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悪役令嬢は魔術師になりたい  作者: 神楽 棗
第一章 ひよっこ魔術師
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魔力供給

 あれから二日後。

 私はゼオンの部屋に向かうため城内の回廊を歩いていた。



 二日前、ゼオンの事を聞かされたあとエドワード殿下との婚約破棄が正式に成立したと伝えられた。

 なぜかこの時だけ父が清々しい顔をしていると感じたのは気のせいだろうか。


 フィリスはというと婚約破棄の話に予想通り大喜びしていた。

 私との婚約が破棄されたからといって自分が婚約者になれると思っているのだろうか。

 それに婚約破棄したからエドワードが我が家に来ることがなくなるということを解っているのだろうか。

 解ってないだろうな。


 とりあえずこれで悪役令嬢路線からは外れたと信じたい。

 あとはフラグが立ちそうなことには関わらずを貫き通すだけだ。


 体調も昨日丸一日ゴロゴロとベッドの上で過ごして万全の状態。

 マリーには「豚になりますよ」と冷めた目を向けられたが、師匠との約束を違えてはいけない!と毅然とした態度で過ごした。

 ゴロゴロサイコー!と喜んでいたことは黙っておこう。



 父に訪問は昼からにするように言われたので今日は昼に来てみた。

 城門では父が手配してくれたのか「話は聞いています」と安定の顔パスで通してもらえた。


 今日こそは魔法を使うぞ!

 気合を入れてゼオンの部屋の扉を叩いた。


 カチャッ


 扉が開きゼオンが顔を出した。

 そういえば師匠は王子殿下だった。

 カーテシーした方がいいのかな。

 カーテシーをしようと片足を斜め後ろの内側に引こうとするとゼオンが制止した。


「そういう扱いされるの嫌いだから普通でいいよ」


 ゼオンは部屋から出て回廊を歩き出した。

 私はゼオンの後をついていった。


 周囲が色とりどりの草花で囲まれた開けた場所に着いた。


「ここに立って」


 ゼオンは中央に立つと自分の手前を指した。


「両手のひらを出して」


 ゼオンの前に立ち指示に従った。


「今から俺の魔力を送るから魔力を感じたら、そうだな…あそこに向かって放ってみて」


 背の高い茂みを指差した。

 茂みがガサッと揺れた気がした。


「これは相手の魔力を使って一時的に相手が送った魔法が使えるようになる方法なんだけど、魔法を使うには魔力を感じられなければ話にならないからこの方法でまずは魔力を感じることから始めようと思う」

「わかりました」


 いよいよ魔法を使うんだ!緊張してきた…。


「じゃあ送るから」


 ゼオンは私の両手のひらの上に両手を乗せて私の手を優しく握った。

 ちょっとこれ恥ずかしいのですが。

 恥ずかしがっていると徐々に手のひらが温かくなってくるのを感じた。

 これは決してときめいて私の体温が上昇したからではない。


 バチッ!


 突然私の手のひらから強い電気を発した。

 ゼオンは堪らず手を離した。

 何?何が起こったの!?

 不安気な表情でゼオンを見上げるもゼオンは私の手のひらを凝視したまま固まっていた。


「し…師匠…?」


 私が声をかけるとゼオンは我に返りバツの悪そうな顔をした。


「はじかれた」

「それって…」


 もしかして魔法が使えないってことですかーーーーーーー!

 やはり前世が日本人だと魔法使いにはなれないってことですか!


 涙を流しながらすがるようにゼオンのローブを掴むと、さすがのゼオンも申し訳ないと思ったのか面目なさそうに視線をそらした。

 私は地面に手をつき四つ這いになり項垂れた。

 所詮魔法が使えるなんて夢のまた夢なんだ。


 ゼオンは地面に膝をつくと私の肩に手を置いた。


「原因を調べてみるからもう少し時間をもらえないか」


 顔を上げると真剣な表情のゼオンと目が合った。

 私は小さくコクリと頷くとゼオンが立たせてくれた。


「何かわかったら侯爵を通して連絡するから」


 ゼオンは私の頭をなでた。

 頭なでるの好きなのかな?


 私は落ち込んだ気持ちのまま家に帰ろうと踵をかえした。


「エリィ」


 ゼオンに名前を呼ばれ振り返るとプレートの付いたネックレスを投げて寄越した。

 ネックレスをキャッチすると透明のプレートに『ゼオン王宮魔術師 助手』と彫られていた。


「それエリィの入城許可証だから肌身離さず持っているように」


 魔術師の助手…良い!


 だだ下がりのテンションが一気に上昇した。

 ゼオンも私の機嫌が戻ったことに安堵の表情を浮かべた。


 プレートを嬉しそうに眺めていると、部屋に戻るため私の横を通り過ぎながらゼオンが言った。


「それとあそこの連中何とかしておけよ」


 立ち去るゼオンに首を傾げていると、茂みからひそひそと話し声が聞こえてきた。


「あいつ俺達に向けて魔法放とうとしていたぞ。不敬罪確定だ。しかもエリアーナの手まで握りやがって、頭ポンポンだと…恰好つけすぎだろ」

「いや、でも普通にカッコよかったですよ、殿下」

「お前はどっちの味方なんだ」


 冷ややかな視線を茂みに送ると、ガサガサと揺れた茂みから逃げ出す見慣れた後姿が二つ。


 エドワード殿下、あなた暇人ですか。






読んで頂きありがとうございます。

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