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ドラゴン流錬金術

作者: 矮凹七五

ダイヤモンドの名産地

 ここはよくある幻想世界。林と隣接する草原に二つの巨大な影があった。

 一つはドラゴン。翡翠のような鱗、大木にも負けない程の巨体を持つ。蜥蜴と鰐のあいのこみたいな容姿をしているが、頭には二本の角、背中には蝙蝠のような羽が生えている。

 もう一つは褐色の山である。この山はドラゴンが今までにしてきた大便が重なってできたものであり、今やドラゴンの体を優に超えるサイズとなっていた。

 ドラゴンは悩んでいた。このままでは草原が大便に埋もれてしまう。


 ドラゴンは人間に化けて町の中にある図書館に来ていた。大便についての悩みを解決する為に様々な本を読んでいた。

 人間の姿で大便をすれば解決するのではと考える者もいるかもしれないが、この状態で大便をしても体から排出された瞬間に本来の大きさに戻ってしまう。これでは意味が無い。

 あれこれ本を探していると一冊の本が目に留まった。

『誰にでもできる錬金術 ――ダイヤモンドの作り方――』


 銀色に輝く甲冑に身を固めた騎士が馬を走らせていると道端にある藪の中からキラリと輝く光が目に飛び込んできた。

 騎士が馬から降りて藪を探すとそこには巨大なダイヤモンドの原石がいくつも転がっていた。

「これは素晴らしい! 持ち帰って姫様に報告するとしよう」

 

 国王の居城の一室。柱や床は大理石でできており、床にはワインレッドの絨毯が敷き詰められている。

 そこで先ほどの騎士が一人の女性と何やら話をしていた。

「そんなところにあったんですの!?」

 ウェーブのかかった長いブロンドヘアを持ち、光沢のあるピンクのロングドレスに身を包んだ美しい女性が驚きの声を上げた。この国の王女である。

「はい姫様」

 騎士が恭しく返事をする。

「明日、そこに行ってみましょう」

 姫は意気揚々とダイヤモンド採取の準備を始めた。


「おかしい。どこにも無い」

「本当にこの場所にあったんですの?」

 姫と騎士はダイヤモンドの発見場所とその周囲で懸命にダイヤモンドを探していた。けれども一向に見つからない。

 やがてそこに一匹のドラゴンが現れた。


「姫様、ドラゴンです! 木陰に隠れましょう!」

 姫と騎士は近くにある林に逃げ込み、木陰に隠れた。

 姫と騎士が様子を見守っているとドラゴンは何やら力み始めた。


「ぁぉぅんんん……っち!!!」


 草原中に響き渡るような大きな唸り声を上げると、ドラゴンの尻から何かが出てきた。

 出てきたものは巨大なダイヤモンドだった。


 ドラゴンは図書館から借りてきた本を読んで炭からダイヤモンドを生成する為の理論を学んだ。

 体内にある大便を自前の炎で燃焼させて炭に変え、学んだ理論を応用して炭をダイヤモンドに変えたのだ。


「もしかしてあのダイヤモンドはドラゴンのう○ち!?」

「……そのようでございます。姫様」

 二人は唖然としていた。ドラゴンがダイヤモンドを出し切った時、金管楽器のような爆音と共に凄まじい暴風が二人を襲った。

「きゃあーーーっ!!」

「ぐっ……!」

 二人は木にしがみつき必死になって暴風に耐える。

「臭い、臭い、臭いですわーー!!」

「しばしの辛抱でございます! 姫様!」

 臭いのは当然である。暴風の正体はドラゴンの屁なのだから。

 暴風に煽られてダイヤモンドが二人の方に向かって飛んでくる。

 二人は木にしがみつきながら必死になってダイヤモンドを躱した。


 暴風は去った。ついでにドラゴンも去った。しかし、屁の臭いは去らなかった。

「あのダイヤモンドはドラゴンのう○ちでしたのね……」

 悪臭が漂う中で姫は考えた。大便をダイヤモンドに変えて排出する事ができたらどれだけ素晴らしい事かと。

 けれどもそれはできないと姫は思った。

 何故なら大便は植物を育む事に一役買っているし、それに……

 自分がダイヤモンドを排出したら痔になってしまうから。

お読みいただきありがとうございました。

みなさんは本作品のドラゴンのような真似はしないでください。

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