48 人間って馬鹿だよね
大手ゲーム会社ムーンで起きている怪異について。
地上を震撼させているこの怪異——あ、歴史改変RPGから偉人達を美少女化したギャルゲーなど、次々とヒット作を生み出している会社の社員が、ここ2ヶ月の内に相次いで心臓発作で死んでいる事件です。
最初に死んだのは、20代の看板イラストレーターでした。
20代なのに心臓発作という死因。
誰もが驚いたようでしたが、地上の情報量の多さにイラストレーターの死もすぐに忘れ去られ――る、筈でした。
だって、怪異は続いたのですから。
3日後。2番目に死んだのは、40代のシナリオライターでした。やっぱり心臓発作です。
まあ歳だし……で済ませるには流せぬ死が続き、人々は言い表せぬ不安を覚えました。
それから数日おきに、ムーンの社員が心臓発作で亡くなり—―流石におかしい、とやがてニュースになりました。
ムーンの社員が相次いで心臓発作を起こしている――地上で人気の少年漫画みたいな怪奇現象に「神だ!」「ガチで悪魔の仕業では?」とSNSはお祭り騒ぎ。
そして、僕は突き止めました。
この事件の犯人を――。
***
「報告書はこれでいっか!」
夜の霊園。
木の枝に座っていた金目の少年――地上で起きた不可解な事件を調査する天使だ――は膝上の書類から顔を上げた。
視線の先には白装束を着た集団――幽霊だ――が集まっている。
「世は戦々恐々しているようじゃのぅ」
「ふんっ我らの怒りを思い知れ!」
「全くです!!」
憤怒にまみれた声で言うのは、平安や戦国の世を生きた偉人達。
彼等はゲームでの自身の扱いに憤りを覚え、ムーンの社員に怨念を送り不審死を引き起こしているのだ。
「全く最近の奴らは先達を敬うどころか金儲けの道具にしよって……我らを何だと思っているんじゃ」
「拙者、女子にさせられましたぞ!」
「あの戦こっちが負けた事にさせられました……」
「俺はあんな頭悪くないっ!」
彼等の愚痴は留まるところを知らない。
「……かえろーっと」
このまま聞いていたら朝になりそうだ。
天使は翼をはためかせ夜空に飛び立った。
「はあ……人間って馬鹿だよね〜」
思わず呟いていた。
「生きてる時は尊厳なんて知らん顔で大暴れする癖に、死んだら尊厳が一番大切になるの」
彼等だって、生きている時はたくさんの犠牲を生み出してきたと言うのに。
「それは棚に上げて、さ」
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