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Kapitel.48


「ごめんな」

 天井を見つめたまま悠翔が言う。

「こんなことになっちゃって」 

 夏紀と沙紀は驚いたように悠翔を見た。

「なんで悠翔さんが謝るの。謝るのは私の方……」

 泣きそうな夏紀に、悠翔は微笑んだ。その笑顔を見て、夏紀は唇を噛んだ。

「……ねぇ、最後のわがまま聞いてくれない?」

 悠翔は夏紀を見て、小さく頷いた。

「悪いことをしたと思ってるし、後悔もしてる。でも、どうしても貴方のことが諦められないの」

「姉さん!」

 夏紀が言うと、沙紀は慌てたように口を開く。悠翔はそんな沙紀を見て微笑む。

「……私の何が嫌?あの子と、真央ちゃんと何が違うの?」

 夏紀は、苦しいものでも吐き出すかのように言う。悠翔はそっと微笑んだ。

「真央とは幼なじみでな。生まれたときから一緒だった。というのも、僕の母親と真央の母親が友達で、家が隣だったんだよ」

 悠翔は再び天井を見つめながら呟くように言う。

「多分、僕が三歳くらいの時だと思う。真央の両親が交通事故で亡くなったんだ」

「えっ」

 夏紀と沙紀は驚いて悠翔を凝視する。

「真央は幼いながらに理解してた。二人は母さんが引き取ったんだ。真央の祖父母なんかは反対してたけど、真央や弟の一樹自身が良いというから渋々って感じだったな。だから、一樹なんかとは兄弟みたいなもんなんだよ」

 悠翔は溜息を吐いた。

「一樹がいるからか、真央はしっかりしてた。自分のことは勿論、一樹の世話もちゃんとしてたんだ。どうしてそこまでするのかって訊いたら、真央は真剣に言ったんだ。両親と暮らした家を手放すのが嫌だから、二人を自分の家に連れていこうとする祖父母に対して、二人で大丈夫だということを証明したいんだって。弱みも見せなかったよ。一樹は勿論、僕にも、僕の両親にもだ。常に賢い子でいて、周りの大人は感心してたよ」

 沙紀が小さく、凄い、と呟いた。

「真央はそのまま育っていった。だからさ、真央は人に甘えたことがないんだ。弱みを見せたらいけないと思ってる。いつもしっかりしてないといけないって、思いこんでるんだ。その時僕は思った。僕が真央を守りたいって。真央が甘えてくれるような人になりたいって」

 すると、悠翔は夏紀に微笑んだ。

「僕は真央から離れるわけにはいかない。真央こそが僕の生きる全てみたいなもんなんだよ。本当に愛してる。死ぬまで一緒にいたいね」

 夏紀は頷いた。そして涙を拭う。

「だから……、僕としては、もう夏紀と会おうとは思わない。僕は真央といたいから」

 夏紀は再び頷いた。

「もう、言わなくて良い」

 沙紀が不安そうに夏紀を見る。そんな沙紀に、夏紀は微笑んだ。

「わかったよ。もう会わない。約束する」

 悠翔は悲しそうに微笑む。

「ごめんね」

 そして笑った。

「この話、真央には内緒な」




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