表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は魔術師になりたい  作者: 神楽 棗
第一章 ひよっこ魔術師
19/81

お茶会は疲れます

 翌日。


「師匠!危険に晒されてください!」

「えっと…順を追って話してくれるかな」


 唐突に危険に突っ込めと言われたゼオンは理解に苦しんでいた。

 私は庭師を助けようと手を伸ばしたら光魔法らしきものが発動した話をした。

 話を聞いていたゼオンが冷静に話の内容を分析した。


「それはたぶん守りたいという心から出現したのかも」


 確かにあの時は庭師が落ちて怪我をするかもとは考えていたが…。


「威力が小さかったのも想いが強くなかったからかもしれない」


 それ、私が助ける気がなかったみたいに聞こえますが。

 一心不乱に助けようとしましたが!


「練習してみようか」


 危険に晒されてくれるのですか?



 いつもの訓練場所にやってきた。


「じゃあ、エリィが大切だと想う人が危険に晒されたイメージを作ってみて」


 急にイメージと言われてもそういう場面に出くわしたことがなくてイメージしにくいな。


「じゃあ、目を閉じて」


 眉間に皺が寄っていた私を見兼ねたゼオンがイメージを作ってくれた。


「俺が魔物の討伐に向かっていると目の前に殻がとても堅く剣も魔法も効かない黒く丸まった魔物が現れた」


 魔物とゼオンの対峙をイメージする。

 魔物の描写がやけにリアルだな。


「俺は咄嗟にバリアを張って防ごうとしたが魔物はバリアを一点集中攻撃してきた。強い力で一点を狙われたバリアにはついにヒビが入り…」

「危ない!!」


 私は思わず叫んでいた。

 瞼が白くなるのを感じた。

 これ上手くいったんじゃない!?

 目を開けるが光はもう消えたあとだった。

 隣を見上げるとゼオンが口元を手で覆い顔を横に向けていた。


「師匠?」

「うん…大丈夫…ちゃんと出来ていたよ」


 本当に大丈夫ですか?

