8 犯罪者から犯罪
「ってかさ、佐野〝ザ・ミラクル〟で女の子になったとか言ってたけど、いやー。可愛いねぇ~」
「そ、そう?」
「すっぴんでそれは卑怯だよ。あたしなんか、このゲームのためにメイクしてるのに」
「それはそれでどうかと思うよ……」
宮崎は真希の頬を優しくつねる。
「いやー、もちもち。ザ・ミラクルってすごいんだね」
「ありがと。でも、効果がTSすることだけなのかな」
「さぁ。もしかしたら、リアルでもNFOでのデバイスとか使えたりね」
「銃出したり、ロケット・ランチャー出したり?」
「そー。持ってて損はないでしょ」
そんなふたりの会話を遮るように、
「ねぇ! ミッション行くなら行こうよ!」
真由が頬を膨らませながら、文句を垂れてきた。
「あー、ごめんね。けど、ひとつだけ確認させて。IDがMAYUChanになってるけど、真由ちゃんってことで良いのかな?」
「……真由、普通IDは本名使わないんだぞ?」
「知らないよ! 私は佐野真由なんだから、別に良いでしょ!」
なぜ怒るのか、我が妹よ。兄……姉の真希と宮崎は置いてけぼりだ。
「ん、んじゃ、きょうのミッション行きますか」
「なにするの?」
「このゲームにNPCはいない、って説明したっけ? 要するに巨大なサーバーにプレイヤーしかいないわけなんだけども、きょうは真面目に犯罪に取り組む連中の妨害をします!」
「え、NPCいないんですか?」真由が目を丸める。
「いないよ~。そこで街を探検してるヒトもリアルプレイヤーだし、近くで聴こえる爆発音や銃声音もリアルプレイヤー。それがニュー・フロンティアの売りなのさ」
「なるほど。とんでもサーバーを使ってると」
「そういうこと。さすが創麗グループだよね。なにかを企んでる気がしてならないよ」
なお、宮崎は真希と真由の両親が創麗グループの最高幹部であることを知らない。まぁ今のところは説明する理由もないため、話すこともない。
「そうだね。検索エンジンからミサイルまで買い占めた超大企業だもん」
「だから仮想通貨を導入したのかもね。客集めに。デバイスだって、高校生のバイトくらいで買えるしね」
「まぁ良いや。犯罪者から犯罪してやろう」
「オッケー!」
宮崎は戦闘ヘリに乗り込む。そして彼女は、真希と真由に後部座席へ乗るよう手招きしてきた。どうも、ミサイル等を撃てるらしい。
「これ、ひとりでも動かせるけど、複数人だとミサイルとガトリングが複数個操作できるんだよね~。ふたりともろくな武器持ってないから、まずヘリで武器搬送を行ってる連中を追いかけよう」
「了解」
「は、はい」
ヘリコプターの後部座席に座り、いつでもミサイルやガトリング、フレアが炊けることを確認する。宮崎の、「行くよん~」という間の抜けた声とともに、ヘリは空を飛び始めた。
「うおぉおおお!?」
「うあぁあああ!?」
ぶぉおおおん!! という爆音が響き渡った。また、揺れている所為で目がクラクラと回る。相乗効果で吐き出しそうだった。
そんな中、真希はふたつヘルメットがあることを視認した。まずそれを後ろに座る真由に手渡し、自身もそれを被る。
『慣れた?』
無線で声が聞こえてくる。真希は、「なんとか……」とだけ返事した。真由も、「頭がクラクラする……」と泣き言を嘆く。
『最速で向かうから、武装類使えるようにしておいてね~。HUDにマークつけておいたからさ』
デバイスに表示されているHUDによれば、敵性まであと1キロメートルくらい。ヘリは凄まじい速度で進んでいるため、1分もかからないだろう。
『敵は重武装した装甲車に乗ってるから、ガンガン武器類使って良いからね~』
そう言った頃には、目的地に到着したらしい。ピシュー……、とミサイルが飛び、バコンッ!! と強烈な破裂音とともに、装甲車へそれが直撃した。




