易に見抜かれていた。
「何ため息なんざついてんだ気色悪い。あ、もしかしてあれか?日本史のテスト。3回連続満点の快挙にならなかったからって落ち込んでんのか?」
それを知りながら知らぬフリを貫くサド雄。もしかしなくとも太郎以上にお近づきになりたくない人間だ。
「ばっばかやろう、貴さっま!!なな、何故それを知ってる!!」
「ばかはてめーだ。学年順位張り出されてただろーが」
「っ!!……僕の順位をわざわざ探したのか?この変態!!スケベ!!ストーカー!!」
「ちげーわボケ。俺が珍しく1位だったから、その下に誰がいるのかパラッと見てやっただけだ、2位様(にいさま)よぉ……」
「にいさまだとぉ……僕をそう呼んでいいのは“魔法少女はなこ”にでてくる花子の妹、由子だけだぁぁぁあ!!」
もはやオヤジギャグ以下のクオリティー。
「いつのアニメの話してんだ。で、何間違えたんだよ、日本史」
流石常雄、ツッコミどころが違う。太郎の取り扱い説明書は一体どこに隠してあるのだろうか。
「大正デモクラシー」
「嘘だろ。間違いようがないだろ。何て書いたんだ?まさか空欄じゃないだろう?」
「……大正デモグラシーズ」
この太郎を赤面させるテクニックを持つ人間など、この世界では常雄ただ1人だ。
「なんだよそれ!!眼鏡か?眼鏡なのか?」
そしてこの堂々たる大爆笑である。
ここまで言われては、太郎も自暴自棄になっていた。太郎は自身のダテ眼鏡を太陽に掲げ更に叫ぶ。
「大正、デモグラシーズ!!!!!」
「…………」
天下の陰謀役、常雄ですら返す言葉が見つからない。
ここは暗転するところだろう。誰もがそう思ったそのとき、何故か太郎は真っ白な光に包まれた。
「え?え、え?」
口をだらしなく開けた太郎。誰がこんな男を“イケメン”と呼ぶだろうか。
徐々に光は薄れ、太郎の視界は再び開かれた。見渡すと先程の公園。更に隣には常雄もいた。しかしどうにも常雄の様子はおかしい。何かを探すように辺りを見渡している。
「何やっているんだ?」
太郎が問うが返事はない。常雄の肩に触れるが彼らは見向きもしない。
「おめでとうございます!!」
しどろもどろする太郎の背後から聞き慣れない声がした。
振り返った太郎は思わず目を細める。
「ぼ、僕より眩しいだと……?」
そう。そこには眩しいほどに真っ白な女がいた。真っ白い肌に真っ白なワンピース、真っ白な髪。さらに驚いたことに、その女は30センチ程地から足が離れていた。
「おめでとうございます」
太郎の反応には目もくれず、女は再び繰り返す。
「何?オーディション合格?」
何のだ。
「正解!!ミッションクリア!!魔法界への切符を手に入れましたよ!!」
「え、へ?魔法界?」
「第24回魔法界招待選手権。“東京のどこかに隠された暗号を、眼鏡を太陽にかざしながら叫ぶ”これが今回の試験内容でしたね。今回の暗号は“大正デモグラシーズ”。お見事!!しかし素晴らしいです!!開始わずか5秒で暗号発見とは……過去最速記録に違いありません!!」
当然、太郎は何のことかさっぱり分からない。“魔法界招待なんちゃら”など参加した覚えがないのだ。しかしここまでほめそやされて黙っていられる太郎ではない。
「はっはっはっ!!!僕の手にかかればこんなテスト、造作もない。さあ早く、連れて行くがよい――魔法界へ!!」
「素晴らしい意気込み、ありがとうございます!!では、受験番号と名前をお願いします」
ここまでノったらもう戻れない。そもそも太郎は戻る気もなかった。
「99番、太郎だ!!」
99は日本史の点数。そう、デタラメだ。
そんなことは露知らず、白い女はリストをめくり――
「ありました!!99番、佐江内(さえない)太郎さん!!魔法界へ、ご招待!!」
女が叫ぶと、“池面”太郎は再び真っ白な光に包まれた。
公園には、未だ太郎の姿を探し続ける常雄だけが残されていた。
閲覧ありがとうございました!!
次話はいづなさん、よろしくお願い致します。