第35話 赤い狼と残った野盗達との決戦!・・・嘘は言ってない
野盗達の頭の私室の家探しをし始めて、直ぐに俺達はある武器を見つけた。
それは俺から見たら博物館で見るような随分古い形式の銃だが、それらを4丁程見つけ、弾丸もそれなりの弾数が置かれている。
あの野盗達、こういう武器も所持していたのか・・・。と言うか、この世界、地球の技術で考えたら随分古い形だが、銃を生み出せる概念と技術はあるのか・・・。
まぁ、少し考えたらコナタには日本ほどではないとはいえ下水を含め、水道設備の技術があるのだから、寧ろ、銃はより後の銃があっても可笑しくはない。
そう考えるとこの世界、意外と技術が現代日本ほどではないにしても明治から大正ぐらいの技術はあるかもしれないな・・・。
俺がそんな事を考えていると、エリカが興味津々と言った様子で銃を手にして目を輝かせている。
「それらの銃が気に入ったのか?」
「はい!銃は誰でも比較的扱うのが簡単な上、遠距離から攻撃できる上に威力もありますから!それに何より」
「何より?」
「格好いいじゃないですか!こう銃を2丁、左右の手に持って、颯爽と敵をバンバンと倒す姿に憧れちゃいます!!」
銃をそれぞれの手に持って撃ちまくる真似をしながら、鼻息を荒くしながら力説するエリカ。
どうやら彼女は、思った以上に面白愉快なシスターらしい。
とは言え、回復魔法や補助魔法といった完全なサポート系のシスターであるエリカだからこそ、銃を持たせたら攻撃力が大幅に上がる上、遠距離から攻撃できるので、エリカ自身が接近して戦う必要もない。
「なら、その二丁の銃そのまま持っていけ。弾も置いてある分、全部、持っていけ。」
「・・・良いんですか?」
「ああ、それで格好良く颯爽と敵を撃ち倒してくれ。」
俺の言葉にエリカはとても嬉しそうに「はい、了解しました。」と何故かビシッと敬礼して返し、部屋に合ったありったけの弾丸を、腰に付けていた小型のポーチに、残りを同じく部屋にあった水が通りにくい厚めの袋に入れて自分の腰に備え付けた。
他にも部屋を探してみるとハイポーションが二つ、ポーションが三つあり、これも遠慮なくもらっていく事にし、ハイポーションを1個ずつ、ポーションは俺が一つもらい、残り二つはエリカに渡した。
後はそこそこの価値はある剣なども見つけたが、俺もエリカも剣は使わないので、取り合えず剣は部屋に置いておくことにした。
後はまだ開いていない酒なども見つけたが、これも今は置いておく事にする。
後残りは金や売ったら、それなりの価格になりそうな金目のモノだが、これも今は手を付けないでおく。
ましてや、面白愉快なシスターとは言え、聖職者の端くれであるエリカに、ここの金を持っていこうとは少し言いづらいのもあった。
「頭の部屋は一通り調べ終えたので、他の部屋を調べるか。」
「はい、そうですね。ここに置かれているお金などは野盗達を討伐してから、どれくらい懐に入れるか考えましょう。」
ん、んん?このシスター、今なんて言った?どれくらい懐に入れるか考えましょう?、え、何?ひょっとしてエリカさんの中では、ここの金を自分の金にする事は確定なの!?
