表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イカサマゲーム  作者: 夕凛
1/1

イカサマは、彼の男の為に


「女?手を抜く対象になどならんな」


「子供?ゲームの相手にすらならんな」

 

 イカサマをするなら、それなりに態度をわきまえなければならない。イカサマをしてる時点で、俺らは全うにゲームをプレイしているヤツらよりも、地位は下だ。

 それも下の下。はるか下。たがそのイカサマ野郎が善良なプレイヤーよりも上に立つことができる瞬間がある。それは、


「ゲームに勝利した時だ」


 敗北は勿論、引き分けでもアウト。イカサマやって引き分けなんて、負けも同然。当然、イカサマがバレても負け。

 最高のギャンブルだ。ゲームでハラハラ感を味わいたいのなら、私はイカサマをオススメしよう。



 ここは、現在、絶賛!鎖国中である「九条の國」。鎖国中の国ではあるが、周りの国々は開国は求めようとしない。

 何故ならば、この国はギャンブラーの集う国だからである。治安は決して悪くない。悪化を防ぐために、国が警備隊を大々的に組織しているからである。しかし、一度ここを訪れたものは、決して帰ることはできない。

 国が束縛、拘束するといった事は一切行っていない。本人の意思次第で、帰ろうと思えば用意にこの国の外に出ることができる。ただ、この国に来訪して賭けグルイにならない者はいない。そんな国への渡航許可を出す国は殆どない。

 そんな九条の國、西の端にあるカモノハシ地区にて、一月(ひとつき)ぶりの来訪者が現れたのである。


「いらっしゃいませ。お客様」


「この店に、トランプを用いたギャンブルはあるか?」


 店員は懇切丁寧に応じた。

 九条の國に存在する店は、カジノや賭け事に関した店以外も全て国営のものある。店員はマナー、作法、行儀を徹底的に躾けられており、清潔感を保っている。また、荒事を治めるために武道もマスターしている。

 彼らは決してギャンブルに溺れたりはしない。そうして破滅していった者らを幾人も知っているからである。


「もちろん、ご用意がございます。遊ばれて行きますか」


「ああ」


「では、ご用意致します」


 ギャンブルは、トランプ等の場合、その店の店員か、店に居合わせた他の客かのどちらかとすることになる。

 ルーレットやその他コインゲーム等は、きちんと一卓につき一人のディーラーが付いている。

 そして、唯一この国の人間が関わらない競技がある。それが、チョイス・ユア・ルールズという、競技である。この賭け事は、人数が二人~上限なしというあらゆる形で行われる。ルールは、賭け金が最も多いものが選定する。あまりにも理不尽なものや、人の殺傷を必要とするものは、禁止されている。

 そして、当然のこどく、どの競技であっても、「イカサマ」は禁止である。


「イカサマは禁止となりますので、ご理解下さい」


「承知している」


 店に訪れた男は、店員と部屋に入り、トランプを始めた。


「この国の店員は皆、国家公務員と聞いた」


 山から一枚カードを手にし、男はおもむろに話し始める。


「ゲームは、インディアンポーカーでよろしいですか?」


 男はこくりと頷くと、話を再開した。店員は自身の引いたカードを額の前に当て、同じく相手の額に当てられたカードを見つめ、何一つ表情を変えないまま、淡々と自身のカードを取り換える。


「一つ質問なんだが、お前がこの島で一番やりたくない賭け事はなんだ?」


「・・・・・・」


 店員は男がカードを取り換えないと意思表示したところでようやく口を開いた。


「チョイス・ユア・ルールズ、通称ルールズというゲームでございます。もし遊んで行かれるのでしたら、後程案内できますが、いかがいたしましょう」


「悪いな。では早速お願いする」


 そう言うと、男はテーブルの上にカードを置き席を立った。店員も額に当てていたカードをテーブルに置く。そこに書かれた数字は、男のものより小さかった。


「かしこまりました。賞金は既に振り込まれています。ご入国の際に身に着けていただいた時計から確認ができますので、よろしくお願いいたします。時計はこの島から出国されるまで外れることはありませんので、お忘れなきよう。時計内に振り込まれたお金、また、あなたが入国の際に時計内に振り込んお金は、最終的に残った分を出国の際にお返しいたしまします。勿論、あらゆる通貨への変換が可能ですので悪しからず」


 相変わらず、男は不愛想に店員に背を向けたままだった。


「手配した車が到着したようですので」


 そう言われると、男は早々に車に乗り込んで去っていった。

 店員も客の見送りが済むと、自身の端末に


「カモノハシ区店舗E302 マイナス ワンビリオン」


 と記録した。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