第41話 こんな形で、俺の最初に掲げた目的が叶うとは・・・。
「・・・あの野盗団を壊滅させて囚われた女性達を救出していた時、何者かがそれを見ていただなんて、私達、実はとても危険な状況になっていたんですね・・・。」
夕姫白蓮が退出許可を出したので、部屋を出てEランクの依頼版に向かおうとしたところで、エリカがポツリと呟いた。
「そうだな。」
これには俺も全く同意である。そして、こういう事があるから、俺はチートな能力を持ってはいるが、この世界において無双出来るような最強ではなく、一般人より段違いに能力が優れている程度に過ぎないと言う事を思い知らされる。
まぁ、逆に言えば自分の能力を絶対視せずに済み、しいては無謀な事をやらかしてあっさりと死んでしまうと言う事にならずに済むのも確かだが・・・。
地球で一度死んで、チート能力を与えられてこの世界に来たと言うのに、また、あっさりとすぐに死んではあほ過ぎる。
「まぁ、今回は俺達も囚われた彼女達も無事、生還できたのだから良しとするしかない。」
「それはそうですが。」
「・・・今回は、どう見ても俺達の手に負える相手ではないみたいだから、そんなのが潜んでいて、無事、生還できたんだから、万々歳じゃないか。出来る事と出来ない事をしっかりと把握しておく事も大事な事だぜ。」
若干、慰めも入れつつ、そう言うと、エリカも俺の意見に賛同してくれた様で「そうですね。」と同意してくれた。
しかし、こう見ると、今回はマジでヤバかったな。こう言う時に勝つ事は出来なくとも、防戦出来て逃げる事が出来るぐらいの実力をつけるか、それぐらいの技量のある者をパーティーに加えないといけないだろう・・・。
どっちも直ぐに出来るような事ではないので、これからの課題なのは確かだろう。
この事をエリカにも伝えると、
「そうですね。仲間を増やすのも、私達自身が強くなるのも大事な事なので、頑張りましょう!!」
と、鼻息を荒くしながら力強く肯定してくれたので、取り合えず、俺の方針が間違っていないようなので良かった・・・。
ところで強くなるのってどうすればいいんだ?流石にゲームの様に敵を倒し続けたら強くなるだなんて展開は、ファンタジーなこの世界でもあり得ないだろう・・・。
「強くなるというか、ご自身の能力の底上げをするのならばモンスター、人間関わらず、”敵”を倒すのが一番、効率が良いでしょうね。」
どうすれば強くなれるのか、その方法を知りたいので、何気に受付のセリナに尋ねてみると、そういう返答が返って来た。
おいおい、マジでRPGっぽくなってきたな。
と言ってもゲームの様にレベルが上がるからとかではなく、敵、正確には生物(この場合、幽霊やゾンビなどのアンデッド系も生物として含まれる)を倒すとその瞬間に、その生物の力の1%が自分のものとなるそうである。
S、A級冒険者や”シュバルツァーナイツ”などが凄まじく強いのは本人の元々の資質がとても高いのもあるが、倒した敵の多さ、そして倒した敵の質がとても高いからだそうである。
「カズサさんのこれまでギルドに持ち込んだモンスターや、受けた依頼の中で例えると、カズサさんが持ち込んだモンスターの中にあったスライムは倒しても得られる力はほんの微々たるものですが、怪力熊の変異体となると、倒して得た力はスライムとは比べ物になりません。とは言え、それでも現段階ではカズサさん自身が実感出来るには程遠いでしょうが・・・。」
俺は分かりやすい説明に成程と思いつつも、それ以上に驚いたのが、俺が既にスライムを倒していると言う実にどうでもよい事だった。
と言うか、やはり、このファンタジー世界にも雑魚モンスターの定番であるスライムは存在したのか・・・。
しかし、スライムなんて何時倒したっけ・・・?
その事が気になって仕方がない俺はセリナに尋ねる事にした。
「あ、セリナ、いきなり話が飛んで悪いんだが、俺がスライムを倒したと言ったが、スライムってどんな外見をしたモンスターなんだ?」
「はい?スライムがどういう外見をしているかですか・・・?」
「カズサさん・・・?」
いきなりの俺の質問にセリナはきょとんとした表情になり、エリカはいきなりこんな質問をした俺を不思議そうな表情で見つめた。
「ああ、ちょっと気になって、話を折って悪いが教えて欲しいんだが・・・。」
「はぁ、別に構いませんが、スライムはモンスターの中では最も下の弱小モンスターで、外見は拳2つ分ぐらいの大きさの透明な塊ですね。」
「拳2つ分ぐらいの大きさの透明な塊・・・。」
セリナの説明を聞いて、俺はこの世界に転移させられた山中を川沿いに沿って移動していた時に、一番最初に襲ってきたモンスターが、拳2つ分ぐらいの大きさの透明な塊の化け物だった。
あれが、この世界のスライムだったのか・・・。
この世界に来て、機会があったら調べてみようと思っていたが、この世界に来て、最初に出来た目的が、思いもよらぬ形で達成されたぜ・・・。
まぁだからと言って、疑問が一つ分かっただけなので、話を元に戻すことにした。
「そうか、答えてくれてあんがとね。それで話を戻すが、生物を倒せば能力が底上げされ強くなる、それも強い生物を倒せばより能力が底上げされ強くなりやすいと言う事だな。」
「え、ええ、ただ、それだと周りにいる人間なども倒せば良いなんて事もいう者も出てくるので、国やギルドが”敵”と認定した存在以外を殺傷した場合は罰せられる様、法で定められているのです。」
まぁ、そりゃあ、そうだろうな。そうしないと今頃、あちこちで無差別に殺し合いが横行する無法地帯となっている。
セリナの説明を聞いて、強くなるにはRPGゲームよろしく、この世界で立ちはだかる”敵”を倒し続けたら良いという訳だ。
ただ、相手との技量を見極めないと、逆に俺達が殺られるので、無茶をするのは止めた方が良いだろう。
今のところは、エリカもいるから変に無謀な依頼は受けない方が良いだろうな。
いきなり、スライムの事を尋ねた俺に困惑する二人をよそに俺が一人納得する様子を見て、二人は互いに顔を合わせると、何か通じた様子をすると気遣うような表情になって俺を見た。
ちょっと!俺は別に錯乱した訳でも、現実逃避した訳でもないぞ!!
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