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第1話:『鋼鉄の巨人、目覚める』

鉛色の空が、どこまでも続く荒野を覆っていた。埃っぽい風が、乾いた草を撫でていく。遠くに見えるのは、かつての文明の残骸だろうか、歪んだ鉄骨が空を刺すようにそびえ立っていた。俺、名前すら曖昧になった男は、そんな荒廃した世界に放り出された。


「クソ……どこだよ、ここ……」


脳裏に浮かぶのは、地球という故郷の記憶。しかし、なぜここにいるのか、どうやって来たのかは全く思い出せなかった。手元には何も無い。ただ、遠くで錆びついた金属の塊が、鈍く光っているのが見えた。


藁にもすがる思いで、その塊へと歩き出した。近づくにつれて、それは巨大な機械であることが分かった。風雨に晒され、蔦に絡まれ、その全貌は掴めない。だが、その一部が、俺の知る「バイク」の形をしているように見えた。


足元には、古びた操作盤らしきものがある。錆びついたボタンを指でなぞると、かろうじて読める文字が浮かび上がった。


核融合炉(コア・リアクター)起動(スタート)


核融合炉?そんなものがこの世界に?俺は思わず二度見した。まさかとは思ったが、他に試す術もない。壊れてもともとだ。指を震わせながら、起動ボタンを押した。


瞬間、轟音と共に大地が揺れた。長い眠りから覚醒した機械が、うねりを上げてうごめき出す。錆が剥がれ落ち、絡みついた蔦が弾け飛ぶ。剥き出しになった黒い鋼のボディは、鈍い輝きを放ちながら、みるみるうちに巨大なバイクへと姿を変えていく。そして、その中央には、青白い光を放つコアが脈打っていた。


「まじか……」


呆然と立ち尽くす俺の目の前で、それは完璧なバイクの姿になった。ただのバイクじゃない。そのデザインは、俺が知るどんなバイクよりも洗練され、そして力強かった。


だが、驚きはそれだけでは終わらない。


バイクが静止したかと思うと、まるで生きているかのように車体が軋み、変形を始めたのだ。ガシャン!ガシャン!と、複雑な機構が組み変わり、やがてそれは、全高数メートルの**人型ロボット**へと姿を変えた。全身から立ち上る蒸気と、青い光を放つ眼。圧倒的な存在感に、俺はただ息を呑むしかなかった。


「こいつ……すげえ……」


俺の脳内実況は、完全に興奮しきっていた。まさか、異世界に転生してこんなものに出会うとは。しかも、核融合炉だと?ガソリンがなさそうなこの世界で、これほど頼りになる動力源はないだろう。


ロボットは再びバイク形態に戻り、その脇には人が乗れるようステップが展開されていた。まるで、俺を待っていたかのように。


「お前……**ライドロン**って呼んでいいか?」


問いかけると、ライドロンのコアが微かに輝いた気がした。返事の代わりに、エンジンの唸り音が響き渡る。まるで「乗れ」と言っているかのようだった。


俺はライドロンにまたがった。シートの感触は、想像以上に滑らかで、それでいて頑丈そうだ。アクセルを軽く捻ると、ライドロンは唸り声を上げ、その巨体を軽々と前へと進ませた。


アスファルトもろくに残っていない荒野を、ライドロンは物ともせず駆け抜ける。俺は初めて、この世界に希望の光を見た気がした。


「さあ、行くぞ、ライドロン。この世界で、俺の好きにやってやるさ」


そう心の中で呟いた時、遠くで小さな悲鳴が風に乗って聞こえた気がした。


### 次回予告


遠くから聞こえた、小さな悲鳴。

ライドロンの背に乗り、走り出した俺は、そこで一人の幼い少女と出会う。

荒廃した世界で、偶然にも巡り会った、同じ故郷の人間。

彼女を守るため、俺の旅は、新たな意味を持つことになる。


次回、ライドロンと紡ぐ家族の物語。


**第2話:『小さな迷い子とライドロンの背』**


「まさかこんなチビまで連れていくとはな……。まあ、いっか。まずは安全な場所を探すか。」


新たな旅が、始まる。

お楽しみに!

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