病院事変・前
「おめでとう」
「ありがとうございます」
気がついたら、いつの間にか白い空間にまた戻ってきていた。
目の前には閻魔様だ。
「あの雉も、汝と猿が敵とは運がなかったな。まあ事故に遭っている時点で汝ら皆は運なぞないのだがな!」
ガッハッハと大口を開けて笑う閻魔様。笑えないです。
「ここに来てもらったのはな? 現世に戻った時のことを事前に教えておこうと思ってな」
「それは助かります」
「汝の体は今は病院に運ばれてICUに入っておる。ここ、賽の境界から出たらその体に汝の魂は戻っていく。ここまではよいな?」
「はい」
「問題はそのあとじゃ。その病院が爆発する」
「はい。…は?」
「説明の時に伝えたの、汝らに生の欠片を分割した場合ほとんど体に残らんと。早い話が寿命がすぐに来てしまうんじゃよ。
そこで現世の流れを変えて、汝を事故が起こる病院に移送されるように取り計らった。
要はもう一回≪生魂選別の儀≫を即座に行わないと犬も、猿も、汝も地獄行きというわけじゃ。
談合されると面倒じゃから三人とも行う場所は別じゃがの」
「そう、ですか」
やだねぇ。また恨まれるのか。
彼を犠牲にしたのは後悔はしていないけど、なんども味わいたい気分ではない。
「雉のことを気にしているのか?」
そうだ、考えを読まれるんだった。
「あやつのことは気にするでないわ。あやつが弱く、汝が強かっただけ。それだけなんじゃからの。
それに死ねば皆ワシのもとで裁き、別の輪廻に送られるだけよ。死は新たな旅立ちにすぎぬ」
閻魔様が大きな手で俺の頭をなでてくれる。
暖かい。これが徳というやつか。
「では汝を現世へ送る。またすぐに会うがの」
閻魔様が柏手を打ち、空間が裂ける。
その裂け目に俺の身体は吸い込まれていく。そうだ、閻魔様に礼を言わなくては。
「あの! 閻魔様ありがとうございました!」
閻魔様がにこやかに笑い。
「ではの!」
◇
目が覚め、ガバッと身体を起こす。激痛。体を再び倒して、枕もとのナースコールを押す。
「生きてる……」
死んだほうがマシなくらい全身痛いけど。まったく、いったい何日経ってるんだ? 病室には時計の類がないからさっぱりわからない。
しばらく待っていると看護師さんとお医者さんが慌てて室内に入ってきた。
「君! ああ! 意識が戻るなんて! すぐに検査しよう!」
お医者さんが興奮しながら俺の身体をくまなく検査していく。
すみません、すぐにまた死ぬんでお構いなくって気分だ。
お医者さんが一通りの検査を終え、看護師さんが奇跡的に内臓が大丈夫なので、すこししたら一般病棟に移れそうですねって言ってくれた。
とにかくお腹が空いたから何か食べたいなってICUの中で思っていると。
強烈な爆発音と共に身体が宙を舞った。
閻魔様、すぐって言っても早すぎない?
