表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/58

第40話 俺、面倒な事に関わっちまった?

 ミントの店に商品であるポーションとハイポーションも問題なく卸す事が出来、俺への支払う代金や日払い方法も、思ったよりもパッパッと決まったので、俺はペパー商会を後にしようとするとミントが、


 「あ、そうそう、シン君、冒険者としても大活躍しているみたいだね。一昨日はターキ村で怪力熊の何と変異体を倒したそうだし、昨日は昨日でそこのエリカと二人で、赤い狼を従わせて最近勢いが出ていた野盗団を壊滅させたそうじゃない。」

 「相変わらず、情報が早いな。」

 「この前も言ったけど、商人の情報網を侮っちゃいけないよ。それで話を戻すと、このコナタの商人の間ではシン君達が赤い狼を従わせていた野盗団を壊滅させてくれた事を喜んでるんだよ。」

 「まぁ、ギルドで説明を聞いた限りでは、あの野盗団、結構暴れていたみたいだからな。」

 「そういう事。あの野盗団に損害を与えられて、煮え湯を飲まされたコナタの商人もそれなりにいたから。とは言え、Cランクの冒険者パーティー1つと帝国の警備隊の1部隊を一つ返り討ちにするぐらいの”力”はあるから頭を悩ませていたんだよね。それをたった二人で壊滅させたんだから、シン君の冒険者としての名前も一気に広まるだろうね。」

 「そうなのか?」

 「ええ、ついでに言えばそんな野盗団だから報酬はそれなりに良いと思うよ。」

 「へぇ~、それは楽しみだな。後は怪力熊の変異体の討伐報酬がいくらぐらいになるかだな・・・。」


 俺の言葉にミントは面白そうに話していた雰囲気が一転して難しい表情となり雰囲気も重くなった。


 「その怪力熊の変異体の事なんだけど、どうもただの怪力熊の変異体が自然発生してターキ村の付近で暴れて損害を出したと言うだけの話ではないみたいなの。」

 「・・・どういう事?」

 「私も詳しくは知らないけど、どうも、こういうモンスターの変異体騒動とは関係ない帝国の魔導研究の部門が動いている上に、帝国のお偉いさんも関わっているみたいよ。」


 ミントの言葉に俺はターキ村であった近衛騎士のジーク達を脳裏に浮かべた。


 「そう言えば、ターキ村付近の警備隊を近衛騎士のジーク言う男を筆頭に、同僚のカタリーナと”エデン教”のリィアと言う高司祭が率いていたな。」

 「・・・聞いた通りの存在ならば、近衛騎士と”エデン教”の高司祭が動く事はおかしい事ではないけど、この件にはそれ以上の上の方も関わっているそうよ。」

 「それ以上の上?」

 「シュバルツァーナイツを始め、皇族も関わっている可能性もあるそうよ・・・。」

 「え?シュバルツァーナイツや皇族の方々まで関わってるんですか・・・?!」


 ミントの説明にエリカが目を丸くして驚いている。ミントもミントで重苦しい雰囲気に包まれており、俺は思わず「怪力熊の変異体の件ってそんなに大事になるような事なのか?」と尋ねると、


 「いいえ、普通はモンスターの変異体が出たぐらいでは精々近衛騎士が動くぐらいよ。間違ってもシュバルツァーナイツや皇族は当然の事、魔導研究部門すら動くような事ではないわ。」


 その動くはずがないところが動くと言う事は・・・・


 「シン君、怪力熊の変異体を倒してターキ村を救ったのは良いけど、その怪力熊の変異体、何か厄介事を抱えていたのかもよ・・・。」


 ミントの言葉にエリカは勿論の事、俺も何も言えず、しばし重苦しい沈黙が俺達の間に流れた。その沈黙をいきなりエリカが破った。


 「あの、カズサさん、そのカズサさんが討伐した怪力熊の変異体に何か事情があったとしても、ターキ村の人々が災いを被り、悲しい想いをしていたのは確かなのですから、その元凶を討伐したカズサさんがその事情で頭を抱える必要は私はないと思います。少なくとも私はカズサさんの行動を称賛しますよ。」


 エリカのその率直な言葉に俺もミントも思わずエリカを見た。

 エリカは堂々としており、俺を見る目は敬意に見ている。エリカは俺が怪力熊の変異体を討伐した事を素直に称賛してくれている。

 それが理解できると、俺も重苦しかった心が軽くなった。


 「そうだ。そうだな。怪力熊の変異体に何か事情があったとしても、一冒険者でしかない俺は村を襲撃してきた怪力熊の変異体を討伐し、村に出る被害を食い止め、近衛騎士であるジークもそれを認めたんだ。なら俺が怪力熊の変異体を討伐した事を後悔する必要はないな。」

 「そうですよカズサさん。」

 「確かにそうだねシン君。」


 エリカだけでなく、ミントも重苦しさが無くなっており、笑顔で同意してくれた。


 いや、エリカには本当に感謝しかない。本当にレオンは良い提案をしてくれたぜ。




 それから俺達はペパー商会を出ると、ミントは店の前まで見送ってくれて、ちょっと嬉しい気分になった。日本で会社員として勤めていた時、こういう事をしてくれた相手はいなかったからな・・・。

