表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/51

Kapitel.43


 目が覚めると、頭痛が治っているように思えた。身体もそう重くない。熱を計ってみると、三十七度三分だった。

 その時丁度一樹が部屋に入ってきた。

「起きてたんだ。大丈夫なの?」

「おかげさまで三十七度三分まで下がったよ」

 真央の科白に、安心したように息を吐いた一樹だが、少し考えてから叫んだ。

「って、まだ熱あるじゃん!」

「あ、ばれた」

「ばれたじゃないよ。大人しくしてなさい」

 一樹が言うと、真央は拗ねたように口を尖らせた。

「……悠翔は」

「家に帰ったよ」

「あっ、そっか」

 一樹が言うと、真央は安心したように眼を伏せた。

 


 家のインターホンが鳴り、一樹が扉を開けると悠翔がいた。

「よっ」

「遅かったね。久々に家族でゆっくりできたかな」

 一樹が言うと、悠翔は幸せそうに頷いた。しかし、すぐに表情は曇る。一樹は不思議になって訊ねた。

「何かあるの?」

「実はさ」

 椅子に座りながら悠翔は言う。

「今日、真央と一緒に夏紀に会いに行くつもりなんだよ」 

 お茶を用意していた一樹の手が止まる。

「……え」

「あいつにちゃんと言おうと思ってさ」

「あ、え、でもなんで姉ちゃんも……」

 一樹はお茶を用意するのを止め、悠翔と向かい合った。

「夏紀が話したいんだと」

「…そうか」

 何か言いたそうに一樹は口を噤んだ。



「おはよ」

 寝てるのかと思ってそっと入った悠翔に、真央が言った。

「あ、起きてたんだ」

「うん」

 暇で暇で仕方ないの、と真央が身体をほぐす。

「ちゃんと寝てなきゃ駄目だよ」

「大丈夫だよ。熱だって下がったし、だるくないし」

「え、下がったの?」

 真央が口と尖らせて言う為、悠翔は驚いて聞き直した。

「下がったんだって!」

「ちなみに何度?」

 元気だった真央が、悠翔が尋ねると一瞬で倒れる。

「……三十七度三分」

「それは微熱と言うんですよ、真央さん」

「だって元気だもん!歩けるし、ご飯だって食べれるよ!」

 悠翔が、何があってもご飯は食べてたけどな、と呟くと、真央は恥ずかしそうに、そんなことないもんっと頬を膨らませた。

「真央はただでさえ無茶をするんだから。今のうちに休んどけ」

「でも、暇で暇でどうにかなりそうだよ」

「精神的には元気でも、肉体的に疲れてんだよ。少しくらい休ませてあげなきゃ」

 悠翔の科白に、真央は渋々頷く。

「そういえば、朝食まだなんだってな。腹減ってないのか」

「別に、昼と一緒で良いよー。そんなことより、悠翔はこれからどうするの?」

 真央が真っ直ぐに悠翔を見て問う。

 悠翔は一瞬言葉に詰まったが、深呼吸をしてから自分を考えを述べた。

「中学は卒業してないけど、中学卒業認定試験的なのを受けて、高校に行くつもり。夏休み明けに高校入れたら奇跡だな。なんて、そんな奇跡を狙ってるんだけど」

 そう言って悠翔は苦笑する。

「それって、どうやって勉強する気なの?」

「問題集とか買ってさ。自力で勉強するよ」

「もう、何それ。私に遠慮してんの?」

 え?、と悠翔が首を傾ける。真央の言葉の意味がわからないようだ。

「だから、それだったら私が教えてあげるのに。教科書だってあるし、問題集なんて買わなくても良いじゃない?」

 暫く悠翔は真央をじっと見てから、突然大声を出した。

「あぁ!その手があったか!」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