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悪役令嬢は魔術師になりたい  作者: 神楽 棗
第二章 奇想の魔術師
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答えは簡単でした

 聞いてはいけないことを聞いてしまった私はすかさず話題を切り替えた。


「ところで皇女殿下の想い人って誰なの?」

「ああ…」


 黒い空気を消したゼオンが呟いた。


「ルイゼルだよ」


 まさかのルイゼル!?

 え!?どういうこと?どこで知り合ったの?

 恋に落ちる要素とかある??

 目を丸くしたまま固まった私の頭を整理させるためゼオンが補足した。


「夜会で足首を痛めた皇女殿下を抱き上げて部屋までお連れしたのがきっかけみたいだよ」


 初心な少女がお姫様抱っこにときめいた訳ですね!

 ルイゼルやりよるな。

 しかも細い体付きなのに結構筋肉あるみたいだし。

 さすが元王宮騎士団副団長だ。

 ニヤつきながら考えているとゼオンが嫉妬心を剥き出しにしてきた。


「俺だって何度もエリィのこと抱き上げてあげているんだけど」


 知っています。

 全部気絶している時だけどね。


「大丈夫。ゼオンが逞しいってことは知ってるから」


 褒めたのに何故か不機嫌なゼオンが突然私を抱き上げた。


「ゼ…ゼオン?」


 驚いて顔を上げると思っていたよりも近い位置にゼオンの顔があった。


「どう?俺だって負けてないよね」


 つまりルイゼルの筋肉について考えていた事に嫉妬したと…。

 そこ張り合うところか!?

 それにしても意識のある中でのお姫様抱っこは…照れる。

 しかもこの角度から見る真剣な顔って…カッコいい!

 皇女殿下がルイゼルにときめいたのがわかる!

 ゼオンは抱き上げたまま移動すると私をベッドの端に座らせた。

 ゼオンのベッドであることを意識すると緊張して体が強張った。


「それで?俺の寝室はどう?」


 どうと仰られましても…。


「エリィが皇女殿下を寝室に入れたっていう噂話を羨ましがっていたって聞いたから」


 誰情報よ、それ!?

 誤解を招きかねない言い方をしないで欲しい!

 確かに聞いた時はショックだったけど羨ましがってはいないはず!…たぶん…。


「使用人以外では俺の寝室に入ったのはエリィが初めてなんだけど」

「でも噂では…」

「皇女殿下が俺の寝室を訪ねてきたのは間違いないけど、すぐに応接室にお通ししたから寝室には入っていないよ」


 真相を聞くと自分が嫉妬深い女みたいで恥ずかしい…。


「エリィがいるのに他の女性を入れるわけがないでしょ」


 真っ赤な顔で俯くとゼオンは抱き寄せて額にキスをした。


「でもどうして皇女殿下は寝室に訪ねてきたの?」

「ルイゼルとの仲を取り持つ代わりに皇太子の情報を渡すと言ってきたんだ。だから皇太子の目を欺くためにも皇女殿下と俺が親密であることを周知させることにしたんだけど…」


 ゼオンは顔の前で両手を合わせると手に寄りかかり苦痛の表情を浮かべた。


「先に俺が耐えられなくなってルイゼルに押し付けたんだ」


 想い人と一緒にいるってそういうことだったのね…。


「それで情報は聞けたの?」

「ああ。半年くらい前から廃墟と化した元ネルドの城にガレフロナ帝国の騎士達が頻回に出入りしていたそうだ」


 ネルドの城があった場所は領土が区分けされた時にガレフロナ帝国の領土になった。

 つまりピッツバーグ公爵領が境界になるため、アテリア草をガレフロナ帝国に運ぶには最短の経路となる。


「半年前というと公爵領の探索前だよね?」

「ああ。メディーナかその密偵の情報かはわからないが俺達が公爵領を探索すると知ってアテリア草を移動させることを進言したんだろう」

「でも他の仲間の目もあるから小分けにして渡せる分だけ先にピッツバーグ公爵領からガレフロナ帝国に渡し残りは…」

「恐らく仲間が亡くなってから荷物に紛れこませて運ばせた。検問で引っかからないように」

「でも山賊に荷物を奪われ偶然山賊退治に来ていた私達に見つかってしまったと」


 ゼオンは頷き話を続けた。


「荷物の配送元を探ったけど何ヶ所も経由していて辿れなかった」

「すごい念の入れようだね。経由地の人達の共通点とかはなかったの?」

「それが…全員何故送ったのかわからないと言っているんだ」

「それって精神を作用する魔術が使われたってこと?」

「その可能性が一番高い。薬を使用するなら相手に近付かなければいけないが、魔術ならある程度離れていても術をかけることが出来る。ピッツバーグ公爵が大型魔物になった時のように」


 これでメディーナが言っていた魔術師の生き残りがスパイである可能性が高まった。

 問題はそいつがどこにいるか…。


「私達の身近にいるのかな…」


 けれど私達の周りで魔術を使っている人ってあまり見ないし。

 まあ私はフィリスに魔法馬鹿のレッテルを貼られるくらい使いまくってはいるけどね。


「それと皇太子も最近ネルドの廃城に出入りして何かをしているらしいがその中に黒いフードの奴はいなかったそうだ」


 狂戦士や魔物の実験だろうか…?