◇
「来たようじゃな」
「早すぎません?」
「そうは言ってもな。汝の寿命は五十八分しか残ってなかったのだ。許せ」
想像以上にシビアで逆に申し訳なくなる。
それだけあの大事故が悲惨なものだったのだろう。
「では今回の≪生魂選別の儀≫について説明するぞ」
「お願いします」
「今回の儀式に組み込まれた魂は七名じゃ。役割の振り分けは白が四、黒が二、灰が一じゃな」
この前の白靄ホワイトボードに文字と丸い駒が浮かび上がる。
ボードの左に白の丸が四つ、右側に黒の丸が二つ、それらの真ん中に灰色が一つだけポツンと示されている。前回はなかった役割の駒か。
≪白伍、黒弐、灰壱。配役は農民が弐、祈祷師が壱、呼び巫女が壱、宿直≪とのい≫が壱、謀叛者が弐、内通者が壱、欠けなし≫
「祈祷師は分かるな? 占い師じゃ。前回の猿じゃな。夜の時間に指定した相手の色を見ることができるぞ。黒ならば謀叛者、それ以外は白じゃ。
呼び巫女は会議時間に処刑された者の色が夜時間にわかるぞ。俗に言う霊能者じゃな。
宿直は夜の時間に一人を指定し護ることができる。自身は無理で、最悪の場合は黒陣営を守るかもしれんから注意じゃ。人狼では狩人と呼ばれる役割じゃ。
謀叛者は敵の本体じゃな、最終的に白陣営はこいつらを全員処刑すれば勝ちじゃ。今回は二人おるので夜の間は会話できるぞ。
内通者は白からの裏切者じゃよ、目的は黒陣営の勝利じゃが祈祷師の結果は白が出る。
配役の説明はこんなもんじゃな」
「欠けなしってことは何も持っていかれないのが確定で、配役が全て存在する状態でゲームスタートってことですよね?」
「うむ、先刻の儀式と同様じゃな」
「なるほど……。理解できました」
なるべくなら農民でフラットに内容を見たいな。積極的に相手を蹴落としに行かなければならない謀叛者は心情的にきついし。
そんなことを考えていると、閻魔様はゴホンと咳払いをして。またしても空間を裂く。
「此度の儀式を終えれば真の蘇生となり、しばらくは祭事に巻き込まれることはなくなるだろう。心して戦ってこい」
「はい、ありがとうございます! 行ってきます!」
◇
目を開けると、この前と同じ円卓に着いていた。この前と違うのは目の前と両側面に壁があるところか。視線を落とすと閻魔様が前回渡してくれた、あの紙が置いてあった。それを手に取ってみる。
≪貴方の役割は『農民』です≫
また役無しの白陣営か。頑張ろう!
意気込んでいると天井のタイマーから声が響いてきた。
≪黒陣営の会話中です。発言をしている間は太鼓の音が聞こえますので参考になさってください≫
すると、ドーンドーンと太鼓の音が聞こえてきた。
謀叛者たちが会話しているのだろう。結構長い間聞こえるな。作戦は緻密なものを取ってくるのか? 七、……九回か。往復で九回ってことは潜伏と騙り両方に出るかも。
≪儀式開始まで後三分≫
天井のタイマーが作動した。
一秒ずつキチンと刻んでいく。
≪儀式開始まで後二分≫
のどが渇いてきた。
魂だけのはずだから錯覚だろうか。
≪儀式開始まで後一分≫
あと一分で生死をかけた戦いが始まる……。
目を閉じて集中する。
≪儀式開始、第一犠牲者が発見されました≫
ブーッとブザー音が鳴り、天井のタイマーは一時間と表示された。
サイドと正面の壁が消え、視界にはお面の集団がお目見えし、それと同時に円卓の天板に一人ずつモニターが現れた。
それには円卓が七分割され金、銀、瑪瑙≪めのう≫、瑠璃≪るり≫、硨磲≪しゃこ≫、真珠、玫瑰≪まいかい≫がアイコンとして表示されていた。瑠璃の位置に汝と表記されているので俺が瑠璃のお面なのだろう。顔を上げると金が仮面に埋め込まれた目元の半面に、玫瑰つまり雲母が模られたマスクが対面にいるので間違いはないはずだ。
状況を確認すると俺以外の全員は混乱しているようで、あーでもないこーでもないと言い、話が進まない。
あまり目立ちたくはないが、俺がある程度仕切るしかないな、これは。
パンと手を叩いて音を出して注目を集める。
