第37話 荷馬車を直してコナタへ
エリカが奥の牢にも囚われていた女性達を助けようと鍵を使って開けようとしたら、鍵が壊れて開ける事が出来なくなり、泣きそうになっていたので、鉄格子を俺の腕力で無理矢理破壊して、彼女達を解放できるようにした俺。
エリカを含むこの場にいる全員が信じられないという表情で俺を見ており、何気に牢の中の女性達に目を向けると、俺が見ている事に気付いた途端、4人とも抱き合うように身を寄せて小刻みに震え縮こまった。
その目は化け物を見る目であり、どうやら、彼女達には俺が筋肉の化け物に見えるようである。
「・・・エリカ、問題は解決したと思うから、この女性達の事も任せるぞ。俺はこの鉄格子の檻を使って荷馬車の車体を修理するから。」
片手にそれぞれ歪んだ鉄格子の檻を手にしながら、エリカにそう言うと、
「え、あ、はい、その女性達の事も任せてください。」
と返答が返ってきたので、ここはエリカに任せ、俺は荷馬車のところに戻り、持ってきた鉄格子の檻を使って錬金で修理して使えるようにした。
まぁ、当然のことながら問題なく荷馬車が直ったので、また直ぐにエリカのところに行って、その事を伝えても向こうも困るだろうから、少し時間を潰そうと思ったところで、救助した女性達のうち、最初に助けた女性達は全裸だった事を思い出し、野盗達が使っていた部屋で、身に纏える物がないかと思い立ち、俺は砦の二階に向かった。
結果から言うと、衣服類は見つからなかったが、野盗の幹部達の部屋には寝具のベッドがあり、寝る時に掛ける薄い大布があったので、それぞれの部屋から持ち出すと、女性達が身に纏うだけの数はあったので、それを手にしてエリカのところに向かった。
「カズサさん、荷馬車の修理はどうですかって、どうしたんですかその布の束は?」
「衣服を着ていない女性達がいるので、取り合えず身に纏える物を持ってきた。それと荷馬車の車体は修理出来たので、彼女達が移動できる状態であるのならば、何時でもここから出立出来るぞ。」
俺がこじ開けた牢に囚われていた女性達を牢から出して介抱していたエリカが、俺が戻ってきたのを察して、介抱しながら訪ね、俺の姿を見て目を丸くしたので、両方の質問に答えると、この場にいたエリカ以外の女性達が「ここから出られるの?」「本当に?」「私たち帰れるんだ・・・!!」とざわめき始めた。
まずは全裸の女性達に大布を纏わせ、野盗達にひどい目にあわされて男性恐怖症になっている女性達をエリカが引率して、砦の外に待機させている荷馬車のところまで連れていく。
もっとも3名ほどは女顔の俺を拒絶しないらしく、俺が彼女達を荷馬車まで案内したが・・・。
この世界に来て初めて、この女顔で良かったと思えた・・・。
「あの、カズサさん?」
「何だ?」
「いえ、あの、彼女達を荷馬車に乗せたのは良いのですけれど、この荷馬車、馬などの引っ張る動物がいませんよね。どうやって動かすつもりなんですか?」
「こうやって動かすんだよ。」
錬金で荷馬車の車体を修理した時、ミントが運営するペパー商店の使っていた荷馬車の様にいざと言う時、人力でも動かせる様に車体の前の部分を人力車の様に引っ張って動かせる様に改修していたので、その部分を持ち、俺が車体を引っ張る形で動き始めた。
これを見てまた目を丸くするエリカ。彼女の中では俺が荷馬車の車体を難なく動かせるとは思っていなかったようである。
まぁ、実を言うと俺も動かせるとは思っていたが、難なくスムーズに動かせるとは思っていなかった。
全く、このチートボディも凄いぜ。
まぁ、この事はエリカには言うつもりはないが・・・。
「という訳で、荷馬車は俺が動かすから、コナタまで戻る道中、周りへの警戒はエリカがしてくれ。」
「あ、はい、任せてください。」
荷馬車を動かしながら、エリカに指示を出し、道中の警戒をエリカに任せ、俺達はコナタを目指して移動し始めた。
いや、こう言う時、パーティーを組んでいると、マジで助かるわ!俺一人じゃ周りの警戒まではとても無理だわ。
荷馬車を引きながら、俺はそう思った・・・。
そこに「・・・筋肉って凄いな。私も筋肉をつけようかな・・・。」とボソッと小声で言うエリカ。
本人は聞こえていないかもしれないが、ハッキリと聞こえたけど、あれ?エリカに要らん影響を与えてしまった?
