第58話 ポーションを卸しに行ったら、ミントから予想外の話を聞く事に
すいません。少し間が開いてしまいました。
次の日、俺は『初冒の宿』で出された朝食を食した後、宿を出て冒険者ギルドに向かうと、入り口のところでエリカとキキョウが待っていた。
「あ、シンさん、おはようございます。」
「シンさん、おはようございます。」
「あ、ああ、おはようございます。」
エリカが俺をシンさんと名前で呼んだ事に少し動揺したが、俺も挨拶を返した。
以前も言ったが挨拶は大事、古事記にもそう書かれているからな。
「キキョウさんと昨日、話しをして、名前で呼び合った方が親密度も上がりやすいと助言をいただいたので、私もシンさんの事を名前で呼ぶ事にしたんです。駄目でしたか?」
上目遣いで尋ねてくるエリカ。エリカは美少女の部類に入るので、こういう仕草をすると絵になるんだよなぁ~としょうもない事を考えながら「いや、別にエリカの好きに呼んだら良いさ。」と返した。
「それでシンさん、今日はどうするつもりなのですか?」
「まずは俺が錬金したモノを販売してくれる店に商品の補充しに行きますよ。ついでにそこの店主と少し話したい事がありまして、それが終わってから冒険者ギルドに行くつもりです。」
「そうですか。ではまず、その店に行くのですね?」
キキョウの質問に今日の予定の流れを答え、最後の質問に「そうです。」と答えて俺達はペパー商会に向かって歩み始めた。
「あ、シン君、待ってたよ。」
ペパー商会の経営している雑貨店に入ると、以前の時と同じく、カウンターで店番をしていたミントが俺を見て微笑みながら迎え入れてくれた。
「おはようミント、ポーション10個とハイポーション10個を製作しに来たんだが、空き瓶20個は大丈夫か?」
「勿論、あ、シン君の作成したポーション、売れ行き良いよ♪」
「お、ちゃんと売れているのか。」
「ええ、この3日間でポーションは12個、ハイポーションは10個、売れたよ。」
「・・・思ったよりも売れ行き良いんだな・・・。」
「シン君の造ったポーション、流通されているポーションの中では効果が高い部類に入るからね。」
「高い?・・・ああ、同じポーションでも作成した錬金術師の技量によって多少の効果の変動はあるからな・・・そうか、俺のポーションは”コナタ”で販売されているポーションの中では効果が高い部類に入るのか・・・。」
ミントの説明に俺は疑問を感じたが、尋ねずに頭にインプットされた知識を調べると同じ物でも作成した錬金術師の技量によって多少の効果の変動がある事を知り、確認の意味でミントにその事を伝えると「そうよ。だからシン君の作成したポーションは間違いなく売れるよ。こういう口コミって早いから。」と言う嬉しい返答が返って来た。
どうやら一定の需要はある様である。これで収入源の1つは確保できたな。
俺が心の中でガッツしていると、ミントはキキョウを見て「また新しい仲間が出来たんだねシン君。」と訊いてきたので「東のヤマトから来た侍のキキョウ=アキカさんと言うんだ。」と説明すると「・・・キキョウ=アキカ?」と彼女はニコニコしている表情から一転して怪訝な表情となった。
「ひょっとしてAクラス冒険者ナデシコ=アキカの妹?」
「?!まさか姉様をご存じなのですか!?」
いきなりミントの口から姉の名前が出、身を乗り出す様に尋ねるキキョウ。俺としてもいきなりキキョウの姉の話が出てくるとはびっくりだわ・・・。
「あ、いや、お姉さんを含めた調査隊はこの街のギルドでより詳しい調査の内容を聞くために訪れたので、その時に遠くから調査隊を見たので、あなたに似た女性もいた言うのが記憶に残っているだけで・・・ご本人とは話はおろか面識もないわ。」
「あ、そうですか・・・。」
ミントの説明に気落ちするキキョウ。そこに今度はエリカがミントに尋ねた。
「あの、ではどうしてキキョウさんの事をご存じなのですか・・・。」
その質問にチラッとキキョウを見た後、言いづらそうに答えた。
「その、彼女ってBランクでありながら自分のミスで護衛の人を負傷させ、依頼を失敗させかけた人じゃない。だから、その、”コナタ”の冒険者だけでなく私達商人なんかにも悪い意味で名前がしられちゃってるんだよね・・・。それに」
「それに?」
「帝都の方でもお姉さんの事を聞こうと向こうのギルドでしつこく尋ねた上に、帝都の冒険者などにお姉さんの事を聞きまくった事で、帝都の冒険者関係でも悪い意味で有名になってるし・・・。なんせ”シスコンのキキョウ”なんて陰口言われているぐらいだし・・・。」
ミントのその言葉に俺とエリカは引き攣った笑みを浮かべざるを得ず、キキョウは羞恥のためか俯いてしまった。
ここで俺はふと思いついたので尋ねる事にした。
「・・・ミントは商人の情報網でキキョウのお姉さんも含めた調査依頼とやらを把握していないのか?」
「・・・こういう情報は普通、訊かれても教えないモノだよシン君。特に商人はね・・・まぁ、私としてもシン君とは深い関係になったから教えるけど・・・。」
ミントとしては変な意味で言った訳では無いのだろうが、言い方のせいでエリカとキキョウが驚きながらも顔を赤くしている。どうやら今の言い方で俺とミントが男女の関係であると受け取ったようである。