 ピッツバーグ公爵領の地下施設で捕らえられていた人達が頭を過った。

 けれどこれでアテリア草は皇太子が所持している可能性が高まったということだ。


「あとは皇太子がエリィを側妃にするため皇女殿下は俺の下に嫁ぐことを考えろと言われたらしい」

「やっぱりね。他の側妃を廃妃して皇太子妃にしてやるなんて嘘だと思った」

「皇太子妃…?」


 空気が一気に張りつめた。

 ゼオンさん。何か怒っていらっしゃいますか?


「俺、何も聞いてないけど」

「だって冗談だと思っていたし、皇太子妃とか廃妃とか言えば私が誘いに乗ると安易に考えたんじゃないかなって思って…。というより庭の会話聞いていたんじゃないの?」

「俺が着いた時はエリィがやんわりと断っているところだったから…()()()()()()()()()()()()()


 最後がやたらと強調されていますけど…。


「なるほど。つまり奴はエリィに対して本気になったと…」

「本気になってないから!ただの狂言だから」


 首をもげそうなくらい振って否定したがゼオンは全然納得しなかった。


「どちらにしても断ったんだし…ね」


 ゼオンをなだめるように抱きしめて見上げるもまだ納得していないのか眉間に皺が寄っていた。

 しつこいな…。


「そういうゼオンも最初は皇女殿下に言い寄られたんじゃないの?」


 皇女がルイゼルを好いているのは聞いたが、もともとゼオンを誘惑するために参加しているのだから作戦を実行していてもおかしくはない。


「皇女殿下にはダンスの時に俺がエリィをどれだけ愛しているか切々と語っておいたから言い寄る隙はなかったと思うよ」


 それ絶対引かれたんじゃないの。

 というよりあの楽しそうに踊っていたのって惚気話を聞かせていたからなの!?

 恥ずかしすぎる!!


「俺の心の中に入れるのはエリィだけだから誰に言い寄られても関係ない」


 ゼオンの腕が背中に回り抱きしめられた。

 ゼオンの心臓の音を聞きながらある言葉が引っかかり考え込んだ。


「心の中に入る…?」


 魔力供給で自分の魔力を相手に渡した事はあるがそれは掌の上に集める方法だ。

 もし魔力を相手の体の中に流し込んだらどうなるんだろう。

 ふと『魔法が世界を救う』の本を思い出した。

 あれも魔力をはじかず受け入れていた。

 もしかしたら…。

 ゼオンを見上げると事情が呑み込めずキョトンとしていた。


「魔力を流させて!」


 少し体を離すと自分の魔力をゼオンの体に流し込んだ。

 するとゼオンの周囲に赤黒い炎のような揺らぎが出現した。

 それはピッツバーグ元公爵が魔物化したときにゼオンから噴き出していた炎に似ていた。

 何か魔王みたい…。


「誰が魔王だって?」


 驚き顔を上げると額が当たりそうなくらい近い位置にゼオンの顔があった。

 私、今、声出してなかったよね?


「そういえば頭の中から聞こえるような…?」


 まさかこれって…!


「テレパシー!」


 ゼオンは意味がわからず首を傾げた。


「相手の体に魔力を流し込めば心の中で会話が出来るんだよ!ゼオンと連絡取りたくてずっと考えていたんだけど全然方法が見つからなくて。まさかこんなに簡単に出来るなんて!あ、でもこれだと相手と接触していないと連絡取れない…。まだまだ改善が必要そうだね」


 一人興奮しているとゼオンが呆れた顔で呟いた。


「こんな時まで魔法とか…エリィらしいといえばエリィらしいけど…まあそこが可愛いところでもあるけど…」

「ゼオン!聞いてる!?」

「はい。聞いてます」

「きっと『魔法が世界を救う』はこれの応用なんだと思う。もしかしてゼオンが相手の魔力が見えるのは知らず知らずのうちに相手に魔力を流していたから?そうすると魔力を飛ばせば遠距離でも話が出来るようになるってことだよね」

「それだとエリィが魔力をはじいていた時に俺の魔力が流し込まれればはじいていたと思うけど全くそんな感じはなかったよ?」

「流し込む量かな?魔力供給の時もはじく前に手が温かくなったから少量なら流せたのかも。流し込む量を増やせば相手と心の中で会話が出来るのかも!」


 早く試したい!

 今度は魔力を飛ばすことに挑戦しようとして部屋がノックされた。


「殿下。こちらにいらっしゃいますか?」


 ルイゼルの声だ。


「何かあったのか?」


 ゼオンが扉の外のルイゼルに返事すると驚愕の内容が伝えられた。


「王都上空に巨大な魔物が出現しました」

 




読んで頂きありがとうございます。

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