彼女の天使の翼が再び生える迄。
神の祝福の対義語って、悪魔の囁きなんじゃないかと。
天使は何故翼が生えているのか聞かれたら、空を飛ぶことが人間の長きに渡っての最も望まれた願いだったからと言えるだろう。
では翼のない天使とは何だろう?最早人間と同じと言うべきか。私が考えるに、きっと其れは人間の現実逃避と現実主義が入り混じった、恋のような存在なのかもしれない。
さて、私の目の前には天使がいるのだが。…今きっと君は、文脈からこの天使には翼がないのだろうと推測した。まぁそうだと言えよう。だが、此処はファンタジーの世界ではない。この天使のもつ翼とは言葉通りの意味ではない。翼とは、私が喉から手が出るほど欲しかった才能。天才になりたかった私が求めた一番の座。目の前の天使は私に好かれたいが為にそれを手放したらしい。
…私がおちる前に、その全貌を教えてあげよう。せめて私が楽になれるように。
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曇天の陰鬱々とした空気が流れている。去年まで話していた空には無視を決め込み、去年まで愛されていたと信じていた神へ心の中で舌を出す。…みっともなくまだ御伽噺の子供から抜け出せていない私は、さも不機嫌だという顔で飯を食い顔も洗わず制服を着る。喧嘩未満の言い合いをした両親はそんな私の態度を見てそっぽを向いた。嫌いである、何もかも。傍にあった鉛筆は、見る影もないくらい齧られ折られていた。
扉を開ければ烏が電線から飛びだった。花は私ではなく虫の方を向く。嗚呼惨め。惨めで可哀想な仕方のない子。車は私の為に止まらないし同じ制服を着た知らない顔ばかり歩いている。もっとも、知った顔がいたところでどうにもならないのが現状だが。
教室につく。何も言われない…寧ろ少し静かになったかの様な気がするのが嫌いだ。私のせいで雰囲気が崩れたかのような空気を作るな。
…見れば今日も彼女は不特定多数に囲まれている。私は彼女に話しかけられるのを待っている。別に彼女にとっては友達でも何でもないかもしれない。そう言われれば私だって友達ではないと言う。どうせ数回、片手でも充分余るくらいの回数一緒の班になったり隣同士になって話したくらいの関係性だ。…その程度と自分でも分かっているくせに期待を寄せる自分が嫌いだ。
その程度の関係とは分かっているくせに懲りもせず彼女なら気付いてくれる、と勝手に気持ち悪い期待を寄せている。私は髪を切ったのだ。ガッツリシルエットが変わった、というわけではないが私を少しでも気にしている人がいれば分かる程度。
もう少しで朝の休み時間が終わる、彼女が私の机の前を通る。ちらりと此方を見た気がする。…気付いている!気付いている、私は今世界に承認されたのだ!彼女の顔が此方を向く。私も寝たふりをやめてゆっくりと彼女の顔を見る。目は合わせないが彼女を見る。「なに?」と言ってみる。分かっている、私の髪について言いたいんだろう!彼女が口を開ける、言葉を発する、
「あ、いや何でもない、いつも寝てるよね、あの申し訳ないんだけどプリント忘れたから見せて欲しい。別に、嫌なら大丈夫!」
…。分かっている。私は何にもなれない。動揺を悟られないよう、真顔で彼女の顔を見ながら答える。
「…私もできてない、ごめん」
「あ…そっか!分かった、じゃあね」
何がじゃあねだ。同じクラス、私の斜め前の席にいるだろう。
…その日は結局、彼女の嫌なくらい綺麗な毛先を見て過ごした。初めての美容院だったのに。
別に話しかけられる方が面倒だし。とか建前をおきつつ本心ではガッツリ人からの言葉を待っている、聞き耳を立てる私。…今更どうしようもないか。諦めだけ妙に得意なのも嫌いだ。勉強とかの努力と自制はできないくせに…
今更ハナシを掘り返すのもアレだが、別に彼女が好きなわけじゃない。気付いてくれる可能性が一番高いのは彼女かなって。そういう奴だ。
寧ろ私が彼女に向けた感情の大部分は嫉妬だ。何でも出来て、テストでは総合1位で、話の中心にはいれて、どうせ髪を5cm切ったくらいでも他のキラキラ女子はきゃーきゃー喚くんだろうな。嫌いだ。