思わず彼女を凝視してしまうと、そんな俺の様子に「どうしましたか?」と怪訝な表情で訪ねて来たので、
「い、いや、まさかシスターのエリカから、ここの金を懐に入れようと提案されるとは思わなかったから、少し驚いただけだ・・・。」
何でもないという風に、そう答えると、彼女は不思議そうな表情で、
「・・・カズサさん、知らないんですか?」
「何が?」
「こういう盗賊や野盗のアジトに蓄えられているお金は基本略奪品なので、国が回収して、調べられる範囲で被害者の方々を探し当てると、その方達に返金されるのですが、その回収時に冒険者が見つけ、通達してきた場合、冒険者の通達した金額を受け入れるしかないんです。何故ならアジトに蓄えられているお金や貴金属がどれくらいあるかなんて帝国警備隊が通達を受けた時は分からないからです。ですから冒険者が盗賊や野盗のアジトに踏み込んだ時、蓄えられているお金を見つけたら、いくらかは自分達の懐に収めるのは暗黙のルールとなっているそうです。」
そういう暗黙のルールがあるのは知らなかったが、エリカいわくこの知識は先輩のシスターで冒険者の先輩であるマリアを含めたレオンパーティーから教えられた事だそうなので、まず間違いないだろう。
余談だが、マリアがまだ冒険者になる前も、エリカとマリアが生活していた教会に冒険者や帝国の警備隊、騎士も出入りしており、その時、エリカ達も含め、見習の聖職者達ともも多少の交流があり、冒険者の生活だけでなく、エリカは銃の使い方も基礎は教えてもらったそうである。
エリカが2丁拳銃で戦うのに憧れがあるのもその影響の一環の様である。
どうやら、俺と違ってこの世界で生まれ育ったエリカの方が冒険者としての心構えやルールを把握しているようである。
そういう意味では彼女と組んだのは正解だったな・・・。
俺達は装備を整えて別の部屋を調べる事にした。
最上階には野盗の頭の私室しかなく、俺達は注意深く下の階へと降りてみたが、下の階にも野盗達も赤い狼もいない。
「どこ行ったんだあいつら?」
「一階にいるんじゃないでしょうか?」
エリカが自信なさげに、そう答えてくれたが、砦の二階にもいないとなると、一階にいる事になる。何をしているのか知らんが、二階の部屋を調べるのにはちょうど良かったので、二回の部屋を調べてみると、野盗達の中でも幹部と思われる部屋が奥に3つあり、一階に降りる階段の近くにある二つの部屋が手下達が住んでいたと思われる大部屋だった。
どうやら、幹部達は3つの部屋を少人数ずつで相部屋で生活しており、2つの大部屋が手下達が共同生活していた様である。
手下達が共同生活していた2つの大部屋には目ぼしいモノはなく、幹部達が生活していた3つの部屋にはそれぞれの部屋にポーションが4つずつの計12個、他にも薬草や毒消し草などもあり、そこそこの金や貴金属類もあった。
どうやら、幹部達はそこそこの利益は得ているようだが、大半の手下達は精々、多少のおこぼれにあやかっているだけの様である。
どこの世界も下っ端は世知辛い様である。こんなんだったら、普通に働いた方が良いと思うのだが、それができないどうしようもないカスどもだから、こうして野盗をしているのだろう。
そんな事を思いながら、見つけたポーション類をエリカと分けて、いよいよ、一階に降りる事にした。
一階に降りてみたが、砦の出入り口付近にも野盗達の気配はない。一体何処に行ったんだあいつら?
