第12話:『いつのまにか、家族の風景』
激しい戦いは、ついに終焉を迎えた。最終兵器は沈黙し、秘密組織の首謀者は敗北を認めた。世界は、終焉の危機を乗り越え、再び静寂を取り戻した。
ロストテクノロジーは、もはや恐怖の対象ではなかった。リリィの能力によって、その真の姿と、正しい使い方を理解することができたのだ。人々は、ライドロンが示すように、失われた技術を恐れることなく、未来のために活用する道を選んだ。
数年、いや、十年以上が経っただろうか。
戦いの後、俺たちは放浪の旅を辞め、とある豊かな土地に定住した。ライドロンは、その役目を終えたかのように、静かに俺たちの家の脇に佇んでいる。たまに稼働させてメンテナンスをするくらいだが、いざという時にはいつでも動けるよう、いつでも手入れを怠らなかった。
リリィは、すっかり大人びた女性になった。あの頃の面影を残しつつも、より美しく、そしてたくましく成長した彼女は、この世界の再生に尽力していた。ロストテクノロジーの知識を活かし、荒廃した大地に水路を引き、豊かな作物が実るように導いていた。
そして、いつのまにか、俺たちの関係は、共に旅をする相棒から、かけがえのない夫婦へと変わっていた。
ある晴れた午後。
俺は、リリィと、そして俺たちの間に生まれた、小さな子供を連れて、ライドロンの前にいた。子供は、ライドロンの大きな車体を不思議そうに見上げ、小さな手で触れてみる。
「パパの、お仕事道具なんだよ」
リリィが優しく子供に語りかける。子供は嬉しそうに笑い、ライドロンのタイヤにそっと頬を寄せた。
俺は、ライドロンの背に子供を乗せた。そして、リリィがその隣に座る。
「(遠くを見つめて)まさか、こんな未来が待ってるとはな……。でも、悪くない。いや、最高だ。こんな日々が、ずっと続けばいい。」
ライドロンのエンジンが、穏やかに唸りを上げた。そのエンジン音は、かつて荒野を切り裂いた咆哮ではなく、まるで家族の団欒を見守るかのような、温かい子守歌のように響いていた。
バイクで旅する異世界、ロストテクノロジー、原子力で動く変形ロボット、スローライフとたまのドラゴン討伐、そして拾った異世界転生の女の子。全ての要素が、この小さな、しかし確かな幸せへと繋がっていた。
終わり。