…話は戻るがそういう彼女にも欠点は存在する。オールラウンダーだからこそ、その点のプロには負けて総合で1位を取れても科目で1位は取れないという点である。都合がいいからこそ、真の意味で一番にはなれない。つまるところ、よく出来ている。神はこの子を完璧には作っていない。ちゃんと人生が崩れぬような設計をしている。そういう所が完璧なのだ、人生においては。
あくまでこの学校のなかでだから別に彼女は天才ではないと思うか?確かに実際に関わっていなければ私はそうだと言っただろう。でも、彼女はどんなに頭のいい学校に行っても、どんなに運動能力が高い子ばかりの学校に行っても、どんなに其処がヤンキーの溜まり場である学校に行っても、同じ様な立ち位置になると思う。学校だけではない、家庭においても。彼女は人間にとって最も身近な天使だった。
そんな彼女が唯一完璧を狙える者。それが私の追い求めた才能だった。
全体的に平均か、平均以下である私はある一つだけ。一つだけ突出した才能を持っていると自負している。別に見せつけるものではなかった。私の才能を、クラスメイトは愚か家族すら分かっていないんじゃないかとも思う。努力せずとも常人より出来るのだ。楽しむ余地があっても、余裕があっても、そこら辺では決して負けない程の才能があったんだ。
いつか、卒業前とかに私の才能を見せつけてやるつもりだった!そうすれば私に興味がない、可哀想な奴等が手の平を返して私を褒め称える!私は世界から祝福を浴びるのだ!…浴びて、いるはずだったんだ。目頭が熱くなる感覚がする。煩いなぁと、なにも聞こえていないくせに悪態をつく。
彼女は、私の才能を遥かに超えた物を持っていた。それは身近なものではない。天才だと、私には成し得ないと一目で、聞いただけで、感じただけで分かるほどの物。何気ない時、ありふれた普通の日、彼女はクラスメイトの前でその才能を見せた。別に何でもないかのように。…私は彼女が嫌いになった。以前から別に何とも思っていなかった、寧ろ友達になってもいいと思っていたのに、私の嫉妬と絶望により塗り替えられた。
クラスメイトは私ほどの反応はしなかった。只、凄いね、と言っただけだった。彼女達はそもそも理解をしていなかった。更に打ちのめされた。私ほどの才能では世界は変えられなかった。しかもソレを自分より優れた彼女に叩きつけられた。泣かなかっただけ褒めてほしい。与えられたショックが大きすぎたというべきかもしれないが。
其処にあったのは、残された惨めな承認欲求だけ。どうしようもない孤独感と無力感ばかり抱え、何かしようと思っても言い訳ばかり探し、諦めるのがやけに上手い可哀想なヤツ。私はそんな気色の悪い、現代が産んだ失敗作だ。周りには天才がバカスカおりやがって。私が生きる事で平均値とかバランスとってんだよ。分かっているのか?お前等が喜ぶ裏には負けた奴がいる事を。お前等天才の誇る順位は、点数は、私がいるからこそ成り立っていることを。
空が、そんな私の感情とは反対に晴れている。つくづく神は私が嫌いらしい。
…分かっている。存在価値が無いことくらい。どうせ私一人いない事で何か彼等が変わる事なんて無い。分かっている。生きた所で誰の助けにもなれない事なんて。彼等の喜びは私一人の差なんて大したことはないくらいの人数で構成されている。分かっている。一番になれない事なんて。日の目を浴びることなんてない事なんて。
どうか、誰か私を認めてはくれまいか。私は放っておくと死ぬことばかり考えた。その時現れたのが彼女だった。いつも通り寝ているふりをしていたら聞き心地のいい声が聞こえてきた。
「ね、ねぇ!起きてる?」
寝たふりを続けたい。続けたいが彼女には抗えなかった。
「今起きた。」
「そっか!今日の放課後って…あいて、る?」
返答に迷う。ちょうど死のうとした時間だった。
「…いいよ。」
「え、あいい!?良かった、ちょっと教室で待ってて欲しくって!」
「分かった。」
「嬉しい!じゃあね!」
本当に嬉しそうにする彼女は可愛かった。私はなんて惨めなんだろうと全てを憎んだ。
