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悪役令嬢は魔術師になりたい  作者: 神楽 棗
第二章 奇想の魔術師
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専属護衛は怖いです

「凄いなこの本…」


 翌日、早速ゼオンに『魔法が世界を救う』黒本バージョンを見せた。

 闇魔法が使えないから白本に戻せないだけです。


 ゼオンは感心しながら本を眺めていた。

 私には意味がほとんどわからなかったがこの短時間で読解できるとか天才か!?

 ゼオンの理解力の凄さに感心した。


「魔法道具に他人の魔力で反応する魔術をかけるなんて!」


 そっちかーい。


「普通魔法道具は持ち主の魔力以外ははじくのに光と闇の魔力に反応して出現させるだけじゃなく、使う魔力で本自体を変えるなんて…。さすが初代フリーデン王だよ。勉強になる」


 さすがは元王宮魔術師殿。

 魔法が絡むと饒舌になりますね。

 興奮するゼオンを温かく見守った。


「どうしたの、エリィ?」


 ゼオンを見ていると滅茶苦茶負の感情で初代フリーデン王を罵った私が悪に思えるのは気のせいだろうか…。


「ゼオンが可愛いなって」


 純真無垢で…。


「エリィには格好良いって思われたいな」


 ゼオンは立ち上がるとソファーの背もたれに両手をついて覆いかぶさってきた。

 私を見下ろすゼオンが艶めかしくて…鼻血出る!!

 徐々に顔が近付いてきて…。

 コンコンコンコン。


「だ…誰か来たみたいだよ」


 扉の方に顔を向けると顎クイされてゼオンの方を向かされた。

 誰か来てますけど!?

 唇が触れる寸前で動きが止まった。


 コンコンコンコンコンコンコン。

 外の人めっちゃ叩いてる!?


「チッ!」


 今、舌打ちした!?

 ゼオンはソファーに座り直すと入室を許可した。


「扉を壊さなくて済んで良かったです」


 入室してきたのはルイゼルだった。

 闇魔法 対 魔法剣どっちが強いんだろう?

 ちょっと興味が湧いた。


「ねえねえ、闇魔法と魔法剣ってどっちが強いの?」

「そりゃあ闇魔法でしょ」


 ゼオンが得意気に答えた。


「闇は上位魔法ですから当たり前でしょう。それより仕事の話をしてもよろしいでしょうか」


 人を馬鹿にしたような物言いは相変わらずである。


「就任式の警護一覧表です」


 ルイゼルはゼオンに用紙を渡した。


「騎士団って王宮の警護までするの?」


 王宮には近衛隊がいるのに?


「そっか。エリィには言ってなかったね。ルイゼルはエリィが王太子妃になったら専属護衛になりたいと申し出たんだ」


 驚いてルイゼルを見上げるもルイゼルは表情一つ変えずに眼鏡をかけなおした。


「俺もルイゼルなら()()安心だし申し出を受けることにしたんだ。だからエリィが王太子妃になるまでは近衛隊で王宮の警護について学んでもらおうと配属したんだ」

「恩を返すと約束したでしょう」


 恩?私は首を傾げた。


「あなたが王太子妃になった時恩を返すと以前約束したのを覚えていませんか?」


 ルイゼルはため息をついた。

 魔力切れで寝込んでいた時のあれか!


「恩って専属護衛の事だったの…?」

「不服ですか?」


 しまった。声に残念感が混ざってしまった。

 ルイゼルは顔をしかめた。


「エリィ、以前にも話したけどルイゼルは魔法剣士だし冷静に物事を判断できる方だ。何よりエリィに興味がないから護衛にはうってつけなんだよ」

「私の好みはおしとやかな女性ですからね」

「ちょっと!!」


 二人を睨むとゼオンが垂れた私の髪を耳にかけなおしてくれた。


「エリィの魅力は俺だけが知っていればいいから」

「ゼオン…」

「二人の世界を作らないで頂けますか?」


 微笑むゼオンにときめいて見つめ合っていると呆れたルイゼルが割って入った。


「殿下。就任式、結婚式と行事が次々に控えています。エリアーナ様と仲睦まじいのは結構ですが仕事をして下さい」

「大丈夫。その辺は抜かりないから」


 ゼオンは私の手を取った。


「それより今度の就任式にガレフロナ帝国も参加することになっている」


 ガレフロナ帝国ってアテリア草を保持しているかもしれない国だよね!?