 それとエリカとミントもまずは第一印象は悪くない様だし・・・。


 まだ十分に時間はあるから、取り合えずギルドに向かう事にした。


 ひょっとしたら、何か手軽に受けられる依頼があるかもしれない。


 「いや、だけど先程はマジで励まされたぜ。」

 「?先程とは?」

 「いや、何か厄介な事情のある怪力熊の変異体を討伐して、トラブルに巻き込まれるかもしれないと思って後悔しかけたけど、エリカが純粋な称賛してくれたからさ。」

 「私は感じた事を言ったまでなんですが・・・。」

 「それでも俺やミントには救いになった。ありがとう。」

 「い、いえいえ、感じた事をそのまま言った私ですが、お二人の救いになったのであれば嬉しいです。」


 照れたように笑うエリカ。可愛いの美少女シスターがそういう笑みを浮かべるのって結構来るものがあるな・・。


 まったく罰当たりな事を考えながら、俺達はギルドへと向かう道中を進んだ。




 「ああ、カズサとクリスティーヌ、良いところに来た。お前達に少し尋ねたい事がある。個室に来てもらおうか。」


 冒険者ギルドに着き、そのままギルド内に入り、Eランクの依頼書がある依頼版に行こうとしたところで、待ち構えていた様に、ギルド長夕姫白蓮が俺達の前に現れ、そう言った。

 有無を言わさない様子で、俺達は夕姫白蓮に連れられて一階の個室にやって来た。

 俺達を椅子に座らせると、夕姫白蓮は俺達の前に座り、


 「さて、まずは件の野盗団を殲滅した事を称えよう。あの赤い狼を従わせていた野盗団の存在は冒険者ギルドにとって帝国警備隊にとっても問題の1つとなりつつあったからな。しかし、お前達をここに連れてきたのはその事を言うためではない。先程も言った様にお前達に少し尋ねたい事がある。」

 「な、何でしょう?」


 夕姫白蓮の様子に俺は気圧され気味に答え、エリカもどこか不安げな様子で無言で彼女を見つめている。


 「野盗団が従わせていた赤い狼に使われていた首輪、お前達が所持しているという事はないだろうな?」


 は?凄い真剣な表情で尋ねてくる事が、俺達が赤い狼の首輪を持っているかだと?そんなもん、持っている訳がない。

 そもそも、俺が赤い狼を殺った後、赤い狼の死体には近寄ってすらいないのだ。


 その事を夕姫白蓮に伝え、エリカにも救出した女性達を介抱している間に、赤い狼の死体に近寄ったかどうかを尋ねると、エリカも否定した。


 「私も彼女達を介抱しなくちゃと言う気持ちが強くて、赤い狼の死体には意識すら向きませんでした。」


 昨日、一日だけの付き合いとは言え、エリカは面白可笑しいところがあるとはいえ、根は善人のようなので、人助けにも全力で当たるだろう。そんな彼女が目の前に拉致され挙句に凌辱されてボロボロになった女性達がいるのに、赤い狼の死体になんか意識を向けないだろう。

 

 夕姫白蓮はしばし、俺達を穴が開く様に見据えた後、


 「そうか、解った。そもそも、お前達が助けた者達からも既に聞き取りはしており、彼女達もお前達が赤い狼の死体に近づいていないと証言を聞いたが、念のためにな・・・。」


 あ、既にちゃんと他の者達からの証言もちゃんと取ってるのか・・・。

 しかし、赤い狼の死体から首輪が見つからなかったか・・・。


 「俺達からも取り調べをすると言う事は帝国や冒険者ギルドは、誰かが赤い狼の死体から首輪を奪って行ったと認識してるんですか?」

 「・・・そうだ。でなければ、赤い狼の死体から首輪が消えるなどありえないだろう。」


 確かにその通りである。でもだとすると一体誰が、と言うより俺達があの砦を去ってから帝国警備達が確認に行くまで、数時間あるとはいえ、実に手際が良くはないだろうか・・・。

 そこで俺は、ある事に気付き、固まった。そんな俺の様子を夕姫白蓮が気付かないわけもなく「どうしたカズサ?」と怪訝な表情で訊ねてきたので、


 「いや、誰かが赤い狼の死体から首輪を奪って行ったと今、言いましたけど、奪って行ったと言う事は俺達が野盗達の砦を去ってから帝国警備達が確認に行くまでの時間に盗って行ったと言う事になるんですけど、それって随分と手際が良いですよね?」

 「・・・そうだな。」

 「と言う事は、盗って行った相手は俺達が砦に攻め込んで野盗達を殲滅、囚われた女性達を解放して連れ出すとところを見ていた可能性があるんじゃないんですか?」


 俺の言葉にエリカは驚愕した表情で俺を見たが、夕姫白蓮は表情を変えず、


 「そうだな。カズサもその線に気付いたか。」

 「・・・ギルド長は気付いていたんですか?」

 「可能性の1つとしてな・・・。まぁ、もっとも私だけでなく帝国警備隊の上もそう見ている。」


 あ、ギルド長だけでなく、帝国のお偉いさんもそう見てるんですか・・・。そうですか・・・。

 大事な事に気付いたかと思ったが、そうでもなかったので、少しがっかりだぜ・・・。


 「とは言え、その事に気付くとはな・・・。そういう頭の回転も優れた冒険者には必要なモノだからな。資質はあると言う事だ。」


 俺の心中を察した様に、そう言ってニヤリと笑う夕姫白蓮。


 「まぁ、そういう訳で話を聞きたかったんだが、聞く事も聞いたし、もう出て行ったいいぞ。野盗団を壊滅させた報酬も近いうちに支払う。」


 夕姫白蓮に退出の許可が出たので、俺達は一礼して部屋を出た。


 それにしても怪力熊の変異体だけでなく、赤い狼でもこういう妙な事が起こるとは・・・。


 ひょっとして俺の運勢、悪くない・・・?



面白いと思いましたら、感想または評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