放課後、彼女は暫くして教室に戻った。周りの連中に話しかけられていたんだろう。私とは大違いだ。
「は、話っていうのはね!」
其処で彼女を殴れたら、帰れたら私はまだ幸せだったのだろうか。
「わ、たし!貴方の事が、すき…なんです」
世界の全てが彼女を美しく映す。引くほど魅力的であった。何も言えなかった。
「あの、ね!わたし貴方の事すごく好きで、貴方の全てが好きです。こんなことって始めてだと思う。好きです。」
髪の毛の変化にすら気付かない奴がそんな口を聞くのが信じられない。
「わたし、貴方が好きで、好きで好きでたまらなくて。貴方がもつ才能をしって、貴方に見てもらいたくて、頑張ったの。貴方が好きだから。…でも、貴方は逆に辛そうで。ずっと目が暗くって…貴方の苦しむ姿をみたくはなかった。だから、わたし貴方の為にこの才能を手放す事にする。もう二度とこれを見せることはないから、から。…好きです。」
儚い美しい女。思わず手を伸ばして存在を確かめたくなる女。
此処まで感情が揺れ動いたのは初めてかもしれない。いや、以前にもあったか…。私は彼女に何度も心をぐちゃぐちゃにされている。
彼女が照れて頬を紅潮させている。画家がいれば、後世に彼女の美しさは残され続けているだろう。彼女の姿はそれほどまで扇情的で魅力的で、美しかった。そんな彼女を見て笑みを浮かべる私。
あぁ、いけない。其処から先は駄目だと言うのに。底知れぬ彼女がいけないと、言い訳がましく。損なっていく私の理性をただ。
二人きりの教室に、肌がぶつかる音が響いた。最期に見たのは彼女の驚いた顔。
私はどうやら神に見放されすぎて、神の最高傑作である彼女の魅力には絆されないらしい。私にあったのは純粋な怒り。モニターに映る私を見れば、少し口角が上がっていた。
彼女に教えたい。挫折した人を救うことが出来るのは、天才かそれと似たような痛みを知った者のみであると。…彼女の弱点を、天才ではない部分を知った。
所謂漫画の表現のように手の形に赤くなるまで強く叩いてはない。だが、彼女に絶望を与えるには充分な痛みであった。彼女はその場から動けずにいる。代わりに私が教室の外へ出た。
窓を見れば、凄く暗いタイプの曇りだった。彼女の心境でも表したつもりか。此処で一句とか読めたら、格好良かったのにと思う。きっと彼女はまるで息をするかのように素晴らしい、私が3時間かけて作れるような歌を詠むのだろう。
彼女が死んだと知ったのはそれから5日後だった。
彼女の母が学校まで来てわざわざ涙を流した。手紙を持って、だ。所謂遺書という奴だろう。
「皆さんは娘と仲良くしてくれたと…よく娘が話していました。何故娘があんな…あんなッううっ…」
まァ、悩みがなさそうな天使の彼女が羽ばたいたのだ。親としては何故分かってやれなかったのか、何故相談してくれなかったのかで頭がいっぱいであろう。
「この手紙は、娘の机の上にありました…読めばあの子の私達夫婦への謝罪と、クラスメイトや友達の方々に向けた感謝が綴られて…ッ読ませていただきたいと思います…」
そう言ってまた泣き出してしまった。正直彼女にそこまでの思い入れはない。罪悪感はあるがそれきりだ。早く終わってくれないかなと心の何処かで思う自分はいる。…いや、もしかしたら彼女は私のせいで死んだと言っても過言ではないから最期に私の名前を出して恨みつらみを吐くかもしれない…そうしたら彼女の母親に刺されて死んでしまう。流石にその死に方は避けたい。
少しの冷や汗をかきながら、続きを聞く。
「拝啓、お父様お母様。大事に育ててくださった恩をこんな形で返してしまい本当にごめんなさい。お母さんもお父さんも大好き。いつも優しくしてくれて、支えてくれてありがとう。」
其処からは暫く両親への感謝と謝罪と思い出語りが続く。天才の彼女が書く遺書は案外普通である。
「そして私の大事な友達、クラスメイトの皆様。私は貴方達のお陰で幸せで楽しい人生を歩む事が出来ました。学校行事等、思い出せば素晴らしい出来事が沢山あります。共に青春を謳歌できて嬉しかった。此処に産まれて幸せだったと思います。〇〇ちゃん…、△△ちゃん…、…」