そんな事を思っていたら、エリカも同じ事を思っていた様で、「いませんね野盗達。何処に行ったんでしょうか?」と声を掛けてきたので、「何処かにいるのは間違いないだろう」と返しておいた。
俺の返答に「まぁ、そうですよね。」と肯定し、俺達は野盗達を探す事にした。
一階が一番広く奥行きがある、調べてみるとかつて食堂だった部屋や、兵士達の待機部屋などがあり、後はいくつかの小部屋がある。
それらを調べて奥へ行こうとしたところで、何かの声が聞こえた。
エリカも聞こえたらしく「カズサさん」と小声で言って来たので俺は頷き、お互い耳を澄ましてみると複数の男女の声で、声のする奥へと忍び足で進んでいくと、より鮮明に聞こえてきた。
その声は女性の悲鳴と艶声と男達の下卑た声だった。どうやら、5人の野盗達が捕えてきた女性達を無理矢理、犯している最中の様である。
見ず知らずと言え、女性が強姦されていると言う事に、俺自身、少し動揺したのだから、同じ女性のエリカはより衝撃を受けた様で動揺以上に、怒りが見える。
この様子では弾けて、このまま飛び出して行きそうなので、そうなる前に彼女の手を取って何事かと俺を見たエリカに、
「酷だとは分かっているが、まずは落ち着け。このまま勢い任せで行っても碌な事にならんぞ。」
「でも、早く囚われて犯されている女性達を助けないと。」
「だからこそ、まずは落ち着け。逆にエリカまで囚われるような事になったら、助けられる者も助けられんぞ!」
より語尾を強めて言うと、エリカはしぶしぶだが頷いた。とは言え、エリカもこのやり取りを聞かされ続けたら、直ぐに飛び出すだろうから、俺は少し早足で奥へと向かった。
少し進んだところで、左右に道が分かれているが、右側の通路の奥から聞こえてくるので、壁に張り付いて、そっと覗いてみると、奥の場所は捕虜を捕えておく牢屋であり、3つある牢屋の一番手前の牢で野盗達が捕えた女性達を、牢から出して牢屋の前で激しく犯していた。
全く下劣極まる光景だが、野盗達全員が女を犯しており、周りに意識が行っていない。赤い狼を側に置くだけの警戒心は残っているようだが、それでも危機意識が低いとしか言いようがない。
もしくは赤い狼の能力を過信しているのかもしれないが、その赤い狼も俺に気付いていない様で、所詮はバカ犬ならぬバカ狼である。
俺は少し離れた後ろで待機しているエリカを手招きで呼び、
「今、野盗達は捕えた女達を犯している最中なので隙だらけなので、右角の通路に立ったと同時に野盗達目掛けて銃を撃ちまくれ。それで野盗達は殲滅出来る。」
エリカに指示を出すと、彼女は嬉しそうに頷き、そのまま通路に出て言われた通り、迷わず両手に持った銃を野盗達に突き付けて玉切れになるまで撃ちまくった。
次の瞬間、何発も鳴る銃声と共に撃ち殺される野盗達の悲鳴といきなり自分たちを犯していた野盗達がハチの巣になって血を噴き出して倒れるのに驚く女性達の悲鳴が響いた。
エリカの銃の弾が切れると同時に、赤い狼の襲撃に備えるためにエリカの前に立ち、そこで野盗達の状況を確認したが、野盗達は全員、血まみれになって倒れている。
何人かの丸出しの尻が見えたが、全く汚い尻だぜ。
赤い狼はどうしたかと野盗と何が起きたかまだ理解できていないと思われる上半身を起こし、茫然としている全裸の女性達の周りを見回すと、牢屋の出入り口付近で、全身の毛を逆立たせながら構え、歯をむき出しにして唸り声を上げている赤い狼の姿が映った。
激しく怒っているのが見て分かる。どうやら、野盗の親分を殺った俺たちに対して激しい怒っているみたいである。
駄犬ならぬ駄狼のくせに主人に対する忠誠心はあるみたいである。
その時、赤い狼が駆けて俺に目掛けて飛び掛かってきた。後ろでエリカは「速いっ!!」と驚きの声を上げたが、俺には普通の犬が飛び掛かってくるよりいささか遅いぐらいの速さにしか感じられず、赤い狼が俺に牙を突き立てようと襲い掛かってきたところで、
「オラァ!!」
と赤い狼の横っ面を全力で勢いをつけて右拳で殴りつけた。次の瞬間、赤い狼の横っ面をぐちゃりと粉砕する感触を感じながら、赤い狼の身体を牢屋に叩きつけ「キャイーン」と弱弱しい声で一鳴きして赤い狼は動かなくなった。
「あ、あれ?カズサさん、赤い狼、今の一撃でやっけちゃったんですか?」
エリカが信じられないという声色で訊ねてきたが、俺だって信じられない気分だった・・・。
え?赤い狼、もう終わり?ちょっと呆気なさすぎない?
い、いや、呆気なく倒せるほうが良いんだけどさ、別の意味で困惑した俺達だった。
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