筋骨隆々のシスターなんてあまり見たくないんだが・・・。
ちょっとだけ、この肉体のスペックに調子に乗って大活躍した事に後悔する俺だった・・・。
「おいおい、どうしたんだ!?その荷馬車の娘達は?!」
道中、何度かモンスターに襲われながらも、エリカが警戒してくれたお陰で、難なく返り討ちに出来、無事、コナタにたどり着くと、通行門を守っていた守衛が、目を丸くして仰天した様子で問い質して来た。
「いや、ギルドの依頼をこなしていたら、野盗どもに出くわして、結果的にそいつらの根城まで攻め込んで殲滅して、彼女達を助け出したという訳だ。」
「野盗達だと?」
「ここ最近、赤い狼を使って勢いがついていた野盗達です。」
「!!本当か?!冒険者ギルドのパーティーとわが帝国警備隊の一部隊を返り討ちにして勢いが増した赤い狼を従わせている野盗達の事は、警備隊だけでなく騎士団でも知られる様になっているそうだが、その野盗達をたった二人で壊滅させたのか!!・・・正直に言うと信じられん・・・。しかし、荷馬車の娘を見るに明らかに何があったかは察せるので、何処からか彼女達を救出してきたのは理解できるが・・・。」
「とにかく、彼女達を保護してほしいのだが・・・。」
「あ。ああ、確かにな。おい!誰か!野盗達に囚われた女性達が救出されてきた!!保護するので応援に来てくれ!!」
守衛が大声で詰め所に要請すると、間もなくして他の守衛が何事かと急いで駆けつけ、荷馬車の娘達を見て、直ぐに動き出した。
俺は守衛の指示に従って荷馬車を指定された場所に止め、彼女達を下せるようにすると、警備隊に属していると思われる女兵士達数名が彼女達を別の場所へと連れて行き、俺とエリカは詰め所で詳しい事情聴取を受けた。
野盗の頭または赤い狼の遺体を持ってきてなかったので、俺達が件の野盗達を討伐したかは半信半疑で、功労については奴らの根城にしている帝国の昔の砦を調べて確認してからとなった。
ちなみにこの事を報告している時にいきなりエリカが「あっ!!」と叫び出したので、何事かと俺だけでなく事情聴取をしていた兵士達までエリカを凝視した。
俺達に見つめられ、エリカはバツが悪そうに俺達が本来請け負っていたケリウサギの遺体を入れたギルドから貸してもらったリュックボックスの事を忘れていた事を話したので、
「ああ、あれは俺がちゃんと確保してあるから大丈夫だ。」
「え、そうなんですか?」
「ああ、安心してくれ。」
と返すと、何処か釈然としていなかったが、取り合えず納得してくれた。野盗達の砦に向かおうとした時に、エリカの意識が向こうに向いている時にアイテムボックスに収納しておいて正解だったぜ。
事情聴取が終わって外に出た時はもう日も暮れかけており、俺はエリカの隙をついてアイテムボックスから、互いのケリウサギの遺体を入れたリュックボックスを取り出してエリカに渡した。
「・・・本当に持ってきてたんですね・・・。」
「だから、言っただろう。これで依頼はこなしたからギルドの報酬はもらえるぜ。エリカも初の依頼が失敗の無報酬じゃ先行き悪いだろう。」
「え、ええ、そうですね。ありがとうございます。」
「・・・ひょっとして囚われていた女性達の事を気にしているのか、まぁ、彼女達も災難だったが、こればっかりは俺達が気にしすぎても・・・なぁ・・・。」
「あ、いえ、その事もありますが、私が一番めげているのは、彼女達を助けた時は彼女達を保護する事しか頭になく、野盗達の持っていた金や貴金属の幾らかを手に入れる事を全く忘れていた事なんです・・・。」
少し落ち込んでいる様子のエリカだったので、慰めるつもりで言ってみたら、まさかの賊の金を幾らかを撥ね忘れた事だったとは・・・。
とは言え、囚われていた女性達を助けた時には、彼女達のために全力を尽くせるのだから、彼女はやはり根は善人なのだろう。
「まぁ、次に似たような事態に遭遇した時は、お互い自分の利益も忘れないでおこう。」
俺が励ましのつもりも兼ねてそういうと、エリカはきょとんとした表情となった。
「どうした?」
「あ、いえ、次の時、お互いにと言う事は、まだパーティーを組んでくれるんですか?」
「そのつもりだが、少なくとも俺も俺でエリカと組んでよかったと思える事も多々あったしな。エリカが良いならパーティーを続けるのを頼むよ。」
「あ、はい、ありがとうございます!」
エリカはそう言って、とても嬉しそうな笑顔で微笑んでくれた。
くそ、ちょっとときめいちまったじゃないか。
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