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第38話 俺とエリカの初めての冒険はこうして終わった。

 それから俺達は本来の依頼達成の報告と、その証拠としてケリウサギの遺体の提出とリュックボックスの返品の為にギルドに行くと、受付をしていたセリナが俺達の姿を見た途端、


 「カズサさんとエリカさん、先程警備隊からの通達で聞きましたよ!依頼をこなしている途中で、今、勢いが増し始めていた赤い狼を従わせた野盗団をたった二人で壊滅させて囚われていた女性達を救出したと!!」

 「そっちギルドにも情報が行ってるか。ああ、俺とエリカで見事、赤い狼も含めて殲滅して拉致られて囚われていた女性達を助け出したぜ。」

 「へぇ~、カズサさんはその、お顔とは裏腹にお身体を見たら強そうに見えるし、実際、並みの冒険者の方よりも強いのは知っているんですが、エリカさんもお強いんですね・・・。」

 「あ、いえ、私は数人倒しただけで殆ど野盗達を討伐したのはカズサさんなので・・・。」


 目を伏せて、バツが悪そうに答えるエリカ。


 「い、いや、でも野盗の頭や幹部達を討伐したのはエリカだから活躍したのは確かだろ。」

 「・・・私はただカズサさんに指示通りに銃を撃ちまくってだけなんですが・・・。」

 「それでも、辱められていた女性達を人質に取られる事なく野盗の頭や幹部達を討伐出来たのはエリカのおかげだよ。自信持っていいと思うぞ。」

 「は、はぁ、ありがとうございます?」


 疑問形で礼を述べるエリカをよそに、俺はギルドを訪れた本題を出した。


 「で、ギルドに来たのは、俺達が受けた本来の依頼であるケリウサギの討伐依頼を達成させたので、確認して欲しいのだが。」


 そう言って受付にケリウサギの遺体が入ったリュックボックスを置き、エリカから彼女が背負っていたリュックボックスも受け取り、それも受付に置いた。


 「・・・あの野盗団を壊滅させただけでなく、お二人が受けた本来の依頼の方もこなしていたんですね・・・。」

 「いや、俺達からすればこの依頼が元々受けた依頼だから、こなすは当然だろう?」


 信じられないと言う表情でセリナに俺がそう返すと、「いや、まぁ、それはそうなんですが、冒険者になったばかりのお二人がこれほどの働きをなさるとは、予想していませんでしたので・・・。」といささかバツが悪そうに返した。


 まぁ、確かにセリナの言う事も確かである。

 そこにエリカが、


 「あの、ケリウサギも野盗達もほとんど倒したのはカズサさんであって、私はそんなに活躍していないんですけど・・・。」


 今度はエリカがおずおずとそう言ったが、エリカが言わずともそこらへんはギルドも理解している様で、セリナは苦笑しながら「はい、ギルド長にはそう伝えておきます」とだけ返した。


 「では、ケリウサギの遺体を確認させていただきますね。」

 

 セリナがそう言い、リュックボックスを手に取ると、奥で業務をこなしている職員に声を掛けて渡し、もう1つのリュックボックスも別の職員に渡すと、職員達は奥へと姿を消し、しばらく待機していると、奥から職員が書類を一枚持って現れ、セリナに渡し、彼女が内容を確認すると、


 「査定の結果、30匹討伐されているのを確認致しましたので、報酬額は15万エンとなります。」


 セリナの言葉に俺達は頷くと、セリナは15万エンを受付台の上に置いた。


 「報酬金となります。ご確認ください。」


 15万エンある事を確認すると受け取り、そのうち半分の7万5千エンをエリカに渡そうとすると、エリカは大慌てで断ってきた。


 「あ、いえ、私は今回は結構です。野盗達の根城に向かう時に、このケリウサギの報酬をすべて差し上げますから囚われた女性達を助けに行ってくださいとお願いしましたから。だからカズサさんが全部もらってください。」

 「・・・別に構わん。俺も色々と助けられたからな。それにこれからも組んでいく訳だし、パーティー組んでの最初の依頼で報酬で揉めたくないから、半分はエリカが受け取っておけ。」

 「でも、それじゃあカズサさんだけが多大な労力とこなした割に徒労に終わりますよ。」

 「・・・まぁ、金銭面ではそうかもしれないが、お互いの人間性はより知れて結果、これからもパーティーを組んでいく事になったのだから、別の面では俺も労力に見合うだけのものは得たさ。まぁ、報酬をもらうのが心苦しいというのなら、これからの依頼をこなす中でしっかりサポートしてくれ。」


 そう言ってエリカに7万5千エンを押し付ける様に渡した。しばし葛藤していたが、最後は「では、有難くいただいておきます。」と言って受け取った。


 これで野盗達から囚われた女性達を助けた件とこの報酬の件でエリカに恩は売れた。何だかんだ言って回復魔法を使える聖職者しかもそこそこ戦える上に銃も使える、その上、そこそこ世間は知っており、面白おかしいところもあるが、根は善人で素直なので、俺が主導権を握りやすい。


