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悪役令嬢は魔術師になりたい  作者: 神楽 棗
第一章 ひよっこ魔術師
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魔物撃退?

 いよいよ地方に向かう日がやってきた。

 白のブラウスに黒のキュロットスカート、黒のブーツコーデそして…ゼオンからもらったローブを羽織った。


「お嬢様、素敵です!」


 マリーが手を叩いて称えた。

 私が決めポーズをとると


「そろそろお時間ですよ」


 スルーされた。

 最近私の扱い酷くない!?

 意気消沈のままリュックを担いで馬車に向かった。


 馬車の前に着くと何故か二台停まっていた。


「これは?」

「一台はフィリス様の要望です」


 執事が私の疑問に答えてくれた。

 フィリスが出掛けるなんて珍しい。

 私は自分に用意された馬車に乗り王宮に向かった。



 王宮に到着すると各部署の関係者達が荷物の確認や装備品の詰め込みなどを行っていた。

 以前、ゼオンの討伐の見送りをしたときは先発隊がいたせいかここまでごった返してはいなかった。

 壮大な光景にボルテージが上がってきた。

 よし!頑張るぞ!

 一人意気込んでいると隣から声を掛けられた。


「おはよう、エリィ」


 見上げるとゼオンが立っていた。


「師匠、おはようございます」

「まだ出発まで時間があるから日陰で休んでいるといいよ。俺は騎士団長と話をしてくるから待ってて」


 ゼオンと別れ、忙しそうに動くみんなを見ていて何か手伝おうかと考えていた時だった。

 王宮ではまず聞くことのない声に振り返った。


異母姉様(おねえさま)、地方に行かれるとお聞きしました」


 フィリスはエドワードの腕に手を回しこちらに向かって歩いてきた。


「フィリスに今日の事を教えたら見送りたいというので連れてきた」


 はあ?なんで今日?見送りいりませんけど!

 この前まで連絡を取り合っている感じが全くしなかったのにいつの間に…。

 笑顔を作るもこめかみの青筋は隠せない。


「殿下、お心遣い痛み入ります」


 全く感謝してないけどね!


