愚か者の末路
その後は、絵に描いたような転落人生となった。
まず、学校を退学した。
禁術を使ったとはいえ、成績優秀者であったことや家族であったことから、厳重注意で済んだだろうが、自分のプライドが許さなかった。
友人やあいつは最後まで引き留めたが、それを振り払って逃げるように去った。
そして、家からも逃げた。
戻ってから両親に責められたが、何よりオリヴィアと比較されたのが決め手だった。
オリヴィアを少しは見習え!と言われた時、発作的に手を出してしまった。
殺してはいないが、もう精神的にも立場的にも駄目だと思い、何も考えずに飛び出してきた。
もう、俺に残っているのは、オリヴィアに打ち勝つこと。それだけを糧に、様々な禁術に手を出して、いつしか俺はお尋ね者になっていた。
大分両親やオリヴィアは探してくれたようだが…
俺は見つからないようあちこち研究場所を替えながら、まるで現実逃避をするかのように魔術にのめり込んでいった。
そして、これなら勝てる、というまで自分を鍛えた頃、オリヴィアは救国の英雄となっており。
おいそれと手を出せる人間ではなくなっていた。
…いや、それも言い訳かもしれない。最早、長い年月が、オリヴィアへの対抗心を失わせつつあった。
寧ろ、散々迷惑をかけた今になっては合わす顔もない。
正気に戻れば、何故俺はあんなにも対抗心を燃やしていたのか?という後悔のみ。
恵まれた環境、優しい両親や周りに囲まれておきながら、自分のちっぽけなプライドで全てを壊してしまった。
今となっては、惰性となった禁術の修練だけをこなし、生きる日々。
そんな何の為に生きているのかわからない日々が続き、たまたまその日、時空術という禁術に手を出した。
これは時間の感覚を自分の自由にできる術である。
極めると、時間移動すらできると言われている禁術の中でも知っている人間すら殆どいない幻の術だ。
「極めたとしても、何の使い道もないがな…」
祖国が危機に陥っている時も、自身の修練に集中していた自分。
このまま、魔術を極めたとしても、一体何をすれば良いのか?
そんな雑念が混じっていたのが良くなかったのか?
時空術が暴走を始めてしまった。
…まあ良いか、こんな僻地、誰もいない。
1人寂しく死んでいくのがお似合いだ。
「あの頃に戻りたいな…」
そう思いながら、俺は意識を手放した。