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第2話:『小さな迷い子とライドロンの背』

風に乗って届いた、か細い悲鳴。ライドロンのアクセルを捻り、音のする方向へと向かった。荒れ果てた大地の一角、岩陰に隠れるように小さな人影があった。そして、その人影を取り囲むように、数匹の魔物が蠢いていた。


「っ……!」


魔物たちは、皮膚がただれたようなグロテスクな姿で、鎌のような腕を振り上げている。その中心で、身を縮めているのは、どう見てもまだ幼い少女だった。


「クソ、間に合え……!」


俺はライドロンを急加速させ、魔物たちの群れに突っ込んだ。


「ガシャン!ガシャン!」


ライドロンは一瞬で人型ロボットへと変形し、巨大な腕を振り下ろす。地響きと共に魔物の一匹が地面に叩きつけられ、その場から蒸発するように消え去った。残りの魔物たちがこちらに気づき、一斉に襲いかかってくる。


「っし!来いよ、クソども!」


俺はライドロンのコックピットで操縦桿を握りしめ、次々と魔物たちを撃破していく。核融合炉の莫大なエネルギーが、ライドロンの全身を巡り、青白い光を放つ。その圧倒的な力は、この世界のどんな魔物にも匹敵するものだ。


次々と魔物を倒していくライドロンの姿に、怯えていた少女は目を見開いて呆然と見上げていた。やがて最後の魔物を蹴散らすと、ライドロンは再びバイク形態へと戻った。


「おい、大丈夫か?」


ライドロンから降り、少女に声をかける。少女はボロボロの服を身につけ、顔には煤と涙の跡があった。怯えたように俺を見ていたが、やがて小さな声で呟いた。


「地球……?」


その言葉に、俺は思わず目を見開いた。まさか、この異世界で、同じ故郷の人間と出会うとは。しかも、こんな幼い子が。


「お前も、地球から来たのか?」


俺がそう問うと、少女はこくりと頷いた。名前を尋ねると、彼女は震える声で「リリィ」と答えた。両親は、魔物に襲われていなくなったという。


「……そうか」


この荒廃した世界で、たった一人で生きていくには、あまりにも幼すぎる。地球の記憶もまだ鮮明に残っているのだろう。俺だって、ここに飛ばされた時は混乱した。こんな幼いリリィが、一体どうやって。


「リリィ。俺と来るか?安全な場所を探してやる」


俺がそう言うと、リリィは大きく目を見開いた後、堰を切ったように泣き出した。安心したのか、それとも恐怖から解放されたからなのか。俺はただ、その小さな頭をそっと撫でてやった。


「よし、行こう。ライドロン、リリィを頼むぜ」


ライドロンのステップにリリィを乗せ、俺はアクセルを捻る。最初は怯えていたリリィも、ライドロンの安定した走行に慣れてきたのか、次第に周りの景色を興味深そうに眺め始めた。その小さな背中を見ながら、俺は心の中で呟いた。


「まさかこんなチビまで連れていくとはな……。まあ、いっか。まずは安全な場所を探すか。」


ライドロンのエンジン音が、二人の新たな旅の始まりを告げるように、荒野に響き渡った。


### 次回予告


リリィと俺、そしてライドロンの旅が始まった。

この荒廃した世界で、生活の基盤を築くため、俺はロストテクノロジーの知識とライドロンの力を振るう。

そして、数年後──。

少し成長したリリィと、新たな脅威が、俺たちの前に立ちはだかる。

あの穏やかな日々を、守り抜けるのか。


次回、ライドロンと紡ぐ家族の物語。


**第3話:『成長の片鱗、小さな英雄』**


「まさかこんなデカブツが出るとはな……。リリィにはこんな荒事は見せたくないんだが。しかし、これで村も一安心、か。」


お楽しみに!

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