 パーティーを組むなら、まずはこういうタイプの方が俺にとっては良い。これでエリカも当分は俺と組むのに不満はないだろう。




 その後、俺達のやり取りがひと段落着いたと認識した セリナが野盗団の報酬は野盗達の根城の砦を調べて、俺達が討伐した事が事実である事を確認してから支払われる趣旨を伝え、俺達はセリナの見送りの言葉を背に受けながらギルドを出た。


 「では、カズサさん、明日も朝、ギルドで落ち合う事でよろしいでしょうか?」

 

 エリカが明日の予定を尋ねてきたが、そこで俺はどう返すかに迷った。

 明日はミントのペパー商会にポーションを卸すため、朝はペパー商会に行かねばならない。そこでポーションの作成やどれくらいの期間で次のポーションを卸すかなどの話もせねばならず、どれくらいで終わるかもわからない。

 

 そう考えると、その作業にエリカを付き合わせるのは酷だろう。ならば明日は別行動にした方が良いかもしれない。


 そう思案して、俺がその事を伝えると、


 「あ、別に構いませんよ。私もこれと言って方針もありませんし、カズサさんの好意で手元に多少の資金も得る事が出来ましたから、余裕はあるので・・・。」


 エリカとしては行動を共にするのは問題ないらしく、明日も行動を共にする事になった。


 エリカが帰宅しようとするので、ふと、エリカは何処で寝泊まりしているのか気になったので、


 「エリカって何処で寝泊まりしてるんだ?やっぱり教会?」

 「?そうですがそれが何か?」

 「いや、宿屋に泊まっているのならば、資金の事も有るから、明日、別行動でエリカはギルドの依頼をこなした方がいいんじゃないかと思ったから。」


 俺の説明にエリカは納得した様だった。


 「気を使ってもらい、ありがとうございます。でも、教会に住んでますのでお金の事は大丈夫ですよ。」

 「そう、なら、良いけど・・・、何なら送っていこうか?日も暮れたし・・・。」

 「いえ、それも大丈夫です。なったばかりですが私も冒険者ですから、自衛はできます。それに今の私にはこれ・・もありますから。」


 エリカは二丁拳銃を出しながらそう言うと、俺もなら大丈夫だなと思ったので、そう言ってお互い帰宅の途に着いた。


 俺はまたいつもの宿に泊まろう。今日も色々あったが、無事終了したな・・・。




 同時刻、上総心とエリカ・クリスティーヌが壊滅させた野盗達の根城にしていた砦にて


 「やれやれ、せっかくモンスターティムや調服スキルのない人間・・でも知能の低いモンスターを従わせる事が出来る首輪の試供品を使わせてやった・・・・・・・と言うのに、下らねえ事に使った上に、たった二人の人間に、他のボンクラどもと仲良くぶっ殺されるとはねぇ~。」


 日が暮れ、暗くなった無人の廊下を一人の男が歩いている。今の上総心と同じようなレザージャケットとレザーズボンにブーツを身に着けた見た目20代の銀髪の男である。

 言動と言い雰囲気と言い、軽薄そうな男である。間もなくして男は一階の廊下の奥、女性達が囚われ、野盗の頭目と幹部達そして赤い狼が討伐され、亡骸がそのまま放置されている牢屋の前へとやって来た。


 「お~と、あったあった。」


 男はしばし、周りを見渡し、赤い狼の亡骸に付けられている首輪を見つけると、赤い狼の亡骸の元に行き、首輪を剥ぎ取った。


 「あ、これは俺達んところの魔導研究の奴らが創り出したモノだから返してもらうぜ。」


 そして野盗の頭目と幹部達の亡骸を見て、


 「しかし、これで下級の魔族でもモンスターを使役する事が出来る様になるという訳だ。これで俺達、魔王軍の戦略の幅が増えるという訳だ。テメェらみたいな人間社会では使えねぇ屑どもでもこの首輪の効力を試すには一定の成果は出せたのだから、テメェらも他人様の役に立てたのだから俺達に感謝しろよ。」


 そう言い終えると持っていた首輪を消した。この場に上総心がいたら、自分と同じアイテムボックスに収納した事に驚いただろう。


 用が済んだ男は踵を返して、この場から離れ、


 「さぁて、まずは西の大陸での人間どもとの戦いに決着をつけるか。俺達魔王軍が長きに渡って繰り広げた来たこの世界を俺達のモノにするための戦いを、俺達の完全支配という勝利で飾るための最初の勝利をな。」


 不敵な笑みを浮かべながら男はこの場から姿を消した。


 それから数時間後、上総心とエリカ・クリスティーヌの二人が、この野盗団を壊滅させたのが事実かどうかを確認するために帝国警備隊とギルドの冒険者達が、この砦に調査に訪れ、二人の言が事実である事を確認する事となったが、警備隊とギルドの情報にあった野盗の頭目がどこからか手に入れて赤い狼に装着させて従わせたと言う首輪はいくら探しても見つける事が出来なかった。


 すでに魔王軍の男が持ち去った後という真実を知っているのは、その場にいた野盗の頭目と幹部達の亡骸だけだった。

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