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第6話 引導はどうせなら盛大に

「む、復活の準備が済んだか」


 ラミアがそう呟いた直後、足元に魔法陣が発動される。恐らく部下たちが復活の儀式を終えたのだろう。これから魔王ラミアがオワコン王国に姿を現し、民衆を更なる絶望の淵に叩き落すのだろう。


「さてアルスとミリアよ。ちょいとだけ儂に力を貸すがよい」

「はい、魔王が究極魔法を使う為には少し魔力量が足りないので、私たちの魔力を渡すんですよね!」

「魔力を? 確か前の決戦の時は単独で撃とうとしてなかったか?」


 アルスが勇者としてラミアと対峙した時は、彼女に究極魔法を撃たせる隙を与えないように必死で連撃して止めていた。だからアルスは魔力を貸すという言葉に疑問を持った。ラミアはそれなのだがな、と説明する。

 

「復活したばかりの儂では魔力が不十分での。そなたらの助力が必要なのじゃ」

「その目的もあったから、私たちの娯楽に参加してくださったんですよね」

「娯楽て。いや確かに楽しんだけれどもね」

「余興は儂も随分と試させてもらった! この場所も快適じゃし、気に入った! 暇が出来たらまたここに来るとしよう!」


 ラミアは清々しい笑みを浮かべる。無邪気な彼女を見たアルスは、自分は本当に戦うべき相手を間違っていたのかもしれないなと思った。


「そういやラミアはこの空間に自力で来たんだよな……」

「儂の本来の力であれば、禁呪であろうと容易く行う力は持っておるわ」

「俺なんでラミアに勝てたんだろう……。もしかしてあの勝利ってお情けだったりするのか?」

「いや、あれはそなたの執念に感服した儂の立派な負けじゃ、誇るが良い」

「そ、そっすか」


 ラミアは本心から言ったのだが、アルスとしてはどこか釈然としない気持ちだった。ミリアがラミアの手を取って魔力を譲渡する。

 アルスもそれに続いてラミアのもう片方の手を取り、力を注ぎこんだ。すると魔力量が充分になったらしく、繋いでいた手が離れる。


「メテオを撃てば、王国は跡形も無く消え失せる。これでこの光景も見納めじゃな」

「本当に、消滅するんだよな」

「はい。メテオは一度発動したら、誰にも止められません。王国は、確実に滅びます」


 そんなことを知らない国民たちは、未だに見苦しい命乞いを続けている。きっと、全ては一瞬で消し飛んでしまうだろう。ラミアはポツリと思いを語り出した。


「当初は人類の持つ文明を手離すのは惜しいと思っていたから、支配して傘下に加えるつもりじゃった。しかし蓋を開けてみれば、国の人間どもには残しておく価値が感じられなかったのじゃ。……ならば消し去ってしまったほうが良いと判断した。あの人間どもは、とうに生き残るチャンスを逃しておったのよ」

「残した場合、メリットよりもデメリットの方が大きかった、と」

「うむ、まともな損得勘定が出来ぬ者どもを配下に置いた所で、寧ろ不利益しか起こさぬからな」


 ダメな組織は内部から腐っていく。彼らを取り込んだらダメになってしまうという判断が下されていたのだ。


「一応、俺たちも人間なんだけど……残してもらっていて、良いのか?」

「アルスとミリアは協力して儂に打ち勝った。人間どもは気に食わないが、アルスの根性とミリアの良い性格は気に入ったのじゃ」

「ミリアの褒める所ちょっとおかしくなかった?」

「えへへ、私達褒められちゃいましたね!」

「いいんだ……」

「はっはっは! お主のそういう所が実に面白いぞ!」



 ――じゃあまた後でな、とラミアは言い残して魔法陣の転移によって狭間から姿を消した。


 直後にオワコン王国の上空から高笑いが聞こえて、メテオの詠唱が始まった。


 国民たちから悲鳴が上がる。しかしそんな事でラミアの詠唱は止まらない。弓兵達が矢を放つも全く届かない。


 詠唱が終わり、上空には巨大な隕石が現れた。


 王国よりも大きな隕石は、狭間にいる二人も思わず尻込みするほどの威圧感を発している。


 そんな脅威に国民たちは次々と気絶していく。


 数秒経った後、隕石は国を丸ごと一気に飲み込んだ。


 耳を劈く爆発音と、視界を真っ白に染め上げる光に包まれる。


 勇者、聖女、そして魔王の力によるメテオは、宣言通りにオワコン王国を消滅させたのであった。



「わあ、綺麗ですね……」

「ミリア、この大惨事を綺麗って言っちゃうのはちょっと怖いかなーって」

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