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Kapitel.16


「二人ともおはよっ!聞いて。土曜日会わせてくれるってっ」

 登校早々、沙紀が元気良く言う。

「お姉さんの彼氏さんの話?」

「そう。姉さんに聞いたら全然オーケーだってさ」

 沙紀は、語尾に音符が付きそうなテンポで話す。

「やったぁ!楽しみだね、真央」

 楽しそうな佑月に、真央は曖昧に微笑んだ。

「土曜日、午後一時に学校で待ち合わせってのはどう?」

「え、でもそれじゃあ沙紀往復しないといけないじゃん」

「でも家わからないでしょ」

 最寄り駅教えてよ。そこまで行くから」

「あ、そっか」

 真央の提案に、沙紀は膝を叩いた。



「沙紀ー!」

 土曜日、佑月は朝からテンションが高い。

 沙紀から聞いた駅まで行き、暫く待つと沙紀が現れた。佑月が元気良く手を振る。

「ごめん。待たせちゃって」

「大丈夫大丈夫!じゃあ行こう」

「うん!にしても、二人とも私服可愛いー。真央は大人っぽいし、佑月は子供みたい。なんか姉妹って感じ」

 歩き出しながらそう笑う沙紀。

「沙紀も可愛いじゃん。そのスカート良いなぁ」

 沙紀と佑月が誉め合うのを、真央は微笑みながら聞いている。

「龍さんて、性格は凄く大人っぽいのよ。精神年齢姉さんより上だよ、絶対」

「あれ、お姉さんはいくつなの?」

「高三」

「あらあら、受験生か」

「ていうか、何が心配って、二人が龍さんのことを好きになっちゃうかどうかなのよ」

 最も重要だと言うように、力を込めて言う沙紀。

「えー、大丈夫だよー。多分」

 佑月は軽く流した。

「あ、ここ。うち」

 沙紀が示す先には、マンションが建っていた。

「マンションなんだ」

「うん。二人は違うの?」

「うちらは一軒家だよね」

 佑月の言葉に真央が頷く。

「へー。良いなぁ。一軒家ってなんか良いよね」

「そうかな?」

「密かな私の夢だったりするのよね。一軒家に住むのって」

「えー、私はマンション良いと思うよ。だって、こんな高いんだもん」

 沙紀の家は七階だった。エレベーターで七階に着くと、高いところが好きな真央が笑った。

「あ、龍さんはまだなの。ちょっと待っててくれるかな」

 扉を開ける前、沙紀が振り返りながら言う。

「全然構わないよ」

「はい、入って入って」

「お邪魔しまーす」

 真央と佑月は、きょろきょろと辺りを見回しながら中へと入っていく。

 沙紀に言われた通りに真っ直ぐ進むと、リビングのソファに座っている人が真央たちを見て言った。

「いらっしゃーい」

「あ、お邪魔します」

 真央は小さく頭を下げる。

「沙紀の姉の夏紀です。いつも沙紀がお世話になってます」

「あ、いえ」

「龍、もう少し後で来るってさ。ちょっと待っててね」

「はい!」

 夏紀の言葉に佑月が元気良く返事をした。



 それから暫く四人で話していたら、インターホンが鳴った。

「あ、来た来た」

 夏紀が嬉しそうに玄関まで行く。

「どんな人だろう。同い年なんでしょ。あぁ、楽しみ」

 佑月がわくわくしながら真央に言う。真央は、声を聞いて顔を引き攣らせた。

「お邪魔します」

「……え?」

「ん、どうした?」

 沙紀が訊くが、真央は何も聞いていなかった。ただ、現れる彼をじっと待つ。心臓の音が速くなるのがわかった。

 彼を見た瞬間、真央は眼を背けた。

「え?」

 佑月も眼をぱちくりさせる。

「龍さんよ。ね、格好良いでしょ?」

 沙紀が二人に同意を求める。二人は何も答えられなかった。

 現れたのは、悠翔だった。悠翔も二人、特に真央に眼を奪われるように凝視している。

「え、え。どうしたの、二人とも。龍さんも、固まっちゃって」

「りゅ、龍。ねぇ、どうしたの?」

 夏紀が恐る恐る訊く。しかし、悠翔は言葉を濁したまま答えない。

「え、あぁ、うん」

「ま、真央……」

 佑月が真央の服を掴む。真央は俯いたまま震えているようだった。

「どういうこと……。ねぇ、なんなの……」

 佑月が呟くように言うが、真央は何も答えない。

「…え、どうしたの?まさか知り合い?」

 沙紀もぽかんとした口調で訊く。

 夏紀が不安そうに三人を見ていた。

「あの、僕帰ります」

 唐突に、悠翔は夏紀に言う。

「え、何?どうしたっていうの、龍さん」

 沙紀が慌てたように言う。

「まぁ、ちょっと……」

「良いよ」

 真央が、言葉を濁す悠翔を遮って言いながら立った。

「私が帰る」

「えっ」

「真央っ」

 悠翔や佑月が驚くように言う。

「お邪魔しました」

 そう言って悠翔から目を合わせないまま逃げるように家を出る真央。

「あのっ」

 悠翔が真央を呼び止めるが、真央は構わず出て行ってしまった。

「ごめん沙紀。あたしも帰るわ」

 早口にそう言い、真央を追いかけようとする佑月。しかし、それよりも先に悠翔が真央を追いかけて行った。

「え、龍。龍!」

 そんな悠翔に反応した夏紀が玄関まで走る。けれど、もうそこには悠翔の姿はない。

 夏紀は呆然と座り込んだ。

「姉さんっ」

 佑月は、悪いと思いつつも呆然としている夏紀に一礼した後、真央や悠翔を追いかけて行った。




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