異母姉様(おねえさま)、黒いローブがとてもお似合いですね」


 黒いローブを着るとか信じられないって言いたいのか、もしくは魔術師なんてダサいとでも言いたいのか。

 フィリスがエドワードにわからないように蔑むような目で見てきた。


「ええ。とても気に入っています。師匠とお揃いですし」


 満面の笑みを浮かべた。

 ゼオンを知っているエドワードの眉がピクリと動いた。

 フィリスは年寄りとお揃いで喜ぶなんてとでも思っているのだろう。


「エリィ、時間だよ」


 団長と話を済ませたゼオンが私を呼びに来た。

 ゼオンの姿を見たフィリスは固まり、エドワードは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていた。


「殿下、お久しぶりです。エリィの相手をしてくれていたのですね。ありがとうございます。これから出発ですのでエリィは連れて行きますね」


 私の隣に立ったゼオンはエドワードに不敵な笑みを見せると私の腰に手を回した。


「じゃあ行こうかエリィ」


 愛おしそうに見つめられて顔が紅潮した。

 腕を回された箇所が熱い…。


「で…では失礼致します」


 私は固まっている二人に挨拶するとゼオンに連れられ馬車へと乗り込むのだった。


 エドワード達と相対するよりゼオンのエスコートの方が緊張したわ。



「あいつと何話していたの?」


 少し不機嫌オーラを醸し出しているゼオンがポツリと呟いた。


「なんか異母妹のフィリスが私の出発を見送りたいから連れてきたと仰っていました…」


 ゼオンは首を傾げた。


「殿下の隣にいた女性です」

「いたっけ?」


 ゼオンはフィリスの存在に全く気付いていなかった。


「でもフィリスって名前は覚えてる。あいつと廊下で騒いでいる時に出てた名前だよね」


 平手打ちされそうになった時の話ですね。

 さりげなく出てきた会話なのによく覚えていましたね。


「つまりエリィの異母妹はあいつに気があるということ?」

「はい。二人が抱き合っているのを見て婚約破棄を決めたので」

「ふーん…」


 納得したというよりは考え込んでいるような相槌だった。



 馬車の旅は新しい魔法の提案やサマナから手紙が届いた話などで盛り上がり楽しい時間を過ごした。


 4日かけて到着した町には魔物に襲われて帰る場所を追われた難民達で溢れていた。

 基本村や町などはその土地の領主が支援するのが一般的だが、ここは不正などが発覚し領地を返還することになった土地の一つだ。

 つまり王家が管理している土地ということになる。

 そのため今回王都から騎士団が派遣されたのだ。


「遠いところからお越し頂きありがとうございます」


 町長らしき人が騎士団長にお礼を言った。

 しかし次の町長の言葉で一行は予定の変更を余儀なくされた。


「実はここ二日ほど近くの山に魔物が出現して困っていたのです」


 ここ魔物出るの?

 私はゼオンを見上げた。

 ゼオンの眉間に皺が寄っていることからも予定外のことらしい。

 騎士団長と魔術師代表のゼオンが町長の家で詳しく話を聞くこととなった。


 町長の家で会議が開かれている間、私は早速怪我をしている人の治療にあたっていた。

 魔力量のことも考えて治癒魔法が必要な人と薬で治せそうな人を治療師達と相談しながら分けていった。

 緊急で治癒魔法が必要な人から治癒魔法をかけていると会議からゼオンが戻った。


「エリィ、少し外せる?」


 治療を一旦中断しゼオンに駆け寄った。

 ゼオンは町の人達に配慮し誰もいない路地に移動した。


「今から王宮まで転移魔法を使うから家に帰るんだ」

「今、治療が始まったばかりですよ…」

「事態が変わった。二日ほど前から急激に魔物が増えたらしい。まだ町には下りてきていないが時間の問題だ」

「なら尚更帰れない」


 ゼオンは頑なに拒否する私の両肩を掴んだ。


「エリィ、俺は明日魔物の討伐に山に入ることになった。エリィの傍にいられない以上、ここには置いていけない」

「それなら町の人達や難民の方も同じですよね。自分だけ逃げることは出来ません」


 しばらく対峙していると先に折れたのはゼオンの方だった。


「仕方がない…。本当は今すぐにでも帰って欲しいけど治癒魔法のエリィが町に来ていることは知られてしまっているしやむを得ない。ただ山には絶対近付くなよ」

「わかりました」


 こうして私は町に残ることになったのだった。



 翌日。

 ゼオンと一部の騎士達は早朝から山の周辺の探索に出掛けた。

 私は今日も朝から怪我人の治療のお手伝いをしていた。

 重い怪我の人は昨日のうちに治療が済んでいたため今日はそんなに大変ではなかった。


 治療がひと段落し昼食に向かう途中、難民女性の一人が娘を見なかったかと尋ね歩いていた。

 話を聞くと女性が少し目を離した隙にどこかに行ってしまったとのことだった。

 私は近くにいた騎士に子供の特徴を伝えて一緒に探してもらうことになった。


 数刻、町中を探すも見つからず私は嫌な予感がした。

 騎士に町の外に出たのかもしれないと伝え町の周辺を探すことにした。


 少女は町から少し離れた花畑の中で花を摘んでいた。

 私も騎士も少女の無事に胸を撫で下ろしたのも束の間、林の方からガザリと嫌な音がした。

 音の方に視線を向けると少女から数メートルくらいのところから黒いモヤを全身から発した狼のような魔物が姿を見せた。

 魔物は明らかに少女を狙っているようだった。

 ここから走っても間に合わない。

 私は咄嗟に手を前に突き出し構えた。


「出でよ草刈り!!」


 草刈り魔法は一直線に放たれ魔物に直撃した…が、無傷かい!

 私の草刈りにより花畑の花が綺麗に空を舞っていた。

 魔物は飛ばされる事も傷を負うこともなかったが突然の奇襲に驚き一旦引き上げてくれた。

 魔物が引き上げたのを確認し騎士が素早く少女を抱きかかえて走ってきた。


 もっと魔法の練習しよ!



 


読んで頂きありがとうございます。

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