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悪役令嬢は魔術師になりたい  作者: 神楽 棗
第一章 ひよっこ魔術師
49/81

再現するのは難しい


残酷な描写が含まれています。

ご注意ください。


 箒で上空に飛ぶと再び赤い実が飛んできた。

 頂上の巨大な実は消えていた。

 あれほどの巨大な実を作るには時間がかかるのだろう。


 赤い実を必死で避けていて思った。

 これ打ち返せないのかな?

 下と上の両方からアテリア草を浴びせれば。

 飛んできた赤い実を破裂する手前から箒を思いっきり横に向けて振りかぶった。

 実は柄に命中し木にヒットした。


 これを続ければ…!


 希望が見えてきたところで再びメディーナが姿を見せた。

 その表情は嘲笑っていた。


「アテリア草を致死量まで流し込もうとしているようだけど、今の私に効くと本当に思っているの?」


 私の額に汗が滲んだ。

 あの巨大な実の量のアテリア草を浴びても平気だったことから、効かないもしくは実を放つことで量を調整しているのではないかと考えていた。


「だから下で一生懸命流し込もうとしているのも…無駄」


 下で悲鳴が聞こえてきた。

 木の根がうねりながら上下左右に揺れて攻撃していた。

 少しでも効果があれば!

 メディーナ目がけて治癒魔法を飛ばしてみたが当たっても全く効果がなかった。


「心配しなくてもいいわよ。私のゼオンは傷つけていないから」

「あなたそれで本当にゼオンを手に入れられると思っているの?」


 木の動きが止まった。


「ゼオンを傀儡みたいに操って傍に置くだけで本当に満足なの?」

「何が言いたいの?」


 メディーナは上目で睨んできた。

 挑発になるからヤバいか?

 いや、言ってやる!


「ゼオンは私にいつも甘い言葉を囁いてくれて蕩けるような笑顔も見せてくれる。他の男と一緒にいると嫉妬しちゃうし…」


 いつものゼオンを思い出しながら話しているが…結構ゼオンの愛って重いな…。

 好きだから嬉しいけど…。


「隙があれば抱きしめてくれたり膝の上にも乗せられたことがあったわ」


 惚気って恥ずかしい…!


「あと軽いキスのつもりが長いキスになったり…強要されたり…」


 思い出して顔が赤くなるのを感じた。


「と…とにかく!ゼオンは好きな人には甘々で傀儡ではそんな愛を味わえないってことよ!」


 これ以上は恥ずかしくて死にそうです!

 強制的に話を切った。


「そんなこと…わかっているわ…」


 俯いていたメディーナが呟いた。

 何かどす黒いオーラが噴出してきていますが…。


「愛してもらえなくてもゼオンが他に愛を向けるのが許せない…そうよ…」


 これちょっと退散した方がいいかな?


「だからあんたを殺すのよ!!!!!」


 やっぱりそう来るよね!!

 私は全速力でその場を離れようとするも太い枝が次々と伸びてきて私を襲った。

 下に降りれば皆を危険に晒してしまう。

 私は振り切ろうと箒に魔力を注入し木から離れようとするがどこまでも伸びてくる。

 枝の速度が速く王手をかけられた。


 バリアが間に合わない!


 バリンッ!


 花のネックレスのバリアが発動したが三枚同時に割られた。

 この威力、私のバリアでは防ぎきれない可能性が高かった。

 どうする!?

 再び枝が襲ってきて二枚のバリアを割った状態でそのまま枝が伸びてきて私を捕らえた。


「やっと捕まえたわ」


 メディーナが恍惚な笑みを浮かべた。

 尖った枝が目の前を通り過ぎ…。


 胸を貫いた。


 口から血を吐いた。


「ゼオンにも見えるようにしてあげるわ」


 私を捕らえている枝がゆっくり動いた。


「エリィーーーーーーーー!!!!!」


 ゼオンの悲痛な叫びが下から聞こえてきた。

 うっすらと目を開き下に視線を移すとゼオンの隣に黒髪の女性が立っていた。

 幽霊?

 お迎えがきちゃった…?

 私、死ぬんだ…。


『闇に潜みし影よ全ての動きを止めよ。ダークネスケージ』


 ゼオンの詠唱が聞こえたと同時に辺りが暗闇に包まれた。

 流れ出ていた私の血も止まった。


「う…動けない…」


 メディーナがもがいていた。


『エリィ。唱えなさい』


 隣から声が聞こえてきた。

 声のする方に目を向けると銀髪に金色の瞳の女性が宙を浮いていた。

 幽霊?

 ぼんやりする頭で考えていると、頭の中に詠唱が浮かびあがった。

 呟くように頭の中の詠唱を唱えた。


『光の力で全てを癒せ。ヒールライト』


 唱えた瞬間、全土に眩い光が広がった。


 苦しくない?

 私は貫かれた胸を確認すると傷が綺麗に塞がっていた。

 隣ではメディーナのもがく声が聞こえてきたと思ったら木が光の粒子に包まれて消えかけていた。

 もちろん私を捕まえていた枝も同様である。


 これってヤバい!


 私は魔力を発しながら箒を呼んだ。

 お利口な箒は直ぐに飛んできて跨った。

 間一髪。


 安心したのも束の間。

 元の姿に戻ったメディーナは木から切り離され落下していった。

 私は箒で急いで追っていき空中でキャッチした。


 これあれだな。

 クロネコ宅急便の感動のシーンの再現だな。

 だれか黒猫とトランポリンを用意してくださーい。


 しかし感動の再現にはならなかった。

 なぜかゼオン以外の全員が必死で下を向いていたからだ。


 後日聞いた話ではドレス姿の私の下着が丸見えだったらしく、ゼオンが全員に下を見ているように殺気を放っていたらしい。





読んで頂きありがとうございます。

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