「皆さん、混乱しているのは重々承知です。ですが、みなさんが生き残るためには会話を重ねて七人の中にいる黒陣営を吊りきらなければならない。故に祈祷師の宣言がある方は名乗り出てほしい。ああ、呼び巫女はまだ宣言しないでください」
突然仕切りだした俺に訝しむ視線が向けられる。
「安心してください、俺は二回目です。前回は黒陣営を吊り、勝利しました。皆さんにある程度の進行の仕方をお教えできると思います」
参加者を見渡していくと一人だけギラついた嫌らしい視線で俺を見ている。
「ほう、生き残りか…。つまり、お前は人を殺して生き残ったってことだな!?」
案の定、俺から見て二つ隣の左にいるジジイが噛みついてきた。真珠のマスカレードマスクだ。絶望的に似合っていない。
口角に泡が付いており明らかに冷静ではないとわかる。
「そうですね、俺は一人を殺して三人が生き残る選択をしました」
「やはりな! だとしたら貴様が黒陣営というやつじゃろう!? おぬしらコイツを殺せ!」
人は自分より慌てている人物を見ると落ち着くものである。
真珠の取り乱しっぷりに他の人たちは冷静さを取り戻したようだ。
「あー、あのなジジイよ。閻魔様から聞いたルール分かってるか?」
銀の面頬の若い男性が尋ねる。俺から見て右側の二つ隣だ。
「ああ? あのような似非者の言うことなぞ聞いておらんわ! さっさとその男を吊れい!!」
「こりゃ話にならんな……」
銀の男性は口元は見えないが苦笑いをしているのだろう、微妙な表情をしている。他の人も鬱陶しそうな表情だ。
とは言ったものの大声でガナられ続けては会議が進まない。
閻魔様が聞いているかわからないが提案してみるか。
「審判! 真珠の会議妨害は逸脱している、少しの間ミュートにできますか?」
≪消音希望が提出されました。対象者は過半数の投票で十分間の発言が封じられます≫
手元のモニターに真珠の消音を支持するかの投票画面が出てきた。
もちろん賛成をタッチする。
≪過半数の賛成により真珠は発言がこれより十分の間封じられます。発言可能になるのは四十六分二十三秒からです≫
システムの発言と同時に騒音がピタリと止む。
真珠のジジイは動きでは叫び続けているようだが、声は俺たちに届いていない。隣の硨磲側に見えない壁があるようで、強烈に叩いているようだが一切硨磲には手出しができていない。
「静かになったところで、ある程度の説明をさせていただきますね。私は瑠璃だそうです」
「やっと静かになったね、僕は金! よろしく」
「瑪瑙です…。よろしく」
「硨磲だ、よろしくな」
「玫瑰よ、よろしくね」
金は元気な少年、瑪瑙は陰鬱な雰囲気漂う女性、硨磲はダンディズム溢れる男性、玫瑰は老年の女性だ。
銀は発言はしたが自己紹介はなしと。
「俺は銀、瑠璃の兄ちゃんよ、ジジイを吊る余裕はあるか?」
銀の男性が自己紹介と共にいきなり踏み込んだ提案をしてきた。
顎に手を当てて少し考える。進行は七人から五人、三人になって決戦だ。つまり余裕はない。
「ないですね。真珠が白陣営の場合、夜にもう一人追加で白が噛まれて次の日に五人です。黒が二人に裏切者がいるので計三人、力の差が逆転し敗北が確定します。もちろん、黒が灰を噛めば別ですが、不確定要素なのでオススメできません。
閻魔様はなかなか白陣営に優しくない盤面を持ってきてくれたようです。この昼の時間で黒もしくは内通者を一人吊らなければ、白陣営はほぼ負けになります」
俺たち白陣営が勝つにはミスゼロか謀反者が内通者を斬るか、宿直がキルを二回防いでくれることを祈るしかない。かなり厳しい状況だ。
「了解、俺は祈祷師だ! ≪祈祷師宣言:瑠璃白≫!」
「それはどうも、対抗います? 白で祈祷師の人は今出ないとほぼ負けになるので確実に出てください」
参加者を見渡す、誰も名乗り出ない。役職が欠けることはないから、銀が祈祷師確定か。これは大きな情報になる。
周りの人たちから見たら俺が内通者の可能性があるから油断はできないけどね。
「それでは、俺と銀さん以外から今日吊る者を決めましょう。順当に五分の三は当たりです、気負わずに発言してください。精査内容が少なすぎますので今の段階で呼び巫女も出ていただけると助かります。正直、今日が正念場です」