 顔真っ赤ですけど…。



 家に帰りコツを掴んだ私は早速光魔法の練習に取り掛かった。


 あのあとゼオンから光魔法の発動は相手に対する気持ちで強さが左右されている可能性があると教えてもらった。

 それ庭師に対する気持ちが小さいって言われているみたいで止めて欲しい。

 しかもその話をするとき何故かゼオンは目を合わせてくれなかった。

 顔も赤かったし熱でもあったのだろうか…。

 拗らせなければいいけど。



 夕食時、父が王宮でのお茶会という地獄行きの招待状を持ってきた。


「お父様、私、エドワード殿下とは婚約破棄したのですが…」


 顔が引きつった。


「王妃様がエリィも是非にと…」


 父の話から断るのは難しそうだと判断した私は招待状を受け取った。

 今回はフィリスにも声がかかっており当の本人は大喜び。

 父に新しい服を買いたいとせがんでいた。

 私は婚約破棄した身だし、王妃様に挨拶だけしたら今回は壁の花に徹しよう。



 お茶会当日、私とフィリスはお茶会会場に来ていた。

 以前はエドワードの婚約者ということもありたくさんの令嬢達に声をかけられていたが、今はほとんど寄ってこない。

 まあ、未来の王妃でも無くなったし挨拶の必要はないとのことかな。


「エリアーナ、久しぶりね」


 会場に現れた王妃に挨拶に伺うと声をかけられた。

 私は挨拶を返しその場を辞そうとしたが王妃が私の耳元に扇をあてて私にだけ聞こえるように言った。


「ゼオンとは仲良くやってくれているようね。今度ゆっくり二人の熱い話を聞かせてちょうだい」


 ウィンクして去って行った。

 まさかこれを言いたいがために今日、呼んだのか…。

 熱い話って王妃様は何をどう誰から何の話を聞いているのだろう。

 私は赤くなった顔を隠すため頬に両手を当てた。


異母姉様(おねえさま)、王妃様と何を話していたの?」


 言えるわけない。


「挨拶をしていただけよ」


 当たり障りのない返答をしておいた。


 他の令嬢も王妃に挨拶をしていると「キャーーーー!」と黄色い声が聞こえてきた。

 声の方を向くと…げっ!エドワード。が20代くらいの淡い黄褐色の髪をした綺麗な女性の手を引いて王妃のところに向かって歩いていった。

 フィリスは久しぶりに会うエドワードに目をハートにさせて近付いていった。

 私は壁の花に徹するためエドワード達とは正反対の方向に移動した。

 エドワードの視界から外れたところでほっとしたのも束の間、エドワードが手を引いている女性と目が合った。

 女性は王妃に挨拶した後、私に向かって歩いてきた。おまけも連れて…。

 頬が引きつりそうだったが耐えて笑顔を作った。


「あなたがエリアーナね。初めまして私はエドワードの母のメディーナです」


 エドワードの母!?初めて見た。

 目を丸くする私にエドワードが補足した。


「母上は昔から身体が弱くて茶会などにはあまりおいでになられなかった。今日はエリアーナに会いたいとわざわざお越し下さったのだ」


 何、感謝しろとでも言いたいの。

 それとも息子と婚約破棄した相手に嫌味の一つでも言いたいってか。

 この親子は喧嘩を売りに来たのでしょうか。


「エド。ここまででいいわ。あなたは他の令嬢とお話ししてらっしゃい」


 売られた喧嘩を買うつもりで気を引き締めた私の意欲は呆気なく消し去られた。


「しかし…」

「私は大丈夫よ。何かあれば呼ぶから」


 エドワードは名残惜しそうにその場を離れた。

 ってかお母さんも連れていって欲しいのだが!?

 何とか笑顔を保ってはいるがいつ崩壊するかわからない。


「エドから話を聞いて一度お会いしたかったの。聞いていた以上に素敵なお嬢さんね」


 このお母さん、エドワードがいるってことはどう考えても30代だよね。

 20代前半にしか見えないのだが。


「エドと婚約破棄してから魔法を勉強していると聞いたのだけれど楽しい?」


 これは『ウチの子を振っておいて何魔法の勉強してんだよ』的なあれですか…。

 返答に困っていると


「私も自分の国にいた時はよく魔法を使って遊んでいたのだけれど、この国では魔法を使うことをあまり良くないとされているので心配で…」


 正直エドワードと婚約していた時、母親が生存していることは聞いていたがその存在についてはほとんど知ることがなかった。


「メディーナ様は他国から嫁いでいらっしゃった方なのですか?」

「ええ。知っているかしら。ネルドって国なのだけれど」


 ネルドと言えば20年前に滅びた国だ。

 歴史の授業で学んだことを思い出した。


「それは…お辛いですね…」

「ええ…。でもこの国でとても良くしてもらっているから今は幸せよ」


 その笑顔がとても綺麗で見惚れてしまった。



 恐怖のお茶会が無事に終わりメディーナをエドワードに託した私はエドワードから話があると言われかけたところをぶった切って立ち去った。


 フィリスはせっかくエドワードに会えたのに他の令嬢との取り合いであまり話が出来なかったと不貞腐れていた。

 私もこれ以上エドワードに絡まれるのも嫌だし、是非フィリスとくっついて欲しいと思い手紙でも出したらどうかと提案してみた。

 フィリスは屋敷に戻ると意気揚々と自室に戻っていった。



 翌日。

 お茶会の結果を気にしてくれたゼオンが自室に招いてくれた。


「まさかあそこでエドワード殿下がいらっしゃるとは思いませんでした」

「へえ…」


 師匠、声のトーンが低いですが…。

 ゼオンの不穏な空気に背筋に悪寒が走った。


「でも、メディーナ様はお綺麗な方でした。魔法にも理解のある方でしたし」


 話題を変えようとメディーナの話を出してみた。


「俺も第一王子の母親がご存命だとは聞いていたがお会いしたことはなかったな」

「しかもこの国のことを愛して下さっているみたいで」


 私は昨日のメディーナ様の綺麗な笑顔を思い出しうっとりとした。


「メディーナ様は他国の方なの?」

「そうなんです。メディーナ様はなんとあのネルドって滅びた国の出身らしくてそこから嫁いでこられたみたいです」


 私の言葉にゼオンが目を見開いたまま固まってしまった。


 私何か不味いこと言ったかな?





読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] メディーナ名前から故郷から言動から地位から全てにおいて黒じゃねぇーかw普通ここまで明らかに黒な女を王宮に置いとくか?王様無能かよ。
2021/08/28 22:09 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