ミントもそれに気づいたようで、
「い、いや、違うから!私とシン君は仕事の関係で、男女云々の関係じゃないから!!」
赤面しながら大きな声で否定するミント。
しかし、こういう場合、そういう風に必死に否定すると逆に実はそうなのでは・・・?と思われかねないぞミント・・・。
事実、エリカもキキョウもミントの反応に半信半疑と言った様子である。
「だ~か~ら、私とシン君はそういう関係じゃないって!!」
「ミントの言う通りだ。だから二人も変に盛り上がらないでくれ。」
このままでは話が進まないので、俺もミントの言葉を肯定すると、エリカもキキョウも釈然としない様子で受け入れた。
そんなにこの二人から見て俺とミントってそういう関係に見えるのか?どうでも良い疑問がふと頭に過ったが、ミントに話の続きをしてもらいたいので、その疑問はさっさと頭から消した。
「で、話を戻すんだが、ミントはナデシコさんの受けた調査依頼についてどれぐらい把握してるんだ?」
俺の質問に室内の空気が一気に変わった。
「・・・最初に断っておくけど、私もそこまで詳しい訳じゃない。凄腕の冒険者達やこの国の精鋭の騎士達で混成された調査隊は4か月前の地震で出土した遺跡の調査の様だよ。」
「・・・遺跡の調査?ダンジョンって事か?」
「どうやらダンジョンって感じではないみたいだよ。ホント、そこそこに大きい古代の都市みたい。」
「・・・何でそんなに古代都市の調査に他大陸の凄腕冒険者まで応援を読んだんだ?」
「理由は2つあるんだけど、1つはその古代都市が発見されてからしばらくして凄まじいほどの魔力反応と何かしらの大規模の魔法が発動された事が観測された事。」
ミントの説明に俺は転生転移の時に与えられた知識の中から情報を引き出し、
「・・・魔力反応と大規模魔法の発動の観測・・・ああ、この大陸にある”魔法学院”と教会の総本山が感知したのか・・・。」
「それと帝国の魔法研究所ね。まぁ、とにかく、この大陸にある3つの魔法機関がその観測した魔力と発動した魔法に強く警戒した事。そして2つ目の理由は」
ミントはそこで一旦言葉を区切り、
「その魔力反応と何かしらの大規模の魔法が発動された事が観測されてからしばらくしてその古代都市へと赴く魔王軍幹部の姿を見たそうだよ。」
これには俺だけでなくエリカとキキョウも驚きの表情となった。
「・・・それって確かなのか?」
「どうもそうみたいだよ。」
「ちなみに確認された魔王軍幹部ってどれぐらいの奴なんだ?とてもヤバい奴なのか?」
「・・・私達、商人の情報網でも詳細は掴めなかったんだけど、どうも10億越えの魔王軍でも最高ランクの幹部の様だって・・・。」
マジか・・・?そりゃあ、ヤバイなんてもんじゃないだろ・・・。
俺の内心を察した様で、
「帝国の高ランク冒険者や騎士だけでなく他大陸の高ランク冒険者にも声を掛けるのも納得と言えば納得だよ。ただでさえ強大な力を持った魔法使いが潜む恐ろしい古代都市に、10億越えの魔王軍最高幹部の一人が赴いたと言うのだから、派遣させる調査隊は相応の強者でないと死ぬ事確定だから・・・ね。そして実際は他大陸からも集めて向かわせた精鋭ばかりの調査隊は消息不明となった訳だけど・・・。」
ミントの話に俺達は暫し何も言えなかった。
ただ1つ分かった事は、キキョウの姉、ナデシコが向かった場所はヤバいなんてモノではないぐらい危険な死地だったと言う事だけである・・・。
キキョウには悪いけど、ナデシコはもう死んでいる可能性大なんじゃないか・・・。
そんな事を思いながらチラッとキキョウの顔を見てみると、彼女の顔は血の気が引いて真っ青となっており、目の輝きも最初にで割った時の様にハイライトが無くなっており、絶望した表情となっている。
どうやら、彼女も俺と同じ事を思っている様である。
こりゃあ、キキョウが思い余って暴走しない様に気を付けないといけないな・・・。そんな事を思いながら、
「なるほど、実に良い話をありがとね。他にその話に関する事はない?」
「う~ん、どうやら、帝国は今のところその古代都市に新たな調査隊を送ろうと言う動きはないみたいだよ。まぁ、当然と言えば当然だけど・・・。」
まぁ、自国の精鋭だけでなく他大陸にまで応援を頼んで派遣してみたら消息不明となったのだから、帝国としても立つ瀬がないわな・・・。
更に自国の精鋭もいくらか失ったのだから、今のところもう一度派遣するだけの余禄はないだろうしな・・・。
俺は帝国の対応に納得しかなかったが、キキョウはそれを聞いて更に表情を曇らせた。人によっては愉悦となるだろうが、俺にとってはいらん不安が増しただけなので全然嬉しくない。
「良い情報をありがとね。じゃあ、そろそろポーションを卸したいので以前の様に奥で錬成して良いか?」
「あ、うん、こっちだよ。」
俺はエリカとキキョウにしばらく待ってくれる様に頼み、ミントの案内でペパー商会の奥の部屋へと進んだ。
さて、ポーションを造るついでに、アイテムボックスに仕舞った夕べ、造ったアイテムの数々をミントに披露するか・・・。
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