3 黒髪ロングヘアの少女
「えー……」
いきなり渡されたアサルトライフル。これで一体どうしろと? まさか、細部までリアルに作られた(ゲームとはいえ)世界で人殺しをしろと?
と、しばしフリーズしていたら、
ガトリングのけたたましい音が鳴り止んだ。それは、宮崎翠の勝利の証だった。
「佐野~。アンタ、クライム・アクションゲームで人殺しをしないのは無理あるでしょ~」
宮崎はガトリングをしまい、佐野が固まっていたスポーツカーに近づいてくる。
「い、いや。このゲームってリアル過ぎない? 今にも吐きそうなんだけど」
「なーに言ってるのさ。たかが頭とか腕が吹っ飛んだだけでしょ。それに、コイツらも24時間後にはリスポーンできるんだからさ」
頭・腕・足・その他諸々……それらが無惨に消し飛んだ戦場で、返り血を浴びた宮崎は二カッと笑う。
「おれ、もうこのゲームやめようかな……」
「そのうち慣れるよ。ほら、分け前」
『300パクスコインがMANGO1224より送られた』
デバイスにそう表示された。きょうだけで8万円稼いだ計算になる。
「バイトにしちゃ、随分割が良いでしょ。なんなら、そこらのサラリーマンより稼げるかもね」
「そりゃそうだけどさ……。つか、もうリアル時間で深夜2時だよ? 寝ないの?」
「あー、そういえばもう20時間ログインしっぱなしだった。さすがに疲れたよね」
「なら、もう寝なよ。ゲームの中じゃ眠れないよ?」
「それもそうか。んじゃ、またあした連絡するね」
「うん……」
確かに8万円相当のカネは魅力的だ。だが、その手法が人殺しというのがいただけない。適当な理由をつけてあしたは断ろう、と真希は誓うのだった。
*
ログアウトし、ゴーグルを外す。時間にして3時間くらいしかプレイしていないが、10時間ほどやった気になってしまう。それほど疲れた。
「まぁ良いや……。歯磨きして寝よ──ん?」
声、が高い。声変わりする前のときのように。不思議に思いながら、真希は自部屋においてあった鏡を見る。
「は、はぁ?」
そこには、黒髪ロングヘアの美少女がいた。顰め面したり、口を曲げてみたりしても、やはり鏡に映っている者が自分であることの裏付けになってしまう。
「なんだ、こりゃ」
真希はこの疑念の正体を探す。一体、真希がなにをしたというのか。ただ、ニュー・フロンティア・オンラインをプレイしただけなのに。
額に指を乗せ、真希は必死に考える。
すると、あのゲームで宮崎からもらったギアを思い出すわけだ。
「……、」
目の前のパソコンで『NFO ザ・ミラクル 効果』と検索する。要領の得た答えは戻ってこなかった。というか、ザ・ミラクル自体が存在しないかのように、検索条件を変えろと出てくる始末だった。
「……父さんに聞いてみるか」
真希の両親は、NFOを運営する会社『創麗グループ』の幹部だ。ならば、なにかを知っているかもしれない。ただ、父は仕事人間過ぎて家には全く帰ってこない。なので、緊急連絡先に向かって電話をかけた。
『どうした? なにかあったか?』
「父さん……。NFOのザ・ミラクルってなに?」
『んん? 誰だ、君は』
「真希だよ」
『ビデオ通話に変えてくれ』
「うん」
ビデオの先には、目の下にクマのある父がいる。そして、父からも女体化した真希が見えるはずだ。
『おぉ。本当に真希のようだな』
「なんでおれがおれだと分かるのさ」
『そりゃあ、ザ・ミラクルは私が仕組んだものだからな』
「は?」
『真希には一部だけ話しておこう。NFOは、ただの仮想通貨を稼げるオンラインゲームではない。創麗グループの壮大な計画への第一歩というところなのだよ。そして、ザ・ミラクルはその計画の手始めといったところか』
「意味が分かんないよ、父さん」
『要するに、善き女子ライフを楽しんでくれという意味だ。では、時間がもったいないので切るぞ』