友達の名を一人ずつ言っていき思い出を語る。綺麗事も甚だしい。…私の名は語られなかった。当たり前といえば当たり前。
「これで私の遺書は終わりです。どうかお葬式はしないで下さい。そこまで丁重に見送られたくはないので。最後に、ありがとう。さようなら。」
呆気ないものだ。所詮彼女は人間であったのかもしれない。いや…翼をもいだのは実質私か。彼女の母親と教師は静かに教室の外へ出た。もう既に6時を回った夕方だった。クラスメイトは暫くは動けないだろう。悪目立ちは避けたいため立たずに空模様を眺める。
手持ち無沙汰に机を漁っていたら、少し硬い紙の感触がした。取り出してみれば、それは手紙。
「あ、…手紙が入ってる…」「え?私も!」「オレの机にも…」
見ればクラスメイト全員の机の中に、何も書いてない便箋が入っていたらしい。彼女からの、としか思えない。クラスメイトが死んだのに手紙を入れるような、そこまで頭のおかしい奴は此処にはいない。
全員がほぼ同時に開封する。言わずもがな紙が入っている…女子特有の丸い小さなあざとい字ではなく、何処か美しさと色気をもつ字。字が彼女を表していた。
「さて、では幸せに過ごしていた私が何故死を選ぶか、疑問に思う人がいるかもしれません。結果を言えば、私にはきっかけをくれる人がいて、その人により私はこの決断をする事となりました。」
心臓の血管を一本一本引き千切られていくような、そんな気分である。周りの声が煩い。彼女の母親が此方を睨んでるような気すらしている。背中に嫌な汗が伝っていくのを感じる。
「勘違いしないで欲しいのは、別にその人が私に直接『死ね』といった訳ではありません。寧ろ彼女は私の人生に欠如していた物を与えてくれました。拒絶です。今まで私は神に愛されているんじゃないかと言う程苦労を知らず、皆に愛され生きてきました。特別勉強をしなくたっていい点を取れる…特別何か努力をしなくてもある程度何でも出来る…それが私です。」
嫌いだ。余りに私とかけ離れていて。そのくせ其れは手が届きそうな程のもので。当に神に愛された天才という言葉が似合う。
「勿論それに人生をかけて本気で努力した人に勝てる程の実力はありません。」
心臓に杭が刺さる。努力をしていないという事実が刺さる。私は無意識に、努力した人よりも私の方が優れていると、愚かな勘違いをしていたのだと、彼女が現実を見せる。紙がくしゃりという音を立てる。聞かれていないことを祈る。
只事実が刺さる。否定したいのに彼女の人生そのものが脳裏に現実を叩きつけてくる。嫌いだ嫌いだ嫌いだ!手紙の続きが語りかけてくる。
「私は努力をしません。その選択をしたのは別に私が面倒くさがりだからという訳ではありません。言うなれば世間を生き抜く為でしょう。私が簡単な努力をしてその人に勝ってしまうということはその人の人生を否定するという事。この世界では何処で恨みつらみを拾うかは分かりません。嫉妬や妬みはいつ生まれるかなんて考えた所で無駄です。私は日常的に人と関わり、コミュニケーションの才能を磨きました。そして今日死ぬまで生き抜きました。」
ふざけるなよ、何様のつもりだよ、じゃあなんで…
「私はきっかけをくれた人の人生をあえて否定しました。あの人は、確かに私がいなければ一番だったんでしょう。そしたら、私が生きていく為にはあの人の前でその才能を発揮しなければ良かった。しかし、私はそうしなかった。」
涙が、目のなかで留まる。ハンカチ…はないからベストで水分を吸わせる。泣いてる所を見せたくはない。
「私はその人を特別に思っていました。単純に好き、というべきでしょうか。別に見た目とか中身とか、そういうのではありません。世界にああいう風に造られたその人が好きでした。人間持たざるものを持つ人に惹かれるとはよく言ったものです。」
持っているのはお前の方だろう。私はお前の下位互換となったんだぞ。今後一生、私はお前の存在しない影の下で生きるしかないんだぞ。ふざけるな、ふざけるなよ…。
