第3話:『成長の片鱗、小さな英雄』
リリィと俺、そしてライドロンの旅が始まって、もう数年が経った。リリィはすっかり幼い面影をなくし、明るく活発な少女へと成長していた。まだ子供らしい無邪気さは残っているが、この荒廃した世界で生き抜くための賢さも身につけていた。俺は、彼女の成長を間近で見守るのが、この旅の何よりの喜びとなっていた。
俺たちは各地を転々とし、時にはロストテクノロジーの残骸を修理したり、魔物退治を請け負ったりして生活の糧を得ていた。ライドロンの力は、人々を助けるだけでなく、時には俺たちの命を救う切り札でもあった。
ある日、俺たちは小さな村に立ち寄った。豊かな森に囲まれ、穏やかな空気が流れる場所だった。しかし、村人の顔には深い疲労と不安が刻まれている。話を聞くと、近年、村の近くに強力な魔物が出没するようになり、被害が甚大だという。
「どうか、助けてください!もう私たちだけでは……」
村長らしき男が、藁にもすがる思いで俺に懇願してきた。その魔物は、この地の冒険者では太刀打ちできないほどの力を持つ、巨大な**異形の獣**だという。俺は内心ためらった。スローライフを望む俺にとって、危険な戦いは極力避けたい。だが、リリィが、その瞳で俺を見上げていた。
「ねぇ、お兄ちゃん……助けてあげて、あげられないの?」
その言葉に、俺は決意した。リリィに、この村の平和を、そして笑顔を取り戻してやりたかった。
「分かった。引き受けよう」
翌日、俺はライドロンと共に、その魔物の巣窟へと向かった。リリィは村に残し、安全な場所で待たせていた。
巣窟の奥で、その魔物と対峙する。それは、巨大なトカゲのような姿をしていたが、全身は奇妙な金属質の鱗に覆われ、口からは腐食性の酸を吐き出す。まさに、この世界で言うところの**ドラゴン**級の魔物だ。
「まさかこんなデカブツが出るとはな……。リリィにはこんな荒事は見せたくないんだが。」
俺はライドロンを変形させ、人型ロボット形態で魔物へと挑んだ。ライドロンの攻撃は、金属質の鱗に弾かれる。だが、俺は諦めない。核融合炉の出力を限界まで上げ、両腕からエネルギーを集中させて放つ。
「ぶち抜けぇぇぇ!」
青白い光線が魔物の鱗を貫き、致命傷を与えた。咆哮と共に魔物は倒れ伏し、やがて消滅した。
村に戻ると、村人たちが歓喜に沸いた。リリィが俺に駆け寄り、満面の笑みで抱きついてくる。
「お兄ちゃん、すごかった!ありがとう!」
その笑顔を見た時、俺は心底思った。
「これで村も一安心、か。」
この戦いで、ライドロンの存在は周囲の村々にも知れ渡り、俺たちは「鉄馬の英雄」と囁かれるようになる。だが、同時に、その噂は、この世界の裏で暗躍する者たちの耳にも届き始めていた。
### 次回予告
ロストテクノロジーの残骸を修理する「異世界整備士」としての俺の評判は、さらに広まっていった。
次に俺たちが向かうのは、失われた光を求める古都。
しかし、その作業の裏で、ライドロンに秘められた新たな可能性と、世界に眠る謎の片鱗が見え始める。
次回、ライドロンと紡ぐ家族の物語。
**第4話:『失われた文明の光、再び』**
「この古い橋、ちょっとガタがきてるな。昔の技術、すごいけど、ちゃんとメンテしないとダメだな。まあ、俺の仕事が増えるってことか。」
お楽しみに!