「今回は皇太子殿下と第八皇女殿下が参加される予定です」

「皇太子は侵略した王族の王女達など側妃が10人もいる女好きだからエリィが狙われないか心配だよ」


 一夫多妻ってどこの王族だよ!って帝国の皇太子だけどさ…。

 そもそも女性をコレクションみたいに扱う男はお断りだ。


「私はゼオン一筋だから大丈夫だよ。それより第八皇女殿下がゼオンに惚れないかの方が心配なんだけど…」


 そう王道のライバル出現!になりそうな案件である。

 何も起こらなければいいけど…。


「俺はエリィ一筋だから絶対大丈夫。何があっても信じて」

「ゼオン…」


 ゼオンがカッコ良すぎる。

 再びゼオンと見つめ合っているとルイゼルがため息をついた。


「よく飽きずに何度も見つめ合えますね。まあ好きなだけ見つめ合っていればいいですよ。私が困るわけではないですから」


 邪魔者が再び割って入ってきた。


「確かに…。ずっと傍にいたいけど結婚が遠のくから仕事頑張るね」


 手の甲にキスを落とされた。

 上目遣いが素敵過ぎて魅入るなという方が無理なのだが…ルイゼルがいい加減にしろと睨んでいる。


「じゃあ私はそろそろ帰るね」


 そそくさと立ち上がり最後にゼオンの手を握り微笑みかけた。

 三度見つめ合っているとルイゼルが扉を開けた。


「では城門までエリアーナ様をお送り致します」


 早く出ていけと言わんばかりの顔に渋々従ったのだった。



「何で私の専属護衛になろうと思ったの?好みでもないのに」


 回廊を歩きながら若干の嫌味を込めて質問した。


「あなたが自分の価値を知らなすぎるからです」


 ルイゼルは立ち止まると想像していたより真剣な答えを返してきた。


「私は長年第四騎士団が何かの機密調査をしていることを知り独自で調べ王太子殿下の事を知りました」

「独自でって…そんな簡単に調べられるものじゃないでしょ?」

「公爵家を舐めすぎですよ」


 …公爵!?


「ルイゼル…様って公爵家の子息なの…ですか…?」

「急に気持ち悪いですね。今まで通りでいいですよ。私は五大公爵家の次男です」


 知らなかった…。

 どこかの坊ちゃんとは思っていたが社交界でも見たことなかったし。

 それより位の高い家柄なのに今までよくタメ口許していたな…。

 意外と器がでかいのか。


「公爵家は兄が継ぐので私は騎士として王宮に勤めるつもりでした。王太子殿下が表に出てくるまでは…」


 珍しくルイゼルの目が輝いた。

 まさか私の最大のライバルはルイゼルとか言わないよね…。


「今まであの方は陛下に進言するだけでほとんど表に出てはこられなかった。しかし最近になり騎士団を全滅させた魔物をたった一人で倒し類い稀なる才能を存分に発揮した!」


 崇拝し過ぎじゃない!?

 怖い!


「しかしその輝かしい活躍の裏には一人の令嬢の存在がありました」


 ルイゼルは顎に手をあてながら私を凝視した。

 蛇に睨まれた蛙のように固まった。

 まさか嫉妬に駆られて修羅場…とかにならないよね…。


「あの方の原動力はあなたと言っても過言ではない。あなたに何かあったらこの国は滅びます」


 私の存在が国家転覆の危機とか大袈裟過ぎませんか!?


「なのにあなたは勝手に危険に突っ込むは落ち着きないわで…何度国家の危機を感じたことか…」


 すみませんね!おしとやかな令嬢じゃなくて!!


「つまりゼオンの為に私の専属護衛を申し出たと…」

「公爵家の人間として国を守るための行動は当然のことですが、専属護衛を申し出たのはあなたに興味を持ったからです」


 ルイゼルは眼鏡をかけ直した。

 まさか私に惚れ…


「勘違いしないでくださいね。殿下の心を動かしたあなたには敬意を表していますが異性としては全く興味がありませんから」


 上げ下げ激しいな!


「それに私があなたの専属護衛に就くということは我が公爵家が後ろ盾になるということです。つまり五大公爵の一つがあなたを未来の王妃として認めると言っているのと同義になります」


 それは私が王太子妃になることを反対している貴族の反発を抑えるという事を意味していた。

 つまりルイゼルは何だかんだ言っても私の事を心配してくれているんだ。

 心が温かくなりルイゼルに微笑みかけた。


「気持ち悪いですね。言っておきますが私の一番は王太子殿下ですからね」


 ルイゼルライバル疑惑だけが残ったのだった。





読んで頂きありがとうございます。

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