いっそ殺して欲しい程に胸が痛い。喉が痛い。潰されそうな痛みばかりが身体の内部を支配している。誰でもいいから殺してくれ。いきなり胸を刺してくれたって首を絞めるだって何でもいいから。苦しくてもまだこの絶望感を抱えたまま生きていくよりは遥かにいいと思えるから。
「その人もこの手紙を読んでいるでしょう。名前は出しません。これは復讐ではないから。貴方を苦しめたいわけではありません。苦痛を味わってほしい訳でもありません。」
「愛してます。私は人を此処まで愛せるのだと初めて知りました。貴方のおかげです。」
「才能に固執した貴方。周りに興味を持たず一心不乱に努力し一番を目指す。貴方の人生を眺める内に色んな事を知りました。」
勘違いも甚だしい!此奴は何も分かっていない。分かってもいないくせに分かったように語るお前が嫌いだ。私は孤独になりたかったわけではない。只…ただ承認欲求が意思を持っただけの、化け物。拭ったはずの涙が滲む。嫌いだ。
「貴方は唯一私を見なかった。神に愛された私を。苦労を知らない、真っ白な翼を持った私を。勘違いしないで下さい、私は性格がいいわけではありません。善人でもないです。ただ、生きる事において完璧なだけ。生きた後は、自由にやると決めていました。それがこの遺書です。貴方に、どうか見て欲しい、私という姿をどうか、見てください。」
誰一人、彼女が死んだ今、私を認識する人はいない。私の才能を知るものはいない。彼女は、私と世界を繋ぐ橋だったのだと気付く。別に彼女を拒否したことを後悔は、してないと思う。多分。
神がいるなら、彼女をどうして作ったんだろう。私に恋をするのは必然だったんだろうか。所詮私を困らせる為に作った者だったのだろうか。
彼女なんて好きではない。嫌い、というよりは嫌だといった方が合っていると思う。私を認識する唯一の人だったのに、私の事なんてまるで分かっていない。強いて言うなら才能か。
人は何故、他者を愛し「恋人」という形になるのか考える。特別な関係でいたいから?相手にとって特別でありたいから?それもまた一つの答えだと思う。ただ、今の私はこう言うだろう。
「恋人が欲しいのは、無条件で愛され、自己肯定感をあげてくれる相手が欲しいからだろう。挫折し、自分の価値が分からなくなった時自分を承認してくれる相手が欲しいのだろう?」
彼女に愛されていたと知った時、本当に私が感じたのは怒りのみか?本当に、嫉妬や怒りだけだったか?…いや、違う。私は安堵していたんだ。世界に承認されたのだと。馬鹿だと思う。人の好意を無碍にしておいて結局はその好意に甘えていたのだと。
彼女に告白されてからの5日間はメンタルが安定していた。親に暴言を吐かなかった。鉛筆を齧らなかった、折らなかった。それは、彼女から愛を受け取り自分の価値を見出したからだろうと。愛を貰い幸せを感じたくせに愛を返せない。彼女は身を持って教えたのだ。私無しではお前は生きられないぞ、と。共にあの世で幸せになろう、と。
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彼女は此処から飛び降りたらしい。よく晴れた晴天という言葉が似合う日に、だ。今はいっそ恐ろしい程に暗い昼。全てが私を嫌っているようだ。どうせ私が飛べば悪魔が死んだかの様に雲は開き光が差すのだろう。天使から翼をもぎ取ったのにその元天使をみすみす殺した様なものだから仕方ない。
しかしよく言うではないか。人間は死ねば天使になれると。飛べば羽根を持てると。彼女は再び天使になったと言える、とんだ笑い話だ。
さて、では私も飛べば天使になれるのだろうか。
自ら私に死ぬ機会を作ってくれた彼女はどんな顔をするだろう。もうぐちゃぐちゃで原型を留めていない顔をどう動かす?彼女は天使が人を殺すという快挙をなしたのだ。流石!私には出来ない「何者になる」という行為を自らの死により作り上げた!
落ちる前に笑顔でいさせてくれてありがとう!生まれて初めて心からの言葉を君に贈ろう。感謝の言葉を。
夏始まりかけてるけど寒いやら暑いやらで本当にムズカシイ…
一回ホラー系書いてみたいな。