全員が不利な状況を理解したのか、沈黙が場を支配する。
その状況を破ったのは金の少年だった。
「じゃあ、僕から。≪呼び巫女宣言≫、結果は誰も吊られてないから出せないよ」
「ほう、君が内通者か。≪呼び巫女宣言≫、私が本物だよ」
お、硨磲が宣言して、祈祷師が一に呼び巫女が二の形になった。欠けなしの儀式なので俺の視点では、呼び巫女が黒白か灰白で確定だ。
ここは保留にしておきたいので瑪瑙、真珠、玫瑰から吊りたいな。
「つーことは、瑪瑙とジジイと玫瑰から吊る形になる。そうだよな相棒?」
相棒? 銀に目をやると俺に向かってウインクをしてきた。俺が相棒かよ。
だが、銀はきちんと思考がまとまっているようだ。安心できる。
「そうですね、今のところ祈祷師の銀さんが確定。呼び巫女が黒白か灰白の二択、お三方を吊ると三分の二で黒か灰に当たります」
「てなこった、俺は正直ジジイがノイズすぎるから吊りたいってのが一つ」
「でもそれだと本当に白だったら私たちの負けよ?」
瑪瑙が反論をする、正論ではあるが……。
「瑪瑙のおねーさんは真珠を残したいの?」
「それはないわ」
金の少年の言葉に秒で瑪瑙は返した。瑪瑙はフラットな視点で見ているタイプみたいだな。
きっと自分が置かれている状況も理解している。それを口に出すかどうか……。
「それに私の視点では私と銀以外は白確定じゃないわ。瑠璃が灰の場合がある。そんな彼に簡単に票を入れろと言われても判断はまだ早いと言わざるを得ない」
そう、彼女視点では銀が白ほぼ確定以外は呼び巫女に一人、それ以外に二人混ざっている可能性が十分ある。俺が灰の場合だってあるからね。
だから、確実に詰められないので俺と銀の視点からしたら邪魔なジジイを排除したいんだ。本当にノイズなんだよね。
あ、十分経った。
「お、おお! 貴様ら好き勝手いいおって! ≪祈祷師宣言・瑠璃黒≫! ワシが本物の祈祷師じゃ! さぁ、そのクソガキを吊れ!」
……ふーん。
参加者を確認すると皆揃って溝の中の糞だまりを眺める目で彼を見ていた。
でしょうね。信じられないほどの馬鹿だコイツ。
「あーあ、この状況でジジイに投票しないって人いる?」
「いるならば説明して差し上げますが」
銀と俺が首を振りながら言う。とりあえず、明日も議論はできそうでよかった。
「なんじゃと! ワシが本物じゃと言って!」
「ミュートお願いします!」
先ほどと同じくモニターに消音投票が出てきたので賛成に投票する。
再び真珠のジジイは音のない世界に逆戻りだ。
「はぁ……、敵ながら黒陣営が可哀想だよ」
硨磲の男性がため息と共に、黒陣営に対しての同情を示す。俺も同じ気持ちだ。
未だに見えない壁をバンバンと叩いて叫び散らかすさまは檻に入れられた猿のようで一層惨めだ。
「わからないまま吊られてしまうのはあまりに哀れだから、理由ぐらい教えて差し上げたらどうかしら?」
自己紹介以来口を開かなかった玫瑰が発言をした。ステルス気味の立ち回りをするタイプのようだな。
嫌々だが説明しようと思っていると、先に金の少年が口を開いた。
「本物の祈祷師なら、食ってかからずに宣言をして瑠璃のお兄さんを黒といえばいい。
なんでそれを行わず、理由も言わずにお兄さんを吊ろうとしたのって話だよね。状況から見て真珠が本物の可能性はかなり低い。つまり、黒陣営ってこと」
はい、その通り。銀が偽物の可能性は十分にあるが、その場合この儀式に祈祷師はいなかったってことだ。コイツのせいで負けになるから、そんときゃせいぜい地獄で仕返ししてやる。
「今日吊る人も決まったことですし、明日からの流れを説明しておきますね」
「おん? 明日でいいじゃないか相棒」
「いえ、今日言っておかないといけません。今日の夜、私は噛まれますから」
「だよね。少しでも考えられるならお兄さんを噛むよね」
金の少年が俺に同意する。他の人は……、瑪瑙は理解してそうだな。それ以外はいまいちピンと来てない感じか。
「銀さんは本物の祈祷師ですよね?」
当然だと、銀は頷いて答えてくれる。
「つまり、俺の白は確定。最後まで残すと銀さんと俺で確定二票残りますし、明日になったら白黒のどちらかが占いで出て、さらに黒陣営は不利になります。
かと言って銀さんは噛めない、宿直が守っているから手番が減るだけです。確実に白か灰であり、宿直の可能性もある私を殺しに来るでしょう。
だからと言って宿直は銀さんの護衛を外すのはやめてください。彼がいないとほぼ負けです」
「我々呼び巫女が噛まれることがあるのではないか?」
「あり得ませんよ硨磲さん。そうすれば残ったほうを最後に吊るだけですから黒が不利になるのは変わりません」
「アナタが内通者の場合は?」
「黒にはどちらかわかりませんから、結果的に噛まれますよ瑪瑙さん」
ふう、一気にしゃべったので疲れたな。
もう真珠の爺さんが黒陣営でほぼ確定の状況だ。ここから白が負けるのは正直言って難しい。瑪瑙を噛めば明日、玫瑰が確定で吊れる。その逆も然り。つまりは黒が確定で一人いなくなる。呼び巫女は最終日に吊られるから謀叛者が出ることはないだろうしね。
「進行はおそらく真珠吊りから私、つまり瑠璃噛み。明日には呼び巫女たちの結果と銀さんの占いがほぼ確定で揃います。詳しくは黒陣営にばれるので言えませんが、半分詰みの状態に持っていけるかもしれません。頑張ってください。
占うのは瑪瑙か玫瑰を選ぶこと、これだけは守ってください。おそらく呼び巫女は灰白ですから考察のノイズになるので気にしなくていいです。
明日からはアナタが皆さんをまとめてくださいね、相棒」
銀さんは慣れていないだけで、地頭は良さそうなので十分に仕切れるだろう。
「……おう、任せな!」
話がまとまったところで、不意に瑪瑙が真珠を見た後に俺に視線を向けた。
「一ついいかしら?」
「私の話もほとんど終わりましたから発言があるならばどうぞ」
正直、今日はこれ以上話すことはないと思うが。
「ねえ、真珠」
瑪瑙がゆっくり語り掛ける。
ミュートが効いているので言葉が聞こえない真珠が動きで怒りをぶつけてくる。モニターにミュートを解除するかどうかの投票が出たので、賛成に入れる。
ミュートが解除された瞬間、真珠から怒号が飛び、思わず首を竦めた。
「なんじゃ! お主らワシを処刑するとは一体どういう料簡で…」
「私たちの死因、アンタでしょ」
時が止まる。真珠がパクパクと口を声にならない声を出す。俺たちの視線が真珠を貫く。
「あの病院。他の組に狙われたヤクザの親玉が逃げるために入院してるって看護師が言ってたわ。私が入院していたのは病院の最上ランクの病室の真下。死ぬ直前に感じたのは寝ていた部屋からの真上の熱よ。つまり、そのヤクザの部屋からの爆弾か何かの影響で私は死んだ。同じく、そんな熱量で病室にいた奴が生きているわけがない。ここにいるのは明白ね。
ヤクザの親玉は年寄りの男って話よ、ここにいる人間でその条件に当てはまるのはアンタだけ。
わかる? ここにいるみんなを巻き込んだアンタのほうがよっぽど瑠璃より人を殺してるわ。諦めて死ね!」
≪瑪瑙が投票を完了しました≫
瑪瑙が早期投票を行った。誰に投票したかはわからないが、予想と違うことはないだろうな。
しかしなるほど、あの傲慢さだ。さぞかし悪いこともしてきたのだろう。同情の余地はないな。
「わ、ワシは…。ワシは悪くないぞ!」
聞くに堪えない。
「では、皆さん。生きていたら、また明日」
≪瑠璃が投票を完了しました≫
投票を完了し、完了と同時に現れた退席ボタンを押す。
身体が金色の粒子になり消えていく。
明日からが勝負だ。頑張ってくれよ今だけの相棒。
他の人たちも投票を終えて金色の粒子になって消えていくのが消滅する寸前に見えた。
≪金が投票を完了しました≫
≪銀が投票を完了しました≫
≪玫瑰が投票を完了しました≫
≪硨磲が投票を完了しました≫
………。
≪真珠が投票を完了しました≫
≪投票が終了しました。結果、真珠陸票・瑠璃壱票≫
≪真珠が処刑されます≫
≪恐ろしい夜がやってきます≫




